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I want BRAVERY

作者:清海深々
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8話 School life


8話 School life

———コンコン

「岳羽です。起きてますか?」

 私は寝ぼけたままドアを開けた。

「はじめまして。岳羽ゆかりです。先輩に案内しろって言われちゃって」

 やけに慣れ慣れしく感じるの私だけなのだろうか。

 なんだろう。
 ビッチに対する私の警戒心が、私が彼女と親しくすることを拒否する。

「もう、出られる」

「一人で行けるよ」

 ゲームなら選択肢が出たが、私には存在しなかった。

「もぅ、断るかな、普通・・・ま、いっか。とにかく時間押してるし、支度支度」

 私はビッチに言われるままに用意をし、寮を出る。

 その間、誰とも出会うことはなかった。

 前の世界で乗ったこともあり、対して珍しくもないモノレールに乗って私は学校へ向かう。

 海の上を走っているような感覚で、外の景色にすこし見惚れる。

 モノレールを降りて、そこからは徒歩。

 しばらく歩くと学校が見えてきた。

(ここが、夜はタルタロスになるんだよね・・・)

 今後、原作を過ごす上でレベルアップは必須。
 そしてレベルを上げるのは主にここ。

 原作で最初の大型シャドウの時に、真田先輩が怪我していたところを見ると、タルタロス以外でもレベルを上げることも可能なはず。
 でも、もっとも効率のいい場所はたぶんこのタルタロス。

「以上、ナビでした」

 気づけばビッチの説明はすべて終わっていた。

 とりあえず、聞いていなかったことは置いておいて、ここは既に学校なのでいつものように、愛想のいい活発な女の子を演じる。

「うん。ありがとう!」

「それじゃね」

 手を振りながら去っていくビッチに手を振り返しながら、私は職員室へ向かう。

———ガラッ

「失礼します!」

「おっと、転入生?」

「はい」

「私は国語科の鳥海です。よろしくね」

「はい。よろしくお願いします!」

「おと、元気ビンビンねー」

 なんか卑猥だな、なんて思いながら私は笑顔を崩さない。

「あなたは私の担任する『F組』よ」

 やはり原作と同じだ。
 
 その後、鳥海先生に連れられて、講堂へ向かう。

 そしてつまらない校長の話を聞く。

 私はこの後にあるビックイベントに頭がいっぱいで、周りの声はまったく耳に入らなかった。

 校長の話が終わり、生徒は教室へ移動する。
 私もF組の教室へと移動した。

 そしてホームルームが終わり、初めての放課後。

「よっ、転校生!」

(キターーーーー!!!)

 内心そう叫ばずにはいられない。

 ついに接触した。
 私の逆ハーの一人。

 伊織順平だ。

「誰?」

「俺は伊織順平。ジュンペーでいいぜ」

 順平は中2に転校してきた時の経験を語ってくれる。

(やっぱ順平って優しい・・・)

 リアルでそれを感じるとキュンとくるものがあった。

 そこへふとビッチの声が入る。

「ちょっとは相手のメーワクとか、考えたほうがいいよ?」

(お前がな)

「なんか偶然だよね?同じクラスになるなんてさ」

(けっ!)

「そうだね。知ってる人がいてよかったよ」

 私はニコリと笑みを浮かべる。

 順平の親切にケチをつけるビッチ。

「じゃ、行くね」

 ビッチが教室から出て行く。

「ま、困ったことがあったらいつでも相談してくれよ」

「うん!ありがとう。私、稲城遥。遥って呼んでね」

「おう!よろしくな!あ、あと俺の友達も紹介するぜ」

 原作にはなかった展開だ。

 ペルソナ3のキャラは基本的に主人公以外に友達がいる描写はほとんどない。
 そのため、順平に友達がいるとは思わなかった。
 特に順平は原作主人公と一緒にいることが多く、他の人と一緒にいるのはごく稀だ。

「ん?なんだ髭。お前はやくも女子に手を・・・って、稲城さんか」

「あ、琉峰君」

「あれ?お前ら知り合い?」

「あぁ、彼女、俺と同じ寮なんだよね」

「うん。昨日入ったの。あと、私のこと、遥でいいよ」

「ん、じゃ、俺も彩でいいよ」

 順平が紹介してくれた人は同じ寮の、イレギュラーである琉峰彩。

 顔はそれなりにイイ。
 超イケメンではないが、イケメンに分類される顔だ。

 そして、なにか雰囲気が格好いい。

 まさに雰囲気イケメン(?)だ。

「同じクラスなんだね。これからヨロシク」

 ニコリと笑う彼。

 なんかちょっとクラッときたけど、それを我慢して私は答える。

「うん。ヨロシクね」

 ニコリと笑い返す。

(惚れろ!私に惚れろ!そして逆ハーの一員になれぇぇ!!)

 思いっきり気持ちを込めて笑みを浮かべる私。

「彩〜ラーメン食いに行こうぜ〜」

 彩君の後ろから、たぶん原作に顔の出ていないモブキャラが沸いてきた。

「あぁ、モブ・・・ま、お前はいいや。髭も行くか?」

「おう。じゃ、また明日な遥ちゃん」

 ちょっと格好つけながら私にそういう順平。

「うん。また明日ね」

 私はそれに笑って答え、二人に手を振って教室を出ることにした。

 私は初日ということもあって、特に何かすることもなく、ゲームの中身がリアルになるとこうなるのか、なんて思いながら景色を見て寮へと帰った。

「ん?君か」

 ゲームでは普通のセリフだ。
 寮に帰れば基本的に誰かが反応してくれる。

 しかし、なんだろう、この上から来られている感じ。

「えっと・・・ただいま?」

「あぁ、おかえり」

 普通の会話をした後、私は自室へと向かった。

「ふぅ・・・」

 鞄をドサリと机の上に置き、今日あったことを頭の中で反芻し、目を瞑る。

「・・・あれ?晩御飯ってどうするんだろう」

 ゲームでは晩御飯を一階のラウンジで食べている姿を見かけることもあったが、あれは買ってくるのだろうか。
 普通の寮では晩御飯は寮の食堂で出るのだが、この寮にはそれがない。

(もしかして・・・欠陥寮?)

 なんて思いながら、私は夕食を食べれる店、ないしはコンビニを探しに外へ行くことにした。
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