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無欠の刃

作者:赤面
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幼い日の思い出
  君と二人で一つ

 ある日、いつも通り修行に励んでいた三人の様子を見ていたイタチは、いきなり頷くとパンパンと両手を叩いた。
 こちらに注目しろという無言の命令に、ナルトは今まさに降ろそうとしていた拳を止め、サスケは今まさに行おうとした豪火球の術を呑み込み。そしてカトナは、振り下ろした刀を勢いよく地面につき刺し、そのまま抜くことなく、イタチの方に振り返った。
 三者三様の個性的な反応に、将来が心配になりながら、イタチは手に持った四つの紙を見せた。

「そろそろ、性質変化について、教えてもいいな」
「性質、変化?」
「それって、なんだってばよ、イタチ兄!?」

 きらきらと目を光らせ、ナルトは自分の目の前に立つ人形(カトナとイタチが夜なべをして作った、なぜか、暗部の姿をしている人形である。何故この形にしたかは、設計したイタチ達のみぞ知る)を蹴り飛ばした衝撃で、勢いよくイタチに飛びついた。

「今までお前たちはやってきていたのは形態変化……チャクラの形を変える修行だ。そして、これから教えるのは性質変化」
「はいはい、イタチ兄! 質問していいかってば!」
「何かな、ナルト?」
「形態変化と性質変化の違いは何だってば!?」

 勢いよくそう言ったナルトに、先走り過ぎだと呆れたようにサスケは息を吐き、カトナは何も言わず、優しい顔で微笑した。
 二人の反応に、ナルトは頬を膨らませる。

「だってさぁ、気になるんだってばよ!」
「だからって、兄さんの話を聞かないと話は進まないだろ?」
「だから、そういうまどろっこしいことはおいといて、答えだけ言ってもらいたいんだってば!」

 カトナは微笑して、ナルトのその猪突猛進さをいさめる。

「答え、知ってて、も。理屈、理解でき。なきゃ、応用できない、よ?」

 カトナのもっともな指摘にナルトは言葉を詰まらせた。それでもなんとか反論しようと、うー、あーと意味のなさない言葉を出して、身振り手振りで必死に言い訳しようとする。
 その様子にイタチは笑いを見せ、助け舟を出す。

「続きを話していいか?」

 ナルトが大慌てで頷く。兄さんは甘いとぼやくサスケに、イタチは肩をすくめると説明を再開する。

「チャクラは五種類の性質…「火」「風」「雷」「土」「水」に変化させることが出来る。このように、五種類の性質のどれか一種類にチャクラを変化させることを、”性質変化”というんだ。
 チャクラはどの性質にも変化させることはできるが、自分の持つ性質は先天性的に決まっていて、その性質にあった術が使うことがいいとされている、ここまではいいか?」
「イタチ兄さん、質問」
「カトナがするとは珍しいな、いいぞ」
「あくまで、相性で、あって、使えない、わけじゃ、ないよ、ね?」

 真っ先にそれを確認してくるあたり、相変わらず頭の回転が速い。
 素直に感心しつつ、イタチは身近な例を挙げる。

「あくまで相性が悪いだけだから、鍛え上げれば使いこなすことも可能だ。たとえば、コピー忍者とうたわれるはたけカカシさんや、三代目がいい例だな。特に三代目はすべての性質変化を極めてらっしゃる。ただ、お前たちには相性がいい術しか教えないから、そのつもりでいるように」

 イタチの言葉の意味が解らず、なんでだってばよと目を白黒させるナルトの隣で、なるほどとカトナはうなずいた。
 五つの性質変化を使いこなせるようになれば、それだけ、たくさんの術を使いこなせるようになるだろう。
 それすなわち、選択肢が増えるということだ。戦場で、任務で、多数の行動をとれるというのは、それだけで強みとなる。
 だが、裏を返せば、器用貧乏になりがちだ。選択肢が増えても、その選択肢自体が弱いものだったら何の意味もない。
 しかも、多数の選択肢が存在するがゆえに、判断ミスを誘ってしまうことがあるのだ。
 戦場では一瞬の隙が命取りとなる。
 あらかじめ選択肢が少なければ即断できるが、多ければ迷いを生む。
 熟練の忍びや天才ならば、その決断も数秒で出来るだろう。
 だが、まだまだ幼いカトナたちではその決断には時間がかかる。
 イタチの意図を察して、うんうんとしきりに頷くカトナにサスケが尋ねる。

