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ソードアート・オンライン 〜アナザーアカウント〜

作者:びーの
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ケットシーの傭兵

 
前書き
時系列はカリバー編が終わったあたりです。 

 
「いっけぇぇえ!ラー君!!」


ケットシーの領主 アリシャ・ルーの声援を背中で受け、一人のケットシーが地を蹴り、空中でこちらの動きを伺っていらっしゃる赤で統一された重鎧を着たサラマンダーの一団へと飛んでいった。
ケットシーとは、あり得ない程の力強い踏み込みで加速して、最も近くにいたサラマンダーへと急接近する。そして、サラマンダーの男は何が起こったのかわからないまま、叫び声をあげる前にエンドフレイムとなり、戦闘から退場した。

「「「っな!い、一撃だと!!」」」

サラマンダーたちに、驚きと恐怖の声があがり、臨戦態勢が崩れる。そして、その時を待ってましたと言わんばかりにケットシーは跳躍し、また一人またひとりと屠っていった。
立て続けに3・4人ばかりやられると、リーダー格らしきサラマンダーは冷静さを取り戻し、集団に指示を出していく。しかし、下手に突撃はできない。なにせ、相手から一撃でこちらを屠ってくることから、相当の手練れだということは言わんや、もしかしたら、SAOサバイバーなのかもしれない。

しかし、相手は目立った防具をつけているわけではなく、紙同然の装甲。

「やれぇぇぇ!相手は紙装甲だ。囲んでしとめてしまえ。」

ランスを持ち、全方位から、サラマンダーが突進をするが全て躱されてしまう。

「な、なんで当たらねぇんだよ!!」

「は、早すぎる!なんだよ!あの動きは!!」

ケットシーの特徴である優雅な身のこなしを駆使して繰り出される曲芸師顔負けの動きと背中にある羽を自由自在に使いこなし、攻撃と回避を繰り返す様子はまるで、空中でステップを踏み、サラマンダー相手にダンスを踊っているようである。そして、その華麗な動きは、まだ誰にもとらえられていない。

「く、くそぉぉぉぉ!なんであたらねぇんだよ!」

「ぎゃぁぁぁ!腕がぁぁ!」

突撃をしてきたサラマンダーの腕がとび、地面に落ちると、ポリゴン片となり、消滅する。
ケットシーの装備は『ウィンド・カッター』の二刀流。
その刃は、とにかく薄く、刃渡りは30cmにも満たない『短剣』の部類に入り、しかも、他の武器と打ちあわせると、簡単に砕け散ってしまうどうしようもない武器だが、装備すると、風の抵抗を減らし、さらに部位欠損に相当のボーナスがつく。

先ほどから、ケットシーが狙っている箇所は首。
つまり、一撃の理由は、首の部位欠損。つまり、首切断。しかし、なぜみんなそこを狙わないかというと、首をピンポイントで狙うのは相当難しくさらに、首は急所に指定されており、ダメージも大きくなるため、当然のことながら、備えも万全。特に、サラマンダーのランス部隊などは重鎧に守られており、関節部分の僅かな隙間を狙わなければならない。少しでも外せば、攻撃を鎧に弾かれ、反撃を食らってしまう。

「くそぉ!なんで当てられるんだぁ!」

そして、鎧の間を狙える数少ないうちの一つがこの『ウィンド・カッター』である。
振り下ろされる槍や剣を身体を小さくし、捻り、飛び越えるように躱して、相手の懐へと接近し、切り裂く。と、同時に踏め台にして、次の標的を狙う。アクロバティックな動きで攻撃を全て躱し、一撃必殺必中のヒットアンドウェイによって、部位欠損または、そのままエンドフレイムと化して、また一人また一人とやられていく。

強い…しかし、美しいとも思える畏れを抱かせる。

艶のある長髪が風になびき、滑らかな動きはダンスを彷彿とさせ、異常なまでに的確な斬撃と、全てを躱す反応速度。そして、当たれば即死の状況で相手に超接近を繰り返す度胸。

ラー君と呼ばれたケットシーのダンスが終わったころには、襲撃してきたサラマンダーたちは見当たらなくなっていた。







「アスナさ〜ん、サクヤさんがまだキリト君のことを狙ってて、今度は直接交渉させろって私に頼んできたんでよ。」

「それ、絶対にキリトの奴を誘惑しようとしてるわね。アスナもうっかりしてたら、夫を奪われるよ。」

「そんなの、ぜぇぇぇたっい!だめなんだから!リーファちゃんもサクヤさんを絶対にキリト君と会わせちゃダメだからね!」

「キリトさん、もてもてですね〜。」

チラッとシルフ族の領主サクヤにあって、自分には無い物を見ると声を張り上げてリーファに念を押すアスナ。しかし、どっちもタイプは違えど、超が付くほどの美女と美少女。やはり、自分に無い物に嫉妬したり、羨ましいと思ってしまうのは、まだまだなのか。と考え、小さくため息をつくアスナ。
現在、新生アインクラッドの22層にあるログハウスで他愛ないおしゃべりをしているアスナ、リーファ、リズベットとシリカ達とお気に入りの揺り椅子に持たれて鏡餅のようにお腹にユイとフェザーリドラのピナを乗せて、気持ち良さそうに寝ているキリト。
そして、我関せずと言わんばかりに一人本のページをめくるシノンだが、アスナ達の話が気になるのかケットシー特有の猫耳が時折、ピクピクと動いている。やはり、普段クールな態度をとっているが女子なだけあって色んな話題に興味がそそられている。


