| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ボロボロの使い魔

作者:織風
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

『独り』

教室の掃除は慣れている

吹き飛んだ机を並べ直すのも
床を這いつくばって磨くのも
それに必要な水を、魔法も使わずバケツに汲んで運ぶのも
拾い集めるガラスの破片で、自分の指が傷つき血を流すのも
何度も何度も一人でしている事だから

午前の授業、『錬金』を失敗したルイズは、盛大な爆発を起こし滅茶苦茶にした教室を片付ける よう教師に命令されたのだ
だが、それもいつもの事である
滅茶苦茶だった教室を、大した時間もかからず掃除し終えて、ルイズは一人溜め息をつく、無論 それを聞くものなど誰もいない



第五話『独り』



彼女は一人だった

だが、それでもいいと思ってしまう


どうせ、クラスの生徒もメイド達も自分を見下し馬鹿にする事しかしないのだから
今日も笑われた
『ゼロのルイズ』魔法成功率『ゼロ』のルイズ
『ゼロ』では無いと言ってやった
使い魔は召還できた、サモンサーヴァントは成功したのだと
だが『平民』を召還した事を馬鹿にされ
躾も満足に出来ないのかと笑われた
召還した使い魔は、主である自分の命令に従わず勝手にどこかに行ってしまった
馬鹿にされる事には慣れている
なのにこの惨めな感情は慣れる事ができない
慣れたくもない

それでも、自分は強くならなければならないのだ

憧れ、愛し、一生を誓った人に相応しい偉大なメイジにならなければいけない

彼は自分に優しかった
落ち込む自分を慰め、励ましてくれた
そして、結婚しようと約束してくれた
それは幼い子供の戯れであったかもしれない
だがルイズは彼の存在を支えに誰一人味方のいな い学院生活を耐えている

『閃光』の二つ名を持つスクエア
トリスティンでも最強の一人に数えられるであろう
自分の婚約者 『ゼロ』の自分とは天地ほどの差がある彼に相応しくなるために
ルイズは気分を切り替える
自分には素晴らしい人がいる、他の有象無象のクラスメイト達とは全然違う
使い魔が頼りにならない事も昨晩のうちに分かっていた事だ

自分は一人だ
だが、それでもいいと思った

ボロボロになった制服で食堂に向かう、でるときは気にしていたシワも今となってはどうでもいいことだった

ルイズには理解できない
何故、自分は苛々しているのか。

何故、あの使い魔は自分に敬意を払い従おうとしないのか
何故、どうでもいいと断じながら、どうしようも無い不満を感じているのか
ルイズはずっと一人だった
プライドとコンプレックスばかりが肥大化し続けてしまった少女
劣等感と僻みから壁を作り、周囲との関わりを拒絶し続けていた彼女には誰もいない
自身が味方だと思える相手も、優しくしてくれる相手も、頼れる相手も
自身の傲慢さと、どこかズレてしまっている貴族としての誇りを指摘し正してくれる存在も
ずっと学院一人だったルイズには、自分が本当は何を求めているのかさえ理解する事が出来なかった

…あんたも、いい男をみつけなさい

そんな彼女に唯一、積極的に関わろうとしていた隣人も今はいない
彼女は何を思っていたのか
何で自分にそんな事を言ったのか
今のルイズには理解の出来無い事だった

だが、簡単に理解できる事もある

例えば、今
食堂前でメイドに因縁をつけているらしい男子生徒が、自分が最も嫌悪感を抱いている相手であることくらいは

「ギーシュ、アンタ何してんの?」

睨みつけるように言ってやると、普段は気障ったらしい顔を嫌悪に歪めてその男はこちらを向いた

「…何だ『ゼロのルイズ』には関係無いよ…さっさと行ってくれないか」

その言葉だけで頭が沸騰しそうになる

「アンタがそこに突っ立ってるのが邪魔なのよ…その娘が何をしたのか知らないけど、さっさと放してそこを退きなさい」

普段の彼女であれば、平民のメイドがどんな扱いをされていたからといって、それを態々助けようなどとは思わなかっただろう

だが、ルイズは苛々していた
昨晩からずっと、あの使えない使い魔のせいで苛々し続けていたのだ
加えて、ルイズはギーシュが嫌いだった
ドットとはいえかなりの力を持つギーシュは殊更『ゼロ』のルイズを嘲り馬鹿にしてくれていた

「この平民は僕にぶつかってきたんだよ?おかげで壁に顔をぶつける所だったんだ…それを注意 してやっていただけさ」

「アンタの理屈なんて知った事じゃないわ…今すぐその子を放してそこを退けなさい」

するとギーシュはやれやれと言わんばかりに首を振る

「どうして平民なんか庇うんだ?…無力な。何の力も持たない平民なんか」

何故かその言葉に腹がたつ

「只アンタが気にくわないだけよ。貴族の恥曝しであるアンタがね」

それを聞くとギーシュは笑った 嘲るように、馬鹿にするように

「…っ、いいよ、そんなに気にくわないというならハッキリさせようじゃないか。……決闘だ」

「何いってんの?…貴族どうしの決闘は禁止されているはずよ。」

「君は『貴族』なんかじゃ無いだろう? 魔法の使えない『ゼロ』なんだから」

瞬間、本気で殴り飛ばしてやろうかと思った
小柄な体格をしてはいるものの、ルイズの体力は決して低いほうでは無い
むしろ、魔法に頼らず生活している分、同じ世代の男子生徒達よりも腕力なども強いのだ
ここで殴り合いの喧嘩をしたところで自分が負ける事などない
ギーシュ相手なら自信もある

だが

「…わかったわよ、受けて立ってやろうじゃないの!」

出来なかった、ここでそんな事をすれば自分で自分は魔法が使えない『ゼロ』ということを認めてしまう
それだけは出来なかった

「ふん…じゃあ決闘場で待っているよ」

言い残し、去っていくギーシュを睨み付ける事しかルイズにはできない

「…申し訳ありません!ミス・ヴァリエール!私などの為に…!」

泣き出しそうな顔で自分に詫びるメイドにルイズはうんざりした顔で告げる

「別に、アンタの為じゃないわよ…良いからどっか行きなさいよ」

だが、涙を流し頭を下げ続けるメイドは自分からなかなか離れようとしない

しかし、ルイズもそれどころでは無かった
決闘を受けると言ってしまったのだ
逃げる訳にはいかなかったとはいえ、正直な所魔法の使えない自分がどうやって『青銅のギー シュ』に勝てばいいのか途方にくれていた
公の場で『ゼロ』とされるよりは、やはりこの場でギーシュを殴りつけておいた方が良かったのではないか
今更そんな事を考えても遅い

勿論、逃げだす訳にもいかない
なら、どうやって勝てばいいのか
堂々巡りになっている思考
だが、それを中断した者がいた

「…やはりそういうことか!」

いきなり訳知り顔でズカズカと入ってきた男
それはルイズの使い魔だった

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