「カトナ、お前、意味が分かったか?」
「なんと、なく。サスケ、は?」
「俺は得意のばした方が勝利のパターンが決まりやすいんじゃないかって考えた」
「どういう、こと?」
「ほら、前に兄さんが言ってただろ。相手に勝つのならば、自分の得意を相手に押し付けることだ、って」
「う、ん。自分に、有利な戦場、を、つくる。自分の、勝利を、安定させる。そうすれ、ば、勝てるって、言ってた、ね」
「で、有利な戦場にできないときは、ひとりでやるのではなく仲間を頼れ、とも言ってたよな」
「うん」
「忍びがフォーマンセルで動くのは、自分にできないことを仲間にしてもらうからだろ? 互いの欠点を生めて、長所を生かすようにされている。だから、自分の欠点を潰すんじゃなくて、周囲の欠点を潰す方が互いの力を高め合えるんじゃないかと、思って」

 その発想はなかったと驚くカトナに、サスケは顎をしゃくる。
 お前はと無言で問いかけられて、ぽつぽつと自分の考えを聞かせる。興味深そうにカトナの意見に耳を傾けていたサスケが頭の後ろで腕を組む。
 そういう考え方もあるのかとうなる彼は、ナルトに目を向けた。
 姉と親友の会話を隣で茫然として聞いていたナルトは、慌てて何かを言おうとして。しかし、何も思いつかず、適当に発言する。

「…苦手だとやる気がなくなるから?」
「…お前……」

 サスケが盛大に顔を顰めた。
 それはないだろと言わんばかりの表情に、ナルトがむくれた時、今まで黙って三人の話を聞いていたイタチが声を上げた。

「それもある」
「あるの?!」

 サスケが目をむく。ぽかんと口を開けるカトナの隣で、ナルトがほら見ろと胸を張った。
 イタチは説明を続ける。

「苦手なことはしたくないという意識が働く。それでもして、難しくて挫折する。すると苦手意識が強くなって、どんどんできなくなっていく。
 代わりに、得意なことは成功しやすい。そして、成功すると達成感と満足感が得られる。だからしたいと思うというスパイラルが発生する。だから、得意分野を伸ばす方が効率がいい。
 それにそもそも、向いていないことに努力するのは時間の無駄だ。努力の無駄づかいといってもいい」

 ばっさりと切り捨てたイタチに、これ、ほかの人が聞いていたら殺意を抱くんじゃないかなとカトナは無言で心配する。
 イタチの言っていることは真理なのだが、聞くものが聞けば、殺しにかかるだろう。
 案外鈍感なところがあるなと思いつつ、カトナはさらに質問する。

「先天性、って、ことは、決まって、るんだよね。なら、どうやって、見つける、の?」
「良い質問だな」

 イタチに褒められ、ぶわりとカトナは頬を赤く染めた。
 イタチはそんなカトナをかわいらしく思う一方で、少しだけ反抗期に入ってきたのか。それとも思春期として目覚めたのか。自分に鋭い視線を向けてくるサスケに、悲しい気持ちになる。
 イタチからすればカトナはかわいい妹でしかない。というか、彼からしてみれば弟に頑張ってもらって、名実ともにナルトとカトナを家族にしたいのだが。
 閑話休題。
 イタチは彼らの注意を誘うように、指の間に挟んだ紙を振る。

「この紙はチャクラに反応する特殊な性質を持っているんだが、性質ごとに違った反応を見せる。火なら燃える、風なら切れる、雷ならしわができる、土なら崩れる、水なら濡れる。まぁ、習うよりは慣れろ、だな。実際にやってみろ」

 イタチが手渡してきた紙に、さっそくナルトがチャクラを込める。
 ぞくりと、体中から溢れだしたチャクラが空気を伝い、流れていく。
 まだまだチャクラが上手くコントロールできず、無駄にたれ流されているだけだと知りながらも、漏れ出すチャクラの量に、流石だとイタチの腕に鳥肌が立った。
 サスケもまた、無意識の内に肌を粟立てさせ、隣にいた兄の手を握りしめた。

