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少年少女の戦極時代Ⅱ

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禁断の果実編
  第66話 ひた隠して


 人のいない穴場の自販機スペースで、今日も光実は思案にふける。

 組んだ膝の上にはB5のルーズリーフがあり、現在の勢力図が書き込まれてある。チームにいた頃から、光実には現状を書いて頭を整理する癖があった。

 ――光実が退院してからしばらく、光実の直属上司は凌馬に代わった。元から凌馬預かりだった身元が、正式に部下になったと言ったほうがいいか。

 凌馬の部下という立場で光実は活動を続けた。何の? ヘルヘイムの森の情報収集をである。凌馬の下が一番情報量が多いからだ。

 貴虎は咲に拉致され(咲を知る光実は陰で大いに笑った)、シドが離反した開発部門では、高校生の手も借りたいのが実情なのだ。さらには、対インベス化ワクチン研究も、検体の碧沙が貴虎もろとも拉致されたことで凍結した。結局はプロジェクト・アークでユグドラシルは動いている。

(一番手っ取り早いのはやっぱり、オーバーロードを探し出して、禁断の果実とかいう物の在り処を聞き出すこと、か)

 ポケットに入れていたスマートホンが鳴動した。メールだ。光実は画面をタッチして受信フォルダを開いた。
 そして、スマートホンをルーズリーフもろともポケットに入れて立ち上がり、凌馬のオフィスへ行くべく歩き出した。





「シドからメールが来ました。有体に言うと、あなた方を裏切って自分に付けって内容です」

 光実はスマートホンを凌馬に突きつけた。
 凌馬は一度だけスマートホンと光実の顔を見比べ、スマートホンを取って読み上げた。

「人選ミスも甚だしいね。よりによってキミに声をかけるなんて」
「――侮辱と取りますよ」

 凌馬は大仰に肩を竦めた。

「あなたはどうするの、光実君」
「それを答えるべきは僕じゃないでしょう。ねえ、プロフェッサー凌馬?」

 上司はあなたなんだからあなたが指示を出せ。光実は暗にそう伝えたのだ。

 今やユグドラシルのヘルヘイム関係の実権は、凌馬が掌握している。呉島貴虎の消息途絶より前から、ユグドラシルという船の舵はこの男が握っていた。光実もまた、一度は碧沙がこの男の人質とされたことを知っていた。

「では光実君。一つ任務を与えよう」
「何ですか」
「シドに付いたフリをしたまえ。それでシドが禁断の果実を手に入れるようなら、横から掻っ攫って我々の元に持ち帰るんだ。できるかな?」
「そんな上手いこと運びますかね」
「さあ。あくまで保険だ。そこまでの期待はしないでおこう。やれるね? 呉島光実君」

 キミは我々を裏切ったりしないだろう? ――凌馬は言外に光実にそう突きつけた。

 正式な部下になってから分かったが、この戦極凌馬という男は、他人を信じないくせに、周りに他人がいないことをひどく厭う。今の命令も、光実に釘を刺したのだ。

「――了解」

 全てを呑み込んだ上で、光実はあえて冷たい声で返事をした。





 光実はメールにあった待ち合わせ場所でシドと密会し、真意を悟られることなく無事仲間になることができた。
 ビートライダーズと優等生の二重生活を送ってきた光実だ。ユグドラシルの一員と裏切り者、二つの仮面を使い分けることなど造作もなかった。


 そしていざシドと二人でヘルヘイムへ赴いて、あまりにも早い邂逅を果たした。
 全身を翠に覆われた、女型のオーバーロードに。

(赤い奴だけじゃなかったのか。他にも大勢いるかも。生き残りが1体だと思った僕の落ち度だ)

『お前タち、禁断の果実ガ欲しイのカ』

 言うなり、翠のオーバーロードは杖槍から青い炎を放った。ヘルヘイムに入った時点ですぐ変身していた龍玄とシグルドは、青い炎を避け、ソニックアローとブドウ龍砲を同時に打ち込んだ。

 シグルドが弓で斬りかかり、彼が離れた隙に龍玄がブドウ龍砲を撃ち込む。ドライバーの性能差を考慮に入れての前衛と後衛だ。

『こりゃあもしかして』
『二人がかりなら、何とかなるかも』

 即席のコンビネーションが功を奏してか、翠のオーバーロードを押し始めた。だがこの戦果に光実はむしろ不吉なものを感じていた。

(いくら2対1とはいえ、“森”の侵略の生き残りがこんなに簡単に僕らで何とかなるものか?)

 ついに翠のオーバーロードは膝を突いた。畳みかけようと龍玄がカッティングブレードに手をかけた時だった。 
 

 
後書き
 ついに光実とレデュエが出会いました。シドと一緒にですが。
 ここのレデュエは座り方とか女らしいなあと感じたのは自分だけでしょうなあ。

 展開自体は原作通り。
 ミッチは一旦凌馬の部下になることを選びました。一旦。
 凌馬の印象は当時のものなので原作と違っていますがこのまま罷り通る!! 
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