| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Angel Beats! the after story

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

大人のデート②

人とすれ違えば男女問わずこちらを振り向いて視線を向けてくる。
悲しいことにそれは俺ではなく、隣を歩く人気バンドのボーカル様に向けられている。気づいている人もいると思うが誰も握手やらサインなどを求めてこない。ファンの暗黙の了解というやつだろうか?
色々とあり、その高嶺の花みたいな女性と秋蘭祭を回ることになってしまったが後悔していると言えば嘘になる。何しろ性格は一部を除けば良いところがあるし、容姿も完璧、ボディーも出るところは出ている。
まさに夢心地である。

「なぁ、記憶無し男」

「どうした?」

「迷惑だったか?」

半ば無理やり誘ったのに罪悪感を持っているのか少し申し訳なさそうな顔で聞いてくる。

「そんなことはないぞ。クール&ビューティーの岩沢とデートができるんだ、楽しくないわけがない。」

「そこまで言ってくれるとあたしも嬉しいよ」
岩沢に笑顔が戻り楽しそうな雰囲気を出している。

「お前らって死後の世界とあんま変わってないよな」

俺が見る限りだと、岩沢は見た目はあまり変わっていない。ひさ子、入江、関根にも同じことが言える。

「見た目はそうかもしれないが、私の場合はB→Cに変わっていたぞ」

ん?何かさらりとすごいことが………

「え〜っと、今のって視力のことかな?」

「視力?私はAAだな。今のって言うと胸のことか?」

この情報下手したら数百万の価値があるんじゃないか!?

「変わったと言えば、ゆりっぺはこの世界でお前が会った時はロングだったんだろ?」

岩沢の言うとおり、ゆりはこの世界では腰ぐらいまで伸ばしていたが、秋蘭祭に向けてのバンド練習が始まったと同時にいつものウェーブのかかったショートに戻ってしまった。

あれはあれで可愛かったな〜。

「私も見て見たかったよ」

「もう二度と見れないと思うぞ」

恋人どうしみたいに穏やかな会話をしていると校門に並んでいる一つの屋台を岩沢が見た瞬間………消えた。

「はっ!?岩沢がいねぇー!どこ行ったんだ?」

周りをキョロキョロと見ると一つの屋台の列に首にヘッドホンをかけている女性を発見した。
「まさかな……」

あの岩沢が!?と思いつつ、岩沢に似ている女性に近づき声をかける。

「あの〜」

「どうしたんだ改まって気味が悪い」

やはり岩沢だった。

「いきなり消えんなよ!驚くだろ」

「すまない。ついあたしの本能が叫んだから」

岩沢の本能が叫んぶその屋台は……うどん屋だった。

「お前うどん好きなの?」

この質問が地雷だった。
「当たり前だろ!!うどんだぞうどん!北国の雪を思わせるようなあの純白の麺!喉越しもツルッと滑らか!種類も多種多様!これほどまでに完成された料理をあたしは知らない!なぜ文化遺産にならないんだ!」

あの岩沢が………うどんキチだったとは……。

それにしても……全然止まる気配がない。

こんな時は!助けて〜ひさ子ねえさ〜ん。
と昨日交換した電話番号にかける。
2コール目でひさ子が出た。
『もしもし』

『俺だ。音無だ』

『いきなりどうした?なんかようか?』

『助けてくれ、岩沢がうどんの話をやめないんだ』

『岩沢お前んとこにいたのか。はぁ〜』

『そんなことより、俺はどうすればいい?』

『ん〜そうだな〜とりあえず………腹パンしとけ』

『oh…………crazy……』

参考になんないと思いすぐに切る。
腹パンって……ひさ子のやつ冗談に聞こえない冗談を言うのをやめてほしいぜ。
だが、ひさ子ならやりかねないかもしれない。

「そもそも、うどんが生まれたのは「岩沢お前、ひさ子に腹パンされたことある?」……………。な……いん……じゃないか」

これはあるな。

後からひさ子に詳しく聞いたら、紅○歌合戦で司会が俺と同じく地雷を踏み、生放送なのに全然止まんないからひさ子が誰にも気づかれないように鳩尾に一発入れたらしい………。
ひさ子恐ろしい子。

「注文はお決まりですか?」

青春真っ盛りなうどん屋の学生店員が聞いてくる。

「そうだな俺はこのキツネうどんをもらうよ。岩沢は?」

メニュー表を凝視すること5分経過し

「とりあえず、ここに載ってるの全部で」

とりあえずの使い方を間違ってるから!!なんだよとりあえず全部って!?お前にとっては前菜感覚なのか?

