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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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Game and FAIRY TAIL


カトレーン本宅。
その一室で、ティアは着替えていた。
纏っていた純白の尼僧服を脱ぎ、愛用するショルダーバッグの中から別の服を取り出して着る。

(来る時に着ていた服はこっちでいいとして・・・あ、あった)

ゴソゴソとバックの中を漁り、お目当てのものを引っ張り出す。
その手に握られているのは、透明な球体の中に雪の結晶型の魔水晶(ラクリマ)のカケラが入ったヘアゴム。
部屋に置いてあるドレッサーの前に座り、長く青い髪を高い位置でポニーテールへと結えていく。

「やっぱり・・・そのままよね」

髪を結え終え、姿見に自分の姿を映す。
高く結えたポニーテールに、アイスブルーの半袖ジャケット、インナーは深い青色で首周りと裾辺りに白いラインが入っている。
白いショートパンツを穿き、足元はいつもと変わらず黒いレースアップブーツだ。

「よしっ・・・と」

最後に、右手首にシュシュを付ける。
アイスブルーの地に黒いリボンが付いたそれのリボンの結び目、そこには妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドマークのチャームが付いていた。
――――――ティアがこの服を着ているのには、ちゃんとした理由がある。

(願掛け・・・じゃないけど)

この服の所有者は、本来ティアではない。
そもそも、このような動きやすさ重視の活発そうな服はティアの趣味ではなかったりする。
どちらかといえば、マニッシュよりフェミニンを選ぶタイプのティアだが、今回に限ってはこの服装を選んだ。

「絶対に勝ちますから・・・見ててください、イオリさん」

敬愛する亡き師匠、イオリ・スーゼウィンド。
彼女が好んだブランドの、彼女が気に入って何着も買っていたジャケットとショートパンツ。
結局買い過ぎて着ないまま弟子である事を理由にティアへと渡された服。
それをティアは纏い、彼女のように髪をポニーテールで結え――――――――



「“御守り”、ちゃんと付けていきますから」



『いい?ここぞ!って時はこれを付けて。もし何かあったら念じてくれれば、あたしが1番に駆けつけてあげるから!御守りだよ、御守り!』

そう言って、2年前のあの仕事の前に渡されたシュシュ。
勿論、念じたって何も起こらない。
それでも、今はここぞ!という時だから。

「―――――特等席で、見ててくださいね」

呟き、足を進める。
その前には、窓。
だが――――それだけでは、最強の女問題児を拘束出来ない。

「ハァッ!」

助走をつけて、放つ。
窓へと向けて放たれた飛び蹴りは余裕で窓を突き破り、割れた破片と共に、ティアは外へと落ちていった。











「ぎゃーす!」

奇怪な叫び声を上げたのは、我等が空気クラッシャールーだ。
だが、今回に限ってはその叫びもしっくりくる。
何故なら―――

「何これーっ!迷路でしょ迷路だよ迷路じゃん!」
「繰り返す必要ないわよね?これ・・・」

興奮しているのか根本的には同じ言葉を3回繰り返したルーの言う通り、ナツ達の前には迷路としか言いようがない複雑怪奇が“それ”があった。
何故複雑怪奇な迷路と言わないか、それは―――

「しかも塔まであるしーっ!魔法都市ってハイテクだねルーシィ!」
「ハイテクとは違うしアンタはちょっと落ち着きなさい!」

その迷路の前、ナツ達の目の前には、ビル10階建てを軽く超える高さの塔が立っていたのだから。

「何なんだよこりゃあ・・・」
「ふむ、どうやら奴等の拠点が移動したようだ。見ろ、そこに塔がない」
「確かに」

聳え立つ灯を見つめて呆れたようにグレイが呟く。
それを聞いたヴィーテルシアは軽く頷き、先ほどまで塔があった場所を指さした。
確かにそこに塔はない。

「どういう事だ?」
「いらっしゃいませーって事じゃない?」
「それ絶対違うだろ」
「じゃあ、またの御来店をお待ちしております」
「まだ入ってもねーのに帰らせるって何だよ一体」

