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自殺の後で

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第二章


第二章

「た、助けてくれ!」
「ひ、ひいいいいいいっ!」
 その怪物に亡者達が次々と捕らえられそのうえで頭から貪り食われる。小早川はそれを見て血相を変えて血の池の中を泳ぎそのうえで何とか出たのであった。
「これが血の池か」
 そうしてあらためて血の池の恐ろしさを知ったのであった。
「とんでもない場所だな。長居するものじゃないよ」
 こう言いながらあてもなく歩いていた。すると向こうから馬鹿でかい刀を持った鬼達が迫って来た。
「さあ、悪い奴等はここか!」
「容赦はせんぞ!」
 左右にいる亡者達を切りながらそのうえで小早川の方に向かって来る。小早川はその彼等を見て血相を変えたがそれは鬼達が気付いたのと同時であった。
「待て、そこの顔の長い奴!」
「貴様も切ってやる!」
 言いながら小早川の方に向かって来る。
「そこを動くな!」
「ばらばらにしてやる!」
「き、来たっ!」
 小早川はその鬼達が迫るのを見てやはり血相を変えて逃げ出した。そうして二つの巨大な山の間に入った。するとそこに入ると。
 今度はその山が両方から迫って来る。押し潰そうというのだ。彼は必死に走ってそのうえで間一髪難を逃れた。だがその後ろにいる亡者達は押し潰され呻き声が後ろから聞こえてきた。
「あともう少しで」
 死んでいた。それはわかる。しかしその死んだ筈の亡者達がすぐに蘇るのもまた見るのだった。
 山が開くとそこから押し潰された亡者達が出て来た。彼等はすぐに元の身体に戻る。そうして今度は燃え盛る嘴を持った鳥についばまれていた。
 目をくり抜かれ脳をほじくり出される。そうした責め苦を受けていた。小早川の方にもその鳥達が迫り彼は捕まってしまった。そうして上から針の山の落とされてしまった。
 まずは背中を貫かれる。死にそうになる程激しい痛みであった。だがそれはすぐに終わりやって来た鬼達にその針山を無理矢理歩かされるのだった。
「歩け!」
「歩かないと撃つぞ!」
 その手には金棒がある。その鬼の金棒だ。彼等は実際にそれで周りの亡者達を次々と殴り飛ばしていく。殴られた亡者達は血の塊となって吹き飛ばされていく。
 小早川はその彼等からも必死に逃げる。すんでのところで痛みを堪えて頂上まで登った。しかしそこからすぐにその鬼達に捕まって一番下まで投げ飛ばされる。そこからまたその痛い針の山を登らさせられるのであった。
「さあ、行け!」
「登れ!」
「そんな、最初からだなんて」
 小早川は登らさせられることに思わず嘆きの声をあげた。
「折角登ったのにまただなんて」
「永遠に登るのだ」
「罪が消えるまでのな」
「自殺が罪なんて知らなかったんですよ」
 彼はここで遂に泣き出してしまった。
「それなのにこれは。あんまりじゃないですか」
「あんまりだというのか?」
「これが」
「ええ、そうですよ」
 泣きながら鬼達に抗議する。
「こんなことなら生きていた方がずっとましですよ」
「生きていた方がか」
「そう思うのだな」
 後ろにいる鬼達はそれを聞いて述べてきた。
「その思い偽りはないな」
「そうだな」
「ええ、ありませんよ」
 泣き叫ぶ言葉はそのままだった。もう針の山の上にへ垂れ込んでいる。もう一歩も進むことができない、まさにそういった有様であった。
「こんな目に逢うんならずっと生きていますよ」
「よし、その言葉確かに聞いた」
「今確かにな」
 鬼達は彼のその言葉を聞いてあらためて頷くのであった。
「それではだ」
「起きるがいい」
 鬼達の言葉が変わってきた。
「そして二度と馬鹿なことをしようとするな」
「いいな」
 これが最後の言葉であった。小早川が目覚めるとそこは電車の中であった。何時の間にか彼がいる街の最寄の駅であった。丁度電車に乗ったその駅に着いたところであった。
「あれっ、生きてる」
 まずこのことに気付いたのであった。
 
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