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戦姫絶唱シンフォギア/K

作者:tubaki7
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EPISODE2 戦士


~同時刻 同所~


何が起こったかわからない。ただ一つだけ言えるのは、今自分が人の姿をしていないということ。混乱する頭と腹部から来る激痛に耐えながら雄樹は目の前のノイズを殴る。拳に触れたノイズが灰と化し消えるのを見た緒川と了子は驚愕と同時に雄樹の身を案ずる。彼の身体に何が起きているのか。あの姿はいったい何なのか。

だが、今は考えている余裕はない。雄樹はこの場をなんとかしようと寄ってくるノイズを退け窓枠を飛び越えて二人に駆け寄る。


「五代君・・・・」


緒川の声に雄樹は無言でサムズアップを返し「大丈夫」と告げる。崩れゆく研究室から二人を脱出させたあと、ふと後ろを振り向く。

 ネフシュタンの鎧に近づく、少女の影。それを認識した時、雄樹の身体は動いていた。名前を呼ぶ了子の声が落ちてきた瓦礫に掻き消えたのも気に留めず少女に近づくが、突如走った直感にサッと跳び退くとそこへ数発の矢が刺さった。こちらへの攻撃か、はたまた危ないから来るなという警告なのか。

少女がニヤリと笑う。その笑みに善意はなかったとわかった頃には少女がネフシュタンの鎧に触れていた。まばゆい光がほとばしり、鎧が起動すると腹部にまた激痛がはしる。完全聖遺物同志共鳴しているのだろう。意識が一瞬跳びそうになるのをなんとか堪えて逃げようとする少女に駆け寄る。上へと道を拓くように光を放つと飛び上がっていくのが見え、逃がすまいとしがみつく。


「しつこい・・・・って、どこ触ってんだテメー!」


初めて聞いた声はまだ幼さの残る女の子だ。


『ごめん!…けど、それすっごく危ないものなんだ。ここから出たら返してもらえるかな!?』

「ンなことするかッ!」


地上に出た途端に蹴り飛ばされ地面に落下する。背中から落ち、肺の中の空気が押し出されて嗚咽を漏らす。見上げるとそれなりの高さから落ちたのにも関わらずあまり痛みという痛みはないのが驚きだ。


『・・・・・!』


初めて見た地上はまさに地獄絵図だった。破壊され荒らされたアリーナ内部には灰や瓦礫があちこちにひろがり深紅の液体がいたるところに飛び散っている。ノイズが溢れかえこの世の終わりともおもえるような光景の中に、響く歌があるのに気づく。オレンジと青の軌跡が駆け抜けてノイズを散らしていくのが見えて二つのギアが発動していることから戦っているのが風鳴 翼と天羽 奏とわかり向かおうと立ち上がる。そこで、視界の端に見知った顔があるのに気が付いた。

泣きじゃぐる男の子の手を引いてノイズから逃げる少女。昼間友人とこのライブを楽しみにしていた幼馴染。


『響ちゃん!』


跳躍し、ノイズの前に躍り出て殴る。灰になったのに安堵して振り向く。此方を見て怯える姿をみて今自分が五代雄樹の姿をしていないことに気が付き、とりあえず敵意がないことを示すように片膝をついて見上げ、サムズアップをする。それを見て感づいたのか響の警戒心がわずかながら緩む。


「もしかして・・・・ユウ兄・・・・?」


頷く間もなく、安堵したのを確認するやいなや観客席から跳んで次に戦う二人の元へと向かう。槍と剣を携え口ずさむ歌は戦いの歌。力と意志を乗せ、その歌には命が宿る。先ほどまでステージの上で生き生きと歌っていた二人の姿はなくそこには戦士として戦場を駆け抜ける戦士がいた。


『翼ちゃん、奏ちゃん!』

「その声、五代さん!?」

「雄樹!?…って、なんだその恰好?」

『えっと、俺もよくわかんなくて…それより、ここを切り抜けよう!』


意気込んで飛び出していくのはガングニールを纏い槍を携えた奏だ。いの一番に飛び出しノイズを貫いて無双する。次に翼だ。「あまり無理はしないでください。あなたは戦闘要員ではありませんので」と声をかけこちらも奏並みの大きな剣を振るう。その姿はまさに戦乙女、シンフォギアを纏うにふさわしいのだろうが、雄樹は内心その姿をあまり見たくはなかった。

ともあれ、そんなことを言ってる場合ではない。事態は深刻、今このノイズたちに対して有効な手段を持っているのは自分たちだけ。なら何とかしないといけないのだから、戦う以外の手段は存在しないのだから。駆けだして、拳を振るうと鈍い感覚のあとにノイズが灰と消える。こみ上げる感情を抑えて殴る、蹴るを繰り返しなんとかノイズを倒していく。大きなものは無理だとしても、こうやって自分と大差ないサイズならばどうにかなると対処していく。