 「はぁああああああああああああ!!」

 まだ紙には上手くチャクラが伝わらないのか。ナルトの体から更にどろどろとチャクラが漏れ出す。
 そして、僅かに青いチャクラの中に、赤いチャクラが混ざった。
 写輪眼でさえ視認できない、本当にわずかな量のチャクラだったが、そのチャクラに感化されたのか。じわりと、カトナの背中を痛みが伝った。

 (なんか、いたい)

 顔色を全く変えないまま、見えもしない背中を思う。自分の体の下を何かが這いずるような感覚に、カトナは小さく息を漏らした。
 転んだ時に作った擦り傷に消毒液を塗り込むような痛みが、肌が強い日差しに焼かれたかのような痛みが、絶え間なく体を襲ってくる。
 しかし、カトナはそのわずかな違和感を無視し、ナルトの掌の上にある紙を、食い入る様に見る。
 やっと、チャクラが紙に伝わったのか。紙が勢いよく、びりびりと切れる。
 いきなり起きた出来事に、ぽかんと呆気にとられたナルトは、紙をつまんでぺらぺらと動かす。

「なんだってば?」
「さっき聞いたばかりなんだから、覚えとけよ。紙がきれたってことは、風だな」
「俺、風なんだってば!?」

 そっか、ナルトは風なのか。それなら、もしも性質変化があるなら、風の役に立てそうな火がいいなーと心の中で思いながらも、カトナは手渡された紙をなぞった。
 なんの変哲もなさそうな紙だが、性質によって変わるのだ。凄いなと感心した。

 「かーぜ! かーぜ!!」

 ぱっと、自らのチャクラの性質が発覚しただけなのに無邪気に喜んだナルトを見て、自分もはやくしたいと思ったらしいサスケは、俺も俺もと勢いよく手を上げる。

「そうだな。次はサスケにやってもらおうか」

 兄の許可も得たことで意気揚々と紙を手の上に乗せたサスケは、ううーと唸りだす。
 横ではナルトが、わくわくしたようにサスケの掌の上にある紙を見つめた。
 数分の間の後、サスケの紙に突然しわが入る。

「雷だ!」
「ほんとか!?」

 今度は覚えていたらしく、ナルトは勢いよく手をあげた。
 サスケはナルトが言ったので信じられなかったようだったが、事実であつことを確認すると、嬉しそうにはしゃいだ。
 そんな弟に、イタチは続きを促す。

「サスケ、続けてみろ」

 不思議そうに首をかしげながら、サスケは同じように紙に力を込める。今度は先程のものでコツを掴んだのか。数秒の間の後、紙が突然燃え上がる。

「うわっ!?」
「燃えたってば!?」

 驚いた衝撃でサスケの掌から地面に落ちた紙を見て、ふむふむとカトナは頷いた。

「サスケは、雷と、火の、二つ、もってるの?」
「そうだ。人によってはチャクラの性質は二つもっていることもある。三つもっている人間は稀中の稀だが、いる。四つ以上はないとされている。よく分かったな、カトナ」

 えらいえらいとでもいうように頭を撫でられ、カトナは嬉しそうに笑った。その笑顔に、むっと一瞬だけ口をとがらせたサスケが、勢いよく声を上げる。

 「カトナもはやくやれよ!」

 最近言葉使いが少しだけ乱暴になってきた弟に、イタチは困ったようにカトナに目を向けた。
 が、当の本人であるカトナはそんな言葉づかいなど気にもとめていないようで、無言でうなずくと、すぐにチャクラを込めた。
 すぐさま、カトナの紙は濡れたかと思うと、次の瞬間、ぼろぼろに崩れ去る。
 ほかの二人よりもはるかに短い…だからといって、上忍でも同じ速度で出来るかどうかわからないくらいの速さに、イタチは内心で舌を巻いた。
 さすがだと感心するイタチの掌に、犬のように頭を擦り付けて、カトナは褒めてほめてと甘える。よしよしとイタチに頭を撫でられながら、カトナは自分の紙を見て、先ほど言われた内容を思い出す。

