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いつか必ず、かめはめ波を撃つことを夢見て

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第18話 強襲!桃白白

 悟空との修行の日々は、つつがなく進んでいった。悟空は、とんでもない才能の持ち主であった。ナシゴとカリンの教えをすぐに吸収して、自分のものに出来る能力があったのだ。

 まず、ナシゴは悟空に対して気の使い方を教えた。悟空は、すぐに気の使い方を覚えて、自分の力にした。ナシゴは、悟空に“かめはめ波”も教えようとしたが、既に亀仙人から習ったと言っていた。

「かめはめ波なら、亀仙人のじっちゃんから教えてもらったぞ」
「そうか、じゃあ“かめはめ波”の練度を高めるために、修行を進めようか」

 悟空は、かめはめ波を撃てはするが、まだまだ技の練度が低いので、それを高めるためにと、ナシゴはとっておきのコツを教えていった。ナシゴが何十年も掛けて編み出したコツさえも、すぐに自分のものにしていってしまうので、ナシゴは、ちょっぴり自信喪失していたりした。

「ハッ!」
 悟空が小さな身体を目一杯動かして、パンチを繰り出す。ナシゴは、その攻撃を冷静に受け流し、そのまま腕を取って、極めながら投げ飛ばす。ナシゴの得意技である、極め技だ。かつて、武泰斗に放った同じ技を、悟空に放ったのだ。腕を極められた悟空は、なすがまま投げ飛ばされるだけだった。

 投げ飛ばされた悟空は空中で、クルッと一回転するとそのまま着地して、ナシゴに油断なく目線を向ける。勝負の流れを掴んでいて、優勢なのはナシゴであった。ゆっくりと落ち着いているナシゴに対して、悟空は息を切らして、素早い呼吸を繰り返している。誰が見ても、勝っているのはナシゴであった。それでも、悟空の目には、あきらめていない覇気を感じさせる力強さがあった。

 悟空は地面を蹴って、ナシゴへと一歩で近づく。そのまま回し蹴りの要領で、ナシゴの顔めがけて右足を振りぬく。ナシゴは、それでも動じずに悟空のケリの攻撃を左手で受け止めた。掴んだ足を離さないまま、カウンターでナシゴが悟空に向かって右ストレートのパンチを食らわす直前で、寸止する。

「そこまでじゃ」
 カリンの声が響き渡る。ナシゴはカリンの声を聞くと、悟空から寸止めしていた右の拳を離した。

「くそ~っ、おっちゃん、めちゃくちゃつえーなー」
 悟空が大の字に倒れこみながら、感想を言う。
「そりゃ、何百年も修行をしているからな。そう簡単に負けはせんさ」

「悟空、体力が回復したら次は、わしとじゃ。最近は、ナシゴとしか手合わせしておらんから、楽しみじゃのう」
 カリンが、本当に目を細めて、ひげを撫でながら言う。本当に楽しみにしているようだ。

 それから、悟空はカリンとも手合わせをした。しかし、悟空の攻撃は、すべてカリンによって受け止められ、悟空は簡単に倒されてしまった。悟空の良い点を上げるとすれば、体力が有り余るぐらい高いというところだけだった。他は、カリンやナシゴに比べれば全然未熟であり、修行が足りないと感じさせた。

 ナシゴとカリンは、話し合い悟空の育成方針を決めた。まずは、気の使い方を更に教え込む事を第一として、戦いの中でも自然に使えるように教えること。それから、武術の基礎の型を徹底的に教え込むこと。その二つを中心にして、修行を進める方針を建てたのだった。

 それから数日経ったある日、ナシゴと悟空が日課のカリン塔を一気に降りていった時。

「ボラ!」
 ナシゴの目線の先には、ボラが倒れ伏しており、その側に髪をお下げにした男が立っていた。
 ナシゴは、カリン塔から一気に飛び降りると、倒れ伏しているボラの近くに着地して、すぐに、ボラが生きているかどうか確かめた。幸い、まだ息があったので、すぐに仙豆を飲ませた。ボラが、仙豆を飲み込んだことを確認すると、ナシゴは、ボラを殺しかけた人間に目を向けた。
「ボラ! くそっ、貴様がボラをやったのか!」


「何だ貴様は?」
 ナシゴの詰問に答えずに、おさげの男は突然現れたナシゴ達を誰かと聞いた。ナシゴは、彼の顔を見て、原作知識を思い出した。彼こそ、原作でもボラを殺した桃白白だった。そして、彼がここに来ること知っていながら、なにも対策をせずにボラを死なせかけた自分を愚かだと思った。

「ナシゴ様、くうっ」
 仙豆で傷は治ったが、まだ具合が悪そうにボラが呻く。

「くそっ、許さんぞ! 桃白白!」
 ナシゴは、熱くなる心とは逆に冷静な部分で、桃白白の力量を測った。そして、今の力量なら簡単に倒せてしまうという事が分かった。これは、熱くなった心のうぬぼれではなく、しっかりとした観察眼によるものだった。今の桃白白の力量では、ナシゴには遠く及ばない。

「ほう、わたしの名前を知っておるのか。ならば、わたしが世界一の殺し屋だということも知っているだろう? おとなしく、お前が持っているドラゴンボールとやらを寄越すのだ」

「ナシゴのおっちゃん!」
 悟空も、カリン塔から降りてきて、ナシゴの側に近寄る。そして、ボラの胸の傷跡を見て、事態を把握した。
 ナシゴは、ドラゴンボールを渡す気は全然なかった。代わりに、武術の構えを見せて、桃白白に戦う意志を示した。

「ほーぅ、貴様、世界一の殺し屋に立ち向かう気か? なかなか、勇気があるじゃないか」
「ぺちゃくちゃ、おしゃべりする暇があるなら、かかって来い」
「ふむ、どうやら死にたがりのようだな、ではこれで殺してやろう」

 ナシゴと桃白白の戦いが始まった。 
 

 
後書き
2014/05/21 修正)ボラの死亡を書き直しました。 
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