| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

GGO編
  八十三話 お菓子な依頼人

 
前書き
お久しぶりです。鳩麦です。

今回は、説明会……菊岡さんのくっそ長い説明が入ります。

では、どうぞ!! 

 
東京都中央区、銀座四丁目。
日本最大の繁華街で有るこの街は、基本的に富裕層の街というイメージが強い。デパートや、そこら辺に並ぶ宝石店やらスーツやらの店が、ことごとく馬鹿だかい値段を示しているのがその証拠だろう。
さて、そんな中でも此処、銀座四丁目は、実は東京で最も……ひいては、日本で一番地価が高い。

2025年現在でもマダムやムッシュがそこら辺を歩く、いかにも若者たる彼等とは少々不釣り合いなこの街に、涼人と和人は有る人物に呼び出されて足を運んだ。
普段ならば絶対に縁もないであろうシックな雰囲気の高級そうな喫茶店の扉をキリトが押しあけると、黒服に蝶ネクタイと言ったいでたちの羽ウェイターが恭しく頭を下げる。

「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」
「あ、いえ。待ち合わせです」
答えつつキリトは先方を探そうと辺りを見回す。しかし、その必要はなかった。

「おーい!二人ともこっちこっち!!」
『……はぁ……』
どう考えてもこの手の高級感のある店ではマナー違反な大声が涼人達の耳に届く。発したのは奥に座るスーツ姿の男。誠に遺憾ながら涼人達を呼びだした張本人だ。
勘弁してくれと言いたくなりつつ、和人がウェイターにその彼奴だと伝え、涼人達は席へと向かう。買い物帰りらしきマダム達の非難の目線を浴びながら。

「よぉ、菊っち、息災かぁ?」
「ハハハ。ま、あり余る程度には元気だね」
言いながら座る涼人と不機嫌そうな和人に笑顔を向けるこの男は菊岡誠二郎。黒ぶち眼鏡にしゃれっ気の無い髪形。線細い顔立ちをした、少々生真面目そうな顔の男だが、これでも国家公務員である。しかも官僚、キャリア組だと言うから驚きだ。

腰を下ろした二人の前に、即座にウェイターがお冷とおしぼりを差し出す。なんとも気配りのきいたことに、おしぼりからかんきつ系のさわやかな香りがする……。しかも差し出されたメニューは本革張りだ。

『金掛ける場所おかしいんじゃねぇの……?』
実を言うと地方育ちな涼人はそう感じたが、まぁ今はどうでも良い。

「此処は僕が持つから、何でも好きな物頼んでよ」
「……良いんだな?」
「おや?遠慮かい?勿論だよ。男に二言はない」
和人が神妙な顔で聞き返しつつメニューを見るそれに対し菊岡は首をかしげながらそう返答したが、彼は気が付かなかった。和人の視線の先に居たのが彼では無く、目を輝かせた涼人であった事に……

────

「よ、容赦無いねぇ……」
「あ?遠慮すんなっつったじゃねぇか」
「いやぁ……まさかポケットマネーがけし飛ぶほど頼まれるとは……」
「く……くく……」
注文が終了した時、口の端をひきつらせる菊岡と、首をかしげる涼人、顔を伏せて必死に笑いをこらえる和人がその場には残っていた。
と言うのも、キリトが頼んだのがケーキ二つにカフェ一つだったのに対し、リョウが頼んだのはミルクティー一つと……スイーツ十数種類だったからである。
恐らく、涼人一人で間違いなく三万は行っただろう。いや、四万超えたかもしれない。頼んだ時にあのポーカーフェイスのウェイターさんですら口の端が引きつっていた。

「こほん……さ、さて、ご足労いただいて澄まなかったね、キリト君、リョウコウ君」
「そう思うならわざわざ銀座なんかに呼び出すなよ……」
「ははっ、良いじゃねぇか。おかげで上手いケーキが食える」
「あぁ……それは確かに」
リョウの言葉にキリトが納得したように頷くのを、菊岡は困った様な表情で返す。

「いや、確かに此処の生クリームは絶品なんだけどさ……やれやれ、次からは言葉に気をつけようかな」
「そうした方が良いな。少なくとも兄貴の前では。で?本題は何だよ……まぁどうせまたVR犯罪がらみのリサーチなんだろうけど……」
「おお、キリト君は話が早くて助かるねぇ」
溜息をつきながらそう言ったキリトに、菊岡は調子を取り戻したように返す。

