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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第88話 少女たちは集結するようです


Side ―――

―――AaaaaaaaaaaaaaArrrGSchaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!
ドガァン! ズガァン! ドボォ!
「みにゃぁあああああああーーー!もー!なんてことしてくれてるのよぉーー!」

「こうなったら仕方ないでしょう!逃げますよ!」
ギュギュギュギュ!
「こっちはこっちでカマイタチブレス撃とうとしてるしぃーー!」

「まず……お嬢様!!」


人の上半身と竜の頭と下半身を持った"蛇人竜"と"鷹竜"の間に挟まれた三人。

負傷し動けないエミリィを守る為にベアトリクスが障壁を張ろうとしたが、その前に夕映が割って入った。


「委員長!ベアトさん!!」
ザウンッ!!
「ユエさん!?」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
「く……こ、これは厳しい物がありますです……!」

「何故私達を……いえ、素人のあなたが竜種のブレスを防げるほどの「頭を下げるです!!」
ガゥンッ! ――グシャッ
「きゃぁぁぁっ!」


ブレスを防いだ夕映だったが、ブレスを突き進んでくる腕を見つけ二人を突き飛ばす。

一瞬遅く伸ばされて来た腕が頭上を貫き、鷹竜の首を掴むと同時に握りつぶした。

ダラン、と力なく四肢と羽を投げ出した鷹竜を蛇人竜は一飲みにして行く。


「ぐ、グリフィン・ドラゴンが……!」

「元々食事しようとしてた所を邪魔してしまっただけです!今の内に逃げますよ!」

「委員長、いつまで呆けているです!?逃げますよ!」

「そ、それが……私の箒が、先程のブレスで……。」

「こなみじんーーー!?ちょっとどうするの!支給品の箒じゃ二人は乗れないし、誰も飛行魔法なんて

ちょー高度な魔法使えないんだよ!?」

「そ、そんな事言われても仕方ないでしょう!?」


誰もが思うであろう。そんな言い争いをしている暇があればさっさと逃げろと。

その間にも鷹竜は飲み込まれ続け―――最後の一飲みを終えた蛇人竜は、夕映達を睥睨した。

これまでより一番光り出す夕映の仮契約カード。その意味は、言わずもがな。


―――Brrrrruaeaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!
ゴゥッ!
「ちょっとどういう事ですの!?あれだけ食べればお腹いっぱいでしょう!?」
ゴゥツ!
「蛇竜系は人が大好物なのです、特に若い女の子が!!いいから委員長掴まってくださいです!」
ゴゥッ!
「うわーん!デザートになんかなりたくないよぉーー!どうするのユエーー!?」

「そこで私に振るですか!?と、とにかく弱点を突くしかないです!」


エミリィを箒に乗せ、高速飛行しつつアーティファクトの能力の一端を使い、蛇人竜の弱点を検索する夕映。

その集中力と技術力は旧世界にいた頃を大幅に凌いでいる。

しかし、そんな状態の夕映と優秀な魔法生徒2人と半獣人が全力をもってしてもこの魔獣を倒すのは困難だ。


「皆さん、自分の得意な魔法と使える魔法は!?」

「え、な?わ、私は氷と雷。あとは地属性を少々です!」

「私もお嬢様と同じく氷と雷ですが、地の代わりに風が使えます!」

「あたしは知っての通り強化魔法と火だよ!あと光!」

「10属性の内8属性ですか……十分です!」


属性は火水風雷地氷花砂闇光の10属性だが、蛇人竜は火雷闇光以外を障壁でほぼ無力化してしまう。

尤も愁磨達の様に聖魔無の三属性を使えるならば話は変わるが、ここで求めるのは仕方のない事だ。

そこで、夕映が出した結論は―――


「この先の遺跡であいつを撒くです!皆さん、私の指示に従って貰うです!」

「なっ……!あなた、どういうつもりで!?」

「言い争うのは後です!コレット!遺跡が見えたらあいつに攻撃を仕掛けて、残り魔力気にせず

全速力で逃げつつ攻撃を当て続けてください!」

「あたし囮ぃ!?ええいしっかたないなぁ!!」
バシュバシュッ!
「ちょ!遺跡が見えてからって―――」
GuAruaRuaAaaaaaaaaaAAAAAAAsHuoooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!
「怒らせちゃったじゃないですかコレットさん!貴女は人の話を聞かないのですか!?」

「計画変更です!コレットは引きつけながら逃げてくださいです!