ルーのボケにアルカが苦笑いを浮かべてツッコみを入れる。

「とりあえず入れば解る事だろ!おっしゃああああああ!燃えてきたああッ!行くぞ!」
「おいナツ!どんな罠があるか解らないのに・・・」

言葉通り全身から炎を噴き出したナツは、全速力で塔の入口へと向かって行く。
相手の本拠地、どんな罠があるか解らない。
そう考えたエルザが制止を掛けようとした・・・

「んぎゃっ!」

が、その前に突然塔の入り口の扉が閉まり、全速力だったナツは急に止まれず思いっきり顔面強打した。
ゴンッ!と派手な音が響く。

「ナツー!」
「何やってんだクソ炎!」

パタッと仰向けに倒れたナツに、ハッピー達が駆け寄る。
ナツは数秒の間目を回していたが、すぐに意識を取り戻し、その表情に怒りを浮かべた。
ビシッと扉を指さし、叫ぶ。

「テメェッ!いきなり閉じてんじゃねーよ!危ねぇだろ!ケガでもしたらどーすんだ!」

顔面強打した時点で既にケガをしたも同然なのだが、大したダメージじゃなかったのだろう。
扉に対してキレたナツに周りが呆れていると――――

《あら、ごめんなさいね。まさか急に突っ走って来るとは思っていなかったものだから》
『!』

声が降ってきた。
小さく機械音を立てて、モニターが現れる。
パッ、と映像が映し出された。
そこには、耳の後ろ辺りで赤い髪をツインテールに結えた女性の姿。

《初めまして、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さん。私は血塗れの欲望(ブラッティデザイア)のギルドマスター、シグリット・・・そこにいる、アルカンジュの母親よ》

ぐっとアルカが拳を握りしめ、唇を噛みしめ、シグリットを睨みつける。
それに対し、シグリットは余裕そのもののような穏やかな笑みを浮かべていた。

《そんなに怖い顔しないで頂戴、アルカンジュ》
「テメェ等の目的は何だ。場合によっちゃ塔ごと地面に沈めるぞ」
《もう・・・物騒ね》

クスクスとシグリットは微笑む。

《私達に目的なんてないわ。私達はあの方―――シャロン様の命令通りに動いているだけ》
「んだよ、そんなの操り人形と同じじゃねーか!」
《操り人形?ふふっ、酷い言い方をするのね。ナツ・ドラグニル君》

だが、ナツに言わせてしまえば操り人形である事に変わりはない。
命令通りに動く事なんて機械にだって出来る。
シグリットはナツの言葉に小さく首を傾げて微笑んだ。

《面白い子ね、気に入ったわ。ねぇ、ナツ君》
「ア?」
《ここで知り合ったのも何かの縁・・・私とゲームをしない?》
「ゲーム?」

嬉しそうに微笑むシグリットの言葉を、ハッピーが繰り返す。
そう、と頷いて、シグリットは続けた。

《ルールはシンプルよ。今さっき私の部下が捕らえたティア嬢を救出できれば、ナツ君達の勝ち》
「・・・それだけか?」
《ええ、複雑なのは私も嫌いなの》

怪しいくらいに単純なルールに思わずエルザは訝しげな表情になる。
それにシグリットは変わらない調子で答えた。
そのシグリットの言葉の中に気になる単語を見つけたルーシィが問う。

「っていうか、さっき捕らえたって・・・」
《ティア嬢って見た目に反してやる事が暴力的よね。閉じ込められていた部屋の窓を突き破って脱出しようとするなんて・・・》

それを聞いて、ナツ達は思った。
「ティアらしいな」と・・・。

《でもね、私の部下はとても優秀なの。飛んで行こうとするティア嬢に強力な睡眠魔法をかけて、今はカトレーン宅の最上階、“星詠みの間”に閉じ込めているわ》
「星詠みの間?」

間、というくらいだから部屋なのだろうが、ナツ達にはピンとこない。
それに気付いたのだろう。
シグリットは頬杖をついて口を開いた。

《星詠みの間は星竜の声を響かせる》
「は?」
《ヒント・・・になるかしらね?》

微笑みを崩さず、シグリットは首を傾げる。

「よく解んねーけど、とりあえずカトレーンの家行って最上階の部屋にティアがいてそれを助けりゃいいんだな!」
「何かいろいろ端折りすぎてない?」
《ええ、大雑把に言えばそういう事よ。でも――――――》