「いやぁ、ここ最近、バーチャルスペース関連の犯罪がまた増え気味でねぇ……」
「へえ?具体的には?」
ここで、涼人達とこの菊岡氏の関係を説明しておこう。

この菊岡誠二郎は、国家公務員、総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二別室というお経かよと突っ込みたくなるようなやたら長い漢字ばかりの名前の部署の所属である。ちなみに省内では通信ネットワーク仮想空間管理下、通称《仮想課》と呼ばれているらしい。
早い話が、国がインターネットと言う無法世界に新たに生まれた世界、VRワールドを監視するために派遣した、エージェント的な存在なわけだ。これが黒服の黒サングラスで同じ顔の人間が何人も出てくればまさしくエージェント……というかスミスだが(※映画マト●クスより)、残念ながら彼はどちらかと言えばスケープゴートと言ったところだろう。
そんな彼が一介の高校生である和人と涼人に何の用かと言うと……まぁ早い話がこの男は《SAO生還者(サバイバ―)》たる二人を情報提供者として利用しているのである。
まぁ《利用されている》と思うと涼人や和人としても余り良い気はしないのだが、菊岡にはまだ帰還したばかりのころ、アスナやサチ、そのほかSAOメンバーのリアル情報を教えてもらったと言う借りが有るため、仕方なく協力していた。
まぁ、持ちつ持たれつでは有るので、年上でも敬語は使わないし、ケーキも““容赦なく””頼むが。

さて、菊岡から話を聞いた限り、先月……十一月だけで、怒ったVR関連の事件は、仮想財産の盗難が百以上。加えて、現実世界における障害十三件、内一件は傷害致死となっている。
確かにそれなりでは有るが、とは言え日本全国の傷害事件数から見れば残念ながらかなり微々たるものである。これを持ってVR世界が治安を脅かしているとは言い難いだろう。
と、和人がVRは確かに犯罪への心理的ハードルを低くする。と言いかけた所で、注文したケーキ達がやってきた。
涼人のケーキ達は流石に一回ではやって来ず、順次続けて来るらしい。

さて、涼人がケーキに夢中になりながらもしっかり聞いていた話を纏めると、内容はこうだ。
ゲーム内ではPKは有効で、先鋭化したタイトルならばそれなりにグロもある。いわばVRでのPKは現実での殺人の予行演習的な物になりうるわけだ。ちなみに聞いた話では、アメリカ軍や自衛隊でもこの手のシステムによる戦闘訓練の導入が進んでいるらしい。まぁ、当然と言えば当然だが。

さて、涼人が濃厚なチョコの深い深い甘みと少し顔してそれらを引き立てる苦みに舌鼓を打っていると不意に、菊岡が問うてきた。

「ちなみに、リョウ君はどうだい?」
「どうだいって……なぁ」
話は、何故PK等をするのか、と言う話から、エンディングと言う終わりのないMMORPGにユーザを向かわせる原動力……すなわち他人からの羨望や、羨みのまなざしと言った物を求める優越感だと言う話題。そして、それは何もゲームに限った話では無く、現実でもありき、菊岡やキリトもまた、それを味わっている。と言う話に発展したいた。今の「どうだい?」は、涼人ははたして他の物に対する劣等感を埋めるだけの優越感を得られているのか、と言う振りだ。

「まぁあっちじゃ一応トッププレイヤー張ってるからともかく、現実じゃそうそうなぁ……RPGの経験値と違って、こっちの努力は確実に実を結ぶとも限んねぇんだ。リアルで優越感得るってにゃそれなりに時間も根気も居る。俺も実を結んだ努力ってなぁあんまし多くねぇよ。その点じゃ、RPGの一番いいとこは、スキル制はともかく努力が必ず実を結ぶ。ってとこかもな……」
「あっけらかんとしてるねぇ……まぁ僕も受験は死ぬほど勉強したけど、東大には落ちた。言いたいことは分かるけど……でも、リョウ君はそうでも無いんじゃないのかい?SAO云々で君を調べたときに、君の学校見たよ?かいせ……」
「おーっと、あんまり人の過去ほじくり返すもんじゃねぇな菊っち。さ、話を続けろよ」
「て言うか兄貴も参加したらどうかと思うんだけどな」
少し口をとがらせながら言う和人に、涼人は至極真面目な顔で答える。