「土…と水?」
「みてぇだな」

 サスケの肯定に、焦ったようにナルトはイタチを見つめる。

「…二人とも、二つばっかでずるいってば! イタチ兄は?」
「俺は火と水だな」

 イタチは最後の紙を手に取り、チャクラを込める。その動作は手慣れたもので、一瞬にして紙は濡れ。次の瞬間、燃え上がる。

 「兄さんも火なんだ!」

 兄と同じであるという事実に無邪気に喜んだサスケに、イタチは困ったように頭をかいて、真実を教える。

「うちは一族には必ず、火の性質が備わっているからな。チャクラの性質は遺伝によるものも多いんだ」
「! ってことは父さんと母さんも!?」
「母さんはうちは一族に嫁いできたから、性質は違うだろうが、父さんはそうだろうな」
「!」

 嬉しそうに顔を赤く染めたサスケの、この頃少なくなってきた年頃の顔を見ながら、ナルトは拗ねたような声を上げた。

「俺とカトナは違ったってば!」
「うちは一族みたいに、性質が一緒なのは少ないんだ」
「…そう、なの?」

 不思議そうにするカトナに、イタチは一概には言えないがと前置きをしてから説明をする。

「基本、五大性質変化はそのひとの素質によるものだからな…。ただ遺伝の要素は多い。血継限界を有する一族の多くは性質変化が遺伝するらしい」
「秘伝忍術と、同じ、感じ?」
「難しい質問だな。……秘伝忍術はあくまで門外不出の術であって、血継限界というわけではないから、一族以外のものが使おうとすれば使えるだろう。…つまり、秘伝忍術は違うと思う」

 ということは、秘伝忍術はパクれるのでは。
 カトナの目がきらりと光る。
 実際、術を使うためのコツやらが秘伝であり門外不出なので扱いが難しいのだろうが、パクれれば有効活用できるものは多い。
 奈良一族や秋道一族のものがいいか。いや、個人的には山中一族の感知伝々あたりの方が有用か。
 そんなことを考えてメモを取っている姉に、ナルトが少し口を尖らせる。
 自分だけ一つだというのに全く気にしてくれないことにすねて俯い彼は、ふと上を向いてイタチに抱き着く。

「イタチ兄! イタチ兄! チャクラはどんなものにも宿るんだってばよね!」
「ああ、そうだが」
「なら、俺も二つだってば!!」

 そう言いながら、ナルトはどんっと自分の胸を叩いた。
 
 「ふたりで二つってば」

 いや、カトナのことを指すなら、二つ足したから三つになるぞと内心でツッコミをいれ、今度はもう少し、教育的なものにも励まなければいけないなと、イタチは今後のスケジュールを頭の中で書き換えた。

・・・

 珍しくカトナと一緒におらず、ひとりきりになっていたナルトは、自分の周りに誰も人がいないことを確かめると、印を結んだ。
 まだ、カトナには到底使えない術。サスケならば使えるかもしれないが、彼女の僅かなチャクラでは、到底行うことが出来ないだろう。……イタチならば余裕で使えるだろうが。
 ゆらりと、ナルトの体からチャクラがこぼれだし。
 次の瞬間、風が辺りを包んだ。
 空気がチャクラの動きに沿うように流れ、一つの場所でうずまき、近くにあった木を粉々に切り裂く。

「!! 出来たってば!! 見てたかよ、クラマ!?」
『あほが。クラマの漢字すら言えん奴に応える義理はないわい』
「だって、クラマの漢字は難しいんだってばよ!」
『…これがわしの人柱力だと思うと、頭が痛いわ』
「ぐぬぬ…!」

 その言葉に、頬を膨らませて拗ねたようになったが、すぐさま、ナルトは笑顔になった。

「今度はクラマのチャクラ、貸してってば」
『何をする気だ? まだチャクラはあるだろう』
「クラマのを使って、チャクラ検査すんだよ!」

 そう言いながら、いつもらってきたのか。先程使った、チャクラに反応する紙を嬉しそうに振った。

「ふたりで二つ、ってば!」

 九尾の、クラマのチャクラと自分のチャクラを合わせれば二種類ある。
 ほかの三人のように二種類ある。それが嬉しいのだと、全身で喜びを表現したナルトに、九尾は困ったように視線を逸らした。

『…そんなもの使わなくても、わしは自分のチャクラがなにかぐらい、把握しとるわい』
「!? えー、折角楽しみにしてたのに!?」

 不満そうにそう言いながらも、笑みを絶やすことはしないまま、ナルトは嬉しそうに騒いだ。 
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