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dark of exorcist ~穢れた聖職者~

作者:マチェテ
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第21話「アイリス・アリシアペア 近づく“殺戮”」

―――【ロシア・ウラジオストク】


アイリスとアリシアの2人は、曇った寒空の下、目的地を目指して歩いていた。

「ねぇねぇアリシアさん、さっきクリス君から電話がきたんだけどね……? アリシアさん?」

アイリスは携帯電話をアリシアに見せながら話しているが、アリシアは惚けた顔をしてボーッとしている。
惚けた眼をして涎まで垂らしている。いわゆる「危ないことを考えている奴」の表情だった。

「………………………へっ?」

アリシアはようやくアイリスに話しかけられていることに気づき、慌ててアイリスの顔を見た。

「アリシアさん? 大丈夫?」

「ッ! だ、大丈夫大丈夫! ちょっとアイリスちゃんの可愛い顔を見てボーッとしてて……」

「? 私の顔ってそんなに面白いかなぁ?」

アイリスは首をかしげて、頭の上に?を浮かべている。
その表情を見たアリシアは、顔を赤くしてアイリスから目を反らす。


「(私の顔って面白いかな? う~ん………)」













「(うはぁぁぁやッばぁぁぁぁああ! アイリスちゃん可愛すぎでしょぉぉぉ!!
心配してくれてる時の上目遣いとかもう最っ高おぉぉぉ!!)」

アリシアの頭の中はやはりヤバかった。







「あっ、さっきの話なんだけど、クリス君から電話がきたんだよね♪」

心底嬉しそうな笑みを浮かべてアリシアに携帯電話を見せた。
携帯電話の画面には、クリスからの着信の履歴が映っていた。

「へぇ~クリスから? 何て言ってたの?」

「お仕事終わったって。あ、あとね、ブライアンさんに会ったって」

「はあぁぁぁぁ!?」

ブライアンの名前が出た瞬間、アリシアは嫌悪感に満ちた顔になった。
アリシアの大声を聞いた通行人が何人かこちらを見たが、アリシアは構わず頭を掻きむしる。

「あんのクソ兄貴~~今さら何しに……つーかなんで妹であるあたしじゃなくてクリス達のとこに……」

「確かにブライアンさんはよくどこかに行っちゃうけど、友達思いのいい人だよ?」

「……アイリスちゃんって本当いい子よね……」









「でもね………あのクソ兄貴は、あたしを置いて勝手に……」


アリシアはそれ以上の言葉を言わずに再び歩き出した。

「アリシアさん?」

アイリスはアリシアの後を追いかける。



「(そういえば………私はアリシアさんやブライアンさんのこと、何も知らない……)」

共に仕事をしたり、話をしたりする機会は多いが、知らないことが以外と多い。
アリシアとブライアンのことも。パトリックのことも。キリシマのことも。フランのことも。
上司であるアルバートのことも。悪魔であるべリアルのことも。
パートナーであり、恩人のクリスのことも。

現在(いま)の姿を知っていても、仲間達の過去に関して知らないことだらけだった。

「(いつか聞けるといいな……)」






















―――同時刻


とある建物の裏路地。
そこには、黒Yシャツに灰髪の男が、疲れた様子で座り込んでいた。

「クソッ………屑共が……この俺を……よくも…………」

フォカロルだった。
キリシマとの戦いを終え、フランスからロシアまで逃げてきたのだ。
右腕と腹には、パトリックの長槍によってつけられた刺し傷が残っていた。
出血は既に止まっていたが、傷が深く体力の回復で手一杯の状況に陥っていた。


「おいおい、無様だなぁフォカロル?」

フォカロルの目の前には、いつの間にかニット帽を被った青年が立っていた。
ニット帽を被った青年の眼は、薄暗い裏路地でも分かるほど赤く光っている。

「…………何の用だ、グラーシャ・ラボラス」

「なんだよ、折角会いに来てやったのによぉ………ぶっははは!!」

「何がおかしい? あ?」

「わりぃ、ぶっはは、悪魔狩りに腕と腹刺されるとかマジウケる……ぶっくくくく……」



「あぁ、そうだ。フォカロル、気づいてるか?」

「…………近くに悪魔狩り……2人……女か?」

「そうだ、つーわけで行ってくるわ~」



グラーシャ・ラボラスは指をパキパキと鳴らし、ゆっくりとした足取りで裏路地を出た。
その後ろ姿を、フォカロルは憎悪に満ちた顔で見つめた。

「クソッ、あの屑共を殺し損ねていなければ…………!」

フォカロルの脳裏に、自分を苦しめた2人の悪魔狩りの姿が浮かんだ。











「なーんだ、超弱そうな悪魔狩り共だなぁ」


アイリスとアリシアのもとに“殺戮”が迫っていた。 
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