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魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者

作者:blueocean
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後日談最終話 それぞれの明日へ………

11月………

「零治君、私決めたで。中学卒業したらそのままミッドに引っ越す事にする。あっちに生活の基盤を置いて、みんなと一緒に働く」

放課後、はやてに話があると言われ、ウェンディに鍵を借り、生徒会控え室にいた。

そこで言われたのは進路の話だった。
アニメでも中学を卒業してそのままミッドに行っていたが、やはりこの世界のはやても同じ気持ちなようだ。

「そうか………ならはやては中卒って事だな」
「うぐっ!?」

まるで矢が胸に刺さったようなリアクションをとるはやて。

「零治君その言葉は禁句やで………」
「何を言ってるんだ?どう転んでも確実に言われ続けるだろ。ミッドでは偉くても地球では………」
「ちょっ!?何で肩を優しく叩くんや!?」

俺の手を払い、うーうー唸るはやて。

「ええもん!もう地球に帰らへんからええもん!!」

と拗ねてしまった。
結構珍しい一面に俺のいたずら心はヒートアップ。

「そうか………もうはやてと会えないとなると寂しくなるな………」

と演技で後ろを向き、本当に寂しそうに見せ、はやてをからかってみた。

「ホンマ………?」
「おう、だってはやては大事な相方だからな………」

なんて調子に乗っていたら………

「私も実は………そう思ってたんよ………」

と真面目な声で後ろから抱きついてきた。

「は、はやて!?」
「零治君、暖かいんやね………気持ちええわ………」

そう言って離れようとはしないはやて。
不味い、大いに不味い。生徒会の控え室とは言え、誰が来てもおかしく無いのだ。特にダメっ子達に見られたら確実に星達に殺される………

「はやて、俺が悪かった!こんな所もし星達に見られたら………」
「ええで、そうなったら私がもらってあげる」
「は、はやて………一体どうしたんだよ………」
「………」
「………もしかしてやっぱり未練があるのか?」

そう言うとそっと離れて俯くはやて。

「………本当は私も高校へ行きたい。水無月先輩との約束もあるし、もっと零治君達と楽しい学校生活を過ごしたい。けど………」

そう言ってポケットから小型機器を取り出すはやて。

「これは?」
「ミッドのニュースを受信出来る機器なんやけど、これを見てみてくれへん?」

そう言って展開したディスプレイには新聞の様に一面大きく記事が載っていた。

『バリアアーマー完成。管理局の歴史を大きく変える快挙。天才科学者クレイン・アルゲイル氏。本格的に投入は来年中の予定。テスター募集中』

「なっ!?」
「どうしたん?もしかして知っている人なんか?」

しまった、つい大きく驚いてしまった。
まさか違法研究していたクレイン・アルゲイルがこんなニュースの一面に出るなんて………
アイツって次元犯罪者じゃなかったのか?

「こうなってくると魔導師ランクで優遇されて来た者達関係なく、ますます実力主義になりそうなんや。上に行くには中途半端な気持ちじゃ行けへん」
「はやて………」
「だから私はミッドに行く。私の為に………私達家族の為に!」

………はやてはどうしても闇の書事件の事を異常に意識しすぎていると思う。
確かにヴォルケンリッターに襲われた者も多いし、クロノの父クライドさんのように闇の書のせいで大事な家族を失い、その怒りをくすぶらせている者もいるだろう。
事実、この前もはやてを襲おうとして逆に検挙された人の話を神崎から聞いた。

そんな人達に少しでも報いる為、早く家族全員平和に過ごす為に頑張っている。
そんなはやての思いを曲げるような事は俺には出来ない。

「………分かった、寂しいが同じ学校生活は中学校までだな」
「そうやなぁ………まだ零治君達とバカやっていたい気もあるんやけどね………」
「頑張れよ、同じ家主として応援してるし、何かあれば協力するから」
「………ありがとな零治君」

