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IS学園潜入任務~リア充観察記録~

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超ダークホース 前編




「ここをこうして…そんでもって、ここを弄れば……」


 
 セイスとエムに留守番を押し付けられた俺ことオランジュは部屋の二台のパソコンに向き合い、ただひたすらキーボードを叩きながらほくそ笑んでいた。
 片方のパソコンは仕事用の物であり、監視対象である織斑一夏の様子が映し出されている。相変わらず美少女達を周囲にはべらせてることにイラッとくるな……昼食に置いてきぼりくらった今は尚更。で、俺はその映像を片目で眺めながらもう一台のパソコンでとある作業を行っていた。
 エムと出掛ける直前にセイスが『今日の新規データフォルダに入ってる画像、好きに改造していいぞってか魔改造しとけ』と言ってきたので、その言葉に従って早速その画像を開いてみたのだが、思わず吹き出してしまった…。



「後は文字を加えれば……よっしゃ、完成…!!」 


 
 手を加えなくても充分に凄まじい威力を誇っている画像なんだが、それをさらに進化させろときたもんだ。無論、張り切って引き受けましたとも。なにせ、その画像は…












「『テヘぺロ♪』やってるエムなんて、ネタ以外の何物でも無えな」









 そう、今日エムがここにやって来てセイスにやったという『テヘぺロ♪』での謝罪。その姿をこの部屋に設置しといたカメラがバッチリ捉えていたのだ…。
 毎度会う度に喧嘩染みた…それでいて楽しそうなやり取りをする二人。エムがセイスに仕掛ける日もあれば、セイスがエムに仕掛ける日もある。そして、どうやらセイスはこの画像をエムに対する武器に使うつもりらしい。で、その武器(エムの黒歴史)の強化(むしろ狂化)をセイスは俺に頼んだわけなのだが…



「いや、これは本当に会心の出来だわ…!!」



 パソコンの画像を魔改造するなんてこと、ただの一般人でさえ普通にできる。それを俺みたいな本職が本気でやったらどうなるのか……その答えを目の前の画像は物語っていた…




―――テヘぺロ♪状態のエムを全体が収まる程度にアップ



―――背景を桃色臭漂うホンワカな物に改造



―――エムにピンクでフリフリの衣装を合成



―――そして、画像の下の部分には…










―――『 魔法少女 マドカ☆マ○カ!! 』の文字が…






「おっと、肩に白い珍獣を乗せるのを忘れてた…ぶはははは!!」


 
 相対した魔女を片っ端から返り討ちにしそうだ…。ていうかエムの奴、この画像を亡国機業の仲間たちにばら撒かれたら精神的に死ぬな。もしくは本気で俺とセイスのことをマミりに来るかもしれん。だが、あいつのせいで何度もとばっちり受けてるんだからこれぐらいの仕返しは御愛嬌と言うものだ。



「ははははは!! いやぁ~、良い仕事したなぁ…!!」



 何だかんだ言って、エムの容姿は織斑千冬と同じなのでレベルが高い。故に、亡国機業の野郎達に少なからず人気があったりする。本人は知らないだろうが…。
 ついでに言うと、逆にオフ時のエムの駄目っぷりを知っている者も少ない。どいつもこいつも、エムが完全無欠のクールビューティだと思い込んでいやがる。



「だからこそ、この画像は売れる」



 いや、ぶっちゃけ俺もアイツがこんなポーズとるとは思わなかったけどさ…所謂ギャップって奴が激しすぎて需要あると思うんだよな。セイスとエムには悪いが、これは二人の悪戯兵器ではなく俺の商売道具に使わせて貰おう…





---ピピピピピピピピ!!




「ん?」


 捕った狸…もとい、捕らぬ狸の皮算用を始めようとしたその時、時計のアラームが鳴った。どうやら、セイスからのもう一つの頼みごとをする時間が来たようだ。 
 パソコンのモニターから『マドマギ』を消し、学園中に仕掛けた盗聴器とカメラを操作するために先程とは比較にならないスピードでキーボードを叩く。



「さ~て…歩く怪奇現象さんはっと…!!」


 セイスから頼まれた事、それは『布仏本音』…通称『のほほんさん』の観察である。何だかんだ言ってあの日の移動方法がセイスは気になっていたらしく、その後も何度かのほほんさんの事を定期的に調べているらしい。だが何度調べても納得いくような結果は出てこなかったようだ。流石に誰かと居るときにあのような怪奇現象(瞬間移動?)は発生しないようで、当時のことを確かめることが中々出来ずにいた。そこで、彼女が一人になる時を集中的に狙うことにしたのである。そして今日、のほほんさんが一人になる時間を狙って彼女の部屋に設置しといた盗聴器をリアルタイムでチェックするという暴挙(時間の無駄遣い)にでることにしたというわけだ。


 
「女部屋にカメラは無いから、音声のみか…本当に妙なこだわりを……」



 しかもこの女部屋の盗聴器ですら、一夏の奴が近くに行かない限りスイッチを切りっ放しときたもんだ。何度かシャルロットとラウラの部屋にカメラを仕掛けようとしたら半殺しにされたし。

 

「……ちょっと待て…アイツ、一夏の部屋はカメラ付で監視してたんだよな? てことは…」



---帰ってきたらじっくりお話しようじゃないか…主に、一夏が一人部屋になる前の時のことを……


 少しだけ胸に黒いものを漂わせながら、俺はのほほんさんの部屋の盗聴器のスイッチを入れた。しかし、部屋に一人で居る相手に盗聴器って意味あるのか?……まぁ元々一夏がその部屋に来て、一夏と誰かが会話する時にだけ使うのが前提なのだろうけどよ、こういう時は逆に誰か居ないと何も喋ってくれないんじゃ…

 










『それでね、おりむ~ったら、またやっちゃてんだよ~?』


『うわぁ、それはまた…』





---い き な り か !!



(なんだよ…誰か居るのかよ……)



 お陰でペラペラ喋ってくれそうだが、お目当てのホラー検証ができないじゃないか。あわよくば、人外のセイスの全力疾走を上回った移動方法の手がかりを知りたかったが、誰かと一緒に居る時点でそれを確認できる可能性は極端に減るだろう…



「しょうがねぇ…今日はやめるか……」


 
---そう思った時点で盗聴器の電源をさっさと切らなかったことを、俺はこの後死ぬほど後悔することになるとは露ほども思ってなかった…

























『ところで明日斗君、そろそろ『あすち~』って呼んで良い~?』


『えぇ~、どうしようかな?』



---のほほんさんが、織斑一夏以外の男子は存在しない筈のこのIS学園で、男の名前を呼んだ…
 
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