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兵隊の集め方

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第一章


第一章

                       兵隊の集め方
 今この国の政府は悩んでいた。政府というものは悩み事が尽きないものであるが今回は何に対して悩んでいるかというと。国家には付き物の悩みであった。
「兵隊が集まらないな」
「困ったことです」
 首相が王に話していた。黒いスーツ姿の王が青いスーツの首相に対して話していた。
「軍事費もですが」
「財政赤字で減額しているのだな」
「そうです」
 これについても話す首相だった。周りの閣僚達も困った顔になって席に着いている。誰もが困った顔になっている。それもかなりである。
「ですが軍事関係もまた必要ですのね」
「何とかしなければならないのですが」
「何とかなるか?」
「それがまた」
 閣僚達は一斉に答えるが沈んだ顔であった。
「困ったことに」
「兵器は今はです」
 防衛大臣が話すのだった。
「何とか古いものを遣り繰りして使っていきますが」
「日本みたいな話だな」
 王はそれを聞いて腕を組んだ。そのうえで口をへの字にさせていた。
「それは」
「はい、あの日本軍ですね」
「自衛隊ですね」
 他の国では自衛隊は日本軍と思われているのである。彼等もそう認識しているのだった。
「あの軍隊もかなり古い兵器を遣り繰りしていますが」
「特に陸軍は」
「そんな話だな」
 王はまた言った。
「それだと」
「あの国は我が国よりは財政に困っていないのではない筈ですが」
「それでも軍事費は少ないらしくて」
「左様か」
 それを聞いてまた言う王だった。
「あの大国もこうした話では困っているのだな」
「その様ですね」
「我が国から見るとかなり高い兵器ばかり持っていますが」
「まあ日本には日本の都合があるのだろう」
 こう考えることにした王であった。
「そして我が国は」
「はい」
「その我が国です」
 若い王に一斉に顔を向ける。王は黒髪をオールバックにしており青い目の端整な長身を持っている。世界の王家の中でもとりわけ美形の王として知られているのである。
 その王に対して。銀髪で黒い目のその青いスーツの首相がまた話してきた。
「兵器も施設も問題ですがまず」
「将兵の数か」
「はい、極度に不足しています」
 これであった。軍隊も人がいなければ話にならない。兵がいなくては戦争にならないのだ。
 当然国も守れない。彼等もそれがわかっているのだ。だからこそ真剣に話す。
「補充率は七割を切っています」
「絶望的だな」
 王はそれを聞いてまた言った。
「そこまで少ないとだな」
「はい、それでですが」
 首相は再度述べてきた。
「その将兵の補充ですが」
「将校も不足しているのか」
「はい」
 それもだというのだ。
「将校についてはですね」
「どうするのだ?」
「とりあえず大卒で職にあぶれている者に好条件を提示して誘います」
 これが首相の提案であった。
「そのうえで下士官に部内試験を受けさせて昇格させます」
「それですが」
 だがここで横から防衛大臣が言ってきた。彼もスーツである。文官であるということだ。
「下士官は将校の仕事を厄介なことだと考えている者が多く」
「そうなのか」
 それを聞いて驚いた顔になる王だった。
「そんな考えがあるのか」
「そうです。ですから部内から上がる者は少ないのです」
「では。彼等の条件もよくしよう」
 首相は彼等に対してもこう言うのだった。
 
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