その後、俺達は日がくれるまで思い出話をしていたのだった………






12月………

「零治………」
「フェイト、どうしたんだ?」

12月、いきなりフェイトに呼び出され、2ーAにやって来た。
今では元2-Aなので入りづらく、今の2-Aが居たらどうしようと心配でこっそり覗き込んでいたのだが、そんな心配も杞憂でフェイトしか居なかった。

「んと、零治に言いたいことがあって呼んだの………」

人気のない静かな教室に男女2人だけと言う絶好の告白場面。
冗談を言わないフェイトなだけにそう思えてきた。

(どうしよう………俺には星達がいて………)
「零治………」
「は、はい!!」
「私ね、実はクローンなんだ」
「は?はあ………」
「いきなりそんなこと言われても信じられないよね………だけど本当なんだ」
「へぇ~」
「へぇ~………って反応薄いね」

「いや、だって別にクローンって言われてもフェイトはフェイトだし何も変わらないからな………」

というより俺の周りには戦闘機人だってうじゃうじゃいるし、スカさんもクローンだもんな。
そして何よりフェイトがクローンだって知っている以上、素っ気ない反応になっても仕方がないと思う。

「………零治って本当に変わってるね。エリオの時もそう思ったけど………」
「ってかフェイトだけ違う反応ってのも流石に酷いだろ」
「そう言えばそうだね」

そう言って互いに笑いあった。

「ねえ零治、私中学卒業したらミッドに引っ越す事に決めたんだ。執務官として私みたいな子や泣くような思いをしない様に事件を調査してバンバン検挙していこうと思ってる!」
「そ、そう………」

フェイトが気合いを入れるとなんか空回りしそうな気がするな………

「だから最後に言っておこうと思って………零治………」
「ん?」
「私は零治が好き。優しくて、困ってる人を助けるヒーローみたいで、みんなを楽しませて………まるで暖かな光で包む太陽みたいなそんな零治が私は大好きです」

「………」
「零治?」

「冗談………だよな?」
「ふふ、変な顔………」

フェイトは冷静にそんな事を言うが、言われた本人は驚きで未だに頭の中は大混乱中なのだ。

「フェ、フェイト………だけど俺は………」
「分かってるよ、星達が好きなんでしょ?」
「ああ………ってえっ!?何で知ってるの!?」
「乙女の感………かな?」
「はやてみたいな事を………」
「でも本当だよ。いつも通りに見えるけど、雰囲気が違ったから」
「………もしかしてみんなにバレてる?」
「教えない~」

といたずらっ子みたいに言うフェイト。
そんな姿を見て、何だか力が抜けた。

「………まあいいや。………だけど言いふらしたりはしないでくれよ」
「分かってるよ零治。ただ私の心のけじめとして言っておきたかったんだ。これで私も前にちゃんと進める」

そう言ったフェイトは清々しく、かなり大人びて見えた。

「フェイト、お前絶対に良い女になるよ………」
「心変わりするなら私が好きな人を見つける前にね」

そう言って互いに笑いあったのだった………









「レイ、こんな遅くに何処に行くのですか?」

12月中旬、学校ももう少しで冬休みと受験生にとっては重要な時期である今日この頃。

家はライ以外はそれなりに成績が良いので問題なかったが、ライは見事に引っ掛かりそうで、2学期の期末テストに向けて猛勉強をしていた。
そんな日の夜だった。

「いや、珍しく士郎さんから連絡来てさ、『ちょっと大事な話があるから来てほしい』って呼ばれたんだよ」
「………」
「星?」

俺の言葉を聞いて固まる星。
目の前で手を振っても反応が無い。

「星!?おい、しっかりしろ!!」
「レイが高町なのはと………」
「星!?や、夜美!ちょっと来てくれ!!」

そんな星を慌ててやって来た夜美に任せ、俺は急いで高町家へ向かった。







「何ですかこの空気………?」
「なのはと親父が出している気だ。なのはもそれを前にしても屈しない。成長したな………」

と感心する隣の恭也さん。

「ごめんね零治君、本当は零治君の話も聞いて決めるって話だったのに、2人とも我慢できなくて………」

そう言って申し訳なさそうに言う美由希さん。


あの後、急いで高町家に行けば既に修羅場状態。
挨拶も忘れ、為すがままに高町家の剣術道場に一緒に連れてこられた。

そして道場の中心で向かい合う、士郎さんとなのは。
士郎さんは道着と木刀を持っていて、なのはでバリアジャケット着て、レイジングハートを構えてる。
今にも一触即発の雰囲気だ。

