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いかさまは知っていても

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第三章

「それで屋敷建てた位な」
「じゃあ結構な、ですか」
「博打打ちですか」
「そう負ける人じゃないですか」
「あんな風に」
「ああ、俺は劉さんを数年前に見たんだけれどな」
 それで、というのだ。
「思い出した、その頃に比べて髪の毛が減ってて太ったがな」
「それでもですか」
「劉さんですか」
「そうだ、そんな毎日負ける人じゃない」
 ルーレットに、というのだ。
「博打で屋敷建てた様な人だからな」
「生来の博徒ですか」
「それで食ってる人なんですね」
「俺達にしてみれば天敵だよ」
 博打の親で生きている人間としては、というのだ。
「まさにな」
「ううん、じゃあああして毎日負けることはですか」
「有り得ないですか」
「例えいかさまでもな」
 こちらがそれをやっていても、というのだ。
「やられる人じゃない」
「じゃあ一体」
「あの人はどうして毎日負けてるんでしょう」
「あれだけ」
「相当負けてますけれど」
「腕が衰えたか?いや」
 その劉さんの目を見てだ、元締めはすぐに自分の言葉を否定した。彼はそのうえでこうも言ったのだった。
「目は変わってないな」
「目は、ですか」
「それは」
「ああ、だからな」
 それで、というのだ。
「おかしいな」
「そんな人が毎日負けるのが」
「それが」
「出している金もな」
 それもだというのだ。
「相当な額だな」
「ですね、その全部をですから」
「殆ど貢いでるみたいなものですよ」
「何かドブに捨てるみたいで」
「博打打ちじゃないみたいですね」
「妙だな」
 そのことがと言う元締めだった。
「劉さんもこれで屋敷建てた程の人だからな」
「真性の博打打ちですね」
「まさにプロですね」
「ああ、だからな」
 それでだというのだ。
「あれがわからないな」
「あの人の金だけでかなりですから」
「花蓮の借金を返してますから」
「半分以上はそうですから」
「殆ど貢いでますね」
「そんな感じね」
「あの人ならな」
 劉さんならとだ、また言う元締めだった。
「それこそうちのいかさまでもな」
「花蓮のですね」
「それも」
「ああ、見破れる」
 それが可能だというのだ。
「だからといってそれで騒ぐ人じゃないがな」
「騒ぐよりも逆手に取る」
「そうしてきますね」
「そうした人だからな」
 そうして勝つというのだ。劉さんはそうした意味でもまことの博打打ちだというのだ。それで元締めは言うのだ。 
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