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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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DAO:ゾーネンリヒト・レギオン~神々の狂宴~
  第二話

「大まかな説明は……?」

 水色の長い髪の毛をたらした、白い陣羽織の少女が問う。こちらの世界でも相変わらずバストサイズは大きい。

 だが今はそんなことを気にしている場合ではない。というかもう気にしないと決めた。コハクは目の前の少女……ハクナの問いに答える。

「小波さんから聞いた。えっと……六門魔術、だっけ?」
「はい。この世界では、それを中心にしてレベルアップや戦闘が行われています。大まかにはALOの魔法と同じだと考えてください。独特の設定とかも聞いてますか?」
「確か、六門魔術の使用レベルが一定になると位階上昇、レベル上限(キャップ)の増加だっけ?」
「その通りです。今コハクさんは第三階位、レベルは40という特別措置をとっています。ステータスは小波さんの好み、というかなんというかで成り立っているので、ちょっと使いづらいかもしれません。場合によってはステータスの再設定はできますので、その時は言ってください」
「わかった。今のところ問題なさそう」

 すでに先ほど、体は動かしている。さすがにSAO時代の壊れ性能、とはいかないが、少なくとも現実世界の体の二倍ほどは高機能だ。

 頷いたコハクに、ハクナも頷き返して続ける。

「属性は地・光複合……セモンさんとお揃いですね」
「セモンと……」

 柔らかく微笑むハクナ。だがその眼が穏やかではない。この一件温和に見える少女が、地味に恋愛面に関しては他人を茶化すことが好きなダークサイド人物であることが分かったのは結構最近である。

「《ギア》は今の所所持していませんね。余剰スキルポイントがまだ少し残っていたので、ギアの部分に振ってみてもいいかもしれません。それと……」

 《ギア》とは、確かこの世界でプレイヤーやNPC問わず、住民たちの能力を決める要因の一つとなる特殊兵装のことだったはずだ。六門神によって異なるらしく、位階が上がれば上がるほど能力も強大になっていくらしい。以前カズから聞いたところによると、六門世界最強の六門神、《六王神》の保有する《ギア》は、巨大なゴーレムで、世界を破壊するほどの性能があるという。

 そこまで言って言いよどんだハクナは、SAO時代のウィンドウの開き方によく似た操作でアイテムウィンドウを開くと、その中から一本の槍を取り出した。大型の槍は柄や刀身が黒く、しかし刃の部分はサファイアを思わせる深い半透明の青だった。

「《冥刀・青乱》です。《七人の剣鬼》の一人、蒼凪が使用した槍で、ステータスは最高峰です。六門世界を囲む山脈の一か所、《北東の山》の、常時台風を巻き起こしている場所から発見された、最強の《冥刀》の一つ。小波さんが、あなたに渡すように、と」
「さしずめ《妖刀》ならぬ《妖槍》って言った所ね……分かった。ありがとう」
「ただ、ステータスの方に六門神が引っ張られてしまうので、扱いには気を付けてください」

 ハクナからそれを受け取ったコハクは、長大な槍を一振りする。槍は不思議な重力でコハクの手に納まっている。まるで、コハクに使役されているのは一時だけだと言わんばかりに。本質からその手に納まるのは拒否しているように。

「さ、行きましょう」
「はい」

 コハクとハクナは、足をそろえて歩き始めた。


 目指すのは、世界の中心、《白亜宮》。


 ***


 コハクたち一行が六門世界こと《ジ・アリス・レプリカ》にダイブすることになったのは、あの謎の《宣言》から一週間ほど後だった。チェックに次ぐチェック、様々なアバターの強化を経て、いよいよ今日、初ダイブである。

 ダイブの直前に栗原小波は言った。

「良いかい、気を付けるんだ。《白亜宮》の中はそう簡単に通れない。今は全世界に《レギオン》が出回っているからそこそこ警備は薄いけど、だれもいないわけじゃない。唯一の救いは、《六王神》がいない事か……」

 そう、現在《六王神》はVRワールド侵攻に出ており、六門世界にいない。それは同時に、全世界のVRワールドが、圧倒的な破壊力を持つという彼らによる蹂躙の危機にさらされているという事なので、一概に喜ぶべきことともいえないのであるが。

「とにかく、無茶はしちゃダメだよ。何かあったら必ず退避する事。こっちも全力でサポートするからね」

 そんな力強い声援をもらって、一行は六門世界にダイブしたのだった。前回の敗北によるダメージなのか、一つのダイブポイントからダイブできる人間は最大で二人になっていた。小波はダイブポイントを新設し、コハクたちを二人一組に分けた。

