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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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ゼロ魔編
  004 決意──らしきもの

 
前書き
すいますん。ちょっと(?)超展開気味です。 

 

SIDE 平賀 才人

「491…492…493…494…495…496…497…498…499…500! ……はぁはぁはぁ、疲れた~。今日の基礎練終了。……最早、基礎練をしないと調子が悪くなる様になってきたな」

人間が存在しない世界。今日も俺は基礎トレーニングをした後、〝見聞色〟と仙術で周囲に猛獣等が居ない事を確認して、地面に大の字になって寝転ぶ。

「ヘックション!! ……ふぅ」

……この世界は人が存在しないので、温室効果ガスが殆ど──火山くらいからしか排出されて居ないので少し気温が低くなっているが、俺は少し慣れていないので寝転びながらくしゃみをして、呼吸を調える。

「うーん、どうしよう」

俺は唸る。〝原作〟の開始まで1年を切ったところで、俺はあることを思い付いた──と云うか、気になった。

「ハルケギニアでの生活はどうしようか。……ぶっちゃけ、あっち──ハルケギニアに生活拠点を作ろうか」

思い立ったが吉日。俺は直ぐに行動に移すためにスキルを行使する。

「時期は2年前……大体それくらいか。こっちの俺は“別魅”での分身をおいてけば良いとして、稼ぐ方法はハルケギニアに行ってから考えるか。……“腑罪証明(アリバイブロック)”」

「おい! こいつ、いきなり現れたぞ!」

「目撃者は消せ!」

「もう……いやぁ……」

野太い男声を耳に入れながら才人は目を開ける。……そこには、あられも無い姿の身体中痣だらけで、咽び泣いている少女と、下半身の欲棒を腫らしながらその少女を囲んでいるモノ、少女に向かってひたすらに腰を振りながら打ち付けているモノ。

(何、あれ)

――プツン

それらを見た数須臾後、この状況を理解した──理解してしまった。そして、どこに向けて良いか判らない感情に支配された。……すると、俺の中で何かが切れる音がした。

(ああ、この感情……なんだろうか)

<相棒、たった今〝至った〟ぞ。……まさか〝憎悪〟がスイッチだったとはな>

ドライグ何を言ってるかは判らないが、本能的に〝至った〟事を悟った俺は、沸々と煮えくりかえる(はらわた)を抑え込む様に言葉を紡ぐ。

「〝禁手化(バランス・ブレイク)〟」

『Welsh Dragon Balance Breaker!!』

俺は脈動する心臓を抑える様にその言葉を紡ぐと、いつの間にか左手に顕現していた“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”から溢れれる紅蓮のオーラが俺の身体全身を包み込む。

<相棒はいつの間にか〝誰かを憎む〟と云う感情に蓋をしていたのをそれが今、取っ払われたのだろう>

俺の身体が紅蓮の鎧──“赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)”が俺の身体の全身を覆う。

“赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイル・メイル)”──〝本来〟、“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”は10秒毎に倍加していく神器ではあるのだが、〝禁手(バランス・ブレイカー)〟である“赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)”は〝10秒毎〟と云う制限を廃し、一気に最大まで倍加させる事が出来る。

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

(今なら何でも出来る気がする。……〝これら〟をスッキリと消せる!)

機械的な音声と共に俺の力が最大まで一気に倍加され、一種の高揚感に満たされる。

(場所は何処かの室内。排除対象の人数は5人。少女は“絶霧(ディメンション・ロスト)”で保護して──)

周囲の状況を確認しながら、頭はクールに──されど、心はホットにする。俺の変貌に呆気を取られいる内にこの場の収拾をつける算段を立てる。

「なぁ」

「ひっ」

「命乞いとかはいい。……だから、汚ならしく──死んでくれ」

5人居る内の1人の男が俺の殺気の込められた声に圧され、戦慄き後退りをする。〝鎧〟のマスクの中で皹割れた笑みを浮かべながら〝それら〟に近寄って行く。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

近くには雷が落ちた様に焼けている小屋。……戦闘と云う名の蹂躙は恙無く終わった。

……だがしかし、少女の命を守れても少女の心は護れ無かった。……〝あれら〟に挙式間近だったボーイフレンドを目の前で殺されて、犯され、蹂躙される日々に堪えきれ無くて──

―お願いします。私を──私を犯してもいいですから、どうか私を殺して下さい―

眠らせた少女が目を覚まして、状況を確認しての開口一番はその言葉だった。〝あれら〟に犯された記憶と事実を〝無かった〟事に出来ると懇切丁寧に教えても、少女は『殺して下さい』の一点張りで、頑として聞かなかった。

……さすがに物理的に殺すのは偲び無かったので“ニフラム”昇天させた。

―ありがとう―

名前も知らない、あの少女の事切れる寸前で流した涙を俺は絶対に忘れない。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

