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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第6章:女の決意・男の勘違い
  第36話:騙される方が悪いのだと思う

(結界の祠)
リューノSIDE

「おぉ! これで進化の秘法も完成致します……ふっふっふっ、もう皆様と話を合わせる必要もないですな! ルーラ」
お父さんから黄金の腕輪を受け取ったエビは、遂に本性を現しルーラで何処かに逃げてしまった。

「あ~あ……やっぱり騙された」
これはウルフの台詞。
「でも、この世界の勇者様達が何とかしてくれるよ……未来人に頼る事なく」
これはお父さんの台詞だ……

「え……つ、つまり?」
つまり、我がグランバニア王家には一切の責任は無く、この時代の人々が力を合わせて強化された魔族共を倒さなければならない。それを私達がみんなに告げると、一斉に青ざめて絶望を顔に浮かべた。

「わ、解ってたのなら……奴の作戦を解ってたのなら、腕輪を渡さないで下さいよ!」
「おいおいシン君、君らが渡せと言ったんだぞ! 何も考えずロザリーさんの涙に絆されて、敵の思考を読みもせず、一方的にリュカさんに迫ったんだぞ! 文句言える立場じゃねーだろ馬鹿!」

辛辣……ウルフの言葉は辛辣だ。
笑顔で言ってはいるのだが、辛辣な内容に誰も口を開けない。
痛い沈黙が辺りを支配する。

「まぁ……ロザリーと約束はしたから、デスピーの事は僕が何とかしようと努力してみるけど、完全な進化の秘宝を手に入れたエビちゃんの方は、責任のあるみんなが何とかしてよ」
そう言うと泣いてるロザリーの頭を優しく撫で、これ以上涙のルビーがこぼれない様に抱き締める。格好いいー!! お父さん格好良すぎるー!!

チラッとウルフを見たら……
「ズルイ……良い所だけ取りやがって……俺、悪者みたいじゃん!」
って、ふて腐れてる。こっちは可愛いよぉ!

「はぁ~……悪者ついでに言わせてもらうけど、君達は自分が世界を救うと言う事に、自覚がなさ過ぎる!」
嫌われ者になりそうなウルフが、ついでに皆さんへ苦言を呈するみたいです。
お父さんは『放っておけば良いのに……』って顔ですけど。

「世界を救えば否が応でも名前が知れ渡る。有名人には、そのお零れに与ろうと大勢の人間が群がる。中には、勇者等の名前や存在を利用して悪事を働こうと考える者も少なくない! 相手が何を求めているのか……何を目当てに、自分に近付いているのか……それらを(つぶさ)に理解して対応しなければ、心ない者の悪事で不幸になる人々が続出するんだ。今回の事だってそうだぞ……ロザリーさんは身内(彼氏)の事しか頭に無いから、藁にも縋る気持ちでエビの言葉に騙されてしまったが、彼女の涙だけを見て安っぽい同情心からリュカさんにプレッシャーをかけて騙されたお前等は、世界を滅ぼそうとしてるエビに荷担したのと同じ事だと理解しろ! その上で、文句があるのならリュカさんに文句を言えば言い……何も考えてない馬鹿が、何も考えずリュカさんに文句を言うんじゃない!」

まくし立てる様に言い切ったウルフの台詞に、シン等は誰も反論できない。
お父さんが苦笑いしてるだけで、私もマリーもリューラ・ビアンカさんまでも、厳しい目で彼等を見詰めている。

「ウルフは優しいな……わざわざコイツ等に教えてやるなんて」
「言わなきゃ解らないでしょう。俺等にとって過去という歴史を築く者達なんですから……馬鹿なままじゃ困るんですよ」
お父さんの言葉に、厳しい表情のまま冷たく言い切るウルフは、やっぱり格好いいです。

「良いんだよ……どうせ未来では世界が混乱して、それを僕の息子が救うんだから。馬鹿な先祖は、馬鹿なまま世界を構築して行くんだ。そしてそれを止めるのは、天空で胡座をかいている神様なのに、アイツも役立たずな馬鹿なんだから」

それが歴史なのだから仕方ないのだろうけど、歴史に翻弄されたお父さんには、愚痴の一つも溢したいのだろう。
自分達の責任ではないシン達には、いい迷惑以外の何物でもない。
みんな俯きながらお父さんの後に付き従うのみ……

そんな反抗精神が微量だから、時代に流され席巻できないのだ!
我が家を見習ってほしいわね……

リューノSIDE END



(デスキャッスル)
シンシアSIDE

私を含むシン達は、その飛び抜けた強さをさらけ出すリュカさんの後を、ただ黙ってついて行く……
未来の混乱を一手に我々の所為にされ、反論したくとも敵の口車に乗せられた事が重くのし掛かり、誰一人何も言えず彼の強さに脱帽するばかり。

鉄球魔神が繰り出す巨大な鉄球を、平然と素手で受け止め倍の威力で投げ返すリュカさん……
デビルプリンスが放つベギラゴンを、バギクロスで押し返し灼熱の竜巻で討ち滅ぼすリュカさん……
ガーディアンが吐く凍える吹雪を素早く避け、相手の懐に入り込むなりドラゴンの杖で敵を吹き飛ばすリュカさん。

