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明日の日記

作者:PC眼鏡
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とりあえず

 
前書き
お手柔らかにおねがいします 

 
今日起きたことを日記に書き記す
たいした内容でなくてもいい
未来の自分が今日起きたことを頭の片隅にでも置いてくれるように

今が忘れられないように・・・



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(03:00)
開けっ放しだった窓から入り込む夜明け前の冷たい風が体を冷やす
風邪をひきたいわけではないので、窓際まで体を引きずっていき窓を閉める
再び眠りに落ちる

(09:00)
 起床 → 歯磨き → 朝食(たまに食べない) → 洗い物
ここまでで1時間弱
10時から大学の研究室なので家を出る

(10:00)
研究室に到着。
4人の同級生との相部屋
広さは20畳ほどあるが、実験器具及び積年の資料によって部屋の半分が占拠されている

(12:00)
昼食をとるため学食に移動
今日のお昼はかれーう丼だぞっ  
食後、速やかに研究室へ

(17:00)
研究室終了後、帰宅

(18:00)
バイトに出発

(21:00)
帰宅
夕食をとりながらアニメ鑑賞

(00:00)
就寝(予定)


 「 やり直した回数 : 2回  」


今日は2回もやり直してしまった
おかげで何事もなく一日が終わる

人生なんてやり直しがきかないRPGと一緒だ
違うのは「死んだら終わり」ってところだけ

RPGの主人公は気楽でいいよね。
敵BOSSとの戦いで体を八つ裂きにされても、セーブポイントからやり直せるんだもの
しかも彼らの記憶はなくなってても、ゲームをしているプレイヤー(現実)は
BOSSがどんな攻撃をするのか分かった上で再戦の対策がとれる

今、僕らが体験してる「現実」ってゲームはそんなに甘くないみたいだ

でも仮に、現実でも過去に戻れたら・・・




戻れたとしたら・・・・



現実でもセーブポイントに戻る事ができたらどんなに攻略が楽だろう





-------






この世界は創造と想像でできていると思う
ある人がひらめき、ある人が具体的なイメージを作る。ここまでが「想像」
「想像」を元に、夢を形にする手段を考える。これが「創造」
現代では人間の「想像」力によってあらゆるものが具現化されている
CGやアニメなど「創造」の手段は様々ではあるが。

僕が興味を持ったのはそのなかのひとつ
きっと過去に大きな失敗をした人が「想像」したのだろう『過去に戻りたい』と。
つまりは『タイムリープ』・・・はい、ここ重要です

僕は過去に戻ることができる
このことは誰も知らない   ・・・今のところは

数えきれないほどの過去を改変してきた
・・・自分の都合のいいようにね

まぁ、いい人生だったよ
自分に関わる全ての問題を事前に解決して思うがままにここまでこれた
誰とも対立せずここまでこれた。

「なのに・・・」

ついさっき女神様(たぶん)が天界から僕の部屋に降りてきた←(いきなり)

「あなたにお伝えしたいことがあってここまで来ました
 説明が回りくどいと伝わらないのでざっくり言わせていただきます
 あなたは過去に戻れる。それはいいですが、戻った時間の10倍の寿命を消費するのを
 分かった上で使っていますか?
 かなり強力なので私の手札に入れていましたが、寿命が残りわずかになったので
 忠告にきました。計画的にお使いなら問題ないのですが
 これまでただの一度も時間を取り戻していないので、心配になって・・・」

・・・かわいいなあ

漆黒の長髪にポニーテールがヒザまでかかり、白と青の巫女服。身長は170くらいあるだろうか
体のラインが流れるようにゆるやかで、女性の前と後ろの脂肪が多すぎない
上着の肩の部分には切れ込みが入っており、そこからのぞく肩は細く華奢だ
そんな格好で心配そうにこちらを見ている

「はぁ・・・」

よくわからんけどこの人美人さんだなぁ。しかもなにやらご心配のご様子
感情をここまで表に出す人も最近少なくなったし
やっぱ神の世界は生まれるときに顔とスタイルに補正が入るのだろうか
・・・人じゃなくて女神だったっけ。 だったら美人じゃなくて美神か

「はぁ・・・じゃないですよ!しっかりしてください!!
 あなたを引くために5枚入りのブースターパックを何回買ったと思ってるんですか
 あれって意外と高いんですよ!」

「はぁ・・・すいません」

「あなたにいなくなられると困るんです。
 減った寿命はちゃんと延ばしてくださいね!」

ほほう、なるほど。 減っても戻せるのね?
そんな便利なのもならこれからもどんどん使わせていただこうかしら

「具体的には?」

「今までと逆のことをすればいいのです。あなたが未来に進んだ時間の10倍の時間が
 あなたの寿命に加算されていくはずです」

はず? どゆこと?
女神(仮)さまも把握しきれてないんですか
なんだか心配になってきた・・・

「・・・それって、僕の未来を完全に取り戻すことができないですよね?
 10倍の時間を戻すために使う1倍の未来は戻ってこないのなら、つまり
 100時間を返してもらうための10時間は無駄になって、90時間しか
 戻ってこないじゃないですか」

これまで巻き戻した時間に比べたら9割回復でも
文句を言えないのかもしれないと思うが・・・いやいや
そこは全部返してもらわないといけないのではないだろうか
自分では諦めがついているが、ここでゴネて人生が完全に戻るのなら
少々クレームをてけてみてもいいのではないだろうか!
ゴネ得 ゴネ得!