面倒だと思った箇所を端折ってナツが燃える。
その様子にシグリットは楽しそうに笑い、告げた。



《問題は、どうやってカトレーン宅に行くか、でしょ?》



響いた言葉に、ナツ達は思い出す。
この塔の後ろ・・・カトレーン宅に行くまでには、複雑怪奇な迷路が広がっているのだ。
はっきり言って1日で攻略出来るようなものではないし、カトレーン宅までかなりの距離があるからハッピーやヴィーテルシアといった飛べるメンバーも全員運ぶ前に魔力が切れるだろう。

「だーっ!どうすんだー!?迷路ぶっ壊すか!?」
《それはいい考えね。だけどその迷宮、対魔法素材で出来てるのよ》
「魔法無しでぶっ壊す!」
《素敵な考えだけど、普通に殴ったらナツ君の拳の方が壊れるわよ?》

どうしようもない。
基本考えずに拳で解決するナツの数少ない方法が全て潰れた。

「じゃあどうすりゃいいんだよ!」
《あんまり焦らないで・・・私がカトレーン宅に連れて行ってあげる》
『!』
「ホントか!?」

シグリットの言葉にナツが顔を上げる。
が、他のメンバーは気づいていた。
バラム同盟の一角を担う程の闇ギルドのギルドマスターが、簡単に本拠地へと連れて行ってくれる訳がないと。



《ただし・・・私の優秀な部下達に勝てたらね》



微笑みが、変わる。
太陽の光のように明るく温かかった笑みに、影が差す。
微笑みはゆっくりと、冷たさを纏っていく。

《見える?私の背後に魔水晶(ラクリマ)があるでしょ?》

シグリットは座る椅子の背凭れに背を預け、体を左に向ける。
先ほどまではシグリットが壁となっていて見えなかったが、確かにそこにはバスケットボールくらいのサイズの魔水晶(ラクリマ)が等間隔に並んでいた。

《これは私が開発した魔水晶(ラクリマ)でね、膨大な魔力・・・そうね、マスターマカロフの全魔力と同じくらいの魔力が封じられているの》
「じっちゃんと同じくらい?」
「つまり、聖十クラスの魔力という事だ」

シグリットの説明ではイマイチ解らなかったのか、ナツが首を傾げる。
小さく溜息をつき、ヴィーテルシアが大雑把に呟いた。

《この魔水晶(ラクリマ)が壊れると封じられた魔力が弾け飛ぶ。そして、迷宮の素材を、いとも簡単に破壊する》
『!』
《簡単に言えば、ウイルスとワクチンみたいなものよ。迷宮というウイルスを、封じられた魔力というワクチンが壊す》

再び正面を向き、シグリットは微笑む。
冷たさが徐々に失われていく。
元々冷たい表情が苦手なようだ。

「でも・・・迷路って対魔法素材なんじゃ」
《そうよ。でもね・・・この素材には大きな弱点があるの》
「弱点?」
《そう・・・一定量を超える魔力に触れると、脆く崩れてしまうというね》

くぁ、と小さく欠伸をし、シグリットは続ける。

《私は迷宮を12のエリアに分けた。この部屋には12個の魔水晶(ラクリマ)がある。そして、塔の中には12人の魔導士がいる・・・意味、解るかしら?》
「・・・塔の中の魔導士を1人倒すごとに魔水晶(ラクリマ)が1つ砕ける。12人全員を倒した時、迷宮は崩れて私達は先に進めるという事か」
《100点満点の答えね、エルザさん》

鋭い目つきでモニターを睨むエルザに、シグリットは素直に称賛の言葉を口にする。
頬杖をつき、楽しそうに続けた。

《だけど、それだけじゃつまらないでしょ?だから制限時間付きよ》

そう言うと、シグリットは手を叩いた。
シグリットが映るモニターの横に、別のモニターが現れる。
そこには天井中に星座が描かれた部屋が映っていた。
床には魔法陣だろうか、大きく五芒星と何やら古代文字が描かれ、魔水晶(ラクリマ)の柱のようなものが4本生えている。
かなり不思議な部屋だが、ナツ達の目は部屋に向かなかった。
モニターの中央、手首に枷をはめ鎖で繋がれ、玉座に腰掛けて眠る少女の姿―――――。

「「ティア!」」

ナツとヴィーテルシアの声が重なった。
右手首の枷の上からアイスブルーのシュシュが付けられ、服装は寒色系の動きやすそうな服、髪は高い位置でポニーテールに結えている。