「俺は今、こいつ等を味わう事で忙しいんだよ。官僚の相手なんざ後だ後」
フムン。と一度鼻を鳴らして、菊岡と和人は話を続ける。
まぁ早い話、優越感と言うのは終わりの無い物語を人に歩ませる程度には魅力的なものなのだ。
アスナがキリトの隣を歩いて居れば、十人中十人の非リア充男子が羨みと嫉妬、人体爆破を願う視線で振り向くのと同じことである。
そしてMMORPGにおける「確実に実る努力」から生み出される優越感は、他のどんな物よりも人にとっては魅力的だ。単純(シンプル)かつ原始的(プリミティブ)。そしてそれゆえに、麻薬とも呼べるほど依存性が高い……すなわち、《強さ》と言う優越感。物理的な、身体的な力を持って、眼前に立ちふさがる障害を、敵を破壊出来る純粋な力。

強さを得てヒーローになりたいなんて言うのは、男子ならば殆どの者が一度はあこがれる夢だろう。そしてVRMMOならば、単純な形で、それを得ることが出来る。やり方次第で夢を、夢のままにせずに済むのだ。

とはいえ、ヒーローがヒーロー足るのは、その最早狂人とも言える絶対的な己の正義への妄信と、それと対立する(=自動的に絶対悪)物を何の迷いもなく殲滅せんとする精神力。そして有る程度それが不特定多数の人間の倫理観に当て嵌まっている故だ。それはこの世界で人がそれに乗っ取って生きるには余りにも不安定で、危うい。

が、VRMMOで強さを得る……あるいは強さを得たと錯覚することはできても、ゲームはそう言ったヒーローの危うさや、強さを持つ者に必要であろう心構えについては教えてはくれない。
故に、その錯覚の強さを、現実世界で他人の迷惑も考えずに使う阿呆も出て来る。

正直なところ、涼人としては碌なものではないと思っていた。

そうしてその話から……菊岡は、妙な話をし始めた。

「その力って……そう言った心理的な所だけなのかな?」
「……?どういう事だ?」
和人が聞き返す。
菊岡の質問は、こうだ。

「心理的な影響だけでなく、実際にプレイヤーの筋力が上がるなど、物理的な影響が、ゲームの《錯覚》から発生することは、無いのだろうか?」

有るか、無いかと問われると、一概には言えない。
VR技術が肉体そのものに与える影響と言うのは、いまだ大脳生理学やそのた学術的観点からアプローチはしているものの、研究中の域を全く出ていないのだ。

そして、そこからが、菊岡の本題であった。

「とりあえず、これを見てほしい」
菊岡が自身のタブレットPCを操作すると同時に、画面を此方に向ける。
そこに映っていたのは一人の男の写真と、住所などのプロフィール。写真の方がまぁ、何と言うかいかにもと言った感じで……首やら頬にかなり脂肪が付いており、銀縁の眼鏡に長めの髪。と言った容姿だ。

「ふむ、何だこれ?糖尿病患者か?」
「こらこら、死者を冒涜するものじゃないよ」
「死者……ね」
菊岡の言葉に、和人が表情を引き締める。

「えっと……先月、十一月の十四日に東京都中野区のあるアパートで大家が異臭に気付いた。発生源と思われる部屋をノックしても返事が無く、電話もつながらない。電機は付いていたため部屋に踏み込むと、この男性の死体を発見。名前は茂村保、二十六歳独身。部屋には有らされた形跡はなく、遺体はベットの上で横になった状態で発見された。頭には……」
「アミュスフィア……か?」
涼人、和人、直葉。桐ケ谷家にも三台存在する二重リングの機会を思い浮かべながら和人が言うと、菊岡は小さく頷く。

「うん。直ぐに家族に連絡が行って、遺体は司法解剖された。死因は急性心不全」
「心不全……の原因は?」
「分からない」
「あん?」
涼人の訝しげな声に、菊岡が返す。

