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I want BRAVERY

作者:清海深々
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九話 年上(2)



 『ペルソナ3ポータブル』の方は、男主人公しかプレイしたことがなかったので、女主人公のコニュに関しては、ほとんど知識がない。
 女主人公の場合のコミュについてある知識は、誰がコミュで、どういった顔で、それでおおまかな事情のみ。
 詳しい内容は全くわからない。

 しかし、だ。
 長谷川さんが今の3年生と同じ年齢だということは知っている。

 そして、噂に違わぬあの色気。
 これは、狙わぬでいていいだろうか、いや駄目だ。反語。

 と、いうわけで、

「長谷川さん」

 まずは話しかけてみた。

「?どなたですか?」

 いやはや、初対面でいきなり女子に話しかける。
 これはまさに、

(勇気だぁぁあ!!This is bravery!)

 内心叫ばずにはいられない。

 



「なんの御用でしょう?」

「突然目の前に綺麗な女性が現れれば声をかける、それが紳士ってもんですよ」

「あらあら。お世辞がお上手」

「お世辞なんかじゃありませんよ」

「ふふ。そういうことにしておくわ。それよりなんで私の名前を?」

「・・・」

 おっと、そこを突付かれると、さっきのまるで偶然ですよ、みたいな発言に矛盾が。

「ふふ、琉峰さんは面白い人ですね」

 長谷川さんは勝手に呼び止めたのにも関わらず、優しい対応で話てくれる。

「琉峰さんなんて他人行儀な呼び方はなしなし。彩ってよんでよ」

 キラン☆、がつきそうなくらい笑顔MAXで言う。

(魅力4の我が力ぁあ)

 ていうより、この人も俺の名前知ってるんじゃないか。

「ふふ・・・丁寧語以外で同級生と話するのって楽しいね」

(・・・ぇ、効果なし?)

 俺の魅力はいずこへ?

「そっかな?だって、今は同級生でしょ?あ、それとも敬語使った方がよかった?」

「ううん。そんなことないよ。こっちの方が全然いい」

 長谷川さんはたしか、自分が周りより年上で、クラスに馴染めないことを悩んでるんだったような気がする。

「そっか、なら遠慮なく」

「・・・そういえば彩君は、なんで私に話しかけたの?」

 長谷川さんはどこか悲しそうな顔で聞いてきた。

「ん?なんでって・・・俺の趣味が『友達作り』だからだよ」

「『友達作り』?」

(やべぇ・・・この趣味、超使える)

 特に初対面の人用にバッチリな言い訳だ。

「そ、『友達作り』。まだ2クラス分くらいしかできてないけどね」

「それって、私と友達になりたい、ってこと?」

 俺が、恋人になりたいと思って近づいたんだろうとこの人は思っていたのだろうか、かなり不思議そうな顔で尋ねてきた。

「そゆこと。長谷川さんとは話したことなかったし」

「そっか、でも、いいの?」

「何が?」

「私といると、ほら・・・」

 長谷川さんは俯き加減で尋ねてくる。

 その言葉に、問題ない、と答えようとした時、

「あ、先パ〜イ」

 1つか2つかはわからないが、多分先輩であろう女子が声をかけてきた。
 かなり皮肉を込めた言い方だった。

 先輩といったことから多分今の2年生だろうと推測する。

 そして、その先輩という響きに悲しそうな顔をする長谷川さん。

「あ・・・」

 俺に聞こえる程度の声を上げる。

「今度はその男ですかー?年下の子もOKて感じ〜?」

「ぁ・・・」

 長谷川さんは完全に俯いてしまった。

「フンッ!・・・君も、そんな女やめた方がいいよ。良い男みつけたら、すぐ色目使うし」

 女子生徒は、それだけ一方的に言って去って行った。
 過去に何かあったのだろうか。

「・・・」

 長谷川さんとの間にきまづい沈黙が落ちる。

「気にすることないよ。俺から話しかけたんだし、それに俺と長谷川さんは『友達』じゃん?」

「・・・あ」

 俯いていた顔が上がる。

「そうなんだ・・・ありがと」

 長谷川さんはそう言って弱弱しく微笑んだ。

「そんな悲しい顔してほしくないな。あんまりこういうの初対面で聞くのもどうかと思うけどさ、なんかあったの?」

 初対面でもその人の心に土足で思いっきり踏みあがる。
 これぞ、まさに

(勇気だぁぁ!!)

(※ただの無神経です)

「ふふ。なんでもないの。ただ・・・そう、ただ私が馴染めてないだけ」

 長谷川さんは俯いてしまった。

「ふ〜ん。でもさ、まだ始まったばっかだよ?」

「そう、なんだけどね」

「?」

「皆、寮住まいの子が多いからかな?寮の先輩から私のこと色々聞いてるみたいで・・・」

 どうやら、今のクラスにも全然馴染めてないようだ。
 そして今後もその自信がない、と。

「まだ5月だってのに諦めモード入るの早すぎだね。ま、でも、もう問題は解決したね!」

 そう言って長谷川さんにサムズアップをする俺。

「え?」

「まずは俺で一人目、でしょ?」

 ニヤリと笑いかける。

「・・・そうだね」

 俯いてた顔が少し上がる。

 ふふ、とまた微笑みながら長谷川さんは言った。

「やっぱり彩君はおもしろい人だね。隣のクラスでもよく噂になってるよ」

 そう言ってニコリと微笑む。

「おぉ、それは『友達作り』がしやすくなる展開だ」

 ニヤリと笑って返す。

「ふふ。じゃあ、またね」

 長谷川さんは、俺との会話に満足したのか去っていった。

「まったね」

 今去って行った長谷川さんの顔。
 これは、もう

(フラグ立ったぁぁぁ!!!)

 そう叫ばずにはいられない。

(※まだです)



 
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