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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter42「理想と真実の物語〜クランスピア社」

 
前書き
皆様こんにちは。
ワールドカップで日本代表が決勝トーナメント進出を逃してしまったことで、軽くショックを受けています、本小説作者のゼロ・クルスニクです。

またまた更新が滞ってしまいまして、誠に申し訳ございません。
リアルと執筆を両立させるのがこんなに苦しいとは思いませんでした。

では、お待たせいたしました、本編42話の更新です。
どうぞご覧くださいませ・・・

それと・・・




声優の沢城みゆきさんご結婚おめでとうございます!
個人的にお相手の一般男性の方が、とてもうらやましいですね・・・いろんな意味で。

では今度こそ本編をどうぞ・・・



 

 

『お待ちしておりました、ルドガー様。例のものは、社長に直接お渡しください』

ビズリーの秘書、ヴェルが丁寧な口調で目の前にいるルドガーに対応する。
ルドガーは今クランスピア社のエントラスに居る。
ここに来る前、ルドガーはヴェルの連絡を受けリーゼ・マクシアにあるイラート海停という場所にいた。そこでユリウスの目撃情報があったらしいのだが、既にそこにユリウスの姿はなく、代わりに負傷した数人のエージェントが海停のホテルロビーで横たわっていた。
エージェントからデータを受け取るルドガー。これはユリウスが収集解析した“分史世界”データのコピーらしいが、当事者のルドガーやただ傍観することしかできないはやて達が分史世界が何のかなどわかるはずもない。
どうやらエージェント達はユリウスを見つけ一戦交えたのだが返り討ちに合い、データを奪うことしかできなかったようだ。
エージェント達の手当てで残るというエリーゼとローエンを残し、トリグラフに戻ったルドガーはジュード達と共にクランスピア社に向かった……向かったのだが……

『すっごー!』
『広ーい!きれー!』

エルとレイアの緊張感のない声のおかげで色々台無しだった。まぁ無理もないのかもしれない。
この世界で天下の大企業クランスピア本社に入ったのだ。
社内の内装、規模を見て興奮するのも頷ける。実際スバルやリインもクラン社内を見てエルやレイアと同じような反応をしていた。

『この方々は?』
『俺の仲間だ』
『お呼びしたのは、ルドガー様だけなのですが』

はっきりとヴェルはルドガー以外の人間はお呼びではないと言いはなった。
だがその程度で引き下がるほどジュード達はあきらめがよくない。
ルドガーの友人、保護者、挙げ句ルルの保護者と半ばごり押しという手に出ていた。
結局ヴェルは折れてしまい、ビズリーに確認の連絡を入れ、ジュード達の全員の同行が許可されたのだった。

「頼んでみるもんやなぁ」
「あ、あはは、そうだね……それにしてもさっきエージェントの人達が言っていたの分史世界っていったい?」

フェイトはエージェント達が口にした分史世界という言葉が、とてつもなくこの人知を越えた現象と何か関係があるのではと考えていた。そしてそのフェイトの予想は的を射たものであったことを彼女はこれから知ることになる。

『待っていたよ、ルドガー君』

社長室に招かれた一同。既に部屋にはビズリーが待ち構えていた。ルドガーはビズリーにエージェント達から預かったデータを渡す。

『確かに。それでユリウスの手掛かりは見つかったかね?』
『いいえ……全て空振りでした』

ルドガーは首を振って答えた。

『さて、君に、いい知らせと悪い知らせがある。どちらから聞きたい?』
『………』

どちらから聞くべきかわりと本気で悩むルドガー。良い知らせは勿論聞きたいところだが、悪い知らせがそれを上回るほどの悪いものだとしたらそのショックは計りしれない。ならここは悪い知らせから聞くべきだ。悪い知らせでダメージを負ってもこれならダメージコントロールも可能だ。