「テメェ・・・ティアに何しやがった!」
《母親にテメェなんて言わないのっ!それに落ち着きなさい、ただ眠ってもらってるだけだから》

今にも噛み付きそうな勢いでアルカが叫ぶ。
その目には見る者全てがハッキリと認識出来るほどの闘志が宿っていた。

《3時間後に“儀式”が始まる・・・つまり、ナツ君達に与えられた時間は3時間。それまでにティア嬢を救えないと・・・彼女、死んじゃうわよ?》
「なっ・・・!」

微笑みを崩さぬまま、シグリットは告げた。
思わずナツが目を見開いたと同時に、ティアが映るモニターが消える。

《もう十分にルールは説明したわよね?それじゃあゲームを始めましょう》

モニターの中で、シグリットが両手を広げる。

《ああ・・・そうそう。言い忘れていたけど、ティア嬢はこちらにとっても大事な存在なの。だからナツ君御一行を盛大におもてなしするわ―――――こんな風に》

パンッ、と。
シグリットが手を叩いた。
それを合図に、ナツ達の周囲に複数の魔法陣が展開する。

「転送魔法陣!?」
「ぎゃーす!」

本日2回目、ルーが奇怪な叫び声を上げる。
周囲に展開した複数の転送魔法陣。
緑色の輝きを放った魔法陣から現れたのは―――――――

「スパイスーーーーーっ!」
「デバイスでしょっ!デバイス・アームズ!」

スパイス・・・ではなく、デバイス・アームズだった。
ギルドで破壊された物よりも明らかに数が多く、塔の入り口を塞ぐようにして犇めき合っている。
因みにデバイス・アームズをスパイスと叫んだのはルーだ。

《ゲームスタートよ。制限時間は3時間・・・忘れないでね》

最後に微笑みと言葉を残し、シグリットを映していたモニターが消える。
それを待っていたかのように、デバイス・アームズはナツ達へと襲い掛かってきた。

「チッ・・・女帝の業火(エンプレス・オブ・エンプレス)!」

向かってくるデバイス・アームズを燃やして消し去ろうと、ヴィーテルシアは杖を握りしめ炎を放つ。
紅蓮の炎は大地を駆ける。

「天輪・循環の剣(サークルソード)!」
「アイスメイク、槍騎兵(ランス)!」
「火竜の・・・鉄拳!」

エルザの剣とグレイの氷の槍が全体へと攻撃し、ナツがピンポイントで殴ってデバイス・アームズを破壊していく。

「っうわ!」
「わあっ!」
「ルーシィ、ハッピー危ないっ!大空大鷲(アリエスイーグル)!」

全身に針を纏ったデバイス・アームズがゴロゴロと転がってきた。
その先にいたルーシィとハッピーを守るようにルーは立ち塞がり、その左手から風で構成された鷲を放つ。

「邪魔だっ!大火奏鳴曲(レオソナート)!」

両手から炎の拳を生み出し、向かってくるデバイス・アームズを殴りつけるアルカ。
最強チームと評されるほどの実力を持つナツ達の前にデバイス・アームズは成すすべなく壊れていく。
壊れていく、のだが―――――

「ダメだ!数が多すぎる!」
「これじゃあキリがねぇよ!3時間なんてあっという間に経っちまう!」
「てゆーか壊しても壊しても出てくるってどういう事ーっ!?」

100を超えるデバイス・アームズは30分あれば破壊出来た。
しかも、何もしてこなかった。
だが、今回は別。
数は余裕で500を超え、しかも攻撃をして来る。
攻撃を避けながら相手を破壊する―――いつもなら長時間かかっても破壊出来たが、今は長時間かけていられない。

「こうなりゃいっそ、屋敷も塔も迷路もこの機械も全部地に沈めて・・・っ!」
「ダメだアルカ!あの屋敷にはティアもいる!眠っているティアに魔法は使えん!ティアまで死ぬぞ!」
「っそうだった・・・っと!」

苛立たしげにアルカが叫ぶが、その案はヴィーテルシアの言葉で一瞬で却下される。
放たれたレーザーをバック転で避け、アルカは土の塊を放った。

「きゃあっ!」
「うわっ!」
「ルーシィ!ルー!くっ・・・」

数十体のデバイス・アームズに囲まれ、一斉に攻撃を受けるルーシィとルー。
咄嗟の事にルーは盾を張ったものの、突然だった為その盾の耐久性は低い。
2人の声に反応したヴィーテルシアは駆け出すが、それを他のデバイス・アームズが邪魔をする。

「退けッ!私の邪魔をするなぁッ!」
「ヴィーテルシア、後ろ!」
「!」

杖を振るい、ルーシィとルーの助太刀に行こうとするヴィーテルシアの背後を、ハッピーが指さす。
慌てて振り返ると、そこには3体のデバイス・アームズが三角形を作り、その中央に魔力を集めていた。
淡い赤い光が集まっていく。

(間に合わないっ!)