「お父さん、私、絶対に引かないよ………私、自分の魔法の力でみんなを守りたいの。はやてちゃんやフェイトちゃんと共に………」
「そう言ってまた無理をして同じ事を繰り返すのか………?大怪我で皆を心配させ、自分自身も空っぽの人形みたいになったあの時みたいに」

士郎さんが重い口調で話す。
あの時とはなのは撃墜事件の事だろう。スカさんが起こした事件だけに俺も何か責任を感じる。
今は立ち直っているが、その時のなのははかなり大変だったのだろう。

「本当は管理局なんかで働いて欲しくはない。私や恭也みたいに危ない仕事ではなく、普通の女の子として人生を過ごして欲しかった………」
「でも私には魔法がある」
「ああ分かってる。なのはも私と似て頑固だからな。言ったら中々曲げないだろう………だから管理局で働く事は反対しない。だが本格的に働くのは高校卒業してからでも良いだろう。フェイトちゃんやはやてちゃんと一緒である必要も無いはずだ」

確かに士郎さんの考えには俺も賛成だ。
はやてみたく管理局の上を目指している訳では無いなのはにとって今直ぐに管理局で働く必用無いと俺も思う。

「ううん、私も目標が出来たの。私の今まで体験した事件、事故………色々と経験した様々な出来事は他の魔導師達の糧となると思ってるの。私は教導官として私みたいな人を出さないために指導したいの」
「だったらなおのこと高校を卒業してからでも………」
「ううん、私だけ置いてかれるのは嫌。私は負けず嫌いだから、お兄ちゃん、お姉ちゃん、お母さん、そしてお父さんに似て………」
「そうかなら………」
「うん、オハナシだね!!」

そう言ってそれぞれ持っている武器を構える2人。

「………なのはのオハナシは親譲りか………何で最後にそう言う結論に至るんだよ………」
「あはは………」
「まあ武芸の家訓と言うことで………」

兄と姉も似たような経験があるのか苦笑いする2人。

「行くぞなのは!!」
「うん!!」

そう言って親子の対決は始まった。




「どうした!!そんなものか!!」
「くっ!?」

バリアジャケットを着て、レイジングハートを展開していると言っても魔法は一切使わないなのは。
それにしても初めて見るが、とても人の動きじゃないぞ士郎さん………
瞬間だけど動きが速すぎて目で追えない時がある。

それでも御神流は使っていないとの事なので本当に驚きである。

「父さん、引退したとは言え、まだあれだけ動けるんだな………」
「まだ私も時々しか勝てない位だからね」

やはり超人家族というのは間違いじゃなかった。
御神流の技は使っていないがなのはは受け止めてるのに精一杯といった感じだ。

「そらそら!!」
「くっ………!!」

歯を食いしばり、体が吹っ飛ばされないように地面に力を入れて受け止め続けるなのは。

「なのは………」

士郎さんの攻撃を受け続けてもなのはの目は前を向いたまま心は折れない。

「頑張れ………」

そんななのはを見ていて自然と言葉が溢れた………





(流石お父さん………)

鋭い攻撃。これほどクロスレンジで戦える人はシグナムさんやフェイトちゃん位しか知らない。

(でも、私は負けない………)

はやてちゃんもフェイトちゃんもそれぞれ目標を持って自分の進路を決めたんだ。
確かに高校を出てからでも遅くないと思う。だけど2人に置いてかれるのは嫌だ!!

