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従兄弟はティーチャー

作者:雨棒
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3話



桶川と別れて、従兄弟の家に向かう。日も暮れて、辺りは真っ暗になっている。部屋に明かりがついているということは、帰って来てる証拠なのでインターフォンを押した。
ガチャ……………ガチャ。
「ちょっと!なんで開けて締めるの!お願いだから、話だけでも聞いてよ!」
再び開くドア。
「なんでいんだよ。いつ来たんだ?」
「今日、泊めてもらおうと思って。」
ガチャ。また、締め出される咲月。
「お願いします、ご飯なんでも好きなもの作りますから‼︎」
少しして、ドアが開いた。
「すき焼き。」
少し開いたドアから出されるリクエスト。
「ふふふ、そう言うと思って材料はすでに用意してあります。」
自信たっぷりに手から下げられたスーパーの袋。
「ちっ、仕方ねぇな。ほら、入れよ。」
「ありがとう。鷹臣くん。」

私の従兄は佐伯鷹臣。緑ケ丘学園で先生をやっている。私の母の義姉の息子さんで私の従兄にあたる。昔はとてつもないヤンキーで番をはってたとか。それが今では先生で、公務員をやっているってのは、世の中とても不思議なものだと思う。

私は、すき焼きを作るとテーブルにセッティングして鷹臣くんを呼んだ。二人でご飯を食べるのはかれこれ一年ぶりくらいになるだろう。積もる話もある。
「先生の仕事どう?楽しい?」
「あ?楽しいわけねぇだろ。すげー肩こる。」
「部活とか担当してるの?あれって放課後サービス残業でしょ?」
「まだ、顧問はやってねぇよ。」
まだ?ってことは今後あるのか?
「そういえば、今日不良に絡まれたよ。人生初カツアゲ。すごいでしょ。」
「で、相手どうした?」
「通りすがりのヤンキーが助けてくれた。」
「人助けするもの好きなヤンキーもいたもんだな。」
「そういえば、その人緑ケ丘なんだよね。生徒手帳拾ってさ、鷹臣くんしってる?」
そう言って見せた生徒手帳に書かれた名前をみて、少々驚く鷹臣。それもそのはず、咲月を助けたヤンキーは緑ケ丘学園の不良を統べる番長だったのだ。それを知らない咲月は、鷹臣がニヤニヤしてるのを見て気持ち悪いと思っていた。そう思っていることがばれて殴られるのはこの数秒後のことだった。


入学式も無事終わり、新生活が始まった。咲月は部活動の事で迷っていた。入りたい部活動がないのだ。中学の時は風紀部に入っていたため、ここでもそれに入ろうと考えていたが、この学園にはない。しかし、作ろうにも二人で同好会、5人で部が作れる。2人くらいならどうにかなりそうだが、よく考えてほしい。風紀部なら聞こえがいいが、風紀同好会なんてかっこ悪い。とは言っても、5人は厳しい。これなら違う同好会を作った方が早い。趣味を活かすなら料理同好会なんてどうだろう。うん、我ながらなんともよさそう。そうと決まれば早速募集しよう。
『来たれ!料理の達人!料理同好会設立希望者募集中。希望者は一年、金谷川咲月まで。』
コピー用紙に筆ペンで書いただけの質素なポスター。この一枚だけを玄関に貼って、今週中に人が集まればいいなぁと思いながら寮への帰途につく咲月だった。

そして、部活動を決めなければ行けない日の昼休み、待ちに待った希望者が咲月の教室に現れたのである。
『このポスター貼ったんは、あんたか?』
 
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