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老夫婦の菊

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第二章

「凄く綺麗だけれど」
「菊か」
「ほら、観て」
 夫にそのテレビを観る様すに勧める、
「いいわよ」
「そうか、それじゃあな」
 ご主人も奥さんの言葉に応えることにした、新聞は何時でも読めるから今はテレビを観ようと思ったのだ、それでだった。
 テレビを観た、するとそこには。
 白や黄色の観ただけで心が映える菊達があった、その菊達を観てだった。
 ご主人は心を楽しませた、そうして最後までその番組を観てだった。
 奥さんにだ、こう提案したのだった。
「明日、いや今日にでもな」
「今日にでも?」
「菊を観に行かないか」
 これがご主人の提案だった。
「そうしようか」
「菊をなのね」
「今テレビを観て思ったんだ」
 奥さんが勧めてくれた菊を観せてくれた番組をだというのだ。
「テレビだけでなくてな」
「この目でもなのね」
「そうだ、菊を観ようってな」
「いいわね。それじゃあ今からお花屋さんに行くのね」
「どうせ暇だしな」
 何もすることがない、だからだというのだ。
「行くか」
「そうね、どうせお家にいても何もすることがないし」
「テレビを観て新聞や本を読んでいてもな」
「それだけだから」
 それでは何もしていないのと同じだ、それでだというのだ。
「今から菊をね」
「ああ、観に行こうな」
「それではね」
 奥さんもご主人の言葉に頷いた、そしてだった。
 二人は揃って家を出て戸締りをしてから街の花屋に向かった、てくてくとゆっくりと歩いて進んでいく。そうしてだった。
 そのうえでだ、花屋でだった。
 菊を観る、その白や黄色の菊達を観て目を細めさせて話すのだった。
「やっぱりこの目で観るとな」
「ええ、余計にね」
「いいものだな」
「そうよね、お花はね」
「実はわしは菊が好きなんだ」
「私もよ」
 長い間夫婦でいるせいかだ、好みが似ている。二人共菊が好きなのだ。
 だからだ、こう言うのだった。
「こうして観ているだけでね」
「心が変わるな」
「嬉しくなるわ」
 菊をこの目で観ているだけでだというのだ。
「これだけで」
「そうだな。それじゃあな」
「それじゃあ?」
「明日もな」
 今日だけでなく、というのだ。
「ここに来て見るか」
「そうね、菊をね」
「二人でな」
 こう話してだ、そして実際にだった。
 二人は次の日も花屋のところに来て菊を見た。そしてだった。
 ある日だ、奥さんの方からご主人にこう切り出した。
「ねえ、今度はね」
「今度は?」
「菊を観ているだけでなくね」
 それだけでなく、というのだ。
「買ってはどうかしら」
「菊をか」
「それで家でも観たらどうかしら」
 こうご主人に言うのだった。
「そうしたらどうかしら」
「そうだな、家でも観てな」
「楽しんでもいいわよね」
「そうしようか」
 金もあるし何よりも時間は嫌になる程ある、それならだった。
 ご主人も奥さんの提案を受けた、そのうえですぐに菊を買ってだった。
 二人は家でも菊を観た、するとだった。 
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