(だからこそ………お父さんに勝つ!!)

そのチャンスは………ここ!!





「なのは………!!」

事は一瞬で終わった。
なのはは、士郎さんの絶え間なく続いた攻撃を耐え、ブランクのある士郎さんが疲労を見せた瞬間、レイジングハートで突きを繰り出した。

攻撃の後のカウンターに近い、一撃。俺も完全に入ったと思ったのだが………

「惜しかったな………」

士郎さんはなのはの考えを読んでいたのか、その疲労を見せた攻撃はフェイントでなのはは見事にかかってしまった。

「………」
「なのは………」

膝と手を突き、俯いたまま顔を上げないなのは。悔しさと情けなさで顔を上げられないのだろう。

「本当に惜しかったね………」
「ああ、だが………」

「約束は約束だ。なのは、諦めて高校に進学してもらうぞ」
「士郎さん!!」

そんな慈悲の無い言葉に思わず声をあげてしまった。

「………零治君、何だい?」
「あの一撃でなのはの覚悟は分かっただろう?認めてはくれないのか?」
「………ああ。だがやはり駄目だ。なのはの覚悟も気持ちも分かったが、それでも高校には行ってもらう。それからでも遅くない」
「だけど………!!」
「………零治君、これ以上文句があるなら剣で語ろう。剣士にはそれが一番だ」

そう言って士郎さんは道場に立て掛けてある木刀を俺に投げてきた。
後言っておきますけど、俺剣士じゃなくて一応魔導師………

「恭也さん………」
(ごめん………)

手を合わせて申し訳なさそうに謝っている。
隣の美由希さんも苦笑いしてその場にいる。
どちらも止めに入ってはくれないようだ………

「はぁ………」

小さくため息を吐き、なのはを見る。
さっきまで俯いていたなのはは驚いた顔でキョトンと俺を見ていた。

「なのは、本当なら俺も恭也さんと同じだ。高校へ行ってからでも決して遅くはないと思う。だけどさっきの一撃でお前の気持ちは大いに分かった。………だからこそ俺もなのはに協力する」
「零治君………」

そう言って俺は再び士郎さんと対面する。

「士郎さん、行きます」
「ほう、抜刀術か………」

士郎さんが言う通り、俺はいつもと同じように左腰に木刀を差し、抜刀の構えをした。

普段、剣を振っていると言っても魔力無しの状態じゃ士郎さんの御神流にはとても構わないだろう。
だったら元より玉砕覚悟だ。

「ならば私も………」

そう言って士郎さんは俺と同じ様に腰に木刀を置き、抜刀の構えをする。

抜刀術対抜刀術。
どちらが速いかで勝負は決する。
ただ速いだけじゃなく、木刀を抜き、斬る動作がいか速いかが鍵となってくる。
元々抜刀術は返し技だ。いかに速く動いてもそれを返えす事が出来る。

だからこそラグナルを展開しないとついて行けそうに無い俺が唯一士郎さんに勝てる方法だと思ったのに………

「これは………本当にピンチかも………」
「さあ、いつでも構わないよ」

そう言って静かに集中する士郎さん。
何処にも付け入る隙が無い………

だからこそ勝負は単純。剣速がどちらが一番速いか。
………まあ俺も付け入る隙が無かったらの話だけど。

「だけど仕掛けてこないって事は、まだ希望はあるか………」

さて、後は剣と剣の速さの勝負。
御神流にどこまで通用するか………

「これから先、みんなを守る為にも………」

俺はもっと強くならなきゃならない………

「………何か目的が変わってきたような気がするけど、まあ良いか」

俺の力を試す!!