 コハクは、ハクナと一緒に行動することになった。ハクガ・カズが一組に、ハザード・リーリュウが一組に、そして《師匠クラス》と呼ばれる、コクトとラーヴェイが一組に、シャノンと刹那の兄妹は二人で行動することになった。シャノンと刹那のコンビだけ六門世界になじんだ存在がいないが、そこは「刹那がどうにかできる」らしく、とくに問題は無いようだった。

 
「可能な限り最短ルートを進みましょう。とりあえず今いるのは、小波さんが新設したダイブポイントのうち、東側にあるポイントです。次の街は光属性の六門神がそこそこ多くいる街だったはずですので、そこにいる魔術師の方にすこしコハクさんの強化をお願いしましょう。NPCの方ですけど、《師匠クラス》と親交があるみたいで、私も……正確には兄様もなんどかあったことがあります」

 兄様、というのはハクガのことだ。一か月前まで、ハクナとハクガはいわば二重人格の様な存在だったらしい。もともとは双子の兄弟だったらしいが、何らかの事情でハクガの意識がハクナに移転し、仮想世界にダイブする時だけハクガが出てきていたという。一か月前の敗北後、ハクガの精神は元の肉体に戻り、数年間寝たきりだった彼の肉体は意識を取り戻したという。

「わかった。案内お願いね」
「分かりました」


 ***


「どうだ、ハザード。この世界のアバターには慣れたか?」
「ああ、なんとなく」

 リーリュウに問われたハザードは、彼に頷き返す。

 ハザードに与えられたのは、第三位階Lv40のアバター。属性は闇・火・風の三重属性。武器は大ぶりの刀身をもつ大剣で、名称は《カラドボルグ》。能力は攻撃力および攻撃範囲の強化、という事だった。
 《ギア》はもはやおなじみとなった相棒の《ザ・バーニングバーン・ドラゴン》の《レノン》。今は小型化した状態で肩の上に泊っている。

 大まかな説明をしたリーリュウが言う。

「とにかく急ごう。今いるのは西の出発点だ。次に行くべきはギルド都市だな。西部劇風の街で、そこそこ規模が大きい。そこで準備を整えて、合流点の中央都市に急ぐぞ」
「分かった。……ソードスキルが使える、とは聞いたが、ユニークスキルの専用ソードスキルはどうなんだ?」
「……小波さんの話によると、最初は使用ができなかったらしい。だが、前回の敗北以後、使用が可能になったという報告を受けている。……もっとも、俺達は使用できていないから、多分SAO時代にそれを使っていたプレイヤーでないと使えないのではないかとのことだった」
「そうか」

 彼の言葉にうなずくと、ハザードとリーリュウはその《ギルド都市》へ向けて出発した。


 ***


「……こっちです、お兄様」
「ん、わかった」

 目を閉じた刹那が、彼方を指さす。北東のダイブポイントからダイブしたシャノンと刹那を待っていたのは、奇妙な既知感。特に刹那はそれが顕著で、先ほどから何度もこうして、ナビゲーターの様な事をやっている。

 シャノンは、この世界が何なのか、薄々感づいていた。

 恐らくは、刹那の故郷だ。彼女はもともと人間ではない。誰かに創られた『空想の存在』が質量をもった者。今はシャノン/陰斗の空想によって上書きされているが、もともとは別の誰かの空想だったはずだ。

 恐らく、この世界を支配する者が、その『誰か』なのだ。そして、この先に進めば、シャノン自身も何か恐るべきことに遭遇するであろうという予感がした。だが、それを恐れていてはいけないだろう。

「……僕は、《変わらない》以前の僕とは違うのだから」

 陰りを振り払うと、シャノンは妹の指示に従って歩き始めた。 
 

 
後書き
 今回は出発回。短め。

刹「ここ最近短めですね」
 
 うーん。ネタ切れでね。《白亜宮》に入ってからはできてるんだけどさ、そこまでが結構手間取るのよね。

 ここでアンケートというかキャラ募集です。《ボルボロ》一行が、旅の間に遭遇する六門神を募集しちゃいます。名前・性別・属性・六門魔術の本質・外見・性格や喋り方・位階(上限4)・その他の情報などの様々なデータを書いて送ってきてください。窓口はメッセージ欄です。

刹「メッセージ欄が使用できない非会員の方は感想欄をご使用ください」

 よろしくお願いしま~す。
刹「それでは次回もお楽しみに」 
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