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少年少女の戦極時代Ⅱ

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禁断の果実編
  第71話 答え合わせ side紘汰


 舞ともども呆然と座り込んでいると、ガレージのドアが開いた。
 入ってきたのはチャッキーとペコだった。

「紘汰さん! よかった、目が覚めたんですね」

 チャッキーもペコも笑顔でアーチを潜り、階段を降りて、紘汰に駆け寄った。
 心配してくれた礼も言わねばならないが、それより先に確かめねばならないことがある。

「なあ、チャッキー、ペコ。オーバーロードを探してるみんなの中には、咲ちゃんもいるのか?」
「え、いますけど」

 何故、と真っ先に思う。咲は紘汰への協力をやめたはずなのに。貴虎のように、紘汰から離れていったはずなのに。

「すごいんですよ、咲ちゃんっ。新しく、空を飛べるロックシードで変身したって。だから戒斗たちと一緒に、空から怪物を探してるんですっ」
「空……」

 コドモが一番に見る夢。サガラが言っていたのはそういうことだったのか。

「けど、何で……ヘキサちゃんのことがあるのに」

 そこで、ずっと黙っていたペコが、突然頭を下げた。

「ごめん、紘汰! 俺、ヘキサちゃんがどうなったか、多分知ってる」
「え?」

 ペコの唐突な謝罪に、紘汰はもちろん、舞やチャッキーも目を白黒させている。

「前にインベスが出た時、ヘキサちゃん、ケガしたんだ。インベスに引っかかれるか何かして。なのに、普通はヘルヘイムの植物が生えてくんのに、ヘキサちゃんにはそれがなくて。ヘキサちゃんがユグドラシルに行ったの、多分、その後だ。俺にメールで、『ユグドラシルに専門の人がいるから診てもらいます』って。それからメールも電話もちっとも出なくなって」
「専門って……まさか、戦極凌馬?」

 言い上げ、ペコは再び頭を下げた。

「ごめん!! ヘキサちゃんに、言わないでって言われて……ヘキサちゃん、戦ってるザックの邪魔したくないって。ずっと言えなくて……ごめんっ」


 繋がる。紘汰の中で、今日まで意味を成さなかった咲の行動の全てが。

(ただ捕まってるだけじゃない。戦極凌馬に本気で、実験体として、人質に取られてる。どこに閉じ込められてるか、今どこにいて何をされてるか分からない)

 本気で隠される。それだけがこんなに、親しい人間の心を折る。

(咲ちゃんだけじゃない、貴虎も。脅されてああしたのかもしれない)


 ――“一度あいつの立場になって本気で考えてみろ”――


(本気で考えられたはずだ。だって俺は一度姉ちゃんを人質に取られたことがあった。知ってたはずなのに!)

 紘汰は新しいロックシードを握り締めた。

 サガラの言うように、このチカラがどんな結末をもたらすかは分からない。だが、これを持って、気づくための言葉をくれた戒斗の下へ、悩み苦しむ咲の下へ、駆けつけることはできる。

 紘汰はガレージを飛び出した。 
 

 
後書き
 晶さんが人質に取られた時と、ヘキサが人質にされた時との最大の違い。
 それは、「姿が見えるかどうか」です。
 晶の時は、シャルモンにいる晶を双眼鏡で見るように促された紘汰ですが、咲や貴虎はヘキサがどういう状態で何をしているか一切「見せてもらえない」状態だった。
 これが、紘汰と咲がすれ違ったことの答えでもあります。 
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