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魔法構築体マテリアル!?

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第一話

 ディアーチェたちダーク・マテリアルズは帝国からの依頼で加勢している。それだけ連合側の紅き翼の破竹の勢いとも呼べる進撃にまいっているのだろう。しかし彼女たの働きによってグレートブリッジを連合側から奪い取ることに成功。この件によって世界は彼女たちの存在を認識するしかなかった。ゆえに、連合側が地方へと飛ばしていた紅き翼をグレートブリッジ奪還作戦に組み込むのは必然のことであった。

「前回は彼らが不在でしたので容易に堕とすことができました。しかし今回は分かりません」

 帝国が彼女たちのために用意した客室に、ディアーチェたちは集っていた。それぞれテーブルに付き、目の前には地図が広がれており、文字や数字、囲み線などが書かれている。

「私とフールが調査したところ、彼らの戦力は一般の兵士のそれを逸脱しています。油断をすれば、いくら私たちと言えどただではすみません」

「ふむ……」

「特にこの赤毛の少年と筋肉質の男。どちらも規格外ですね。前者――ナギ・スプリングフィールドはその身に宿る余り有る魔力を使ったゴリ押しの魔法行使。術式も構成もメチャクチャですが威力がバカになりません。広範囲殲滅魔法『千の雷』をよく使います」

 さらにアンチョコを見ながら唱えているところを見ると、彼は魔法の詠唱が得意ではないことが伺える。それなのに今現在まで生き残り、かつ敵を殲滅しているところから天賦の才があるのだろう。それに体術も優れている、というよりもこちらの方が得意なようだ。バリバリの魔法剣士タイプだ。

「そしてこのこの男、ジャック・ラカン。昔は奴隷だったようですが、死に物狂いで手に入れた技術と経験でそれを脱した、いわゆる究極の努力人間です。半端な小細工は彼には効きません。それにデタラメに鍛え上げられた肉体と気で、その防御力は先ほど申したナギ・スプリングフィールドの千の雷を受けても平然としています」

「ほう……技のマテリアルとしてはどう思うフールよ?」

 一見ナギのように才能による力押しに見えるラカン。しかし実際は長年の『技』で最強となった男。そんな彼に『技』のマテリアルであるフールはどう思うのかディアーチェはちょっとした好奇心から聞いてみた。
 しかしその『ちょっとした』で、このおバカ(フール)は内心大慌て。下手な受け答えをするとどうなるか分かったものではない、と。ディアーチェは常日頃から我が強く、可愛く言うとワガママ、悪く言うと暴君。そんな彼女の意にそぐわない答えを出したら……オシオキ待った無しだ。
 だからフールは慎重に言葉を選ぶ。

「……俺の方が強い」

「ほう、言い切ったなフールよ。して、それは何故だ?」

 失敗した、とフールは後悔する。とりあえず前向きな言葉を選んでみたものの、まさか追求されるとは思っていなかったのだろう。マルチタスクを五つほど行使して考える。
 我が闇の力は……。
 ダメだ、痛すぎる。
 あのような塵芥、取るに足らない。
 さっきシュテルが強敵と言った。そんなことを言ったら彼女がどう思うか。
 うんうんと唸って、考えに考えて、結局フールが出した答えは……。

「俺が……私が、貴方の臣下だからです」

 放棄だった。もうなに考えてもしゃーねーや、と。
 だから何も考えず感情のままに言ってみた。するとこのような言葉がスルリと出てきた。

「……うむ、そうか。次の戦では期待しておこう」

 しかし本人の心配とは他所に、ディアーチェは満足げに頷く。どうやら彼の答えがお気に召したらしい。
 ――自覚していないが、彼が今こうしてこの場にいるのもディアーチェという王がいるから、というのが大部分を占める。いくらマテリアルの構築体としての戦闘データがあるとはいえ、精神はただの一般人(普通に人を殺すことができている時点で一般人とは言い難いが)。それなのに、これから戦争というのに逃げ出さずこの場にいるのは、安心できる存在――ディアーチェがすぐ側にいるからだろう。彼が思っているよりも、彼女の王としての器に惚れ込んでいるということだろうか……。