私達は先回りするですよ!ベアトさんは右回りで、私は委員長を連れて左から行くです!」

「「了解!」」


コレットの勇み足によって少々スピードを上げた蛇人竜を本人に任せ、三人は全速力で遺跡へ向かう。

そこは街の僅か20分の一以下の小さな遺跡で、高低差の大きい建物が連なっている。

ただ歩いて移動するとなると迷宮のような作りとなっている為、普通なら箒に乗った夕映達が有利だ。


「おーにさんこっちらー!ってウソウソウソ!もうちょっとスピード落としてぇぇぇぇええ!!」

『コレット!貴女の正面に見える一番高い建物の場所まで連れてきてください!

その後建物の一番上から練習した魔法を撃つです!』

「いいけど、その後は私の魔力尽きちゃうよ!?」

『構いません!それよりも、十分気を付けてください!』

「今更ぁ!?」


遺跡に入ったコレットは高低差を利用しつつ、"加速(アクケレレット)"と"高速機動(イモービリテル)"を続ける。

夕映がコレットを囮に選んだ理由は、他の三人より魔法の腕が劣っているからと言う訳ではない。

蛇人竜の動きを見つつ攻撃を避け、高速移動しつつ建物群の間を抜けて行ける"目"を持っているからだ。

そうでなければ、時折遺跡を破壊しながら死角からも迫る相手に、ここまで逃げきれてはいない。


「み・え・たっっ!!」
ギュワンッ!
『委員長、ベアトさん!今です!!』


目的地に到達と同時、コレットがほぼ直角に上昇した事で、蛇人竜は建物に突っ込む事を防ぐ為急停止した。

僅か2秒程の時間の停止だが、あの地獄の修業を経た夕映にとっては十二分に過ぎる隙であり、

そこを狙って作戦を立てる事も容易だった。


「あーもう、どうなっても知りませんわよ!『隆起霧鉄(アドサルティオー・ディマゲイン)』!!」
ザザザザザザザザザザザザザ!
「『風花旋風風牢壁(フランス・カルカル・ウェン・ティ・ウェルテンティス)』!!」
ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「"フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ!崩れ去れ 天帝の陵墓 麒麟を斫る!

楼止閣往(カルド・アルド・クラーリオン・ラム・ヒレィ・ラーンマイディ)』"!!」
ガキィン!


エミリィが砂鉄を滝の様に降らせ、ベアトリクスがそれを巻き上げ、更にそれを夕映が空中に固定する。

一粒一粒の束縛力は小さいが、限定された空間と量により竜種でさえ十秒程動きを封じられる。

その間に、コレットの詠唱が完成する。


「"アネット・ティ・ネット・ガーネット!ものみな 焼き尽くす 浄化の炎(オムネ・フランマス・フランマブルガートウス)

破壊の王に して 再生の 微よ(ドミネーエクスティンク・ティオニース・エトシグヌス・レゲネラティオース)我が手に宿りて 敵を喰らえ(インメアーマヌーエンス・イニミークムエダット)

紅き焔(フラグランティア・ルビカンス)』"!!」
ゴォゥ!!
『全員全速力で逃げるです!!』


放たれたのは、火の中級魔法。普通ならば下級の竜種にさえ防がれるものだが、撃たれた場所は

限定空間(・・・・)であり、かつ微粒子が無数に浮遊している(・・・・・・・・・・・・・)。当然、その結果は―――


SghurA―――
ズドォドドドドドドドドドドドドドォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンン!!
「「「「きゃぁああああああああああああ!」」」」


天高く昇る火柱と耳を劈く轟音、街まで響く揺れ。夕映が狙ったのはただの粉塵爆発であったが、

魔法による効果と発生した物質までは予想できなかった。いや、知識が無かった。


「な、な、な、な、な!なんて事させるんですか貴女は!私達まで殺す気ですか!?

