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I want BRAVERY

作者:清海深々
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二十五話 関係



「彩君、おはよー」

「おはよー」

 手を上げて長谷川さんに挨拶をする。
 この数ヶ月で一気に表情が明るくなったような気がする。

 今は10月。
 もう文化祭は終わった。

 特に何かあるわけではなっかた。
 先輩がストーキングらしきことをしてきたこと以外は。

 俺の日々の生活は、なんとか先輩を避けて、長谷川さんや結子と一緒に帰ったりすることだった。

 しかし、何故だろうか。
 もし俺にコミュがあったとしたら、もっと明確には分かるのだが、毎回毎回帰りにどこかによって分かれるときに、ふと頭の中に、

「もっと仲深まりそうな気がする」

 というセリフばかりが浮かんでくる。

 原作ゲームプレイでいうなれば、空振りというやつだ。

 なぜ原作主人公は、狙えばたったの10回でコミュMAXになるのだろうか。
 俺はすでに10回以上一緒に帰っているが、特別な関係にさえなっている気がしない。

 これが主人公補正の有無なのだろうか。

「おはよ」

 自分の教室に入った時に挨拶をされた。

「おはよ、岳羽さん」

 いつも通りそれにも挨拶を返す。

 岳羽さんとは、原作介入をあきらめてからはあまり一緒に帰ることはない。
 それにしても最初から一緒に帰れたのは何故なんだろうか。
 ちなみにまだ魅力は5で止まっている。

「順平は一緒じゃないとか、珍しいね」

「別にいつも一緒ってわけじゃないんだけどねー」

 笑いながらそう返す。

 今日は一人で登校してきた。
 伊織はなにやら昨日遅くまでネットゲームをしていたらしく、今日は眠そうに朝食を食べていた。
 一緒に来てもよかったのだが、今日の伊織は遅刻しそうな雰囲気があったため先にきた。

 ちなみに友近は一人で登校することが多い。
 本人いわく、

「朝くらいは静かでいたい」

 らしい。

 岳羽さんと二、三言話して自分の席に座る。

 その際に、かけられる挨拶に全て答えていく。

 俺の今の岳羽さんのコミュはたぶん4程度、いやそれ以下だろう。
 なんというか、クラスメイトよりは一歩出てる気はするんだが、どうも異性としてそこまで意識はされていない気がするのだ。

 正直このペースだと原作が終わる時期になってもMAXは無理なのではないだろうか。

 長谷川さんにしてもそうだ。
 結構一緒に帰ったし、彼女の悩みであるクラスに溶け込めないというのを解消するために、知り合いの女子と一緒に3,4人で帰ったりして長谷川さんに友達が出来るよう努めたつもりだ。

 その結果、今の彼女には数人だが友達はいる。
 男の誘いに簡単に乗らないようにと注意もした。

 これでよほどのことがない限り、彼女がクラスでまた浮くということはないだろうと思う。

 しかしだ、俺と彼女の関係は一向に進展しない。
 こちらから異性として積極的になれていないことはわかっている。
 それでも、もうちょっとなんかあってもいいのではないだろうか。

 原作の主人公は適当にセリフ選んでたらいつの間にか惚れられているというのに、俺にいたっては、

「フフフ、彩君っては冗談が上手いのね」

 とか、

「はいはい、誰にでもそういうこと言ってるんでしょ?」

 とか、

「そんな真顔で冗談言うとか、ウケ狙ってる?」

 なんて、長谷川さんや結子、岳羽さんに言われる始末だ。

 今言った結子は、原作ではかなり序盤にコミュを得れる女子のはずだ。

 つまりは一番簡単に落とせるのだろう?

(※違います)

 なのになんでこんなにもハードルが高いというか、壁があるというか、ガードが固いんだろうか。

 まぁ、本来ならこんなことを考えたりしない。
 そう本来ならだ。

 なぜかイレギュラーがあるのだ。

 言わずもがな、あの先輩だ。

 俺は正直何もしていない。
 自分から一緒に帰ろうなんて言ったことはないし、初影時間以来フラグを立てるようなことは微塵もしていない。

 なのに何故か、あの先輩との関係だけはグングン近づいている気がするのだ。

 先輩が俺に一気にコミュ2近づいて、俺が一歩下がるといった感じで、なんとかコミュ6程度に納まっているような感じだ。

(※実際はもうすこし高いです)

 この差はなんなんだろうか、やはり原作キャラであるかないかなのだろうか。

 原作に関わる気がないので、岳羽さんはどうでもいいが長谷川さんとは仲良くなりたいとこである。

「セーフッ!」

 ボーと窓の外を見ながらそんなことを考えていると、伊織が勢いよく教室に入ってきた。

「ギリギリだな」

 黒板の上の時計を見ると後15秒ほどでホームルームだ。

「はぁはぁはぁ、きっちぃなぁ」

 ダッシュしてきたせいか、汗を結構かいているにも関わらず帽子は何故か脱がない伊織。

「帽子取ったら?」

「はぁはぁはぁ、こ、これだけは譲れねぇ」

 一体全体、その帽子を被ることになんの意味があるのだろうか。

———キーンコーンカーンコーン

 そうしているうちにチャイムが鳴った。

 そして、そのチャイムと同時に鳥海先生が教室に入ってきた。

「はい、座って座って」

 まだ経ち歩いている生徒に急かすように言う。

 そして、生徒が座った後に、委員長に目配せをし挨拶をさせる。

 先生に挨拶をして自分の席に再び座った時にふと思う。

(鳥海先生って手もありだな・・・)

 原作の主人公も落としかけてたしな、なんて思う。


 
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