SWORD ART ONLINE ―穿つ浸食の双刀―
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02:出会い
前書き
今回ヒロイン視点ありです。ついでにハリンの呼び方が「ハリンさん」から「ハリン君」へw
あの日の夜、宿に戻った僕は爆睡してしまった。集中力と精神を限界まで研ぎ澄ませた後だったので、当然疲労も激しく、襲ってくる睡魔も中々強敵――睡魔も強敵とかるのか?――だった。
「何にせよ······先ずはポーションと結晶類を補充しに行かないと······」
僕はソファーから立ち上がり、扉を開いて街へと飛び込んだ――
* * * * *
アイテムの補充を終えた僕は、理由もなく街をぶらぶらしていた。うん。正直暇だ。する事もないし、かといって宿に戻ってもつまらない。かと言ってする事があるかと言われれば言葉に詰まる。ないのだから。
「何にせよ、暇だね······食べ歩きでもしようかな」
呑気に呟き、近道をする為に路地裏を通る。刹那―――
「――て下さいッ!!」
声が聞こえた。それも、この近くから。緊迫した声······揉め事か何かだろうか。いい事ではなさそうだ。ちょっと行ってみよう――――。
* * * * *
「放っておいて下さいよっ、何なんですか貴方達はっ!?」
私は、必要以上に声を掛けてくる男性三人組にうんざりしつつ、もう何度目かも分からない叫びを上げていた。しつこ過ぎる。しつこい男は嫌われると習わなかったのだろうか?
「んな事言わないでさぁ、俺等と遊ばねぇかぁ?」
「遊びませんっ!!」
「ギヒヒッ」とか言いながら愉快そうに笑うような変な集団となんか、絶対遊ぶもんか。心に決め、内心必死に路地裏から出られる道を探す。
「ちぇっ······ノリが悪いな···おい、テメェ等」
後ろに立っていた男性二人が、リーダーの命令を聞き、私に近付いて来て、腕を拘束する。
「な、何するんですかっ!?」
「いんやぁ、ノリが悪いツンデレ嬢ちゃんをしつけてやろうかとおもヘブッ!?!?」
突如、リーダーの声が中断され、真横の壁に吹き飛んだ。何事かと思った私は顔を上げる。
――そこにいたのは、白馬が似合いそうな少年――て言うか、少女······?――だった。歳は同じくらいだろうか、長い金髪を半ばで束ねており、身を包むコートもまた、金。灰色のズボンに、茶色ブーツ。俊敏な動きが出来そうな服装だ。
「君、大丈夫?」
少年は振り返ると、私に尋ね、反射的に「はい」と返事をしてしまう。
「ならよかった······ふっ······!」
瞬間、少年は私の前から姿を消した。刹那、私の後ろで腕を拘束していた男性二人が悲鳴を上げ、私の真後ろの壁に頭を埋もれさせていた。視界の端で紫色の光を捉えたので、おそらくソードスキルを発動したのだろう。唖然とする私を横目に、少年は汚物を触ったかの様に両手を擦り合わせてはたいた。
「さ、ここは危ない。一先ず、人通りの多い所に行こう」
「ふぇっ······あわわっ······!」
手を握られた。それも、こんな美少年に。今の私の顔は、恐らく真っ赤になっているだろう。少年は気にした素振りはないが、私は気にする。こんな美少年に手を握られれば、どんな女性だって気にするだろう。私は少年の手の温もりをもっと感じていたくなって、手を強く握り締める。少年は一瞬驚いたような顔をするが、直ぐに微笑み、足を早めた―――。
* * * * *
少女をナンパから助けた僕は、人通りの多い所にやってきた訳だが―――
「―――な、何か僕等、凄い見られてない?」
「で、ですね······」
そう、何故か凄い見られるのだ。別に僕等は何かをした訳ではない。特に何も問題は―――
「あ······」
ふと僕は、握り合ったままの手に視線を落とす。瞬間、僕の中に幾つもの考えが浮かぶ。
――これのせいかっ······!――
そう、少女を助けてから今の今まで、僕達は手を繋いだままだったのだ。一瞬たりとも離さず。当然、こんな事を街中でどうどうとやっていたら、カップルか何かと思われてしまう。そう思うと、僕の顔は一気に赤くなり、同時に熱くなった。
「あっ······!」
少女もそれに気付いたのか、顔を真っ赤にして俯き、何故か名残惜しそうに手を離す。両者共に気まずく思ってしまい、行き場のない沈黙がその場をさまよう。
「えっと······その、ごめんっ!!」