蛇人竜が、粉々…と言うか、跡形もありませんね……。」

「い、いえ、魔法を使っても、ただの物理現象なら、と……。まさかここまで強い爆発になるなんて。

あの魔法で出るのは砂鉄じゃなかったのですか?」

「ユエらしくない失敗だね?あの鉄は、熱されると空気?酸素と窒素だっけ?を発生させるんだよー。

初等部の科学の実験で使う魔法だよ?勿論量は少なくするけど。」


その補足説明に、二重の意味で夕映は頭を抱える。小学生レベルの知識を持たなかった事と、

良くあの程度で済んだな、と。下手をすればこのあたり一帯爆発に巻き込まれてもおかしくなかった訳だ。


「では……戻りましょうか。」

「はぁ~、でもこれでレースはパアかぁ。ショックだね~~ユエ。」

「いえ、竜種二体相手に皆が無事だったのですから何よりです。私より委員長が………。」

「…………お、お嬢様。」


横を見ると、エミリィが地に伏せていた。いつもの気丈さなどは全く見えず悲壮感だけが漂っている。

子供の頃から・・・いや、生まれた時から刷り込まれ、漸く会えると思ったナギの生まれ変わりに

会えなくなったのだ。そんなエミリィを気遣いつつも、夕映の箒に半分縛るようにして学園へ戻った。


「あ~あ、でもビリとビリ二位かぁ。カッコ悪ぅ~~~。」

「過ぎた事をいつまでもみっともないですよ、コレットさん。」

「そもそもの原因は委員長が無理に近道したせいだけどね。」

「うぐっ……。」

「それにオスティアに行けばユエの記憶、もう少しは戻るかも知れなかったのにね。」

「まぁ…次の機会を待つですよ。学園に居るだけで少しずつ戻っているですし。」

「ユエさん、コレットさん、記憶が戻るとは?」

「あっ、いや、別に……あはははは。って、はれ?」


思わぬところからの突っ込みに白々しい笑いで誤魔化したコレットだったが、エミリィとベアトリクスの

ジト目を受けて明後日の方に目を反らした。その先に学園があったが、その様子がおかしい事に気付く。


ワァァァ! キャー!キャー!
「……ビリのお出迎えにしてはにぎやかだね?」
ワァァァァァァァァァ!
パチパチパチパチ!
「な、何事ですか?」


4人が帰って来るのを待っていたように、生徒達が万雷の拍手で迎える。

当の本人たちは訳が分からずただ困惑するだけだが、その答えは喝采が教えてくれた。


「スゴイよあんた達!」

「学生があんなのを倒したなんて聞いた事ありませんわ!」

「あ、そうか。竜を倒したから……?」

「その通りよ。この選抜試験は有能な候補生を選ぶためのもの。お祭り中のオスティアはかなり物騒に

なるから、即戦力が欲しいのよ。森の竜種…それも中級種を倒せる実力があるなら、その資格は十分だわ。」

「「「総長(グランドマスター)!?」」」


更に4人――いや、夕映だけは首を傾げていたが――を驚かせたのはアリアドネ―総長、つまりは学園長に

して国の長であるセラスの登場だった。国の最重要人物が、何故このようなお祭り騒ぎに現れたのか――


「竜を倒した者には、特別枠を与え合格としましょう。」

「えぇーーっ!?や、やったねユe「やったねエミリィ!」「流石委員長!!」

「貴方なら竜を倒せたのも納得だわ!」「オスティア行きおめでとう、エミリィ!」

「えっ!?いえ………。」

「ちょちょ!どーゆー事よソレッ!?竜を倒したのは主にユエのお陰……!」

「まぁ落ちこぼれだった私達が一緒だったと言っても、逃げ回っていたくらいにしか思われないですね。」

「うがーーっ!倒した瞬間の映像は無いの!?」


歓喜する生徒達、困惑するエミリィ、憤慨するコレット、諦観の夕映。

それを見て、セラスはただ微笑むだけだ。そして2人以外が勘違いしたまま、レースが閉会されようとする。