「あー! フーくんばっかりズルい! ボクだってそのなぎ・ずぷりんくふぃーんどって奴に勝ってみせるもんね!」

「ナギ・スプリングフィールドです、レヴィ」

「そう言えば、その方とレヴィは似てますね。色々と」

 ユーリの言葉にシュテルとディアーチェは頭の中にナギとレヴィの相対図が組み立てられる。
 性格、共に楽天家。悪く言うとおバカ。戦闘スタイルは遠近共にゴリ押しで雷を使う。そして度々単独で突撃する傾向あり。
 怖いぐらいに一致しており、二人揃って苦笑い。

「二人をぶつけるのも面白そうですが、今回はそうもいきません」

「えー!? なんでなんでー!?」

「レヴィ。戦いで大事な何よりも戦略です。如何に個人の力が強かろうと、大局での勝利には何ら影響を及ぼさないのです――では、今回のグレートブリッジ防衛作戦の概要を説明します」

 

 ある日、散歩に出ていたフールが捕らえた敵の諜報から得た情報から、急遽このような作戦が立てられた。連合軍の大規模転移魔法を使ったグレートブリッジ奪還作戦。そしてそれに参加する紅き翼。この二つが諜報から得ることができた情報だ。
 もしもフールが偶然この者をとらえることができなかったら、この作戦自体立てられず、あっという間に敵にグレートブリッジを奪還されていただろう。しかしその前に知ることができた。帝国の王はフールに感謝し、軍関係者からも頭を下げられたものだ。

 閑話休題。
 
 今回ダーク・マテリアルズたちに与えられた仕事は大きく分けて二つ。
 一つ目は、広範囲殲滅魔法による敵軍への攻撃。目的は相手の士気を下げること。

「ああ、それと。今回の戦争で注意して欲しいことがあります。非殺傷設定を用いて使用してください」

「何故だ? まさかこの後に及んで殺しは御法度などと抜かすのではなかろうな……?」

 ディアーチェから覇気が発せられる。戦いでそのような甘く愚鈍な考えは許さない、という意思表示だった。床や窓ガラスにヒビが入る。

「いえ、これはフールからの提案なのですが……これには明確な目的があります」

 敵をただ殺すのなら、誰にでもできることだ。敵味方関係無く。この世界の魔法は特にそういうことを行うのが容易で、下手をしたら子どもの一声で大人が消し炭になることだってある。
 しかしそれをあえてしない。敵を殺すのではなく負傷させる。

「そうすれば、敵の人員を割くことができます」

「……なるほど」

「へ? なんで?」

 ディアーチェは納得したようだが、レヴィは分かっていないようだった。頭の上に幾つものハテナを浮かべて首を傾げている。ちなみに前世の頃の精神に引っ張られて殺したくないと言ってきまった何処かのFさんはディアーチェの言葉にただいま内心ガクブル中。いい加減覚悟を決めるべき。

「良いですか、レヴィ。敵は私たちとは違って復活できない人間です。死んだらそれまででですが、逆に言えば死ななければ助かる可能性があります」

「うん、そうだね」

「さて、ここで問題です。私たちが怪我をして倒れていれば、あなたはどうしますか?」

「助ける!」

「そういうことです。つまり非殺傷にすればそれだけ助かる命は増える=助ける人間が増える。つまり戦う人間は減りますよ」

 レヴィは感心して、おーっと言いながら目を輝かせてユーリに向かってパチパチと拍手を送る。隣にいた戦争未経験の元一般人もホヘーと呆けていた。この作戦の立案者となっていることに気づかずに。