「そういえば、ライトっていうプレイヤー知ってる?」

聞いたことのないプレイヤー名を出され、頭上にハテナマークを浮かべる三人。だが、唯一シノンだけが疑問とは別のリアクションをしていた。他の面々は気づいていないが……

「なんかね、黒髪のケットシーで傭兵をやってる人だって。たまにアリシャさんがシルフ寮に遊びに来る時に護衛でついてきてて、わざとサクヤさんに見せつけるようにその人に抱きついたり、腕を絡ませたり、膝枕してたり、写真目せつけたりして自慢してて、サクヤさんなんか額に青筋浮かべて今にもキルしそうで止めるのに苦労したよ。」

決してサクヤが男性プレイヤーから、人気が無いわけではない。むしろ、圧倒的な人気から領主に選ばれるほどの人気度を得ており、しかも時たま行われるトーナメントでは上位に食い込むほどの実力者であり、しかも大和撫子風の超美人。だからこそ、高嶺の花過ぎて男どもが寄り付けないだけなのかもしれないが、リーファ曰く一緒にサクヤさんが一緒に歩いている男性なんて護衛の人ぐらいだとか……

「まぁ、サクヤさんに男が寄り付かないのは仕方ないか。」

「せいぜいあんたのところの領主さんに釣り合いそうな人なんてユージーンぐらいじゃない?」

しかし、想像をしてみるもすぐに首を横に振って否定する。「ユージーンに恋人とかありえないわ。」と口を揃えて言った。
………ユージーン哀れ。





「でね、そのライトって人はね、相当強いらしくて、前に荷物車がサラマンダー10人ぐらいに襲われた時にたった一人でサラマンダー部隊を倒したんだって。」

「……なんかデジャブを感じる」

何かを思い出そうとして、こめかみの辺りを抑えが、これが当てはまるのは一人しか知らない。それは、すぐ近くで寝ている最愛の夫なのであるが……
それを思い出してキリトの方へと目線を向ける。

「あはは、そういえば、キリト君だって同じ様なことしてたね。まぁ、キリト君の時はユージーン将軍をデュエルで負かして、撤退させたんだけど、ライトって人は全員切り捨てたらしいよ。」

「「「えぇ!?」」」

3人揃って驚きの声をあげる。サラマンダーといえばALOきっての武闘派種族であり、その練度も高い。そして、10人を1人で切り捨てたとあっては、並の腕ではない。
過去にリーファとキリトがルグール街道にて12人のサラマンダー部隊と戦闘になったときはピンチになりつつも、ユイの作成でなんとか勝利を収めたが負けてもおかしくなかった。

「うひゃー、それってキリトに匹敵するレベルじゃない?」

「まぁ、キリト君ならやりかねない………って否定出来ないんですが。よくよく考えるとむちゃくちゃですよね。ライトさんはアスナさんやリズさん達と同じSAO帰還者の人じゃないかって噂もありますよ。」

「SAO帰還者なら出来なくもないけど、ソロで何十人も相手にして戦って勝つ人なんて、滅多にいないし。そんなに強いなら、攻略組のなかでも目立ってると思うし、第一ライトなんて名前は聞いたことないな。」


実際にデスゲームとなったSAOの中で実力の持ち主は攻略組に属していて少なからずあだ名や名声は聞くことになる。しかも、ソロで大勢の敵に挑むのはゲームオーバー=死の世界のなかでは、死にに行くようなものでそんなことをするのは、それこそ、キリトぐらいしかいない。
さらに、トーナメントで上位に入賞するリーファやアスナでさえ、一体多の戦闘は無理である。リーファの戦闘スタイルは正々堂々一体一という状況で存分に力が振るわれるため、相手が多数となれば、死角から攻められてやられてしまう。
アスナは使用武器であるレイピアの特徴から、大人数が相手では、後れを取ってしまう。


「ライトって軽いって方の意味らしくて、相当速いらしいですよ。突然目の前に現れたと思ったら、背後をとられていたりだとか。速すぎて、残像が残るだとか。とにかく、速いらしいです。」

「へぇー。ところで、ライトさんが使ってる武器ってなんなんですか?」

「短剣の二刀流らしいよ。」

「「「二刀流!?」」」

またもや驚嘆の声をあげて、キリトの方を見る。
二刀流はその扱いがとんでもなくらい難しいらしく何人も挑戦したそうだが、断念したとか。
そして、現在唯一二刀流を使えるキリトはとんでもない強さを見せている。例えば、二刀流でALO最強と言われていたユージーン将軍を倒したり、ソードスキルの連続発動なんてチート紛いなことをしてくれたり、とにかく凄いのだ。


「へ〜、今度手合わせお願いしたいな〜。」

「だ〜か〜ら、アスナはバーサークヒーラーなんて呼ばれるのよ。」

「やめてよ、りずぅぅ。その名前を出さないでよ。結構恥ずかしいだかね。」

「身から出た錆よ。元々サポート重視のウンディーネが突然ワンドから、レイピアに持ち替えて、前線で戦ってたら、誰だって似た感じのあだ名を思いつくわ。」

「違うってばー!」

顔を赤くしながら、否定するアスナが面白いのかさらにからかうリズベット

「夫が夫なら、妻も妻よね。夫婦揃ってバーサーカーなんだから。」

「あたし、戦闘狂みたいに言わないでよ。」

「自覚なしですか。重症ね。」

「//ち、違うってば〜〜//」


リズとアスナの口論が次第に大きくなるがキリトは一向に目を覚ます様子がない。
何故ならライトの名前が出たあたりから、冷や汗をかきながら、必死に寝たふりをしているからである。
そして、ただ一人キリトの異変に気づいていたシノンは周りに気づかれないようにクスクスと笑っていた。



 
 

 
後書き
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