『悪い知らせって……?』

思い切って後者を選択したルドガー。そしてその内容は予想以上のものだった。

『警察が、ルドガー様を公開手配するようです』
『なっ!?』

ヴェルの口から告げられた内容に落ち込まずにはいられなかった。
それは六課の面々も同じだ。

「痴漢の冤罪に多額の借金……極めつけは指名手配って……」

自分の師へ次々と降り掛かる災難……自分も苦境を越えて生きてきたと思っていたティアナだったが、自分の経験してきたことなどチョロ甘だと感じてしまった。

「私……少しルドガーに優しくせーへんといけない気してきたわぁ……」

幼少の頃から苦労の絶えなかったはやてでも、彼を襲う不幸を今まで見てきて同情せずいられないようで、他の者も同じように思っているようだ。

『ルドガー、捕まちゃうの……?』

心配そうにエルはルドガーを見つめる。

『いい知らせもあるんですよね?』

レイアの問いにビズリーは頷いて答える。

『君を、我が社のエージェントとして迎えたい』
『!?』

驚きの連続。いい知らせも悪い知らせと釣り合うほどのインパクトのある内容だった。

『驚くことはない。君の行動を観察させてもらった結果だ。君には現状に立ち向かう意志、そして、なにより力がある』

ビズリーの言葉を聞いたジュードは、怒りの表情でビズリーに詰め寄る。

『観察って……あなたがそう仕向けたんでしょう?』

ユリウスを捕えるように命じ、後に戻れないよう仕向けたのはビズリーだ。

『ルドガーを試したんだな?』
『筆記試験や口先では、器は計れないからな。どうだ。君がエージェントになるなら、警察は無理にでも抑えこむ』

ルドガーに選択の余地はないじかとジュードが抗議するする。
狡猾なビズリーの策に、六課の面々は憤慨せずにいられなかった。つまりエージェントにならなければ、警察に突き出すと言っているのだビズリーは。

『一石二鳥と考えてはどうかね?エージェントには十分な報酬を出す。逮捕を免れ、結果を出せば、莫大な借金もすぐに返せる』
『……っ!』

自分が立たされている状況を考えれば、ビズリーの強迫紛いの提案はこれ以上にない救いだ。
だが素直に頷くことはできるはずもない。

『なにをさせる気ですか?』

必用にルドガーを自分の元に迎え入れようとするビズリー。メリットはわかったがデメリットと彼がルドガーにさせようとしていることを知らなければいけない。

『分史世界の破壊』

イラート海停でエージェント達が口にした単語だ。ビズリーに手渡したものはその分史世界の収集解析データであり、“道標”と呼ばれる物の探知精度を上昇させるものだった。

『心当たりがあるだろう』

ビズリーにそう言われ、ルドガーはこれまで自分の周りで体験したあの不可解な出来事を思い出した。むしろそれ以外に何も考えられない。

『あの奇妙な世界か!』

ルドガーと同じくアルヴィンもそこにたどり着いたようだ。ビズリーは頷いて鉢植えの前に移動すると開花した花を指差し、次につぼみへと指を移す。

『今、我々がいるここ。本来の歴史が流れる正史世界から分かれたパラレルワールド……。それが分史世界だ』

『分史世界が生まれると、正史世界に存在する魂のエネルギーが拡散していきます』

パラレルワールド……それは世界から分岐し、それに平行して存在する別の世界のことを指すものだ。時空管理局が管理する次元世界は、無数に存在する世界それら全てを統括して一つの“世界”と表現した方が正しいだろうか。この時点で部外者が聞かされればオカルト的な話しだと思い信じない者が殆どだろう。だがルドガー達は実際に分史世界へ入って体験している。

逆にあれが全て悪夢だった言われて信じることの方が難しい。

『拡散って……まずくない?』
『放置すると、どうなるんですか?』

ビズリーは花の蕾をむしり取り、握り潰し答える。

『この正史世界から、魂が消滅するだろう。当然人間も死に絶える』

分史世界の存在だけでも驚愕だと言うのに、魂のエネルギーが拡散している影響で世界が滅亡への道に着々と進んでいると言われてもやはり実感がわかない。

『エレンピオスの荒廃、源霊匣の実用化失敗……それが、魂のエネルギーが消失している影響だとしたら?』
『まさか!』
『実際に起こっているだろう』

この一年源霊匣の実用化に向け日夜はげんでいたジュードにとって分史世界が発生したことにる悪影響がまさか源霊匣にまで及んだいるなど想像していなかったのだろう。それにビズリーの言葉は決して根拠のないものではない上、ジュードはこれを否定できるだけの研究成果を未だ得てはいないのだ。