「えっ、あ、否、全然いいですよっ!?······ちょっと、嬉しかったですし······」
「え···?何か言った?」
「ああっ、何でもないですっ!!」
最後の方は声が小さく、それのこの人の多い場所だったので、聞き取る事が出来なかったが、気にしないでおこう。取り敢えず、どうにかしてこの気まずい状態を何とかしないと。僕と少女の為にも。
「えと······取り敢えず自己紹介しようか。僕は、ハリン。君は?」
「ハリン君······覚えました、私はオウカっていいます、オウカでいいですよっ!」
オウカ······少女の名前。僕程ではないが、珍しい名前だな。僕の場合はリアルネームからきてるけど、オウカはどうだろうか。まぁ、SAOではリアルの事を詮索するのはマナー違反なので、憶測に止めておくが。
それはそうと、先程からオウカが何かを気にする素振りを見せている。まるで突如として出現したウィンドウを見るような――――
「――――あぁっ!?」
「ふぇっ!?」
今思い出した。この世界には、ハラスメントコードという物が存在する。男性が女性に意図的に接触する事や、性的目的で接触する事を防止するための。
ついさっきまで、僕は何の理もなくオウカの手を握った。それはすなわち、ハラスメントコードに引っ掛かってしまってう行為である。
「えと······悪いんだけど今目の前に出てるウィンドウ、Noのボタンを押してくれないかな。Yesを押されると監獄行きになっちゃうから······あはは······」
「えっ!?あ、はいっ、了解ですっ!!」
監獄行きという単語に目をぎょっとさせ、即座にNoのボタンを押すオウカ。これが九死に一生を得るというあれだろうか。
何処か微妙な空気漂う中、無言が続く。このままでは流石にお互いの居心地がよろしくないので、一先ず話題を切り出す。
「えっと、さ、オウカ。フレンド登録しない?その方が、何かあったとき楽だろうしさ」
その結果がフレンドにならないかである。基本現実ではあまり進んで会話に混ざるタイプでなかったので、しこは勘弁してもらいたい。
捕捉すると、この世界ではフレンドシステムという物があって、遠く離れているフレンドの現在地などを知ることが出来る。非常に便利なものである。
「いいですねっ、しましょうっ、ハリン君っ!」
オウカは大きく頷くと、ウィンドウを開くと、慣れた手つきでボタンを押し、僕にフレンド申請を知ることがてくる。自分から提案しておいて断るなんて非常識な事はする気がないので、当然その申請をオーケーする。
「えへへ、やったっ」
露骨に嬉しそうな反応をするオウカ。決して僕とフレンドになれた事が嬉しいという訳ではなさそうだし······あれか、フレンドが一人増えたから嬉しいのか。うん、きっとそうだ。そうに違いない。
僕が彼是勝手に考えていると、オウカがおずおずとした口調で尋ねてくる。
「そ、その······良かったら、私のレベリング、手伝ってもらえませんか······?」
「一人だときつくって」とオウカは付け足す。どうするか迷い、一瞬考えたが、僕には予定がないのだ。そう、実際オウカを助けるまで「何にせよ、暇だね······」とか言っていたのだ。予定なんてある筈がない。僕はオウカの提案を二つ返事で引き受けた。その時のオウカの顔は幸せに満ちたような顔だったが、恐らくそれはレベルを上げる事が出来るからだろう。僕等はお互いのスキル構成などを見せ合い――本当はそう簡単に見せては駄目なものなのだが、今は知らないと厳しいので仕方がない――準備をしてフィールドに向かった。
――何か、成り行きで凄い事になってしまったな······大丈夫、なのだろうか······?――
心の中で僅かに不安を抱きながらも表にはなるべく出さないようにし、僕は隣を歩く少女――オウカを少し見つめ、そっと溜め息をついた。
後書き
ハリン「ねぇ、作者」
うん?どうした、ハリン?
ハリン「僕って、最初はオリジナルの登場人物だったんだよね?」
ああ、そう言えば。それに、一人称も最初は「俺」だったしな。
ハリン「確か、兄弟に聞いたら《僕》の方が良いって言われたんだよね?」
うん。でも、何で急に?
ハリン「読者の皆さんにも知っておいてもらおうかと思ってね」
ならいいや。関係のない話しとなってしまいましたが、次回もお楽しみに!
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