「か、かしこまりました」

ほら、学生店員驚いてんじゃん。

「お前、そんなに食えんの?」

「あたり前田のうどん祭りだ!」

ダメだこりゃあ。何に言ってもダメだな。

数分経過して、二人席のテーブルには明らかにおかしいほどの、うどんのどんぶりが置かれていた。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」

すっごい上機嫌の岩沢。
黙ってキツネを啜る俺を気にせず、最初に俺と同じキツネにしたらしく、もくもくと食べていた。
岩沢の食べるスピードが尋常ではない。俺が半分食べるころには、岩沢が頼んだうどんの半分のどんぶりをカラにしていった。

「「ごちそうさまでした」」

俺が食い終わるのと同時に岩沢も終わった。
その体のどこにこの量が入るんだ?あれやこれと考えていると。

「なぁ、記憶無し男」

「なんだって言いたいが、その記憶無し男っていうのをやめてくれないか?もう記憶あるんだし。音無って呼んでくれよ」

バンッ!とテーブルを叩く岩沢が目の前にいた。ご乱心ですか岩沢さん!

「音無だと却下だ却下!音が無いんだぞ!最悪な苗字だな。婿入りしろ苗字を変えてこい!」

岩沢お前は………音楽キチだ……。だけど俺の苗字ボロクソいうよな。
ちょっと目頭が熱くなってきたよ。

「じゃあ、結弦はどうだ?弦を結むって書いて」

「悪くないな。うん決めた。お前は今日から結弦だ」

まるで、拾った犬に名前をつける感覚で言われてしまった。

「いや、それだと少し不公平だな。じゃあ結弦、お前はあたしのことをまさみって呼べ」

「いやいや、さすがに年上を呼び捨てにはできない」

「あたしがいいって言うんだ。それに年上の言うことには従っておくことだぞ」

年上の力を使われ、まさみと呼ぶことになってしまったが、口に出す以外は岩沢と呼ぶことにしよう。







「結弦、もう少し……ゆっくりして……くれないか?」

「分かったよ。これでどうだ?」

「うん。そのまま」

岩沢は足をガクガクさせながらも一生懸命俺と密着する。
すげ〜良い匂いがする。甘いくて頭がフワフワするような香り。
女性ってみんなこんな感じなのかな?とそんなことを思っていると。
バッと何かが出てきた。
この近代社会には似合わない古いボロボロの鎧を着込み、髪も散り散りでおまけに矢が頭に刺さってるときたもんだ。
これは今で言う……

「落ち武者だな」

「キャアーーーーーーー!!!」

今にも気絶しそうな岩沢。必死に俺の腕にしがみついてくる。
二つの膨らみがなんとも言えない抱擁力があり弾力もある、まさに兵器だな。

「ムリムリムリムリ!!でよ、でよ!もうヤダ!」

本当にこの小動物みたいなのがあの岩沢なのか!?これが……ギャップ萌えというやつか……良いもんだな。
俺の提案でお化け屋敷に行くことになったが、あの時の岩沢の青白い顔は二度と忘れないだろう。
で結果こうなっている。

それからフランケン、ドラキュラ、口裂け女、怖い人形などなどがタイミングバッチリに驚かせてくれる。よくできたもんだ。そのおかげで今にも一人、死にそうなやつがいるんだけどな。
ゆっくりと歩いているとゴールが見えてくる。ようやく出口に着く。

「やっ……と、終わt….いゃぁーーー!!!」

出口を出ると同時にさっき会った落ち武者とよく似ている落ち武者が俺たちの目の前にいた。
油断しきったところにこれは正直キツイだろうな。
その工夫を凝らしたアイディアで、岩沢が気絶したのだから………







「お前がまさか、お化けとかの類が苦手なんてな」

学園の敷地内にある庭のベンチでグッタリしている岩沢に買ってきたばかりのお茶を渡す。

「死後の世界の時は大丈夫だったんだ。でも……今はものすごくダメなんだ、そういう類は……」

怖いもの無しだと思っていたが生まれ変わって、苦手なものが増えるなんて可哀想だな。

「関根がG○Oで借りてきた、ホラー映画を見たらシャレにならなかった」

「相当だな」

岩沢の隣に座りなにもせず、ただ時間が流れていくのを感じる。

この前までは、ゆっくりする機会がなかったから、こういうのも悪くないな。

「結弦覚えてるか?」

「なにが?」

「あたしと間接キスをしたの」

「ばっ!い、いきなりなにを言うんだよ!」

「やっぱり覚えてんだ」

忘れるわけがない、いろんな意味で。
岩沢の前世のことを聞いた時だし、それにあの時の間接キスをするべきかどうかの俺の頭の中の葛藤は相当な激戦だった。
……結果、しちゃったけど。