勝負は一瞬でした。
重い空気のまま、向かい合っていた2人。時間だけが過ぎていき、動いたのも同時でした。
地面を思いっきり蹴って、相手に向かっていった2人はほぼ同じタイミングで剣を抜き、相手に斬りかかりました。

その結果は………

「くそっ、腕がまだしびれてる………なんて攻撃………だけど………」
「………私の負け………かな?」

お父さんの木刀は手から離れ、お父さんから少し離れた所に転がっていました。
対して零治君は何とか木刀を離さず掴んでいましたが、腕がしびれているのか腕を上げられないみたいです。

「いい一撃だった。本当に強いね零治君」
「よく言いますよ。わざわざ自分のスピードを殺して抜刀術で勝負してくれたくせに………なのはの時みたいにあのスピードでもっとフェイント混ぜられて戦っていたら俺なんか相手にならなかったですよ」
「まあ別に娘と零治君を叩き潰そうとは思ってなかったからね」

やっぱりお父さんは本気じゃなかったんだ………
いくら魔法を使ってなかったからといって、バリアジャケットとデバイスを展開して簡単には負けないと思ってたけど………

私、まだまだだな………

「でも、良い経験が出来ました。ありがとうございます士郎さん」
「こっちこそ、久しぶりに楽しめたよ。良かったらまた勝負しよう。今度は両方とも本気でね」
「えっ?それってもしかして………?」
「零治君の魔法は剣技が中心となのはに聞いたのだが、それなら御神流でもいい勝負になるだろう?」

お父さんはイマイチ魔法の怖さが分かってないの………
いくら剣技が中心だからって普通の剣士に魔導師が負けたら管理局必要ないの。

「まあ時間があったら………俺もまたしたいですから」

そう言ってお父さんと零治君が固い握手をしました。
これが男の友情なんだ………ってあれ?何か忘れているような………

「そ、そうだ!!お父さん、零治君が勝ってくれたって事は私の管理局行きはOKって事だよね!?」
「ほう………人に変わってもらってOKだなんて、そんな覚悟で行くつもりだったのかなのは?………いい機会だ、お前も中学生だし、将来危ない仕事に付くつもりなら今のうちに鍛えるのは悪くないだろう」

………あれ?

「よし、兄や姉みたくビシバシしごいてやるぞ!!」
「お父さん!?何でそうなるの!?進学するにしても私の学力じゃ勉強しないとちょっと不味いのに………」
「いや、このまま受けてたら認めてもらえるんじゃないのか?『もう教える事は何も無い、頑張ってこい!!』って感じで」
「お父さん、バッチ来いなの!!」

そう言ってなのはは真っ直ぐ、士郎さんの所に向かっていった………





「なのはも受けるのか………」
「ご愁傷さま………」
「一体どうしたんですかね士郎さん?」

こうして戦いを終え、なのはに指導している士郎さんを見ながら恭也さんと美由希さんと話していた。

「多分零治君と戦って、現役の時の血が騒いだんじゃないかな?」
「そうだね、ああなったらなのはがしっかりするまで終わらないね」

なのは魔改造である。ただでさえ、魔王として恐れられているのにこれ以上ランクアップとか可能なのか?

「でも、良かったねなのは」
「そうだな」
「………2人はなのはの管理局行きには反対じゃないのですか?」
「反対だ」
「反対だよ」
「だったら………」
「だが、なのはの気持ちも覚悟も知った以上反対も出来ん」
「それになのはって滅多に我侭言わない子なのに魔法の事になると譲らない。それほど大事なんだよねなのはにとって………いつも良い子にって思ってるあの子が我侭言ってくれるのは実は嬉しかったり………」

そう言えばなのはは小さい時に士郎さんの大怪我が原因で皆に心配かけないようにと無理してたんだっけ?
その名残りが今でもあるんだろうな………

「だから俺達は何も言わないさ。さっきのなのはを見て心配無いと分かったからな」

良いな、兄妹は………
そう言えば加奈は………

「アイツは本当に管理局に入るつもりなのか………?」








2日前………

「兄さん、私、管理局に入る事にしたわ」
「………ぶふっ!?」

昼休み、ばったり会った加奈にいきなり言われて口に含んでいたお茶を思わず吹いてしまった。

「兄さん、汚い………」
「いきなり変な事を言い出すからだ!!一体何のつもりで………」
「まあそれはおいおい。私、先生に呼ばれてるからじゃ!」

そう言って加奈は慌てて行ってしまった。
それ以来俺自身色々………あったような………忙しかったような………とにかくすっかり忘れていた。

(せっかくだし聞いてみるか………)