「それに加えて、なるべく派手な魔法を使ってください」

「そうすれば、相手は何時でも殺れると理解するだろうなァ。なら我が一番適役だな」

 シュテルが頷く。この作戦でディアーチェは最も適任であり、最も効果を発揮する人物だ。魔力量もユーリを除けば一番多く、覚えている魔法もフールに並ぶ。シュテルやレヴィ、ユーリ、フールも一応広範囲殲滅魔法を使えるが、この次の作戦を考えるとあまり魔力を使うべきではない。
 
「一応私たちも手伝う予定ですが……」

「良い。我一人で十分だ。うぬらはうぬらの役割を果たせ」

「……そうさせてもらいます。では、次の作戦です」

 敵にはすでにこちらがグレートブリッジ奪還作戦の概要を把握していることを把握しているはず。だからあちらも作戦を変えるだろうが、紅き翼は絶対に出張ってくるだろう。タイミングは殲滅魔法で戦力が大幅にダウンした時だと考えられている。以前まで辺境の地に飛ばしていたことから、連合はあまり紅き翼を投入したくない、手柄を取られたくないと考える者が多いはずだ。実際こちらでもそうなのだから。
 
「じゃあさじゃあさ! ボク、なぎってのとヤる!」

「だからダメですってば」

「えー……」

 立ち上がって手を挙げて立候補していたレヴィだったが、シュテルのその言葉に意気消沈して拗ねたようにテーブルに顔を乗せる。頬を膨らませてブーブー言っている。
 何と無く可愛く思えたフールが彼女の頭を撫でて、嫉妬した参謀と王が彼の足を踏み付ける。されているレヴィはご満悦だが。

「……私、レヴィ、フールで紅き翼を一人ずつ撃破していきます。運が良ければ、一度の決着で紅き翼のメンバー二人を戦場から離脱させることができます。帝国軍には時間稼ぎと連合軍の対処をしてもらう手筈になっています」

「私はどうしますか?」

「ユーリには王の側にいてください。いくら王と言えど魔力の消耗は免れません。回復させてから私たちに合流を。作戦通りに行けば、紅き翼の誰かを本当の意味で撃破できます」

「分かりました」

 ユーリは強い。それこそこの場にいるマテリアル四人で挑んでも勝てないだろう。以前のように暴走して安定していない状態ならいざ知らず、今の彼女はまさしく世界最強。紅き翼に対して一人で立ち回ることだってできるのかもしれない。しかし、それをできない理由がある。

「それと、この戦争を裏で操っている連中と帝国軍にも注意を」

 そう、ユーリは帝国軍と以前フールの前に現れた男――プリームムへの牽制だった。戦争で最も怖いのは強力な敵ではなく、背中から撃ってくる味方と不意打ちをしてくる第三勢力だ。

「これで私からは以上です。何か質問はあるでしょうか?」

「はーい。結局ボクはどうすんの?」

「……私たちと敵を倒す。それだけを考えてください」

「分かった!」

 アホの子レヴィにシュテルはため息を一つこぼして、視線をディアーチェへと向ける。王から皆への、激励の言葉を言って欲しいというアイコンタクトだった。ディアーチェはそれに応じて席を立つ。