盾を張ろうにも、今からでは間に合わない。
かといって避ければ、後ろにいるルーシィとルーに直撃してしまう。

(どうしたら・・・!?)

どうしようもない状況にヴィーテルシアは思わず冷静さを欠く。
それが、命取りとなった。
三角形の中央が強く発光し、赤く太いレーザーがヴィーテルシア目掛けて放たれる!

「ヴィーテルシアアアアアアアッ!」

ハッピーが叫んだ、その時―――――――





転送の蛇(テレポートスネーク)!」





聞き覚えのある声が響き、ヴィーテルシアの姿が消えた。
それと同時に、3つの人影が現れる。



「鉄竜の・・・」
「天竜の・・・」
「灰竜の・・・」
「「「咆哮ーーーーーーーーーーーーー!」」」



鉄と風、灰のブレスが赤いレーザーに直撃し、相殺し、消える。
ドカァン!と大きな音を立てて、三角形を作っていたデバイス・アームズ3体が壊れた。
そこに現れた4つの後ろ姿を見て―――――ルーシィとルーが叫ぶ。

「ガジル!シュラン!」
「ウェンディとココロも!」

それは・・・ガジルとシュランの元ファントム組2人と、ウェンディとココロの元化猫の宿(ケット・シェルター)滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)2人だった。

「お前達・・・」
「私達だけじゃないですよ」
「あちらを御覧下さい」

シュランによって助けられたヴィーテルシアは呆然と呟く。
その言葉にウェンディは微笑み、シュランはとある方向を指さした。
指さす方向に、ナツ達が目を向けると―――――

水流烈鞭(ウォーターカーネ)!」
「疾風迅雷!」
立体文字(ソリッドスクリプト)FIRE(ファイア)!」
「隼天翔!」
「シザースプラント!」
魔法の札(マジックカード)、召雷!」
「ビーストアーム、鉄牛!」
「闇の文字(エクリテュール)、斬!」
「行くぜベイビー!ラインフォーメーション!」
「妖精機銃レブラホーン!」
銃弾魔法(ガンズマジック)台風弾(トルネードショット)!」
「換装!デリンジャー!」

ジュビアにアラン、チームシャドウ・ギア、カナ、エルフマン、雷神衆、アルザックにビスカ・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々が自身の魔法を駆使し、デバイス・アームズを次々に破壊していた。

「全員集合だーっ!」
「でも、どうやって来たの?これだけの大人数、列車に乗れないよね?」

そう。
妖精の尻尾(フェアリーテイル)に所属する魔導士は多い。
ここにいるのが全員じゃない―――来ていない人は、仕事だったりどうしても外せない用事があったりが理由だ―――とはいえ、これだけの大人数が一気に列車に乗るのはまず不可能だ。
飛んできた可能性もあるが、ここにいる全員が飛ぶ魔法を習得している訳ではない。
(エーラ)を使うシャルルや闇の文字(エクリテュール)“翼”で飛ぶ事の出来るフリードはともかく、他のメンバーはどうやってここに来たのか?

「空を見てください」

それに答えるべく、ココロが空を指さした。
釣られる様に空を見上げ――――――気づく。

飛竜(ワイバーン)!?」
「沢山いるよ!」

空には、飛竜(ワイバーン)の群れがいた。
だが、この辺りは飛竜(ワイバーン)の住処ではないし、先ほどまではいなかったハズ。
しかも、襲ってこない。

「一体どういう・・・」
「みんなぁーっ!」

事だ、と聞こうとしたエルザの言葉を、空から降ってきた声が遮った。
声に反応して空を見上げると、そこには黒地に銀色の模様が特徴的な、赤い目の飛竜(ワイバーン)

「あれって・・・アイゼンフロウ!?」
「って事は・・・」

降り立ったのは、アイゼンフロウ。
そしてその背から降りてきたのは―――――

「クロス!ライアー達も!」
「そっか!この飛竜(ワイバーン)は・・・」
「みんな私の友達だよ!」

クロス、ライアー、サルディア、スバル、ヒルダの5人。
そう―――――ガジル達はサルディアの魔法、祝福の導き手(ブレスィング・スティアー)で召喚された飛竜(ワイバーン)に乗り、ここまでやってきたのだ。