「いいぞなのは!!」
「負けないの!!」

「………いつまでやるつもりだ?」
「あっ、零治君付き合わせて悪かったね。母さんがケーキ用意してるから家のみんなで食べてくれ」
「あっ、ありがとうございます」

俺はお礼を言ってその場を後にした………








「本当翠屋のケーキって美味しいな!痛っ!?」

今日は夜遅いからケーキは明日と言った筈なのだが、聞いてなかったのか食べているアギトに軽く拳骨を入れながら俺は携帯を操作していた。

「さて、出るかな………?」
「電話ですか?」
「ああ、加奈に」

「「「加奈………?」」」

いい加減加奈の名前を出したとき過剰な反応するなよ星、ライ、夜美………
そう思いながら自分の部屋に向かった………

『もしもし兄さん?』
「ああ加奈、今ちょっといいか?」
『何?』
「この前ちょっと話してた管理局に入るって話だけど………」
『ええ、そうよ。一応高校を行きながらのつもりだけど言ってなかったっけ?』
「ああ。何でそうする事にしたんだ?」
『一番の理由はあのバカのサポートかしらね。部隊に遊びに行ったりしていくうちに彼の部隊の人達ともすっかり仲良くなっちゃって………無限書庫って本当に凄いわね。ユーノに案内してもらってちょくちょく遊びに行ったりしてるわ』

もう初めて聞くことばかりなんですけど………
いつの間にかミッドに結構行ってるみたいだし、神崎の部隊の人達と仲良くなってるし、ユーノと顔見知りだし………

『まあ、やっぱり一番の理由は、あのバカの手助けをしようかなって』
「神崎の手助け………?」
『アイツね、去年のクリスマスいっちょ前に言ったのよ。俺はこのミッドの街が好きだ、ここで会ったみんなの事を守りたいそして………』
「そして………?」
『そ、それはともかく!!私も何回かついて行っている内に私自身もこの世界が好きになったのよ。だからこそ私も大悟の力になれたらなって………』

………もはや相思相愛状態だなお前ら。
何か複雑な気分ではあるが、今の神崎なら任せられる気がする。

「………まあ分かった。もう俺が口出す事じゃないな」
『そう。兄さんは大人しく地球で家族で暮らしてればいいのよ』
「そう………だな」

そう、それが俺が、俺達家族が望んでいた事だ。
だけど俺だけのんびりしてて良いのだろうか………?








2月………

「なあ桐谷、俺ってこのままで良いのかな?」
「いきなりなんだお前………?」

昼休み、少し寒いながらも暖かい日差しがあったため屋上のやって来た俺と桐谷。
俺は前々から思っていたことを思わず溢したのだった。

「みんながそれぞれの道を進んでいるのにこのままで良いのかなって………」
「管理局か………?」
「ああ………原作からかけ離れて、スカさんが起こした事件は無いだろうけど、それ以上に変化が大きすぎて分からない事に不安なんだ………」
「………珍しいな、零治から弱気だなんて」
「………お前くらいだよ見せるのは」

それに出来れば星達に情けない所はあまり見せたくない。

「………まあお前の気持ちも分かる、だが、お前は家族と平凡に過ごすと決めたのだろう?」
「まあ、そうだけど………」
「だったら気にしなくて良いだろう。皆自分で自分の道を決めたんだ。自分達で何とかするさ」
「冷たいな桐谷は………」
「二兎を追う者一兎をも得ず。欲張りすぎても駄目って事だ」
「………」