「ヒュ~、やるねぇ」

「奏、ふざけてないで真面目にやろうよ!」

「固いこと言うなって。それになんかかっこいいじゃん?」


こういう会話ができるあたり奏はホント大物だなと剣を振るう。こういう緊迫した場面であったり危険な時でも“自分”というものをいつでも見失わない、だからこそ翼はそんな奏に憧れていた。



奏がいたから頑張れた。




奏がいたから戦えた。



奏と二人だから、どこまでも行けると信じていた。



だからこそ、受け入れたくなかった。この日起きた出来事と、“剣”として、防人として浅はかだった自分を。



そのせいで散らしてしまった命を・・・・。























絶唱――――それは装者の負荷を省みずにシンフォギアの力を限界以上に解放する歌。増幅したエネルギーを、アームドギアを介して一気に放出する。その力の発現はシンフォギアごとに異なるが、共通して発生するエネルギーは凄まじく、ノイズを始めとするあらゆる存在を一度に殲滅し得る絶大な効果を発揮する。しかし装者への負荷も、生命に危険が及ぶほどに絶大。反動ダメージは装者の適合係数の高さに伴って軽減される。が、それでも命の危機に及ぶレベルであることには違いない。


天羽 奏、享年17。死体は無く、そのことから彼女がシンフォギアを纏っていた事実を知るものは絶唱を歌ったのだと知る。風鳴 翼の証言からもそのことは語られており、二課の面々はその事実に胸を痛めた。


~一年後、PM14:00.都内外れの某所 天羽 奏墓石前~


雨の降り生きる中、黒い墓石が立ち並ぶ中に青い傘が一つ不釣り合いにある。端正な顔立ちにかつての幼さはなく、どこか張りつめたような印象が窺える。彼女がここに来る時は自分への戒めのためか、彼女の命日だけだ。

墓石は驚くほどに綺麗に整えられてあり、花束も添えられている。このことから誰かが定期的にここにきているのがわかる。


「あ、翼ちゃんも来てたんだ」


振り向くと、雨合羽を着た五代雄樹の姿が。手には線香とライターが握られている。翼は一礼すると、


「五代さんも・・・・」


気まずい。言葉が出ない。どう話せばいいのか、わからない。あの時以来彼とはまともに話していない。もともと苦手だったということもあるかもしれないが、聞けば自分のことを心配して何度も訪ねてきてくれていたとか。

考えた末、でたのは、


「身体、大丈夫ですか?」


だった。今はこれしか思い浮かばない。


「うん。了子さんも、あれ以来あの姿になってないならそんなに気に掛けることもないだろうってさ。でも前よりなんか了子さんの見る目がなんだかもの凄くぎらぎらしてる気がするんだよね・・・・」


それは多分研究対象として見られてるからなのではと言いかけやめる。携帯のアラームが鳴ったことでこの場から立ち去る口実ができたことに心底安堵する。


「では、私は仕事がありますので」

「うん。たしか新しいシングルのイベントだっけ。いってらっしゃい」


――――なんで、笑顔でいられるの。どうしてそんなに平気でいられるの・・・・!


こみ上げてきた黒いものを唇をかんで抑えつつ、その場を逃げるように立ち去った。

 やっぱり、苦手だな。そんなことをぼやきながら。























~PM16:00 某所 地下 認定特異災害対策機動部部二課~


「赤?」


本部に戻った雄樹から話を聞きながら弦十郎が繰り返して呟く。



「俺が見た戦士は、赤い姿をしてたんです。でも変わった時は白だった・・・なんとかノイズは消せるみたいでしたけど、本当は白じゃなくて、赤にならなきゃいけなかったんじゃないかって」

「ふむ…じつは了子君からの報告でな。アマダムが発見された遺跡にあった古代文字からそれに関することがいくつか上がってきたんだ」


液晶画面付きの大型デスクに了子からあがってきたものをいくつか表示する。古代文字がズラリと書かれたそのしたには彼女が翻訳したであろう言葉が記されている。


「邪悪なる者あらば 希望の霊石を身に付け 炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり・・・・か」


記された言葉を復唱する。そしてその先にある言葉に、雄樹は一際惹かれた。


「――――“クウガ”。現代で言う戦士を意味する言葉らしい。おそらく一年前に君が変わったとされるすがたがそうだろう」


クウガ。戦士。ノイズに対抗できるシンフォギア以外のもの。

でも――――


「・・・・雄樹君。俺は――――」

「大丈夫です!」


顔をあげ、笑顔でサムズアップする雄樹。


「俺の力が必要な時があるかもしれないってこと、ですよね。翼ちゃん一人だと大変だし、俺もできることがあれば手伝いますから」

「しかし・・・・」

「中途半端は絶対にしないです。最後までちゃんとやりとげますから」


その笑顔に、背負わせなければならないのか。また。


「・・・・すまない」

「謝らないでくださいよ。決めたのは俺ですから。それじゃ、ちょっと行ってきます!」


司令室を出てしばらく行ったあとで脚を止める。握った拳を片方の手で包みながら思う。


「・・・・やっぱり、あの感触は好きにはなれないかな・・・・」


握った拳が、痛々しく感じた。 
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