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万華鏡

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第八十一話 寮生活その二

「寮のお部屋はそれぞれ三人用でね」
「三人ですか」
「三人部屋ですか」
「一年、二年、三年でね」
 それぞれ一人ずつだというのだ。
「一緒に暮らしてるの」
「宇野先輩もですか」
「三年の人とも一緒に」
「そうよ、一年の娘ともね」
「本当に一学年に一人ずつですね」
「それで三人なんですね」
「そうなの、三人で結構な広さなのよ」
 その寮の部屋がというのだ。
「机とベッドが三つずつあってね」
「テレビは」
「お部屋にはないわよ」
 そこには、というのだ。
「各階の娯楽室にあるから」
「そこにですか」
「まあテレビは皆殆ど観ないから」 
 そうなっているというのだ。
「正直もうテレビはね」
「観なくなりましたね、本当に」
「テレビ番組は」
「寮にいると特によ」
 テレビを観なくなるというのだ。
「色々と他にやることがあって」
「寮のお仕事ですか」
「そっちの方を」
「お掃除とかね、あと学習時間もあるから」 
 そうした時間があるせいで、というのだ。
「皆部活行ってるし。それに休日もあれこれ外に出るから」
「だからテレビはですか」
「観ないんですね」
「そうなの、テレビは観ないから」
 それこそ誰もが、というのだ。
「私だってそうなのよ」
「先輩もテレビはですか」
「御覧になられないんですね」
「実家にいた時よりずっとね」
 観なくなっているというのだ。
「まあ正直観なくてもね、テレビを」
「やっていけるんですね
「普通に」
「スマートフォンとか携帯があるから」
 そうしたもので、というのだ。
「普通にテレビ番組とか観られるからね」
「動画サイトとかもですね」
「あるからですね」
「そう、そういうのを使えるから」
 それでというのだ。
「あまり困らないわよ」
「テレビを観られなくてもですね」
「これといって」
「それに正直本当に面白い番組ないからね、最近」
 宇野先輩は苦笑いを浮かべてこうしたことも言った。
「だからね」
「そういえば確かに」
「テレビって何か」
 五人も先輩の言葉を受けて言う。
「もうなくても別に」
「困らないっていうか」
「そうでしょ、寮にいればね」
「余計に、ですか」
「そうなるんですね」
「テレビを観たら馬鹿になるとも言うけれどね」
 これは低俗な番組を観ることによってだけではない、テレビが流す一方的な情報を鵜呑みにすることによってだ。 
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