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闇を祓う者~他人の恋愛見てニヤニヤし隊~

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原作開始前
  どうしてこうなった?

 
前書き
どんどんお気に入りが増えているのが嬉しいです!
彼方くんの過去を少し。 

 
「まず、俺には前世の記憶があります」

 俺は二人にそう切り出した。俺の言葉に千冬さんも束さんもよく分からないという顔をしていた。

「どういうことだ?」
「あり得ないね」

 うん。まあ、そういう返しが来るよな。

「じゃあ、千冬さん。俺がさっきの死合で出した威圧感。あれを感じてどう思いました? 素直に言ってくれていいので」

 俺が質問すると、千冬さんは思い出すかのように目を閉じた。その様子を俺と束さんが見つめる。少しの沈黙の後に、

「五歳の子供が出せる威圧感じゃないな。そう思ったよ、私は」

 千冬さんはそう答えた。

「ですよね。自分で言うのもなんですが、あり得ないです」
「それが、何だって言うの?」

 束さんが聞いてくる。

「まあ、待ってください。それはすぐに分かります」
「むぅ。分かったよ」

 科学者の性が疼くのか、急かしてくる束さん。待って本当に。話してもいいラインを考えながら喋ってるんだから!

「物心ついた時からそうだったんです。自分の頭の中に記憶に無い記憶がある。結構怖いもんですよ」

 嘘は言ってない。物心ついた時から記憶はあった。

「今ではもう受け入れましたけどね。それで、これからは前世の俺の話です」

 なんとなく、二人が緊張した気がする。

「俺は極普通の高校生でした。何処にでもいるようなね。まあ、特になにかあるかと言われればそれなりに剣道が出来る位ですね。でも、ある日です。突然違う世界に召喚されました。突然でしたよ、一緒にいた友達とね。そこは世界の裏側、「影の世界」という世界で、その世界では悪魔と手を組んだ革命派と王国とが戦っていて、俺達はその戦いを終わらせるための救世主として呼ばれました」
「……それで?」

 束さんが続きを促す。続きを話す前に、

「千冬さんに俺は聞きましたよね? その剣は何のためと。貴女は守るための剣だと答えました。それだけだと。じゃあ、貴女はその守るための剣で相手を殺す覚悟はありますか?」
「……何故だ? その覚悟はいらないだろう?」
「すいません、少し敬語を抜きます。あんた、それ本気で言ってるのか?」
「どういう意味だ」
「守るっつたな。何から一夏を守るつもりだ?」
「私達を脅かすものからだ」
「だろうな。でも、考えてみろ。脅かすつもりなら、相手はこっちを殺す気でくるぞ? 少なくともさっきの俺の威圧感位の殺気は出してくるだろうな。あんたに何が出来る?」
「何が……?」
「言い方を変えよう。守るだけの剣で一体何が解決するんだよその状況で」
「……そういうことか」
「あんたは矛盾してるんだよ。守るだけの剣じゃ何も守れない。守ってるのはその状況ただ一つだ。かつての俺と一緒だ。このままじゃ俺と同じ目に遭う。それだけはやめてほしい」
「何があったんだ?」
「……俺達は召喚された後、戦いました。俺が戦っていた理由はただ一つ、仲間を守るためです。今の千冬さんと同じです。それなりに戦闘経験も積んで、モンスターも散々殺しました。で、ある程度たった時です。相手の幹部クラスの奴と戦うことになって、そいつは普通に「影の世界」の住人で俺達と同じ人間の姿をしていた。戦いは俺達が優勢で、俺は前衛で敵と戦っていました。最後、そいつに止めをさそうとしたときに俺は躊躇った。俺は覚悟が出来ていなかった、"殺す"つまり相手の命を絶つっていうことの。ビビったんですよ。自分と同じ人間を殺すことに。散々殺したモンスターだって同じ命なのに。その躊躇いのせいで」
「「…………」」

 千冬さんも束さんも何も言わない。

「その躊躇った隙を突かれて、俺は後ろに守っていた親友をそいつに殺されました」
「「…………っ!」」

 二人は息を飲んだ。そりゃそうだよな。俺だってそうなる。

「俺は怒りで真っ白になりました。散々躊躇った癖にそいつを殺しました。何度も何度もそいつを刺して刺して……俺は俺は」

 あの時の記憶がどんどん甦ってくる。怒りで真っ白になる。あいつの最期の顔が思い浮かぶ。涙が零れていくのが分かる。俺を制止する■■■の声。あいつを殺した奴の笑い声。奴を刺している剣に映る自分の顔。奴と同じ顔で涙を流している。飛び散る肉と苦しそうな呻き声。そして…………
 そこまで思い出してると、突然抱きしめられた。千冬さんと、驚くべきことに束さんもだった。なんで抱きしめられてるんだろう。そう思っていると、