確かに桐谷の言う通りだが………

「まあよく家族で話すんだな………」

そう言って桐谷は屋上を後にした………









「第………何回だっけ………?まあいいや、家族会議始めます~」
「しまらねえな………」
「アギト、うるさい」

まあそんなこんなでその日の夜、早速食事を終えた後、みんなで話す事にした。

「ううっ………」
「ライ、そこ違います何度言ったら分かるのですか?」
「フェリア~」
「ライ、ここの違う。やり直し」

「この鬼………」

ライだけは今も2人の先生の前にお勉強中。
期末テストの結果は猛勉強の末、点数は中間位とライにしては大分良かった。………のだが、提出物を殆ど提出してなかったライは結果的に成績は今までと変わらず、3学期始めの課題テスト、期末テストでそれなりの成績を取らないと、進級テストを受けなくてはならない程切羽詰っていたのだった。

「で、話とは何なのだ?」
「お兄ちゃん、何かやったの?」
「あのさ、キャロ、最初にいきなり何かやったのは無いんじゃない………?」
「もしかして浮気の話………?」
「優理、俺がそんな奴に見えるか?」
「うん」

即答だった。

「いい加減話してくれよ。アタシ、この後のドラマ見たいんだけど………」
「俺の話よりドラマ………と、言いつつ俺も見たいんだ!手短に話すな」

そう言って一回コホンと咳払いして話を始めた。

「今、管理局は今までと随分と変わり始めている。前のバルトマン事件で最高評議会の老人達がクレイン・アルゲイルに暗殺され、新たな人物が元帥となり、管理局は今までとは違う方向に動き出している」
「それの一体何が問題なのだ?」
「クレイン・アルゲイルがこの前、管理局のニュースで出ていた」
「えっ………!?」

思わず言葉をこぼした優理だが、話を聞いていた皆が驚いていた。

「そしてそのニュースの内容が新型のバリアアーマーの開発、恐らく俺や桐谷のアーマー姿からデータを取り、完成させたのだろう」
「お兄ちゃん、それって………」
「まだ事件は終わってない。必ず何か起こす筈だ。それも前以上の事を………」

勉強をしていたライさえもペンを走らせる事を止め、俺を見つめている。

「だからこそ迷ってる、俺はこのままで良いのかって………」

そう言うと静まり返る部屋の中。
その静寂を破ったのは近くに居た夜美、そして勉強を教えていた星、勉強していたライだ。

3人そろって俺に向かってきて………

「「「バカ!!!」」」

拳骨を落とされた。

「なっ!?何すんだよ!!結構痛え………」
「レイは本当に学習しませんね、前にも言ったでしょう?私達も、です!」
「レイの事は僕たち家族の事だよ。俺がどうすればじゃなくて僕達がどうすれば良いかだよ!」
「いい加減学習せぬか馬鹿者!!」

手厳しい言葉を言う3人。
確かにまた俺は前と同じように自分だけで考えていたな………

本当に学習しないな………

「………悪かった。じゃあ改めて聞き直すけど、俺達はどうすれば良いと思う?」
「今のままで良いと思います」
「今のままで………?」
「うん、僕達は今まで通り普通に過ごして時々お手伝いすれば良いと思うよ」
「それで本当に………」
「我も賛成だ。我等は今まで通り影で動けば良い。別に周りに合わせる事はなかろう………」

3人は今まで通りで良いみたいだ。

「私はドクターの意思を尊重するが、それまでは今まで通りで良いと思う」
「アタシはマイスターに付いていくだけだ」
「わ、私もお兄ちゃん達に付いていきます。もう一人は嫌だから………」
「私は難しい事は分からないから任せる!!」

最後の優理は他人任せだが、それぞれ自分の意思でこれから先の事を決めたようだ。
なら………

「じゃあ俺達は今まで通りで良いか。何かあれば動くって事で」
「ええ、ちょっと楽天的って思われてもおかしく無いでしょうけど私達はそれでいいです」
「フリーランスだね!!」
「いや、少し違う気がするが………」

