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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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ゼロ魔編
  020 白の国、アルビオンへ その2

SIDE 平賀 才人

その男性の闖入に、一番最初に反応したのはルイズだった。

「子爵様!? どうしてこんなところに?」

「やぁ、かわいい僕のルイズ。アンリエッタ姫殿下から君達がアルビオンへ行くと聞いてね。姫殿下から直々に君達を護衛する任務をいただいたんだ。……ああ、ルイズ以外の君達にも自己紹介をしておこうか。……僕の名前はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。魔法衛士隊が一角、グリフィン隊の隊長を務めさせてもらっている。……そして、ここに居るルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ウェールズの婚約者さ」

「はは、昔の話ですよ。子爵様」

ルイズが何やら複雑な表情で〝子爵様〟と呼んだ精悍な顔付きの彼は、俺達に一礼すると爆弾発言と共に自己紹介をした。……が、ルイズの顔がほんの少しだけだが〝翳り〟の様相を見せている事から、ワルド子爵との婚姻関係はルイズ自身が望んでいる事では無いのかもしれない。

(ルイズのあの表情…恐らく親同士か?)

貴族間では家と家の繋がりを深める為、嫡子同士や庶子同士──はたまた、嫡子と庶子を合わせる事もこのハルケギニアではそこまで珍しい事でも無いらしい。

(でも…あれじゃあ、まるで──)

……まぁ、ルイズとワルド子爵が並んで居るのを見ると、その身長差からどうしてもワルド子爵が〝ロ〟から始まって〝ン〟で終わる様な特殊な性癖を持った、変態──と云う名の紳士に見えてしまうのは仕様なのだろうか?

「……あれじゃあ、まるでロリコンじゃ──」

「ぶっ!!」

「ちょっ、ユーノ!?」

「大丈夫かい? ユーノ」

いつの間にか口から漏れていた呟きを聞いたユーノが、何かの琴線触れたのかいきなり吹き出す。……当然、普段のユーノの粛々とした佇まいからは想像出来ない醜態なのでルイズとギーシュはユーノへと心配する様な声音でユーノの名を呼ぶ。

「んっん! 少々取り乱しましたが、もう大丈夫です」

「全然大丈夫そうじゃ──」

「もう大丈夫です」

「……なら良いわ」

ユーノは〝良い笑顔〟を浮かべ、ルイズの追及を力業でスルーする。ギーシュもユーノの〝良い笑顔〟を見た様で頬を引き吊らせ、追及する様子を見せない。ギーシュもユーノの力業によってルイズと同じ様に封殺されたようだ。

「そろそろ行かないと次のアルビオンへの飛行船に乗れなくなってしまうのでは無いか?」

「………」

「……そうですね。行きましょうか。アルビオンへ。〝足〟は俺が用意しましょう」

ワルド子爵は何を焦っているのか、俺達を急かす。ユーノはユーノで、先程の和気藹々? な表情を一変させてワルド子爵をどこか冷めた目で見ている。

(ユーノ? ……まぁ、とりあえずは決まった)

どんな〝魔獣〟を創るかは既に決まった。だが、〝それ〟を忠実に創れるかどうかは俺自身の妄想──想像力次第だ。

(……来い! オシリスの天空竜!)

俺がイメージするのは、前世で見た【遊戯王】に登場した、全てのモンスターの頂点に君臨していた三幻神が一角。

「天空に雷鳴轟く混沌の時、連なる鎖の中に古の魔導書を束ね、その力無限の限りを誇らん。……なんてな」

中二病宜しく〝オシリスの天空竜〟のカードに書かれていたテキストを何となく召喚──創造のキーにしてみた。……何だかくすぐったい気持ちになったのは内緒にしておこう。

(あ、ヤバい。忠実に創り過ぎた)

「くっ」

俺がオシリスの天空竜を創造した数秒後。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴと、地を震わせる重低音と共に、辺り一帯の澄んだ青色だった空が薄黒い雷雲に覆われる。……学院の皆にバレたら面倒なので、“絶霧(ディメンション・ロスト)”で一時的に俺達の居るこの空間を外部から隔離する。

「……何ですかこの音、それに何か急に暗くなってきましたね」

「そ、空だ! 空に何か居る!」

急に起こった異変に逸速く気が付いたのはユーノで、ギーシュもそんなユーノに便乗するかの様に空にも異変が起こっている事に気が付いた。

「一体あれは……!?」

ギーシュだかルイズだかが〝それ〟に気圧され、後退りながら呟く。雷雲の切れ間から顕すその姿は見る者を全てに畏怖の念を抱かさせながら天空を翔る赤い体躯、雷が吐き出されるであろう2つ在る口。知っている人間からすれば、それはそれは見事な〝オシリスの天空竜〟である。