「んー、いままで好き放題やってきた報いですかね?」

返す言葉がなかった。他人の言うこと何でも反対運動理事長の僕が・・・
そうだよね、これまで散々遊んできたもんね
1割で済むなら安い代償だと思う・・・ようにしよう
文句言ってごめんなさい

「じゃあ、よろしくお願いします」

女神はぺこりとお辞儀をして、玄関から出て行った
来るときはいきなり部屋に出現したのに、帰りは徒歩かよ・・・

「・・・そこのタクシーさん! 私、乗ります!・・・」

まだ徒歩のほうが女神らしいのではないだろうか
タクシーを使おうとは、天界(あるのか知らないけど)は意外とすぐ近くにあるのかもしれないな
バイトが終わり、部屋でのんびりしていたのですっかり日は暮れている
僕の住む4階の部屋からは街の明かりと空の星が半分ずつ見えている

日ごろからアニメを見ているおかげだろうか
この状況に全く動揺していない自分が誇らしい


・・・結局タクシーに乗れたのだろうか
自分の人生よりも、他人(他神?)の心配をしながら僕は眠りに落ちた




---------





時計の短針はまだ頂点を回っていない
変な時間に目が覚めてしまった
今日起きたことを、忘れてしまわないうちに何かに書いておかなければいけないような気がして
僕はペンをにぎった。   ええっと・・・

「女神?、来る」

「命少ない」

「今を犠牲に未来をもどす」

「女神?かわいい」

下手な文章よりも、キーワードだけの方が後から見て分かりやすい
まっさらな大学ノートの1ページ目。
これまで日記が3日続いたことなどなかったが、今回は頑張ろう。うん。
今までは趣味程度だったから続かなかったんだ
そこに必要性があれば続く   ・・・はず

書き終わったノートを閉じて、とりあえずお風呂に入る
一人暮らしの風呂といえば、たいていがシャワーなのだが

そしてシャワーを浴びながら再び考える
今日の出来事は現実で、当事者は自分
寿命が残り少ないってことと、それを元に戻す手段があること
今を犠牲にして未来を取り戻す必要があること

体を拭いてスウェットに着替える
まだシャツ一枚で寝るには肌寒い

大学入学当初は部屋にベッドがあったが、今は解体されて部屋の隅に眠らせてある
理由は荷物が増えて部屋が狭くなったからだ
よって、寝るときは布団を敷いている

敷いた布団に横になると今まで見下ろしていた部屋の中の物が上からのぞきこんでくる
冷蔵庫、ソファ、本棚、テレビ
彼らは動かないが、僕の視点が変わることで見え方も変わる
本質は何も変わっていないのに、受け止め方が全く異なる彼ら

「・・・」

理系の人間なのに考え方が文系だと、高校の頃よく言われていたのを思い出す
センター試験では国語と社会はほぼ満点がったが、数学は散々な結果だったのだ

自分の感覚でしか物事を判断できない人間だと最近では自覚している
先人の発見した公式や定理に魅力を感じないもそのせいだろうか

今まで何気なく過ごしてきた日常も、少し見方を変えれば輝いて見えるのだろうか
これまで目にも留めなかったことが興味の対象になるのだろうか
この世に生を受けて、天に召されるまでの限りある時間を尊いと思えるだろうか

「やってみないとわからない・・・・・か」

時間を進めたことは一度も無いので、やり方はわからない
女神?は巻き戻しと逆のことをすればいいと言っていた
そのままの意味ならやり方も全く正反対なはずだ

今までやってきた巻き戻しの方法としては

 1、戻りたい瞬間のイメージをする
 2、そのとき自分が見ていた情景を明確に思い出す
 3、ぼんやりしていたイメージから、徐々に鮮明なイメージへ
 4、イメージを完全にクリアに思い出した瞬間、今の記憶を残してその時間に戻る

という手順を踏んでいた
時間の早送りがこの逆というのならば

 1、進みたい瞬間のイメージをする
 2、そのとき自分が見ているはずの情景を明確に想像する
 3、ぼんやりしていたイメージから、徐々に鮮明なイメージへ
 4、イメージを完全にクリアに想像できた瞬間、今の記憶のまま未来へ進む

といった感じだろうか

ふむふむ、意外と簡単にできそうだ

とりあえず、未来の自分が見るはずの光景を想像する必要がありそうだ
いちばん手っ取り早いのは睡眠中だろう
目が覚めるまでは、間違いなくこの部屋の中にいるのだから
目を覚ました瞬間の自分の視界に入るものなんて天井しかない

「よしっ」

今から目が覚めるまでの時間まで・・・僕は跳んだ

意識がぼやけ、次第に鮮明になっていくいつもの感覚




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「 眠い。」

そりゃそうですよね
寝る前の意識そのままに朝になってしまえば、体は休んでても記憶はそのままなわけで
当然ねむいわけで
でも朝なわけで
起きないといけない、だけど眠さMAXなわけなのです

「・・・睡眠中はやめとこう」

ショートカット成功の喜びより強力な睡魔の誘惑と戦いながら
僕は身支度を始めた








 
 

 
後書き
しばらく日常が続きます 
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