「我らがこの戦争に参加する以上負けはあり得ん。そろそろ世界に我らの力を示すのも良い頃合いだ。――勝つぞ」

『イエス、マイロード』

 
 ――それから三日後、グレートブリッジ防衛作戦が決行されることとなった。





 突然だが、俺は自分が異常だと常々思っている。戦闘になるとあり得ないぐらい思考がクリアになるし、感情を表に出すことができないし、そしてそれを疑問に思っていない。異常だと思うが別に良いんじゃね? という感じに。それすらも異常だ。
 これ以上は異常という言葉が異常にゲシュタルト崩壊して異常な精神状態になるから置いておこう。何が言いたいのか自分でも分からん。でも、もしも普通……前世の精神状態のままだったら、この世界で生きていくことはできなかったと思う。昔暇つぶしに見ていた二次小説じゃあ、殺す、死ぬ、戦う……それらの覚悟がどうのこうのって描写されてたけど、はっきり言って俺にはそんなご大層な物は無い。だから戦っている時も内心ガクブルだし、人を殺した時も嫌な気持ちになったし、ましてや死ぬ覚悟なんてない。俺は生きたい。
 正統派主人公や説教系主人公がこのことを知ると、十中八九俺のことを糾弾すると思う。それも勘弁だ。
 俺はただ、王さまの元で生きていたい。そんな醜い願望で今日この日まで何とか生きて来た感じ。彼女たちが居なければ俺は既に消えていたと思う。感謝してもし切れない。それの恩返しってわけじゃないけど、俺は生き抜いてできる限り彼女たちを助けていこうと思う。戦う力しかありませんから。

 ――だからさ、俺ここでお留守番しちゃダメ? ディアーチェと一緒に魔法バカスカ撃つ方にチェンジしちゃダメ?

 そんな俺の熱い想いを目に込めてシュテルんへと送り続けるが、彼女は頭を傾げて頭の上にハテナを浮かべるだけ。ちくしょう可愛いじゃねーかちくしょう。
 内心肩を落として視線を戻す。敵がいっぱい居た。帰りたい。
 空を覆い尽くす戦艦、大地を染め上げる数多の兵士。これはちょっと多すぎませんかね? しかも今回の相手は今まで戦場を渡り歩いて来た歴戦の戦士たち――雑魚相手に無双してた俺が勝てるのか? 体の中のデータには余裕って出てるけど、絶対信じるものかっ。

「ほう……流石に壮観だな……」

 王さまマジパネェッス。これ見ても余裕の姿勢を崩さないとかそこに痺れる憧れる。

「しかし、いくらディアーチェでもこの数相手に……私も手伝った方が……」

「いえ、何も全ての敵を屠るのではなく、この半分を戦闘不能にすれば良いのです――我らが王なら容易い。違いますか?」

「はっ、ぬかせ。この倍が来ようとも、我が魔導で葬ってくれるわ」

 まぁ、今回はそうもいかんか。そう言って王さまは魔力を高める。というかこれ以上でよゆうって……流石魔力チート。ユーリの次に多いだけはある。
 シュテルんはそれに頷くとこちらに視線を向ける。どうやらもう逃げれないらしい。分かってたケド。こうなったら自分の仕事をちゃんとこなすとするか。

 エリアサーチを発動させて敵の大まかな位置を確認する。細かい情報は無駄なのでカットし、それをマテリアル特有のリンクに乗せてシュテルんと王さまに送る。
 シュテルんは俺から受け取った情報を整理し、王さまの魔法の着弾地点を割り出す。王さまは細かい操作が苦手だからね。その分効果は折り紙付き。

「少し密集しているところもありますが、作戦に支障は来たしません。何時でもどうぞ」

「うぬ。せいぜい倒し過ぎんよぅ気を付けるか」

 王さまの足元に正三角形の光り輝く紋様――古代ベルカ式魔法陣が展開される。すると彼女の体から圧倒的な存在感を放つ魔力が吹き荒れる。それらを王さまは、目の前に大小の円形魔法陣を展開し、闇の如く深い紫色の球体を作り出す。濃縮された一つの力……!
 ただ見ているだけで、ただそこに存在するだけでプレッシャーを感じる……肌がピリピリして痛いぐらいだ。それを今から放たれる連合軍はどう思うのだろうか――それも、今すぐわ分かること。