………まあ俺達はそれでいいのかもな。

(だけど、何かしらの準備はしとかないとな………)

「キャロ、ドラマ!!」
「!?アギト、テレビ!!」

そんな慌ただしい2人の声と共に、ドラマに集中するのだった………








3月………

『答辞!卒業生代表、有栖零治!!』
「はい」

とうとう卒業式。
会は順調に進み、ウェンディの送辞に答える番だ。
因みにウェンディの送辞はこれから自分がどんな学校にするのかを永遠と自慢話をするような感じで、最後に是非見に来てくださいとプレゼンみたいな感じで言った。

………まあ言い方はともかく、内容はそれほど悪くなかったので、保護者からもそんなに不評はなさそうだった。

「春の息吹を感じる今日この日、このような盛大な卒業式を開いていただき本当にありがとうございます。この一年間から今日まで本当にあっという間でした。今日で自分達はまた新たな人生の一歩を踏み出します。それによりこの学校から高等部に進む人が大勢いますが、この聖祥中学で経験した事を糧に新たな場でも活躍出来るように頑張ろうと思います。そして別の道に行く人達へ、これから先、色んな辛い事、苦しい事が多くあるかもしれません。そんな時は中学の事を思い出し、少しでも力になってくれればと思います。そして在校生の皆さん、今年の会長は少しやりすぎな所があるので皆でフォローしてくれればと思います。………最後にこの学校で生活出来て本当に良かったです。どうかこれからもこの学校をよろしくお願いします」

そう言って俺は送辞を終えた………








「終わったんだな中学校生活も………」

その日の深夜、誰もいないベランダで静かに夜空を見ながら呟いた。
卒業式後はミッドに行くなのは達3人の送別会をするため、翠屋で結構な時間までどんちゃん騒ぎをやっていた。
なので俺以外は疲れて深い眠りの中だろう………

「マスター、隣良いですか?」
「ラグナル、お前いつのまに人に………」
「機能オフにし忘れたマスターが悪いんです」

そう言って俺にお茶を差し出した。

「サンキュー。………なあラグナル、俺、しばらく1人で考えてたけど、やっぱり俺はこのままで良いとは思えないんだ………」
「マスター、また1人で何かするつもりですか………?」
「まさか。例えするとしても皆にきちんと話してからだ」
「ならOKです、1人で抱え込もうとしなければ私は何も言いません、生物は誰だって体は1つです。全てを抱え込もうとしても無理なんですから」

偉そうに保護者みたいな事を言うラグナル。

「………デバイスのくせに生意気だ!」
「あた!?」

軽く拳骨を入れ、マスターの威厳を保ちつつ、再び空を見上げた。

「………まあ取り敢えず相手が動くまでは静観かな」
「そうですね、余計な事はせず、一応直ぐに動ける様にしていれば良いと思います」
「ああ。………例え、何かがあったとしても先ずは家族会議だな」
「はい」
「………これからも頼むな相棒」
「はい、マスター」

そう言って俺達は暫く一緒に夜空を眺めていた………












「彼の容体は?」
「はい、以前よりも数値が高いです。やはりこのパターンが一番効果があるみたいです」
「だが未だに眠り続けているのか………」
「はい………」

薄暗い研究室に2人の研究者がその場に居た。

「どうしますクレイン博士?」
「………取り敢えずこのパターンで時間を置いてみるとしよう。なに、時間はたっぷりあるんだ、急ぐ必要はない」
「そうですね」

返事を聞いたクレインはそのまま、研究室の真ん中に立っているカプセルに向かった。

「もう少し協力してもらうよ、バルトマン・ゲーハルト………」

クレインはカプセルの中にいるバルトマンに優しく声を掛けた………  
 

 
後書き
これで平凡な日常は終了です。
次は新たな題名で続編に移りたいと思います。

………っとその前に有栖キャロの方をある程度投稿してからの予定です。
まだまだ続きますが、これからもよろしくお願いします。 
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