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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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ゼロ魔編
  021 ロサイスでの騒ぎ


SIDE 平賀 才人

アルビオン。地上3000メイルの高さに位置する浮遊大陸にある、始祖ブリミルの子供の1人が興した国で、王都はロンディニウム。王城はハヴィランド宮殿。大陸の下半分が白い雲で覆われているため≪白の国≫の通称を持つ。一定のコースでハルケギニア上空を周回浮遊し、2つの月が重なる夜にトリステインのラ・ロシェールに最接近する。……なお、アルビオン王国はアルビオン浮遊大陸上の国であり、ハルケギニア大陸とは明確に区別されている。

……そんな、どこぞの誰でも編集出来るページのような──ウキばった説明はおいといて、俺達は一番最初に見付けた港町──曰くロサイスの北部の草原に降り立った。

「……結構速かったな」

「……そうですね」

「1日も掛からずに着くなんて思わなかったわ……」

俺の確かめるような呟きにユーノとルイズは口数少なに返答する。俺自身も、よもや1日も掛からずアルビオンに到着出来るとは思って居なかったので、少々肩透かしを食らった気分になって呟く。

「さてと、プリンス・オブ・ウェールズが居る城は? っと」

「(ドライグ、〝バージョン2〟で展開してくれ。そしてシステム音も、俺だけに聞こえる様にして周りにはサイレントで頼む)」

<(応っ!)>

俺は誰に聞かせる訳でもなく独りでに呟きながら、“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”をオープンフィンガーグローブの状態──〝バージョン2〟で顕現させる。

(さて、どこに居るかね)

俺の〝見聞色〟の感知範囲は〝雷〟の力も相俟って、半径10リーグ──およそ10キロメートルにも及ぶが、高々10キロ程度では大陸1つ丸々覆う事は出来ない。……そこで、範囲が狭いのなら“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”の〝倍加〟で感知範囲を拡げてしまおうという魂胆だ。

(居た!)

マルチタスクを起動させながらルイズ達との四方山話をサブで行い、メインでウェールズを探す。……そして、ウェールズ──らしき人物の〝声〟を見付けたのは、俺の感知範囲が32倍──つまりは〝倍加〟の開始から40秒後の事だった。

「とりあえず時間も時間だし、最寄りの町に向かおうか」

1日掛からず着いたと言っても、オシリスの上に時間にして十時間弱も同じような体勢で居たのだから、それなりに体力を消費しているのだろう。俺の提案に異議を唱える者は誰も居なかった。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE ユーノ・ド・キリクリ

サイトの提案で最寄りの町、ロサイスに向かう。……ロサイスはボクの〝知識〟にも在る──とは言っても、鉄塔型の桟橋ではフネの係留のみならず艤装も行えるなど軍港としての施設は整っているが、反面大人数を一気に乗船させるような構造にはなっていない。赤レンガの建物が施設の中央にあり、敵味方を問わず司令部として利用された──こんな感じのウィ程度の知識しか無いが。

「ルイズ、どうして僕の言ってる事が判らない?」

「何度も言ってるでしょう? 私はユーノと一緒の部屋に泊まります!」

ロサイスの一番に上等な宿の前でヒゲヤローが〝ルイズと一緒の部屋に泊まる〟とゴネだした。……これまでにサイトの力業によって、思惑という思惑をほとんど潰されてきたヒゲヤローはかなり焦燥していて、何時ものキザったらしい態度は全く見て取れない。

「そこまでだワルド子爵」

「五月蝿い! 関係の無い外野は黙っていろ! これはルイズと僕の問題だ!」

「いや、ルイズも困ってるみたいだし、女性のワガママをいっそ聞いてやるのも男の甲斐性。……あまりに強引過ぎると女性にモテないぞ?」

ルイズとヒゲヤローの2人──否、ヒゲヤローの醜態を見兼ねたサイトが2人の言い争いを仲裁しようとするが、それがまたルイズの眉間に皺を増やす結果と知らずに、ヒゲヤローからは横柄な態度で口さがない言葉が出るばかり。……サイトはそんなヒゲヤローの横柄な口調にも柔和に、やんわりと対応する。

「ルイズに何やら伝えたい事があるんだろうが、今回は観光旅行でも婚前旅行でも無い。……任務中だ。私事はまた今度にして、今回は弁えてくれ」

「しかし! ルイズに何かが有ったら、どう責任を取るつもりだ!?」

「そうならない為の俺達だろうに。……あれ? そんな事を言うということは、もしかしてワルド子爵にはこの任務を遂行出来る自信がお有りで無いと」

「どうして、そうなる!? どうやら君にはこの任務を遂行出来る自信が余程有るようだね! 良かろう! だったら君のその手腕を──その自信の程を、このジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドに見せてもらおうか!」

サイトの絵に描いたような挑発に、ヒゲヤロー──ジャン・ジャック・フランシス・ワルドは激怒した。

SIDE END

SIDE ギーシュ・ド・グラモン

僕はワルド子爵とルイズの言い争いを──修羅場を胃を痛めながら、どう収拾を付けようか策を練りながら静観していた。

「決闘だ!」

そんな感じで静観していると、サイトがルイズと子爵の言い争いに仲裁に入ったと思ったら、あれよあれよの内に何故だかサイトとワルド子爵が決闘する事になった。……何が起こったのか判らなかったかもしれないが、僕もどうしてこうなったかが判らない──なんて事は無く、サイトの挑発に子爵が乗せられただけだ。

魔法衛士隊の隊長。要はエリート中のエリートというモノで、在野のメイジであるサイトには勝ち目なんか無い。……のに、サイトが負けるイメージが出て来ないのは何故だろうか?

