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美しき異形達

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第十五話 白と黒の姉妹その三

「孤児院で掃除洗濯、お裁縫とかしてたから」
「そっちはですか」
「出来るのね」
「一応な、雑だと自分でも思うけれどな」
 それでもだというのだ。
「出来るよ」
「じゃあ肝心のお料理はどうなの?」
 朱美は薊にこのことについて問うた。
「そちらは」
「ええと、そっちはな」
「駄目じゃないわよね」
「出来ることは出来るつもりだけれどさ」
 どうにもだ、普段とは違い切れの悪い口調で言う薊だった。
「味が濃いって言われるんだよ、あたしの料理」
「味がなの」
「あとやっぱり雑でな」
 そして、とだ。薊は話を続けていく。
「男の料理だって言われるよ」
「女の子のじゃなくて」
「得意料理は焼きそばとかお好み焼きとかさ」
 そうした料理も挙げていく。
「八宝菜、チンジャオロースにビーフシチューもな」
「男の人のお料理ですね」
 そうしたメニューを聞いてだ、伸子も言う。
「どっちかっていうと」
「そうだろ?あたしの料理ってさ」
「男の人のお料理なんですね」
「自衛隊かって言われたこともあるよ」
「横須賀だからですか」
 言うまでもなく海軍時代からの軍港である、今も海上自衛隊最大の基地があり防衛大学もある。ついでに言うとアメリカ海軍の基地もある。
「だからですか」
「普通にさ、海自さんの基地見学に行ってカレーご馳走になったり」
「カレーですか」
「休日にアメちゃんのベースに行ってさ」
 そのアメリカ海軍の基地である。
「そこでバイキング食ってたら」
「そうした味付けになったんですか」
「そうした得意メニューになってな」
「ううん、軍隊ですか」
「軍隊は男社会だからさ」
 確かに女性の自衛官も増えた、しかし基本はどうしてもそうなる。
「そうしたところに行ってると」
「自然にですか」
「あと孤児院の料理もさ」
 そちらもだというのだ。
「作ってるのが男の人が多くて」
「ああ、それでなんですね」
「味が濃くてさ。美味かったけれど」
「それで先輩のお料理もですね」
「女の子らしいって言われたことはないな」
 苦笑いと共に言う薊だった。
「飯盒とかで炊くの得意だしな」
「それ陸自さんでしょ」
 朱美は飯盒と聞いてこちらの自衛隊の名前を出した。
「それだと」
「だよな、キャンプの時もな」
「そうしたお料理得意なのね」
「刃物扱うのは得意だからさ」
 何処か薊らしいと言えた。
「野菜とか肉とか魚とか何でも切られるよ」
「じゃあお刺身とかも」
「ああ、捌けるよ」
「何かお寿司屋さんみたいですね」
 魚を捌けると聞いてこう言った伸子だった。
「それですと」
「かもな、とにかくさ」
「そうしたお料理は得意ですか」
「魚料理もさ」
 そちらもだというのだ。
「ついでに言うとあたし刺身大好物だよ」
「お酒と一緒にですね」
「ああ、日本酒だよ」
 笑顔で返した薊だった。
「この組み合わせいいよな」
「何か先輩ってそうしたお話も聞きますと」
「本当に女の子らしくないわね」
 苦笑いで言う伸子と朱美だった、薊の話を聞いて。 
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