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少年少女の戦極時代Ⅱ

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オリジナル/ユグドラシル内紛編
  第49話 異常報告 ①


 「開発主任室」と看板が壁に貼られた部屋に招き入れられた咲は、まず部屋の外面がガラス張りであることに驚いた。つい駆け出してガラスの壁から街を眺め、下を見下ろす。――高かった。

 次いで部屋の広さと高さに「ほわー」とする。凌馬のオフィスに捕まっていた時も思ったが、ユグドラシル・コーポレーションには一人用面積を広く、という社訓でもあるのだろうか。

「とりあえずここに掛けて待っていてくれ」
「はいっ」

 貴虎が示した来客用ソファー。咲は慌ててそのソファーの内、一人掛けのものに座った。
 貴虎自身はというと、自身のデスクに座り、PCを起ち上げて操作し始めた。

「なにしてるの?」
「オーバーロードの映像記録をこちらに回させる。凌馬たちに説明する時に画像がないと分かりにくいだろうからな」

 カチ、カチカチ、とキーボードを叩く音。画面を見る目は真剣そのもの。邪魔をするのも悪い気がして、咲は大人しく待った。足が浮くのでぷらぷらさせてみたり。


 やがて作業が終わったのを見計らい、咲は貴虎にずっと気になっていた話題を振った。

「プロジェクトアーク」

 貴虎は怪訝さを隠さず咲を見返した。

「葛葉から聞いたのか」
「うん。人類を、7分の1だけ残して、皆殺しにしちゃうのよね」
「そうだ」
「でも今は、オーバーロードってゆー抜け道が見つかりそうで、でもそれで全部解決じゃなくて」

 咲は指先を重ねたり外したりしてから、キッと貴虎を見上げた。

「そのこと、お兄さんはどう思ってるのかなって」
「――俺はとっくに諦めていたんだ。人類を救うため、犠牲はやむなしと」
「地球の人の7分の6は死んじゃえって?」
「そういうことになる。そう、言い聞かせようとしていた。だが、お前たちが諦めなかったおかげで、新たな希望が生まれた。これは我々に初めて与えられた、絶望以外の選択肢だ。試してみる価値は大いにある」
「じゃあお兄さんは、たくさんの人が死んじゃえばいいって本気で思ってるわけじゃ、ないんだね?」
「ああ」

 力強い返事に、咲は安心して脱力し、笑みを零した。

 直後、オフィスのドアが開いた。

 入って来たのは、戦極凌馬、湊耀子、シドの3人だ。顔を見れば戦ってきた面々に、咲は反射的に戦極ドライバーに手を伸ばしていた。だが、その手を貴虎が制し、無言で首を振った。

 大人たちは勝手知ったる他人の部屋とばかりに、来客用ソファーにそれぞれ座った。
 二人掛けのソファーに凌馬と湊、下座にシド。自分が一人掛けソファーの内一脚に座っているから、バランスよく全員が着席していることになる。

(な、なんていいアンバイ……)

 貴虎がPCを操作し、プロジェクターを起動してから、報告会は始まった。 
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