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I want BRAVERY

作者:清海深々
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十九話 翌日



前日に初めての影時間を体験した日の夕方。

 どうしようかと迷った結果、とりあえずは原作介入をしないという方向行こうと決めた。

 やはり、自分の命は惜しい。

 原作の中では、バトル中にHPが0になると、戦闘不能状態になる。
 しかし、それは決して死亡したわけではない。
 主人公が死んだ時のみ、本当に死んだかのように、セーブポイントからやり直しになる。 

 でもそれはあくまでゲームだからだ。

 俺が今いるのは現実。
 ゲームのようにいくとは限らない、いやいくはずがない。

 実際、ゲームではアイテムやスキルなどで戦闘不能状態から復活することが可能だ。
 しかし、その戦闘不能状態というのは一体どういうことなのかよく考えてみると、

「普通に死亡状態だよな」

 あくまで俺の考えでしかないが、あれは紛れもない『死』。

 主に街中で起きる『影人間』は、シャドウに精神を食われた存在。
 ゲームの序盤の最初の満月の日にシャドウに食われる人間が、ゲームでは描写されている。

 あれは、ゲーム内で戦闘不能状態になっているのではないかと俺は思う。

 その状態で、アイテムやスキルを使うと精神が復活する。
 つまり、戦闘不能状態とは『影人間状態』もしくはそれの一歩手前ではないかと思う。

 それの示すところは、アイテムや復活スキル、ましてやペルソナを持たない俺が戦闘不能になると、それは『死』に直結するのではないかと思う。

「うん。やめよう。まだ死にたくないし」

 俺は一人自分の部屋で頷く。

「となると、シャドウとの戦闘は避けるべき・・・か」

 『シャドウとの戦闘を避ける』。ゲームの中なら、モンスターのオブジェクトを避ければ済む話だ。

 しかし、現実ではそうはいかない。
 影時間は毎日くるのだ。
 つまりはシャドウは毎日出てくる可能性がある。

 原作で主人公達は、タルタロスに入る時と満月時以外はシャドウと戦闘になっていない。

 ここがわからない。

「寮の中は安全なのか・・・?」

 それともあの寮だけなのか。
 もしくはあれはご都合主義なのか。

 ともかく寮の中が安全なのであれば、そこにいるにこしたことはない。

「・・・それしかないか」

 一度試してみるしかない。

 俺はそう思うと、携帯を取り出し、昨日の先輩にメールを送る。


『8月△日 18:30
From:xxxx.xxx-xxx@xxx.ne.jp
sub:暗越先輩へ
———————————————

昨日みたいなことがあったら不安
なので、今日は一緒にいません
か?

                      』


「これくらいが無難か?」

 正直、他から見たら誤解されそうだが本人は気付いていないようだ。

「ふぅ」

 メールを送信し、携帯を閉じてため息をつく。


ベットに座り、そのまま後ろに倒れる。

———PiPiPiPi

 突然携帯が鳴る。

「うぉ!?」

 急いで携帯を開き、通話ボタンを押して耳に当てる。

「もしもし?」

『もしもし?琉峰君?』

「えぇ、そうですよ。先輩ですか?」

『うん。先輩なんて堅苦しいから楓でいいよ?』

「いえ、やっぱ先輩を呼び捨てになんてできませんよ」

 名前で呼んでしまうと、戻れない関係になりそうで怖い。

『まぁいいけど・・・今はね』

「え?なんか言いましたか?最後の方聞こえなかったんですけど」

『ううん。なんでもないの。そんなことよりメールの件なんだけど』

「そうですか・・・えっと、さっき送ったメールですよね?」

『うん』

「もし、昨日みたいなことに今日もなったりしたら、って考えたら先輩が心配で」

 これで先輩が『影人間』になったら、俺のせいだしな。

『私を心配してくれるの?』

「え?えぇ。当たり前じゃないですか」

 この人、戦えないしな。

『そっか・・・そっか・・・』

「先輩?」

『な、なんでもないよ?』

「なんで疑問系なんですか・・・それより、とりあえず昨日は12時の直後らへんになってたので、今日も出来ればその時間帯は一緒にいたいんですけど、大丈夫ですか?」

『一緒にいたい!?・・・そっか、うん、いいよ』

「・・・なんか勘違いしてません?てか都合のいいとこだけ聞くのやめてもらえます?」

『まだ、あって1日も経ってないけど、私全然大丈夫だから』

「・・・もういいです。とりあえず、11時くらいに、会いたいんですけど・・・」

『大丈夫だよ。こっちの寮さ、裏口から普通に出入りできるし・・・前友達がね、彼氏連れ込んでたの』

「へ、へぇ・・・」

 向こうの寮の安全が証明されるかどうか考えると、向こうに行くのが最善なのだが、なんだか行きたくない。

「ま、まぁ、その時間に何処かで落ち合いたいんですけど」

『お、落ち合うだなんて・・・まるで駆け落ちみたい』

「違います」

『照れないでよ』

(照れてねぇよ!妄想は入りすぎだろ!)

「と、とにかく!11時に先輩の寮の前行くんで、待っててもらえます?」

『わかった・・・あ』

「?」

『私、ゴムもってないけどだいzy』

———ブツッ

 思わず電源ボタンを押してしまった俺は悪くない。

「なんか・・・あの先輩ヤンデレになりそうで怖い」

 そうならないことを願わずにはいられない。








 
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