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一直線

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第一章


第一章

                        一直線
「今の政府のあり方は」
「とても国民の安全を考えているとは言えず」
「従って私としては」
「あれ何?」
 学園の中で拡声器を持って言っている彼を学生達は首を傾げながら見ている。
「中央政府も我が日本政府も」
「あれ、うちの政府も?」
「そうなの」
「このことについては何も考えてはいない」
 こう言うのであった。
「これは由々しき問題だ」
「それで何を言ってるんだ?」
「さあ」
 皆このことに首を傾げさせる。そのうえで中庭で演説をしている彼を見るのだった。そしてそのうえでまたあれこれと話をしていた。
「ロシアとのこと?」
「貿易不均衡で揉めてるけれどね」
「あと陛下の御成婚のこともあるし」
「他福祉政策も今一つ進展がないし」
 日本は日本でわりかし問題を抱えているのであった。
 しかしだ。ここでその演説をしている彼が言うのは違うことだった。
「四兆の人口で百三十億の軍がいる」
「あれっ、軍隊の話?」
「連合軍?」
「それなの」
 ここでようやく皆わかったのだった。
「そういえば連合軍って」
「エウロパとの戦いに勝ったし」
「よくやってるよね」
「頑張ってくれてるわね」
「しかしだ」
 だがその彼は言うのだった。
「あれは何だ。百三十億の軍隊は宝の持ち腐れだ」
「あれ、そう言うの?」
「宝の持ち腐れって」
「そう来たの」
「より機能的に動かして然るべきなのだ」
 彼の主張は続く。
「エウロパには勝った」
「機能的に動いていたから勝てたんじゃないのか?」
「そうよね」
「しかしだ。それは数による勝利だ」
「数ね」
「それね」
 連合は四兆、それに対してエウロパは一千億である。数にして四十倍は最早差があると言うのもおこがましいまでの差である。
「連合軍は百三十億、それに対してエウロパ軍は五億」
「圧倒的じゃないか我が軍は」
「そりゃ勝てるわ」
「だが戦争は数だけではないのだ」
 彼は言う。
「数で押すだけの勝利は真の勝利ではない。数で勝つ者は数に敗れる」
「戦争は数だぜ、って」
「古典のアニメであったわよね」
「そうだよな」
 これはこの時代でも観られている作品である。ガンダムである。
「それでは何にもならない」
「それでどうだっていうのかしら」
「しかもうちの政府まで言うし」
「何で日本政府が?」 
 皆が首を傾げさせているとだった。ここでまた言う彼だった。
「日本政府もその軍事行政はなっていない」
「ああ、言ったか」
「どうかって思ったら」
「グッドタイミング」
 本当に絶好のタイミングであった。
「それじゃあ一体」
「何を言うのかしら」
「連合軍と同じで機能的な動きが出来ていない」
 こう言うのである。
 
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