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復活の為に

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第六章


第六章

「ずっとな」
「じゃあ今は」
「それをですか」
「思い出されたんですね」
「そうだよ。俺は馬鹿だった」
 今度は悔やむものも見せた彼だった。
「そんなことがわからなかったんだからな」
「けれど今はわかった」
「そうですね」
「ああ、思い出したよ」
 こう言うのだった。
「本当にな。だから今からもな」
「今からも?」
「どうされるんですか、それで」
「まさか」
「そう、そのまさかだよ」 
 笑顔でだ。彼等に話す。
「食うさ、タイ料理な」
「そうですか。それで何を食べます?」
「タイ料理といっても色々ありますけれど」
「これからは」
「トムヤンクンだな」
 彼は楽しそうな笑顔で語った。
「熱くて辛いのを。たっぷりとな」
「いいですねえ、それ」
「トムヤンクン最高ですからね」
 タイ人にとってはだ。本当にこう言えることだった。
「美味しくて栄養もある」
「本当にいいですよね」
「じゃあそのトムヤンクンと」
「他は」
「炒飯だな」
 それもだというのだ。
「タイ風のな。それをだよ」
「タイ風のですね」
「あの辛いのを」
「それですね」
「そこに目玉焼きを乗せる。それでいくさ」
 具体的な細かいところまで話す。そうしてなのだった。
 彼はこの日はそのトムヤンクンと目玉焼きを乗せたタイ風炒飯を食べた。そしてこの日の試合も活躍した。彼は本当に復活した。
 彼の復活にはタイ料理があった。祖国の美味いものがだ。このことはタイ中に瞬く間に広まり知られるようになったのであった。
「やっぱりタイか」
「そうだよな」
「我が国の料理が一番だよ」
「祖国の料理がな」
 そして口々にこう話すのであった。
「美味いものを食う」
「それに尽きる」
「まずはそこからってことだな」
 チャクラーン自身もこう言った。
「美味いものを食わないとな」
 今では笑顔でこう言うのだった。
「力が出ないさ。特にな」
「そうですね」
「やっぱり」
「タイ料理だよ。祖国の料理だよ」
 これが今の彼だった。美味を、祖国の味を思い出してだ。彼は見事復活したのであった。人間はまず美味いものを食べることからはじまる。


復活の為に   完


                    2011・1・8
 
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