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復活の為に

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第一章


第一章

                     復活の為に
 ホア=チャコラーンは。この時スランプに陥っていた。
 彼の職業はサッカー選手だ。祖国タイにおいてストライカーとして名を馳せている。しかし今はどうしても思うように動けなくなっていた。
「チャコラーンまた得点ならず」
「絶不調は続く」
「もう限界なのか」
「凡ミス続出」
「どうしたストライカー」
 こんな言葉がマスコミに連日連夜出る始末だった。そのうえファン達も苛立ちを見せ罵声を浴びせる始末だった。そして彼自身もだ。
「どうしてなんだ」
 こう周囲に漏らすのだった。
「最近の俺は」
「そうだよな」
「ちょっとな」
 周りもだ。その彼に言うのだった。
「練習も必死にしてるのにな」
「体調管理だってしているのにな」
「それでもこれは」
「どうしてなんだ?」
「何でだ」
 また言う彼だった。
「こんな不調ははじめてだ」
「練習の時も動きが悪いしな」
「ああ、何かな」
「ランニングだってそうだしな」
「何もかもが悪いな」
「コンディションはそうでもないんだろ?」
「ああ、それはな」
 大丈夫だとだ。チャコラーンははっきりと答えた。
「大丈夫だ」
「体調はいいんだよな」
「それで絶不調ってことは」
「つまりは」
 考えていくとだ。答えが出たのであった。
「あれだあ。精神的なものだな」
「ああ、それだな」
「間違いない」
 それだというのである。
「やっぱりそれだろ」
「何かストレスがあるとかな」
「そういうのないか?」
「何かな」
「ストレスか?」
 そう言われてもだった。彼は眉を顰めさせた。そうしての言葉だった。
「いや、別に」
「何も心当たりはないか」
「別にか」
「俺は元々酒も煙草もしないしな」
 そうした不健康なこととは無縁だというのだ。それはスポーツ選手にとってはいいことだった。その面ではチャコラーンはしっかりしていた。
「やるのはテレビゲームだけだしな」
「そっちはいいんだよな」
「好調だよな」
「ああ、絶好調だ」
 つまりそちらでのストレスはないというのだ。
「別にな」
「じゃあ何でなんだ?」
「ストレスでもないって」
「だとすると」
「一体何だ?」
「まあとにかくな」
 ここでだ。チャコラーンは首を捻りながらこう周りに言った。
「飯にするか」
「ああ、食事な」
「そうするか」
「ああ、そうしよう」
 こうしてだった。彼は今は食事を採ったのだった。その食事は。
 厳しく管理されたものだった。彼が考えてそれでチームのスタッフに作らせているメニューだ。どれも野菜や魚、それに鶏肉の高タンパク低カロリー、それにビタミンやカルシウムを考慮したものだ。
 
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