「死後五日半が経って居てね。犯罪性も薄かったから厳密な司法解剖も行われなかったんだ。ただ、彼はほぼ二日も何も食べずにログインしっぱなしだったらしい」
「良くある話だな」
そう言って、涼人は再び食事に戻る。
その手の話は珍しくなく、VRでは特にそれが顕著だ。栄養云々はともかく、VR世界で飯を食うと仮想の満腹感が胃を満たしてくれるため、基本的にはリアルでの空腹と言う感覚もかなり紛らわすことが出来る。そのため、飯大は浮く上にプレイ時間は増やせると言う事で、食事なしのダイブと言うのは案外珍しくもない。勿論、体には悪影響が有るのは確かだ。何時の間にか栄養失調。後に心臓発作など、ザラだ。

そう思い、菊岡とキリトが話すのを聞きながら涼人はまたケーキをぱくつき始める。しかし……菊岡の台詞を聞いて少しだけ手を止める。
茂村氏のアミュスフィアにインストールされていたソフト。ガンゲイル・オンラインに置いて、彼がトッププレイヤーだったと言うのだ。

「ん?そいつもしかして、《ゼクシード》か?」
「あれリョウ君知ってるの?」
「いや、知ってるっつーか、こないだMストみてた時に行き成りログアウトしたんだよな。そのGGOのトッププレイヤー」
Mストと言うのは、MMOストリームの略で、VRMMOのゲーム内でのあらゆる話題のプレイヤーを招いてのバラエティを始め、ニュースそのほか情報発信を行っている、ネット放送局のことである。

「あぁ、うん。それだね。出演中に心臓発作を起こしたみたいだよ?」
「成程……っておい、菊っち。もしかしてさっき言ってたVRからの物理的影響って、どっかの酒場での事言ってんのか?」
涼人の発言に、菊岡が驚いたように眼鏡をきらりと光らせた。

「あれ、リョウ君そこまで知ってるの?」
「いや知ってるっつーか、いや、ちょい待ち……メール良いか?」
「どうぞ」
言うと、涼人は携帯端末を凄まじいスピードで操作し始めた。一応言っておくと、涼人のデフォである。しばらくすると、涼人の携帯端末でメールの着信音が鳴った。

「成程……そう言うことね」
「おや?なんか僕の説明の役目、取られちゃったのかな?」
「な、何だよ兄貴、俺にも分かるように説明してくれって」
「ん……なぁ、カズ」

「仮想世界で銃で撃たれたら、死ぬと思うか?」

GGO内部のSBCグロッケンと言う町のある酒場で、それは起こった。
JSTで十一月九日午後十一時三十二分二秒。Mストに出演していた画面上の茂村に対して、一人のプレイヤーが、裁き云々、死ね等と叫んだ後、一発の銃弾を発砲。その十三秒後。突如茂村氏操るゼクシードが、Mストから行き成り消滅したらしい。接続ログから、死亡したのがその時間であると言う事も確定している。
そしてもう一件。GGO内の、矢張りSBCグロッケンの中央広場で、あるスコードロン(GGOにおける、ギルドのような団体の事)の集会において、壇上で檄を飛ばしている所を行き成り乱入したプレイヤーに同じような言葉とともに銃撃され、詰め寄ろうとしたところで、落ちたらしい。

「その兄ちゃん……《薄塩たらこ》のプレイヤーも死んでりゃ、確定だが……」
「ご名答だよリョウ君。十日前の十一月二十八日に、埼玉県大宮市アパートにやってきた新聞勧誘員が、電気付いてるのにノックしても返事が無いんで、居留守を使われたと思って腹を立ててドアノブを回したら。って感じだね」
先ず居留守を使われたからと言ってドアノブを回す勧誘員もどうかと思うが、まぁ死体を見つけてしまった不運を思うと彼には同情しておくべきか。

「ネットの掲示板の物だから信憑性に欠けるんだけど……リョウ君のはなんか確信有りそうだよね?」
「まぁ、な信用できる筋っちゃそうだ。俺らにとってはな」
「俺ら?」
涼人の言葉に、和人が首をかしげる。

「後で説明してやるよ。それよか……なぁ、二つとも、部屋の電気は付いてたのか?」
「ん?うん」
「…………」
それを聞くとそのまま、涼人は黙り込む。

「何か気になるのかい?リョウ君」
「いや……何でもねぇ。続けていいぜ」
促すと、菊岡は続けた。

「さて、その二件の銃撃者だけど、同じキャラネームを名乗ってる。偽名っぽいけどね」
「名前?」
「《シジュウ》……それに《デス・ガン》」
「うっわ、ガキっぽ」
涼人が言うと、菊岡が苦笑する。

「ははは。まぁ、ねぇ」
死《death》銃《gun》と言うわけだ。
単純だが、まぁその死銃氏とやらにしてみれば、シンプル・イズ・ベストといったところなのだろうか?