(ルイズは一体──)

〝普通に〟ワルド子爵と力の差を考えるなら、サイトに諫言を投げ掛ける立場であろうルイズは、子爵に対して呆れた表情を向けているだけでサイトに諫めない事を思うと、僕と同じようにサイトの勝利を確信しているようだ。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE OTHER

ロサイスの一番上等な宿から少し離れた広場。そこである男が杖を構え、その相手と雌雄を決さんと、厳かな雰囲気で直立していた。

「ギーシュ、開始の合図は君に任せた」

「判ったよ。……それじゃあ、僕がこのコインを上に弾くから、そのコインが地面に落ちた瞬間から開始としよう」

「それで良いよ。子爵は?」

「……僕もそれで構わない」

対峙していた男の1人──才人はギーシュに開始の合図を求め、ギーシュはいつも才人との模擬戦闘の時に採用している合図を2人へと提案した。才人と対峙しているもう1人の男──ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドも、ギーシュの提案に思うところは特に無かったのか、ゴネる事無く承諾した。

「いこうか、デルフリンガー」

<応よっ!>

「何だいそれは?」

才人はギーシュがコインを用意している間に、どこかとも付かぬ場所から無骨な鞘に納められた大剣を取り出し、その大剣を抜き放つ。……すると、その大剣がいきなり喋ったのでワルドは眉をしかめながら才人に訊ねる。

「インテリジェンス・ソード。俺の武器だよ。よもや反則とは言わないよな? ……あ、心配しなくも峰に反すから安全面については安心? してくれ」

「減らず口をっ……!」

才人は今から〝決闘〟なんて荒事を起こすのに、〝安心とはこれ如何に〟と思ったのでクエスチョンマークを付けるが、ワルドはそんな才人の飄々とした態度が気に入らないのか、元よりしかめさせていたその顔をさらにしかめさせる。

「いくよ? それっ!」

ギーシュの弾き上げたコインは万有引力の法則に則り、やがて地面の石畳の上に落ちて金属音特有の甲高い音を鳴らした。

「初手は貰った! “エア・カッター”!」

「なっ!? 卑怯よ!」

ワルドはギーシュがコインを弾いた瞬間に詠唱していた魔法を放つ。ルイズがワルドに抗議しようとするが、一応これは〝決闘〟で開始の合図はコインが地面に着いた瞬間。……故に、ワルドがした事は別にルールに抵触していない。

「ルイズ、大丈夫だ。……喰らえ“デルフリンガー”」

才人に迫る不可視の刃だったが、才人は慌てるでも無くルイズを宥め、デルフリンガーを一振りするとワルドが放った魔法が、デルフリンガーに吸収される様に消えた。……この現象はデルフリンガーの特殊能力で、“デルフリンガー”はただの喋る剣ではなく、攻撃魔法を吸収出来る魔剣だ。

「まだだ! “エア・ハンマー”!」

自分の放った魔法が突然消えたのに驚くが、ワルドは直ぐ様気を持ち直し今度は不可視の風槌を才人へ向かって放つ。

「無駄」

「まだだ!」

……が、先程の“エア・カッター”の魔法の二の舞で、才人がデルフリンガーを振るうとワルドが放った“エア・ハンマー”は才人に届く事無くデルフリンガーへと吸収された。

「何だね? それは!?」

ワルドは諦める事無く魔法を放ち続けるが、デルフリンガーに吸収されるばかり。才人に魔法が届かないと覚ったワルドは、自らの杖代わりにしているレイピアを構え、才人へと肉薄する。

「これは〝決闘〟だろ? 貴方はいつも敵に、そうやって訊ねるのか?」

才人はそんなワルドのレイピアを危なげなくデルフリンガーで捌く。確かにワルドは凄い。……だが、神器内の空間で行っていたドライグとの訓練に比べるといくらか見劣りしてしまうのも確かだ。

「そこっ!」

「かはっ……」

「隙有り。……少し、頭冷やそうか。……ってな?」

「ぐっ……! まだだ……」

才人は少なからず動揺しているワルドの鳩尾にデルフリンガーの柄頭を打ち込んだ。ワルドは息苦しさから意識を保つ事が出来ず、その場に膝から崩れ落ちた。

SIDE END 
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