「殲滅地点A、D、Gに動きあり。どうやら魔法の詠唱は開始している模様。これは、転移……?」

「尻尾巻いて逃げる気か……? まだ戦争は始まっておらぬというのに……いや、今から我がその口火を切ってやろうぞ。シュテル、そ奴らを撃つ」

「承知しました。ジャガーノート保有魔力80%。敵の殲滅に必要な魔力12%……はい、大丈夫です」

「――第一から第三魔法陣稼働」

 王さまのその言葉に反応し、魔法陣が回り始めて空間が揺れる。

「射程角度の修正完了。空気中に不純物無し。臨界点突破。発車まで5、4、3、2――」

「蹴散らせ――ジャガーノート」

 三つの巨砲が轟音を鳴り響かせて発射される。俺もエリアサーチで現場の敵の状況を確認する。もしもの時のために、フォローに回るためだ。

 放たれたジャガーノートは空間を走る。遥か上空からスフィアを飛ばしているから、三つの光の筋が伸びている光景が見える。

「A地点着弾まで5、4、3、2、1……着弾」

 ……うわぁ……エゲツないな。流石王さまだ。喧嘩しても戦うのはよそう。
 俺がそう思うのも無理はないと思う。だって目標地点にたどり着くと、そこを中心に闇が全方位に広がって、晴れたら無数の敵が倒れ伏しているのだから。当たる直前に障壁を張ったように見えたけど、そんなもの知ったこっちゃねぇと言わんばかりに破壊。慈悲はない。

「敵は今ので動揺しています。叩くのなら今です」

「よし。どんどん行くぞ!」

 そう言うとシュテルは頷き、目標地点を王さまに伝え、それを彼女が狙い撃つ。狙い撃つって聞いたら射撃を思い浮かべるけど、これは違うよなぁ……。
 何度か撃っていると、王さまの魔法の影響でクレーターだらけとなっていた。しかしそれでも人は死んでいないのだから非殺傷設定って便利だ。
 しかしそれでも敵はまだたくさん居る。王さま途中で切れないかな? めんどくさいって。そう思い、第三波を撃った王さまを見たその時だった。俺の視界に今まで感じた中で一二を争うぐらい強力な魔力を感知したのは。
 その魔力が発生したところから雷――それも数が多く、強力な、一般魔法使いでは到底発動させることができなさそうな……ソレが王さまのジャガーノートの一弾を容易く打ち砕いた。

「なっ!?」

「フール!」

 魔法を発動させていた王さまが驚愕に目を見開き、視点をリンクさせていたシュテルが俺の名を呼ぶ。
 さっきの雷が発生した地点へとエリアサーチを飛ばし、他のエリアサーチを一時的にこちらとのリンクをカットする。

「……赤毛、アホ面、杖……そして先ほどの魔力――間違いありません。ナギ・スプリングフィールドです」

 こいつが――ってマズ!? 

「!? フール、どうしました!?」

「……エリアサーチを破壊された」

 急にこちらを見たかと思うと、次の瞬間雷に飲まれた跡形も無く消し去られてしまった。……隠蔽は完璧だったはず……現に彼の他の仲間も突然の奇行に驚いていたのをチラッと見た。……なんでだ?
 ってそうこうしているうちにも次々とエリアサーチが……って全部壊された!?

「……予想外にも早く出張って来ましたね。しかし作戦は変わりま――そういえば、レヴィは?」

 シュテルの言葉に何か嫌な予感を感じて、レヴィが居た場所を見る。そこには誰も居ない。しかし一筋の青い線がある方向――先ほど王さまのジャガーノートが掻き消された地点へと向かっているのは見えた。

 も し か し て。

「どうやら先行したようです」

「アホ! 冷静に言うとる場合かっ! フール、シュテルと共にあのバカを追いかけろ。我とユーリも仕事が終わり次第向かう」

 流石王さま。こういう時は頼りになる。彼女のその一言で予想外の展開に混乱していたシュテルも気を取り直し、俺と共に全速でレヴィを追いかける。

「こうなっては当初の作戦が機能するか分かりません。その場の状況に合わせて動きましょう」

 臨機応変にってか。
 まぁ、ゴチャゴチャ考えて戦うよりは良いか。 
 それはそうとレヴィめ……後で絶対王さまの説教だな。怒気が半端無かったし。

 ……あっちの方の作戦も上手くいかないかも……王さまの機嫌が悪くなったし。

 
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