「じっちゃんは!?」
「マスターは評議院に!血塗れの欲望(ブラッティデザイア)の事を報告に行くそうです!」

デバイス・アームズを力強く殴りながら、アランが叫ぶ。

「デバイス・アームズは私達が何とか致します!」
「ナツさん達はティアさんを!」

次々に向かってくるデバイス・アームズを破壊しながら、シュランとココロが叫ぶ。
それを聞いたナツ達は顔を見合わせ、頷いた。

「頼んだぞお前達!」
「よっしゃあ!行くぞハッピー!」
「あいさー!」
「ルーシィ行こう!」
「うん!」
「おいグレイ!とりあえず服は着ろよ!」
「は?・・・っていつの間に!?」
「知るか!」

開いた塔の中へと入っていくナツ達。
その後ろ姿を見送ったクロスが口を開いた。

「俺達も行くぞ!スバルとヒルダはここで指揮を取れ!行くぞライアー!サルディア!」
「おうよっ!」
「お任せを!」
「了解!」
「はーい!」

指揮を取るべくスバルとヒルダは残り、クロスはライアーとサルディアと共に塔の中へと入っていく。

「アラン君!アラン君も行って!」
「えっ!?でも僕じゃあ・・・」
「ティアさんを助けてっ!」

力不足だし、と続けようとしたのに気づいたのか、ウェンディが遮って叫んだ。
その言葉にアランは一瞬攻撃の手を止め、俯き―――――やがて、決意したように顔を上げる。

「・・・解った。絶対助けるよ!」
「うん!お願いね!」
「頑張って!」

器用にデバイス・アームズを避け、アランも塔の中へと入っていく。
その表情に、もう迷いはなかった。

「ジュビア様、貴女も塔に」
「ううん、ジュビアはここでデバイス・アームズを・・・」
「何を仰いますかっ!」
「!」

背中合わせに破壊するジュビアとシュラン。
シュランの言葉にジュビアは首を振るが、それをシュランが一喝した。
思わずジュビアは目を見開く。

「御友人の危機に駆けつけないとは言語道断!行って下さい、ジュビア様!」

普段のシュランでは滅多にない厳しい口調にジュビアは瞬きを繰り返す。
だが・・・すぐに、こくっと頷いた。

「・・・ありがとう、シュランちゃん」
「御礼は結構です。ティア様を救出して頂ければそれで」
「うん・・・ジュビア、絶対にティアさんを助けるから!」
「御健闘を!」

友達の為―――――ジュビアも塔へ入っていく。
11人の姿を見送ったスバルとヒルダは顔を見合わせた。
クロスがこの2人に指揮を頼んだ理由は、この2人の息が誰よりも合っているから。

「やるか、ヒルダ」
「当然だ!」

そう言うと同時に、スバルはエウリアレーを、ヒルダはセルリヒュールを構える。

「いいかお前等ぁぁぁぁぁぁっ!全身全霊かけてコイツ等ぶっ壊せぇぇぇぇぇっ!」
『オオオオオオオオオッ!』

スバルの声に、全員が答える。
数えきれないほどのデバイス・アームズを倒すべく、仲間であるティアを助けるべく、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士達は、1つになった。











「残り時間、2時間30分・・・か」

塔の一室。
そこには、シグリットがいた。
真っ赤な髪を揺らし、魔水晶(ラクリマ)を見つめる。

「ごめんなさいね、ナツ君」

微笑み、謝罪の言葉を口にするシグリットだが―――――その目は、鋭い光を湛えていた。

「ティア嬢は、私達のモノよ」 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
かなり久しぶりに質問が着ましたので、答えさせて頂きます。

Q「オリジナルストーリーで、ナツ達は原作より強くなりますか?」

A「いいえ。原作と同じくらいです」


Q「映画版もやりますか?」

A「DVDは持っているのでやれたらやりたいです。ただ、時系列的には大魔闘演武編後なのでかなり先になるかと」

感想・批評、お待ちしてます。
オリキャラはまだまだ募集中ですが、過去編に登場するオリキャラは現在登場しているキャラのみとさせていただきます。

 
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