少女の遺体を弔って1時間。まだ気持ちの整理は付いていない。

「なぁ、ドライグ……」

<何だ、相棒>

「俺さ、知らなかったんだ。……人殺しの感覚なんて、〝こんな事〟があるなんて」

<知っていた方が怖いさ。……相棒の居た前世の世界では〝異常〟は無かったんだろう>

「……ああ。テレビのニュースとか新聞で殺人事件とかの報道を見ても、俺とは全く関係の無い──それこそ実体の無いフィクションの様に思えて仕方が無かったんだ。……今でも〝(チート)〟なんて貰っていい気になってた。……本当の意味で俺は〝生きて〟なかった」

<良かったじゃないか>

ドライグの澄ました声が癪に障る。……が、言わんとしている言葉は何となくだが判る。

「一応訊いておこう──何でだ」

<人間は間違えても学習する事が出来る生き物だと、歴代所有者の1人が言っていた。……今回の件を境に、考え方を改めれば良いじゃないか>

「人を5人も──いや、6人も殺してしまった。しかも、男5人にいたっては人間の形をした〝ナニか〟にしか見えなかった……!」

<言っておこう。あんな唾棄すべき下郎共の命を相棒が気に病む必要は無い>

ドライグの静静とした語らいは続く。

<あの手の輩は温情で見逃したとしても、また同じ罪を重ねる可能性が高い。……俺の経験則上な>

「ああ、そうだろうよ、そうかもしれない。……でも、俺は何となくだがこの気持ちを忘れちゃいけない気がするんだ」

<ふっ、判ってるなら良いさ。……ここで相棒が俺の意見に賛同するようだったら、諌めていたところだ>

「ありがとよ、ドライグ。決めたよ。……俺は人を殺さない──とは言わない。だが、人を殺した事から逃げない。……もし俺が道を間違えそうになったら、俺を叱ってくれよ?」

<いいだろう。相棒の誓いは確かに、この天龍の片割れであるドライグが聞き入れた。……そして、相棒が道を違えそうになった時は俺が忠言する事を約束しよう>

(ああ、俺は幸せ者だな)

こんなに良い友人──友龍(?)と友誼を結ぶ事が出来るのだから……

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

とりあえず、ハルケギニアでのお金に当たる物を手に入れる為と、この世界の情報を集める為に、最寄りの大きな街に向かう。

「方角だけ“答えを出す(アンサートーカー)”で出して、後は徒歩にするか」

最近“腑罪証明(アリバイブロック)”に頼ってばっかりだったし、ロクに転移先の設定を詳しく決めて無かったが故に〝あんなモノ〟を見た所為で、当分“腑罪証明(アリバイブロック)”を使うのは憚られる。……後悔先に立たずとは正にこの事だろうか?

「あっ、そうだ。この世界には魔法があるんだったな。……〝あいつら〟も使ってたし」

最寄りの街へ向かう道中。俺はとある事を思い付き、数年振りの“有言実行(ネクストオネスト)”を行使する。

「〝俺は【ゼロの使い魔】の魔法を使う事が出来るし、使い方も判る〟」

久方ぶりの知識が頭を蹂躙する感覚。違和感はあるものの、痛みは特にない。……コモン・マジック、系統魔法、精霊魔法、虚無魔法の使い方が流れ込んでくる。

「杖も買う必要が有りそうだ」

どうやら、精霊魔法以外は杖が必要な様である。それに、精霊魔法を行使しようにも、その土地の精霊と契約する必要があるらしく、精霊魔法以外の系統魔法等も杖との契約が必要な模様。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

あれから1週間。街──王都トリスタニアに着いた。

杖との契約を済ませ、今まで集めた情報を吟味し整理整頓する。

「文明レベルは地球で云うところの中世のヨーロッパで、貴族のみが使える魔法があり、宗教はブリミル教とか云うのが席巻中。……こんなところか?」

<だな。俺も神器に封印された頃の事を思い出した。……あの頃が懐かしいな──あの時のキリスト教が似ているな>

(それはお前の世界だけの話だろうに……)

思い出に浸っているドライグは放っといて、俺は換金所に向かい〝倉庫〟──“王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”に突っ込んでおいた金銀財宝を換金する。

……因みに、金銀財宝は【ハムナプトラ】な世界や【インディ・ジョーンズ】な世界からガッポリガッポリと──少なくとも17代は遊んで暮らせる程の金銀財宝を回収してきた。……後、経年的な劣化は“大嘘憑き(オールフィクション)”で〝無かった〟事にしたから、ほぼ当時の状態で〝倉庫〟に眠っている。

閑話休題。

怪しまれ無いように換金をいくつかの店に分けて行う。

SIDE END 
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