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『自分:第1章』

作者:零那
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『たこやき屋』

車の後ろで、たこやき焼いてる店、たまに在るよね。
小4の夏休みくらい、友達と、たこやき屋のオッチャンとこに、お喋りしに行くことが結構あった。

おもしろいオッチャンで、新人種で新感覚で色んな発見があって、オッチャンと話す事が好きやった。

オッチャンは何故かウチが普通じゃ無いことを解ってるような口ぶりだった。
近所の人は勿論知ってた。
逃げ込んだこともあるし。
島やし、そんな噂はスグ広まる。

オッチャンは、売れんくて冷めてしまったたこ焼きを『食べな』って、車の奥へ呼んでくれて食べさしてくれた事がある。


『ほっぺ触らして』『足触って良い?』とか言われて、意味も解らず『触るくらい良いよ』って。

売上金の中から、100円玉や500円玉を何枚も貰った事がある。

零那はその行為の真意を理解して無かった。
その行為に疑問を抱くことも無く、家に居るあのオッサンみたいに拒絶反応も無く、変わらず続いた。

中学に入り、保健の授業で性教育もあり、でも、学校自体そんなに行けてないから知識も無く解らず続いた。


たこやき屋以外でも会うようになった。
釣りの餌や餌を作る為の材料を買いに行かされる時とか。
そぉゆう時はいつも理不尽な時間制限とかされてるから死ぬ気で急ぐ必要がある。
だから話す時間は無い。

『乗せてったるで』
言われたけどチャリ乗らんし、その車...って。


夏休みは、部活、補習、いろんな理由つけて絶対行かなあかんゆうて嘘付いて登校してた。

勿論許可はおりんから逃げるように登校してた。

一般的に歩く距離じゃ無い。
でも、逆に、小学校みたいに近くないから言い訳できるし時間も稼げる。


中学の近くで、たこやき屋のオッチャンとバッタリ会った。

『乗せて帰ったるで』

『そんな早くに帰ったら...』

帰りたくないのは解るやろ。

『とりあえず乗り。暑いやろ。エアコン付けたるから。』

零那は素直に従った。
こんなとこで兄姉に見つかっても困るしチクられるし。

暫くドライブしよか言われて山の方に行ってた。
工事中の現場で、大きく開けた穴が何ヶ所かあって、土の山になってる所の裏に車が止まった。


零那は、このオッチャンに、というか、家に居るあのオッサン以外に嫌悪感を抱くことは無かった。
疑うことも無かった。

良く言えば、あるいみ純粋で?
悪く言えば、単なる馬鹿で?

って感じだった。


オッチャンの態度がいつもより少し怖かった。
伸びて来る手がいつもと違ってた。
逃げたかったけど...
大人の男の人は子供が好きなんかな?とか、あのオッサンとはワケが違うし憎めんし...とか考えてたら諦めが付いた。

もぉ抵抗する精神力も無いし、どぉせ零那は既に玩具やし、汚いから。

されるがままになった。

たぶん、何かが自分の中で崩れたのは確かなんやろうけど...たこやき屋のオッチャンを恨むことは無かった。

家の近くまで送って貰って、帰り際に5万くれた。
持って帰っても確実に取られるし、どうしたんか聞かれてるし、面倒やったから、チャック付きの透明の袋に入れて、バス停の大きい石の下に隠した。


数日後、家を脱走できた。
それを取り出し、細かく両替して小分けにして学校のロッカーに隠した。
児相に電話するのに使う電話代としては多過ぎる。

金の使い方やか知らん。
当時欲しいものと言えば酒とカメラ。
カメラは毎日スカートのポケットに入ってて、空の様子が変わってたり、見たこと無い花が在れば撮ってた。


たこやき屋は変わらず、いつもの場所で営業してた。
自分からは寄らん様になった。
呼び止められたから行くことに。
謝られた。

前したことを『誰にも言わんといてな』って泣きそうな顔で...

『言わん。自分も受け入れた。』

なんか解らんけど憎む気にも
ならんし気持ち悪いとも思わんし。

かと言って、好きとかってのも無いけど。

誰に何されても同じ。
行為は変わらん。
既に汚いし。

オッチャンは『ありがとう』って泣いてた。
零那は『泣かんといてや。大人やろ?恥ずかしいで。』って言って帰った。 
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