「そういえば、あたしが消えた後どうなったんだ?」

「大変だったよ」

野球をしたり、テストをしたり、ユイが消えたり、直井が仲間になったり、かなでが仲間になったり、影との激闘を繰り広げたり、みんな消えたり、卒業式をしたりと岩沢に全てを教える。

その光景を想像してるのか、クスクスと笑っている。

「おもしろそうだな。あたしも結弦たちと一緒にバカやりたかったよ」

「そんなもん、これからいくらでも作れるだろ?俺たちは生きてるんだからさ」

「バァ〜〜カ。あんまりかっこいいこと言うもんじゃないぞ」

そう言って、俺の額を指で小突く。

突然、岩沢のケータイが鳴りだす。
「すまない、ちょっと出る」

そう言って岩沢はケータイを耳にあてる。

「ひさ子か。ああ、もうそんな時間か。分かった、これから向かうよ」
電話を切る

「ライブの時間か?」

「ああ、これから準備や音合わせがあるから、数時間前には会場に行かなきゃいけないんだよ」

大変なんだぁと思いつつ、がんばれよと一声かける。

「まかせろ。あっ、それとこれやる」

岩沢が差し出してきたものは今日のライブチケットだった。
数えると6人分だった。

「いいのか?結構高いだろ?」

「オークションだと数十万以上するかもな」

その言葉を聞いたら、ただの紙切れは鉛ように重くなった。
ま、待てよ一枚十万円としよう。それが六枚……計六十万円なり。二週間は遊んで暮らせるぞ!?

「売ったりするなよ」

「………………………はい」

ふっ、さすが岩沢だな。完敗だよ……。

「じゃあ行くよ」

「気をつけろよな」

「分かってる。それと後ろの二人にもよろしく言っといてくれ」

えっ!?後ろ?

「私たちから逃げてたのに、こんなところで遊んでるなんて良いご身分ね音無くん」

「今から、逃げていた分楽しませてくださいね音無さん」

人は時に無力だと感じることがある。それを感じる場面は人それぞれである。俺は今、その体験をしている。

「そういえば聞きたいことがあるんだった結弦」

岩沢の足が止まり振り向いてくる。そして、結弦という言葉によって二人の戦闘力が上昇する。

「な、ななんだ聞きたいことって?」

「今恋人いるか?」

この状況で聞くか普通!?

「いるのか?いないのか?どっちだ?」

「いないけど」

ふぅーんという感じで手を顎にあてている。
そして、俺の方を見て一言。

「じゃあ、あたしが結弦の恋人候補になるよ」

「ふへ!?いきなりどうしたんだ!?」

「そのままの意味だが?じゃあ、後はごゆっくり」

生まれて初めての告白?がこんな修羅場になるとはな……。

そっと後ろを見ると、二人の戦闘力が上がりすぎて俺のスカ○ターが壊れた。







時刻は夜の19時。

ライブ会場のステージが明るく光だす。

ガルデモのライブ。
体育館とは違い、設備やらなんやらが完璧であの時の数倍は凄さが増していた。
演奏が始まる。そして終わる。その繰り返しだが、場の盛り上がりはすごかった。ユイは盛り上がりすぎて壊れていた。日向たちと一緒に来たTKも壊れていた。

そんな音楽を奏でる彼女たちの一人が俺の恋人候補というのは信じられない。だが、戦線のみんなの記憶が戻ったらその告白?の返事を伝えよう。


そう思いながら、彼女たちの演奏・歌声が心に染み渡るのを感じていた。




 
 

 
後書き
私の書きたかった岩沢さん回!どうでしたか?楽しんでいただけたでしょうか?
岩沢さんの私服はヘッドホン着用という私の願望が達成されました。そして、岩沢さんの恋人候補宣言!あーー音無くんとかわりてぇーー
とそれは置いといてこれで多分、嵐の秋蘭祭編は終わりです。次は誰が出るのでしょうかね。私も今考え中です。それと、番外編も入れていきたいです!
では、あらためましてこれからもよろしくお願いします。
(意見・感想・評価待ってます。そして、書いて欲しい番外編の内容も募集中です)


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