どの敵もシン達では大苦戦する事間違いなしなのに、たった一人で倒し続けるリュカさんを見て、皆が自分の存在意義に疑問を浮かべる様になってきた。
未来の神様が、彼をこの時代に送った理由が良く解る。

「な……(すげ)ーだろ? 以前(まえ)に『リュカさんが相手じゃ、俺等は1秒未満で瞬殺される』って言ったけど、これで解っただろ?」
アリーナさん達に視線を向けたが、マーニャさんとミネアさん以外はキョトンとしてる。
多分、皆さんが揃う前に言った事なんだろう。

「まぁ、この時代の勇者さんは弱いからなぁ……元の時代の勇者だったら、強すぎて適わないよ」
「親馬鹿言ってんじゃねーよ! この面子にティミーさんを加えたって、リュカさん相手じゃ勝てる見込みは無いっての!」

「馬鹿はお前だ! 僕の息子は……血の繋がった息子は強いんだぞ! 優しいから、まだ父親に花を持たせてくれるけど、本気を出したら……」
「ティミーさんが本気出したくらいでリュカさんに勝てるのなら、今頃リュカさんは殺されてますよ! どれだけ彼に迷惑をかけてきたと思ってるんですか!? ここに居ない家族も含め、徒党を組んでリュカさんに戦いを挑んだって、圧倒的に負けるのは自明の理です」

そのティミーさんというのは相当強いのだろう。
親馬鹿を差し引いても、リュカさんが勝てないと思い込むくらいなのだから……
だけどウルフさんの発言こそが真実なんだろう。目の前で強敵を瞬殺するのを見てしまった私には、その事を疑う事は出来ない。

「残念だけどウルフ君、私は常にリュカの味方よ! 息子が加勢したからって、愛する夫を裏切れないわ!」
「おっと……幸運の女神が味方になってくれた。これなら伝説の勇者にだって勝てる気がしてきたね!」

「ウルフぅ~……悪いんだけどぉ~……私もお父さん側に付くわ。負けるの嫌いだから……」
「ごめ~んウルフ、私もお父さんとは敵対したくない。ウルフと別れるのは辛いけどね」
「ちょ……愛しい彼氏より、父親をとるってのかよ!? お前等どんだけファザコンなんだよ?」

マリーちゃんが悪女の様な微笑みで彼氏を裏切ると、リューノちゃんも申し訳なさそうにリュカさん側へと寝返った。
勿論リューラちゃんは既にリュカさん勢で、その彼氏君も一緒について行く。

「じゃぁ私もリュカ側に付く。クリフトもブライもリュカ勢力でしょ?」
「勿論ですよアリーナ様! アリーナ様のお側に居る事が、私には至極の状況ですから」
「まったくじゃ……世界一のトラブルメーカーと敵対するわけがない!」
スルスルとアリーナ姫達がリュカさん勢に荷担すると……

「じゃぁ姉さん。私達もリュカさんのお味方をしましょう」
「味方だけよ……するのは。他の事はダメだからね」
ミネアさんがマーニャさんに意味深な事を言われながらリュカさん勢に組み込んで行く。

「リュカさんにはピサロ様を助けていただかねばなりませんから……」
「そうですねロザリー様。我々の立場は一目瞭然ですね」
つまりリュカさん勢って事ね。

「私は商人です。商人とは時代の流れに従うのみ……つまりリュカさんについて行くって事ですね」
全員の視線が向けられ、トルネコさんがそそくさとリュカさん勢に荷担すると……
「お前なんかに期待してねーよ」
とウルフさんが言い捨てる。

思わずシンと目が合い笑ってしまった私達は、
「じゃぁ俺もリュカさんの勢力に入ろうと思います。よろしく~」
と言って私の手を引きウルフさんから離れて行く。

「おっと……勇者殿がそちらに行くのであれば、私もご一緒するのが節度でしょうな。なぁホイミン?」
「そうですねライアン様。リュカさんの奇行にさえ我慢してれば、こっちは幸せそうですからね」
気付けばウルフさんの側にはドランが1匹居るだけ……

「くっそ~……ドランー、みんなが苛めるんだよー!」
「グワー」
冗談めかしてドランに抱き付くウルフさんだが、そのドランにも一声鳴いて見捨てられる哀れな結末。

「あれ? 僕等の敵はウルフって事かな?」
一人取り残されたウルフさんは、周囲を見渡し寂しそうな顔を見せる。
そして……

「パパ~ン、苛めないでよ~! ぼく良い子になるから、置いてかないデー!」
とリュカさん勢に走り寄ってくる。
流石のリュカさんも思わず吹き出して笑ってしまった。

「あははははっ、お前腕上げたな!」
自分の腕を軽く叩くジェスチャーをし、ウルフさんを褒めるリュカさん。
さっきまでリュカさん達に遠慮する空気が漂ってたのに、今はもう吹き飛んでしまった。

リュカさんが凄いのか、ウルフさんが凄いのか判らないけど、この人達は本当に優しいんだわ。

シンシアSIDE END



 
 

 
後書き
ウルフはボケもツッコミも出来て凄ーなぁ…… 
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