『クランスピア社は、世界を守るため、秘かに分史世界を消し続けてきたのだ』
『世界を消すなんて、どうやって……』
『あっ!』

世界を消すという部分にルドガーははっと何かに気付いた。

『そう……ルドガーは既になしている。ルドガーの変身……骸殻こそ分史世界に進入し、破壊する力なのだ』
『世界を壊す力……』

これでこれまで体験した違和感の正体を大まかではあるが理解することができた。
が、それらはやはり突拍子のない話ばかりだ。

「世界を、それもパラレルワールドを破壊する力……それが骸殻本来の使い方やったんか」
「でも世界を壊すって、言い回しを変えてもいいイメージはありませんよね……」

シャーリーの意見に皆賛同する。骸殻がただの戦闘能力を倍加させる力だと殆どの六課メンバーがそう認識していたのだろう。しかしフェイトやなのは、骸殻を間近で目にした者、力を直に感じた者は強さ以上にその異質さに僅かながら恐怖を抱いていた。
特にヘリポートで一瞬解放したルドガーのフル骸殻はこれまでの骸殻とは次元が違うとあの場にいた者に感じさせるほどのものだった。
話を理解できいエルが駄々をこねるのをよそにビズリーはルドガーへ世界の為に力を貸して欲しいと手を差し出す。

肝心のルドガーは自分の手を見つめ、返答に迷っていた。

『兄さんも関わっているのか?』

ユリウスがこの一件に関わっているのは明白だ。身内としては兄がどれほど世界の“真実”と戦っていたか知りたかった。

『最強のエージェントだった。ユリウスが消した分史世界は百以上になるだろう』
『………』

ユリウスが百以上の分史世界を破壊したという話を聞いて六課メンバーは驚かずにはいられなかった。分史世界を破壊することは正史世界の破滅を防ぐことに繋がるが、同時にそれはその分史世界で生きる生命の時を止めることと同義。その重さは計りしれない。
結果、ルドガーはビズリーの手を取った。
ユリウスが分史世界に逃げ込んでいる可能性があるとなれば乗らない訳にはいかない。
ビズリーとクラン社と契約を結んだこの瞬間からルドガーはエージェントとなる。
ワイシャツの襟にはクラン社の社章をヴェルが取り付ける。

『これでお前は、我が社の分史対策エージェントだ』

ここではやてはルドガーの嘘を一つ知る。彼ははやてに自分はクラン社で戦闘専門エージェントだと答えていた。しかしそれはしょうがないことだろう。
本当の所属先を話して、主な分史対策室の仕事内容を説明するなど到底できるはずもない。

『一つ教えてください。分史世界は何故生まれるんですか?』

ジュードの疑問に対し少しの沈黙を置き、ビズリーではなくヴェルが応えた。

『ある者が糸を引いているのです』
『カナンの地に棲む大精霊……クロノス』

ヴェルとビズリーの発言に驚く一同。
裏で大精霊が暗躍していたこともだが、カナンの地という地名が出てきたことにも驚かざるえなかった。特にエルにとってこの情報は目的地への大きな手掛かりとなるのだから。
ビズリーは力の使い方を教えると言い、地下訓練場に向かっていた。

『クランスピア社のエージェントって超一流の職業だけど……ほんとによかったの、ルドガー?』
『よくはないけど……』

尊敬していた兄と同じ仕事に就けたことは以前までだったら感激ものだったのだろう……しかし今は素直に喜ぶことはできなかった。選ぶことができ、望んで今の世界に足を踏み入れたなのは達。
選ぶことすら許されずただ先に進むしかできないルドガーの姿を見た彼女達は自分は恵まれていたのだと思うのは当然かもしれない。