『それでは!何だかんだで逆転優勝したフォン・カッツェ&デュ・シャコンビと!』

「何だかんだ言うナ!」

「……勝てばいいのです。」

『特別枠のエミリィ・セブンシープに騎士団団員と共に「お待ちなさい!!!」』
ザワッ―――
「皆さん勘違いしているようですね。倒したのは私ではありません。

倒したのはコレットさんとベアト、そして……何よりこのユエさんの作戦があってこそです!」

「委員長……。」

「フン……。」


騒ぎ立てていた生徒達だったが、エミリィの宣言にざわつく。しかし、一番驚いたのは夕映とコレットだ。

自分達をあれ程馬鹿にしていたエミリィが庇うとは思いもしなかっただろう。


「そう言う訳ですから総長、私だけ特別枠を頂く訳には…。」

「あらエミリィ、あなたこそ勘違いしているようね。」

「え?」

「特別枠は竜を倒した貴方達4人よ。優秀な候補生は何人居ても困りませんからね。」

「え………。」

「や……やったぁーーー!やったよユエーー!」


コレットの歓喜の声に、再度生徒達が拍手を送る。尤も半分は夕映とコレットのが活躍した事実に

困惑していたが。しかし、これで夕映はネギ達と合流出来る手段を手に入れた。

―――そして、4日後。

………
……


「では!「「「「行ってまいります!」」」」

「学園の名に恥じないようにねー!」「気を付けてねー!」「お土産よろしくーー!」

「あぁ~~ん、ついに生ナギに会える~~~!」

「あなたが会えるとは限りませんよ!会うのは私です!」

「……飽きませんですね、あなた達。」


こうして、騒々しく4人・・・もとい、6人はオスティアへ出発した。

―――時を同じくして、オスティアより200km。


ゴォォォオオオオオオオオ!
「んん~、そろそろ疲れて来たアルよ~~。」

「まだまだ遠いが、楽のし過ぎも駄目でござるな。……走るか、古。」

「おお!修業と競争アルね!行くアルよぉーー!」


体育会系・・・もとい、戦闘系二人は走ってオスティアを目指す。

そして―――

Side out


Side 明日菜

「ほん、とう、に!こっちでいいんでしょうね!?こんな荒野!歩かせて!」

「合ってるわよ!こっちで!ってゆーか!お尋ね者なんだから仕方ないでしょ!」

「あの"咸卦法"とか言う強化術使えばいいじゃない!そんであたしを運んでよ!」

「ムチャ言うんじゃないわよ!アレどんだけ疲れると思ってんのよ!」


オスティアを目指して、歩き始めてから暫く。近くに飛ばされたアーニャちゃんと一緒に来たんだけど・・・

うるっっっさいのよこの子!あたしがネギのお姉さんに似てるせいか知らないけど、妙に目の敵にして!

と言うか何ッ回も運んであげたのに全然感謝もしないとかありえないでしょ!


「み、え、たぁぁぁぁぁぁ!!あれでしょ!あれよね!?浮いてるものね!」

「本当に!?やったぁーー!!」


ちょっと高くなってる岩の上で、アーニャちゃんが飛び跳ねながら指差してよろこんでる。

よ、漸く歩かなくて済むのね・・・!って言うか、飛んでる島にどーやって渡るのよ!?


「まぁいざとなったら、愁磨さんから貰った転移符もあるし―――」
―――アスナ

浮いた島々を見た時、何か・・・私の中で、誰かの声がした。昔聞いた事が・・・そうだ。

絶対、聞いた事がある声だ。男の人の様な、女の人の様な・・・。


「ちょっと明日菜!早くしなさいよ!」

「もう!急がなくてもいいでしょ!?夜になってから潜入するのよ。」


もう、アーニャちゃんのせいでさっきの声どんなだったか忘れちゃったじゃない。

でもま、いっか!またその内何か起こるでしょ。


「オスティア、か………。」


Side out
 
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