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『自分:第1章』

作者:零那
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『男』

母さんが帰って来んのは仕事が大変やったから。
そう勝手に思ってた。
男と居る方がラクやから子供らの事、更にどうでも良いようになったんやなって思ったら...
なんかもぉやってられんって気持ちになった。
それからは悪事も酷くなった。


島の警察じゃ手に負えんなって、高松の県事務所にも良く行くようになった。


京ちゃんと百貨店で大きな鞄にゴッソリ万引きしたり、波止場の船から魚介類やカニやら盗んだり逃がしたり。
ファミリープールのロッカーあさって現金盗んだり、酒も飲みまくってたし空き巣も毎日のようにやってた。
それが楽しかった。


自分のしたことが誰かに影響を与えてる。
それは、自分が存在してる証だった。
警察の人も、もっとシッカリ怒ってくれたら良いのに。
同情されても嬉しくない。
そんな生温い感情じゃ直らんよ。
いつまでも悪いことせなあかんなるやん。


そんな零那やけど、お年寄りが大好きで、自然が大好きで、たまに、お年寄りの話を聞きに行ったり聞いて貰ったりしてた。

その度にズキッ!とするんやけど...好きでこんなんになったわけじゃないんやけど...


母さんのせいにしてた。
そんなことも全部、お年寄りは解ってくれた。


だから、どんなに悪いことをしても叱られんのんよって抱きしめてくれた。
周りの大人が、親の代わりに愛情を与えたいって想ってくれてた。
でもそれは、愛情なんかじゃなくて同情としか想えず、素直になれずに反抗し続けた。

それでも、それでも、お年寄りの人達や警察の人達は温かかった。
被害者は別やけど。
そりゃもう『またオマエらか!!』って。
そう、そうやって怒鳴りつけて殴ってくれてたらマダ気持ちが楽になる。


小3の終わり頃、学校の裏の山に来いって、母さんから学校に呼び出しの電話が鳴ったらしい。
兄が言ってた男が居った。
最初からキショかったし全身で拒絶反応。
それに、いちいち今呼び出す必要ないし。
兄は何故か既に仲良くしてた。
姉も馬鹿みたいに懐いてた。


やっぱ零那はおかしいんか?
父さんは?
そんなキショイおっさんが父さん?
絶対嫌やし!!
同じ家に住むとか絶対無理!!
『生理的に無理!!』ってのを全身で感じてたんやなと思う。


それまでにも何回か、高松行った時に県事務所の帰りに、知らんオッチャンが御飯連れて行ってくれたりした。
それも男やったんやろうけど今回ほど拒絶反応出る奴は居らなんだ。
何故かは解らんけど今回の拒絶、半端ない。 
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