「すまない。私のせいだ。私のせいでそんなことを思い出させてしまった」
「続きを促した束さんも悪いよ。だから、だから……そんな風な顔をしながら泣かないで……」

 束さんに涙を拭われる。そこで右手に走る鈍痛に気がつく。見てみると血が流れていた。どうやら無意識に握りしめていたらしい。

「すみません。ありがとうございます。ただ、もう少しこのままでいさせてください」

 久し振りに感じる人の心の暖かさが嬉しかった。

「あと少しだけ、続きがあります」
「しかしそれは……」
「いいんです。話すって決めましたから。そしてあなたには絶対伝えなければいけない」
「……分かった」
「いいの? ちーちゃん」
「いいさ、彼方が決めたのだから」

 なんだろう。スゴいお母さん、または姉目線から見守られてる気がする。

「俺はそれで気づいたんです。守るだけじゃだめだ。人を殺すことから目を背けちゃいけないんです。剣道も元は殺人術です。でも今は違う。こう言っては怒られるかもしれませんが、言わせて貰います。貴女は甘い。
剣道を習っているから大丈夫と思っているけど、確実にどこかでスポーツだと思ってしまっている。それさえ、それさえ無ければ貴女はもっと強くなれるのに……。貴女は俺とは違う。才能があるんです。今の俺が貴女より強いのは経験があるからだ。俺には才能がないから鍛練をし続けた。でもね、秀才はどう足掻いても天才にはなれないんです。でもね、貴女は天才だ。貴女は俺より強い。だから、俺と同じ目に遭って欲しくないんです。だから、だから……」

 言葉が続かなくなる。悔しい。伝えたいことはあるのに言葉にならない。そう思っているとさらに強く抱きしめられた。

「分かった。だから私に覚悟をもって欲しいということだろう?」

 分かってくれた。安心すると、急激に眠気が襲ってくる。やはりあの記憶を思い出したのと、あの動きは、心にも身体にも影響が出てしまったみたいだ。瞼が落ちない様に頑張っていると、

「寝てしまってもいい。私達のせいだからな」
「ありが……とう……ござ……ます」

 俺の意識は闇に沈んでいった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 眠ってしまった。私が許した途端に彼方は寝てしまった。抱きしめたままでは寝づらいだろうと思い膝枕に体勢を変えながら、私は束に話を振る。

「なあ、束。今の彼方の話をどう思った?」
「うん。かーくんの話は本当だろうね。嘘であんな話をしながら泣くなんて私にもできないよ」

 驚いた。束が彼方のことをあだ名で呼んだ。つまり、

「彼方が気に入ったか? 束」
「うん、興味は湧いてたからね。そういうちーちゃんもでしょ」
「まあな、なんというかほっとけない」
「私もそんな感じだよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目を覚ますと、千冬さんに膝枕されていた。……なんで!? すごい優しい目で二人に見守られてるんだけど!?
そこに、千冬さんが声をかけてきた。

「なあ、彼方。その記憶をもってて辛くないか?」
「まあ、少しだけ」
「母親には言っていないのか?」
「……言ってないですね」
「なら、寄りかかる場所がないだろう。だから、私がその場所になろう」
「?」
「彼方、私を姉と呼べ」
「はい?」
「あ、ずるいよちーちゃん! かーくん、私もお姉ちゃんって呼んで!」
「かーくん?」
「彼方だから、かーくん!」

 すごいテンション高く言われた。あだ名ってことは気に入られた?

「なんで、姉なんですか?」
「いや、なんだかほっとけなくてな」
「なんか、弟みたいなんだよねぇ」
「さいですか」

 まあ、頼れる人がいるっていうのはいいかもな。

「じゃ、じゃあ、千冬姉さん」
「ああ」
「束姉さん」
「ぶー、束お姉ちゃんってよんでよー」
「恥ずかしいので嫌です」
「えー、何でさ!」
「恥ずかしいからって言いましたよね!?」

 よお、親友元気にしてるか? 今日は報告があるんだ。あのな、姉が二人出来ました。なに言ってるのか分からないって? だろうな。俺もよく分からん。ただな? これだけは言わせてくれ。どうしてこうなった?


「ほら、束お姉ちゃんって!」
「嫌ですってば!」
「まったくお前らは……」

 ちょ、千冬姉さん!? 助けて!? 「やれやれ何をやってるんだか」っていう目で見守ってないで、この追いかけてくる兎さんから助けてよ! ちょっと!

「捕まえた♪ さあ!」

 ちょ、待って! まっ、イヤァァァァアアア…… 
 

 
後書き
呼んでいただきありがとうございます。
テスト終わりの時間に書いてここまで投稿しましたが、これからはこんなハイペースでは無理です。
まあ、努力はしますがね!

さて、どうでしょう彼方の過去は? まあ、いろいろあった末の転生ですので、まだ裏設定があったりします。ずっと、シリアスな感じだったので最後ぐらい明るくしようとして、彼方が犠牲になりました。

要望があれば、過去編も書いてみたり。
それでは次回をお待ちください!

感想、誤字報告等々お待ちしております! 
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