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大阪の魅力

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6部分:第六章


第六章

「ちょっとな。今はな」
「阪神かて暗黒時代長かったんや」
「もう凄かったからな」
「ああ、昔はなあ」
「星野が来る前はな」
 その時のことを思い出すとだった。彼等は苦笑いになってしまった。
「負けて負けて負けまくってな」
「いつも最下位が指定席やった」
「巨人にも勝てへんかったしな」
「斉藤や桑田に抑えられて松井や高橋に打たれてな」
 ここでも巨人の話が出るのがまさに大阪であった。猛久は話を聞いてそう思ったのだった。その言葉を口には出さないがそれでもだ。
「けれどその阪神もや」
「今はこうした調子や」
「だから横浜もや」
「明日を見るんや」
「ああ、そうだよな」
 猛久も笑って彼等のその言葉を受けた。
「それじゃあ今はな」
「そのお好み焼き食ってや」
「ビールも飲んでや」
「楽しくやりや」
「そうさせてもらうな」
 こうしてだった。彼はそのお好み焼きとビールを飲み食いしながらそのうえで店の兄ちゃんや客達と楽しくやった。その店の名前と場所も覚えた。
「真田丸か」
 その真田という名前が彼の心に残った。
「いい名前だよ、本当に」
 こう言ってそのうえで覚えたのだった。そしてだ。
 ここ以外にも行き着けの店ができた。難波だけでなく西成や鶴嘴、北に福島に新世界にとだ。実に多くなった。
 それでだ。同僚にこう話すのだった。
「困ったな」
「何がだよ」
「いや、大阪の店は安くて美味いからな」
「いいことだろうが」
「ついつい食べ過ぎてな」
 それでだというのだ。
「コレステロールが怖いな」
「そっちか」
「太る体質じゃないんだ」
 それはないというのだ。
「けれどな。コレステロールがな」
「そんなにやばいのか?」
「あと塩分な。とにかく毎日食いまくってるからな」
「食いだおれか」
「ああ。本当に食いだおれだよな」
 こうその広島の彼に返す。
「店の兄ちゃんやお客さん達も皆いいしな」
「いいだろ。明るいだろ」
「そうだな。明るいな」
 このことはすぐに認めることができた。
「それもかなりな」
「長野よりも明るいか」
「長野は暗くはないんだ」
 それはないと言う。
「ただ。静かだろ」
「前も言ってたよな、それ」
「大阪のそれとは違ってな。ただ」
「ただ?」
「賑やかなのは楽しいな」
 猛久の目がここで綻んだ。
「その中にいるのはな」
「ああ、いいだろ」
「いいものだよ。それに人情があるしな」
「おばちゃんはどうだ?」
 彼はここで今度はこの存在を話に出してきた。
「おばちゃんは」
「おばちゃん?」
「だから大阪のおばちゃんだよ。どうだよ」
「俺は熟女の趣味はないぞ」
 彼は冗談でこう返した。何気に冗談を口に出していた。
 
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