| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

リメイク版FF3・短編集

作者:風亜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

会いにゆくよ

 
前書き
イングズ、15才前後? ルーネス、13才前後?
「友のために」の、何年か後の話。
定かではないが、この1、2年後にあの旅が始まる……のかも。 

 
 ────お、居た居た。


「おーい、イングズ~……!」


 真夜中にサスーン城に忍び込もうとしてるおれは、かがり火の焚かれた見張り塔で警備中のあいつを見つけて、囁き声で精一杯呼びかける。

「 ──── ルーネス? お前……、こんな時間帯に何しに来た」


 頭上から、呆れたような落ち着いた声が返ってくる。


「なんかロープとかない~?」

「あるにはあるが……、少し待っていろ。────ほら」


 お、分かってんじゃんあいつ。おれに向けて長いロープの先を投げてよこした。

「よっと……、そっちしっかり持っててくれよっ」

「……足元、気をつけろよ」


 おれは石壁を縄伝いにひょいひょい登ってくけど……、見張り塔上まで登りきる直前、足を滑らしちまった。


「うぉわっと……?!」

「馬鹿、何やってる……!」

 そんなおれの片腕を、とっさにあいつが掴んで引き上げてくれた。

「ふぃ~、危なかった~。さんきゅー、イングズっ」

「……相変わらず、危なっかしい奴だ」

「てか、わりと久しぶりだよなー! 最近めっきり姫さんと町とか村に来ないからさ~」


「だからといって、お前の方から真夜中に来るやつがあるか。……私はこれでも、正式な兵士になったばかりなんだ」

「へっ、マジで? いつの間に見習い卒業してたんだよ! しかも……、おまえ今"わたし"っつった? わっ、女みてぇ! おまえ自分のことは"自分"っつってたのに、"そっち"いっちまったのかっ? ───あ゙いだ!?」

 ゲンコツ、食らったっ。


「からかうなッ。見習いからの卒業のひとつのようなもで………私、とてまだ、慣れないんだ」

「"おれ"じゃダメなのかよ、その方が男らしいじゃん!」


「いや……、それでは陛下や姫様に対して礼儀になっていない。────城に仕える者として、普段から礼節に沿って振る舞わなければならないんだ」

「うわっ、メンド! おれ兵士じゃなくてマジよかった……」

「お前には、到底務まらんさ」


「あっ、おまえそれジマンしてんだろー! ……しかも何だよ、ペンダントなんかしちゃって? やっぱ"そっち"いってんじゃね~の……っでぇ?!」

 また、ゲンコツっ。


「こ、これは………姫様からの、"賜り物"だ」


「たまわりっ……? 割ったのか、玉。───殴んなって!」


 今度は何とか、よけてやった。


────胸元のシズク型のペンダントに、イングズは片手を添えて大事そうにしてる。


「正式な兵士になった記念に……、頂いたんだ。────次は、"騎士"を目指さなければ。サラ姫様の為に」


 そう云いきるイングズに、おれはちょっとした寂しさ、みたいなのを感じる。


「おっ、そしたら今度はどんな褒美もらえるんだろうなぁ? 姫さんからの、ちゅ~とかっ?」


「そ、そんなものは望んでいない」


「つーかさ……、たまにはカズスやウルに来いよ。正式な兵士になってたのも知らなかったのは────なんか、さみしいっ」


 つい本音が出た。……それでもイングズは、あまり表情を変えてくれない。


「もう見習いの頃のようにはいかないさ、いつまでも子供のままではいられないしな」


「じゃあおれはガキのまんまでいいかな~? 大人ってメンドそうだしぃ」

 ちょっとおどけた感じでそう云って、おれは両手を頭の後ろに組んだ。……今はちょっと、反発してやりたい。


「 ────そう云った所で、嫌でも大人にさせられるさ」


 そこでなぜかイングズは、おれの頭に片手をのばしてぽんぽんしてきやがった。

「お……、おまえにゃガキ扱いされたかないねっ!?」


「フ……どっちなんだ、結局」


 あ、笑った……? こいつが笑うのは、めずらしい。……といっても、ほんの一瞬だけど。


「夜明けが、近いな……。で、結局何しに来たんだ、お前」

「いや、だからその……どうしてんのかな~と思って、おまえが」


「そうか、なら話は済んだろう。もう帰れ」


 冷てっ?! せっかく一人でここまで来たのに………


「それとも────少し寝ていくか」


「はぁ!? どういうつもっ……」

「私はまだ仕事があるが……、寝られる場所でそうしていってもいいぞ」


 な、何だ………オドかすなよ。


「いいよ、もう帰る。母さんとアルクゥ、心配させちまうし」


「そうか、気をつけてな。───近い内に許可を取って、カズスやウルに顔を出しレフィアやアルクゥ、お前にも会いにゆくよ」


「えっ、マジで!? それ約束……ぜったいな!!」


 おれは急に、自分でも驚くくらいの声になった。

「判ったから大きな声を上げるな。────約束だ」


 また……笑ってくれた。こいつ、やっぱキライになれない、かも。




END 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