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万華鏡

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第七十六話 節分ライブその一

                 第七十六話  節分ライブ
 大雪からはあっという間だった、練習をしているうちにだった。
 八条学園内にある仏教の寺の中でのライブ、節分の日に行われるそのライブの日が来た。だが美優はその中で部長にこう尋ねた。
「お寺じゃなくて神社じゃないんですか?」
「節分は、っていうのね」
「はい、そっちの気がするんですけれど」
「そういえばそうかしらね」
 部長は首を傾げさせつつ美優に答えた。
「神社かしらね」
「お寺じゃない気もしますけれど」
「そうね。けれどね」
「けれど?」
「お寺の方はいいって言ってくれたから」
「そうですか」
「別にいいでしょ」
 実にあっさりとだ、部長は美優に言った。
「鬼は仏教でも出るから」
「地獄にいますね」
「言われてみれば確かに神社の気がするわ、私もね」
「部長さんもですか」
「ええ、けれど神社がたまたまね」
「節分の日にですか」
「何でも神主さんが用事でおられないそうで」
 管理者不在だからだというのだ。
「跡継ぎさんはまだお若いし」
「責任者としてはですか」
「そうなの、奥さんも神主さんと一緒に出られるそうで」
「神社の都合が悪くてですか」
「青木茉莉也ちゃんいるけれど」
 部長はここで難しい顔になって言った、どうにもという感じである。
「あの娘はねえ」
「何かあるんですか、その人に」
「いやね、神社の娘さんで私達の同級生だけれど」
「うちの学園の生徒さんですか」
「そうなの、けれど酒癖が悪くて」
「そんな話前にしてましたね」
「そうなのよ、もう酔うと女の子の胸とかお尻とか触ってきて」
 そうするからだというのだ。
「私達はいいけれどあんた達が生贄になるから」
「そのこともあってですか」
「まあこのことは正直目を瞑ってもよかったけれど」
 ライブを開くにあたっては些細なことだからだ。それにだった。
「それに私達がそういうことさせないから」
「セクハラはですか」
「ええ、ただやっぱり神主さんご夫婦がおられないから」
「お寺にしたんですか」
「お寺が駄目だったら天理教の教会かキリスト教にって思ってたわ」
「幾ら何でもキリスト教の教会で節分はないでしょ」
「最悪の場合はよ」
 キリスト教の教会での節分ライブもだ、部長は確かに考えていたのだ。
「それも考えていたわ」
「何か宗教目茶苦茶ですね」
「別にいいじゃない、日本だし」
「日本だからですか」
「そう、どの宗教も一緒にいるから」
「それでなんですか」
「八条大学宗教学部なんて凄いわよ」 
 八条大学にはそうした学部もある。とにかく様々な学部が存在している巨大な大学なのだ。
「仏教のお坊さんの資格も取れるし神主さんもね」
「そっちの資格もですか」
「神父さんや牧師さんにもなれて」
 キリスト教の聖職者の資格も取れるのだ。
「八条グループの総帥さんが天理教の人だから特別にお願いして天理教の教会長さんの資格も取れるのよ」
「教会長さんですか」
「そう、天理教はようぼく、教人ってあってね」
「その資格をですか」
「そう、八条大学では特別に取れるのよ」
 あくまで八条大学だけである。異例中の異例と言っていい。
「ようぼくになって課程を受けてね」
「その教人さんになれるんですか」
「そこからまた課程受けて教会長さんの資格も取れるのよ」
「じゃあ天理教の教会長さんもですか」
「八条大学ではなれるから」
「何か色々な宗教が入ってるんですね」
「そうなの、凄いでしょ」
「だから学園の中にお寺や教会もあるんですね」
 宗教団体が経営している学園は日本にも多い、しかし八条学園はまた事情が違うのだ。
「八条グループが経営してて」
「お寺や神社にはお願いしてね」
「入ってもらってるんですか」
「宗教は学問よ」
 まさにそのものだ。かつては聖職者即ち学者でもあった。このことは今でもそうした一年が強かったりする。 
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