噂と偶然で出来上がっているネタに向かうにしては、菊岡はやけに真面目に調査していた。

心不全と言うのは確実であるらしく、被害者(?)の脳には血栓などの異常は見られなかったらしい。また少なくとも、アミュスフィアが通常の過程で発生させることのできる電磁波で人間を殺すことは間違いなく出来ない筈だと、メーカーにも問い合わせ済み。

と言うわけで、通常の感覚刺激で人間を殺すことが出来るかと言うのを三人で議論してみたのだが……

「無理……か」
「五感だけじゃなぁ……」
視覚、聴覚、触覚、味覚と嗅覚。色々と考えては見た者の、矢張りどれも確実に心臓を止めるに至るであろうとは言い難かった。

「ま、議論はこれくらいで良いだろ。結論──ゲーム内からの銃撃でリアルの心臓を止めることは不可能。今回の二件は偶然の一致って事で。はい終了。ごちそうさま」
和人がそう言って席を立つ。磨ぁ正直なところこのまま居ると面倒事に巻き込まれそうな気がしたので、涼人食べ終えたケーキの皿を残して(途中菊岡に一口分けてくれないかと何度も言われたが、全て突っぱねた)立ちあがろうとする。と、菊岡が二人を引きとめた。

「わぁ、待った待った!!ここからが本題の本題なんだって!」
「断る」
「早っ!?まだ何も言ってないんだけど!?」
「アンタの言いたいことなんざ大体分かる」
涼人は最大限に、菊岡に冷たい視線を送る

「死銃と接触……つーか、撃たれて来いとか言いだすんだろ」
「あ、あははは……お見通しだねぇ」
苦笑しながら言う菊岡に、和人と涼人の冷たい視線が刺さる。

「やなこった。俺だってまだ命は惜しい」
「右に同じ。俺も屋だね。行くならアンタが行ってくりゃいいだろ。んで撃たれろ。心臓トマレ」

────

「はぁ……」
「ま、しょうがないかな……」
ああ言った数分後、結局安全保障や約三十万円の報酬などを条件に、涼人達は条件を飲んでしまった、なんとも菊岡に載せられたようで悔しいが、「この件によって再びVR世界がSAO時代のように法規制の方向へと動きかねない」等と言われては、仕方がない。

溜息をついた涼人に、和人が苦笑する。

「えっと……それじゃ俺……」
「あぁ。これからデートだったな。行って来い少年。わざわざ皇居に場所変えたんだろ?」
「あ、あぁ……ってなんで知ってんだよ」
「ユイから聞いた」
二ヤリと笑った涼人に、和人が顔をしかめる。しかし直に頭を掻いて苦笑すると、涼人が向かう駐車場とは逆方向に歩きだす。

「それじゃ、行って来る」
「おう。楽しんで来い。遅くなるなら連絡しろよ~」
「あぁ!」
小走りで駆けて行く和人を微笑みながら見送って、涼人は駐車場に止めてある軽自動車へと向かった。電気自動車が当たり前の今のご時世で、涼人が乗るのは昔ながらのガソリン自動車だ。免許取って直にエギルから譲り受けたものなのだが、何やらマニアが乗って居た物らしく、中古ながらかなり性能のいいカスタム物である。

電子式のロックを開け、車に乗り込むと、涼人は携帯端末を取り出す。
呼び出した先の主は直にいつもの調子で返してきた。

「よぉ、“鼠”さっきはどうも」

十二月、七日の事である。
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

ただの説明会ほど書いてて面白くない物は無い……
まぁフラグとかを隠す絶好の機会でもあるんですがねw

ただ菊岡さんは出てくるたびにセットみたいに長い説明が入るので、正直二度と出てきてほしくないかもw

ではっ!! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