地下訓練場にたどり着いたルドガーは既に待ち構えていたビズリーと対峙していた。

『手出しは無用!』

ビズリーの言葉を合図に突如現れた数体のクラン社の魔物がルドガーに襲い掛かる。
ジュード達も加勢しようとしたがビズリーが制す。剣を構えたルドガーは単身魔物に立ち向かう。

『ぐっ!』

「ルドガー!」

次第に劣勢に追い込まれていくルドガーを見てはやてが思わず飛び出したが、これは過去の光景であり手助けに入ることは無駄だということを思いだし踏み止まる。

「離してよティア!」
「落ち着きなさい!今起こっている戦いは過去にあったことなのよ!」

戦いの中へ飛び込もうとするティアナに止められるスバル。
頭では無駄だとわかっていても体が動いてしまう。

だからスバルはルドガーを助けるため動いた。はやても同じように………

「わかってる!でも---」

私にはただ黙って見ているだなんてできないと叫ぼうとしたその時だった。

『うおおおっ!』

地下訓練場に雄叫びが響きわたると共に咄嗟に目を庇うほどの強烈な光が覆いつくした。
光が晴れた先にはクォーター骸殻を纏ったルドガーが立っていた。
手に持つ槍の先には一体の魔物が串刺しにされている。突き刺さっている魔物を放り捨て、残りの魔物を駆逐していく。


ただ次々と……

次々と

次々次々次々次々と

圧倒的な力で魔物を撃退していく。

『ヘクセンチア!』

槍を振るう。四方から迫る魔物が地より上がり、6つの紫の光柱が魔物の体を貫く。
驚くことにたったそれだけで戦いの決着がついたのだ。
戦いが終わり、戦闘と骸殻の力からの疲労により肩で息をするルドガーの下へ仲間達とビズリーが集まる。
これまで度々骸殻に変身したルドガーを目にする機会があったエルやジュード達だが、改めてその力の一端を目にして驚きを隠せない。

『なんでルドガーに、こんな力が?』
『ルドガーが、クルスニクの末裔だからだ』

根本的なアルヴィンの疑問に事情を知っていると思われるビズリーが答える。
骸殻能力はクルスニクの血を引くものが、一族に伝えられる懐中時計を鍵として発現するという。

『クルスニクって、意志の槍を持つ賢者ですよね?』
『賢者クルスニク……リーゼ・マクシアでは、そう伝わっているらしいな』

リーゼ・マクシアの古の文献を知識として持つジュードはクルスニクが賢者と呼ばれている伝承の人物なのか確認する。だがビズリーはリーゼ・マクシアで賢者と名を残すクルスニクのことを聞くと侮蔑を含んだ笑みを浮かべながら、クルスニクを“精霊どもの玩具”と蔑むように言い放った。

『骸殻は、その一族に与えられた……いや、かけられた呪いだ。同時に、人間に残された武器でもある。お前なら使いこなせるはずだ』

ビズリーの“呪い”という骸殻の誇大と取れそうな表し方に六課の面々は大小あるがそれぞれ驚いていた。

(呪いを刻む歯車は、継承される屍の鎧っていうルドガーの夢に出てきたユリウスさんが言っていたこの部分って骸殻のことを言っていたのかな……)

この記憶世界で初めて目にしたルドガーの夢の中でユリウスの言っていた言葉の一部の意味の仮説を立てるフェイト。


その後に続く言葉の意味は未だわからないが、いずれわかる時がくるとフェイトは思っていた。


例え骸殻が呪われた力と呼ばれているものだとしても、分史世界を破壊することができる唯一無二の力である以上、ルドガーは世界と共に前に進むことしか選択肢が残されていないことを思うと、はやては選ぶことができるということが、とても幸せなのだと感じていた。

 
 

 
後書き
ゲームってはまるときりがないですよね。
ソードアートオンラインHFやアスタリアと面白ようそ満載なゲームの登場でここ2ヵ月近く
思わず目が輝きっぱなしです。

感想・評価よろしくお願いいたします。 
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