「まさか、あれは……オ…シリス? いやいや、有り得ないでしょ常識的に考えて。……だってここハルケギニアであって──」

オシリスを見知っているユーノは口をあんぐりと開け、前世の口調で驚愕している。……ユーノ、本日2回目のキャラクター崩壊であるが2回とも俺が原因だ。

閑話休題。

「あれはもしや、オシリスの天空竜? ……サイト、もしかしなくても何かしましたか?」

ぶつぶつと呟いて現実逃避に励んでいたユーノは漸く現実に戻って来たようで、口調を何時もの丁寧語に戻して俺へと問い質してくる。ユーノの目を見てみれば、どことなく自信無さ気だがどうやら俺が〝アレ〟をやったのだと確信している感じがある。

「Exactly(その通りにございます). とりあえず〝アレ〟に乗って行こうか」

「判りました」

「判ったわ」

「「ちょっと待ちたまえ!」」

俺はオシリスを地表近くに降ろし、オシリスに皆が座れる様にと人数分の、自作の──即席で加工した鞍を設置する。俺の〝魔獣〟に乗った事のあるルイズとユーノは、ある程度は信頼してくれているのだろう。わりと普通にオシリスに設置した鞍に乗り込もうとする。……がしかし、俺の〝魔獣〟に乗った事の無いギーシュとワルド子爵があっけらかんと乗り込もうとしているルイズとユーノに待ったを掛ける。

(そういや、ギーシュを乗っけた事は無かったな)

……然も有りなん。何が哀しくて男を後ろに乗せなくてはならないのか判らない。

また閑話休題。

「さぁ、行きましょうかアルビオンへ」

「危険では無いのか? もし僕のルイズに何か有ったらどうするつもりだ!?」

「お言葉ですが子爵様、私はサイトの用意する乗り物には一度乗っていますし、信頼出来ると思います」

「ルイズと同じく、私も信頼出来ると思います」

「……むぅ…、しかし──」

ルイズに続いてユーノが安心性を説いてくれるが、ワルド子爵はゴネるゴネる。

「……もし俺の用意した〝足〟が御不満でしたら自分でお持ちグリフィンで付いて来ては如何ですか? グリフィン隊の隊長と云うことはさぞや逞しいグリフィンを相棒としているのでしょう。……尤も、俺の竜に付いて来られたら──と云う条件も付きますが」

「……ぐっ、判った。そうだな。僕も君の竜に乗せてもらうとしようか」

流石に自慢のグリフィンでもオシリスの壮大さを見て、オシリスには勝てないと悟ったのか、俺の案を渋々と承諾する。

「行くわよ……“レビテーション”」

とりあえず、あの手この手を使ってゴネるワルド子爵を、俺とルイズの口八丁で無理矢理抑え込み、ワルド子爵が承諾したのを確認したルイズは、地表近く──とは一口に言ってみても、地面からはおよそ5メイルは離れているので魔法を使う必要があるから、ルイズは自らの浮遊魔法で自分の身体を浮かせる。

「バカなっ!?」

……ルイズが自分で自分を浮遊させた途端、ワルド子爵は精悍な顔付きを驚愕の表情へと一変させた。

「ワルド子爵、どうかしましたか?」

「いや、何でも無い」

「………」
ユーノは、先程見せたどことなく冷めた表情でいきなり声を荒げたワルド子爵に問い質す。ワルド子爵は何とか取り繕い、先程までのキザったらしい声音でユーノからの問いに応答する。……少し悪い雰囲気になったが、時間も押しているので皆でオシリスに設置した鞍に乗り込み、アルビオンへの空路を執った。

……因みに、ギーシュの使い魔であるヴェルダンデは“絶霧(ディメンション・ロスト)”の〝霧〟に依って編まれたロープでオシリスにくくりつけた。

SIDE END

SIDE ユーノ・ド・キリクリ

ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。……やっぱりヒゲヤローは来た。だがしかし、ルイズは──と云うよりボクもだが、この世界のルイズは既にサイトにゾッコンなので、あのヒゲヤローからプロポーズされたとしてもそれに色良い返事で応える可能性は、須臾程の可能性も無いだろう。

(それにしてもサイトの特典は一体……)

以前にルイズと二人だけで開催したサイト攻略会議──と云う名の知識の擦り合わせで、ルイズから聞いた話ではサイトが赤龍帝ドライグの魂が封じられた籠手──“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”を宿している事は確定している。

(聞いた話では1つしか特典が貰えなかったらしいけど…)

これまでで、ヴェルダンデを括っている──サイトがよく使っている“絶霧(ディメンション・ロスト)”
っぽい〝霧〟にルイズが系統魔法を使える事にしても、特典ではないと説明がつかない事が数多くある。

(……あれ?)

ふと気付く。

(もしかして、このオシリスの天空竜は“魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)”で創られたんじゃ──)

「どうした? ユーノ、いきなり考え込んで」

「……少し気になる事が有っただけです」

サイトの特典…謎は深まるばかりだ。

SIDE END 
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