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少年と女神の物語

作者:biwanosin
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第六十七話

「ヤッホー、ムソー!また来たわね!」
「ヤッホー、ママ。また来たよ、毎度のことながら」

 俺はママにそう返しながら、周りを見回す。
 そこは、いつもと同じ場所。一瞬意識のなかの空間に似ているように見えたが、どこか、抱く印象が違った。

「で?今回は何の用?」
「え?用なんて無いわよ?」

 もはや開き直っちゃったよ、この人。
 前までは、その場しのぎにすらならなくても何かしらの理由を準備してたのに。

「・・・はぁ、じゃあこっちから質問いい?」
「ええ、いいわよ!」
「今回掌握した権能、あれってやっぱり狸の?」
「ほかに掌握してない権能なんてなかったじゃない」

 やっぱり、そうなんだよなぁ・・・
 無意識のうちにそう認識してたけど、あのオランダ人が狸と繫がる理由が・・・

「まあ、細かいところはいいか。気にしても仕方ないし」
「そうそう。あ、ちなみにだけど、今回掌握したのは芝右衛門狸様から簒奪した権能よ?」

 この情報は、少し助かった。
 どっちの神から簒奪したのか、それだけは簡単には判断つかないし。

「にしても、変幻の権能か・・・これもまた、かなりのチートだよなぁ・・・」
「そんな事を気にしてたら今更じゃないかしら?メインに据えることが出来る戦闘用の権能に、絡め手、権能の破壊。それでとどまらずにどんどんと・・・ゴドーも中々にバリエーションに富んでるけど、ムソーはその上を、権能の数で行くわよね」
「まあ、権能の数ではかなりのもんだ、って言う自覚はあるけどね」

 今は・・・合計十三個、かな。
 今回殺したオオナマズからも権能は簒奪できたし。どんな権能なのかな~。

「どんな権能なのか、それが分かるまでのワクワクって、意外といいものだよね。もう何度も味わってきたけど、一向に飽きない」
「しかも、今はまだ分かってないのが二つもあるわよ?」
「こんな機会、中々無いよ・・・まあ、その分戦闘中に使えるようになるのを待つしかないんだけど」

 最近では、あまりアテとの模擬戦で、という手段は取れていない。
 時間も無いんだよなぁ・・・まあ、結果として権能は掌握できてるからいいんだけど。
 残り二つ、本陣狸大明神とオオナマズの権能。前者については情報が多すぎて全然分からないし、後者については今ある情報からは得られそうな権能が一つしかない。
 それでも、何か面白い特徴がついてたりするのが権能だから、どうなるのかはまだ分からないけど。

「さて・・・まだ戻らない、か」
「そうねぇ。海に落ちちゃったから、捜すのに苦労してるのかしら?」
「まあ、完全に死ぬことはないからいいんだけどね」

 とりあえずは、誰かが探し出して治癒系の術をかけてくれればそれでいい。
 さて、と。まだ戻らないなら、この機会にずっと気になってたことを聞くとするか。

「ねえ、ママ。何で俺は、カンピオーネになれた(・・・)の?」
「どういうこと?」
「だって、あの時・・・」

 その瞬間に、意識が一気に薄れていく。
 クソ、このタイミングで戻るのかよ・・・!

「ムソー。・・・は確かに・・・・・・・・、あたしに認め・・た。―――素直に誇りなさい」

 最後の一文だけはやけにはっきりと聞こえて、俺の意識は戻っていった。



◇◆◇◆◇



「ゲホッゲホッ・・・肺に水が・・・」
「あ、ムー君。よかったぁ・・・」

 目の前に見えたのは、安心しきった顔でほんわりと笑う林姉。
 その手に何もないということは、俺の治癒は林姉が直接した、ということだろう。

 そう考えて罪悪感に蝕まれながら、咳き込み続けてどうにか肺の中から水を全部吐き出す。
 途中でさっき掌握した権能を使って、肺の中の水を全て空気に変えれたのはよかった。

「さて・・・とりあえず、戻る?」
「そうだね~、海の上にずっといても仕方ないものね。跳躍の術でもどろっか?」
「いや、それよりも・・・」

 俺は今、新しく権能を掌握したことで軽く興奮状態になっている。
 要するに、この権能を使いたくて仕方ないのだ。

「変幻せよ、汝は船である」

 今俺たちが乗っている海草を、俺のイメージ通りの姿に変える。
 船とは言ったが、実際に変えた姿はエンジンつきの小さな船。
 まあ、二人で移動するならこれくらいでいいだろう。でかすぎても目立つし、扱いづらいし。

「操縦は出来るの?」
「操縦の知識もまた、人間の知識だからね」

 人が得る知識の全ては、片手間で手に入れることが出来る。
 操縦のための知識は簡単に手に入ったし、何かあったときの急速な反応は簡単に出来る。
 本当に最悪の事態のときには、海草を操ってクッション代わりにするなり何なりの対応が出来る。
 そうして潜った位置まで戻り、そこでわざわざ待機してくれていた生徒会の皆と合流する。

「どうも、皆さん。今回は色々と迷惑をおかけしました」
「気にしないでください。それに、今回はかなり被害が少ないですし」
「少ないというか、皆無だな」
「はい・・・その分、あちらの方は酷いみたいですけど・・・」

 まあ、護堂と翠蓮のほうはそうなったみたいだな。
 ちょうど今、決着もついたみたいだし。
 にしても・・・この感じだと、まずいことになりそうだなぁ・・・ここは距離離れてるから大丈夫だろうけど。

 それでも、向こうで神様が出てくる以上こっちに絡んでくる可能性もあるし・・・仕方ない、か。

「とりあえず、一つ二つ提案いいですか?」
「なんでしょう?」
「なんか、孫悟空出てきたみたいですし、当分の間一緒に行動しません?」

 俺の言葉に、四人ほどが絶句した。
 あー・・・まだその辺の情報は出回ってないのか。俺は勝手にエリカ、リリアナ、祐理の頭の中を覗いただけだし。

「あの・・・それは本当ですか?」
「ええ。日光に封印状態にあった神、孫悟空だったみたいです」
「あの・・・それで、何で一緒に行動、なんですか?」
「猿になりたい?今、一定範囲内に入ったら猿になるみたいだけど」

 まあ、なってない人もいる辺りから一定量以上の呪力が体内にあればいいみたいだけど。
 そのあたりの情報も伝えていくと、約二名の顔色が悪くなった。

「それ・・・私は猿にならないか?」
「私も、です・・・皆さんと違って、呪力が溜め込めませんし・・・」
「確かにそうだから、提案できるのは二つ。一つ目は、さっさとここを離れる。問題としては、まず間違いなく一部一部の交通は潰れてる」

 普通に移動するのはかなり面倒。
 正直に言うと、お勧めは出来ない。

「では、二つ目は?」
「その場しのぎ」

 そう言いながら二人の肩に触れて、権能を発動する。
 二人の存在に、姫巫女なみの呪力を書き加えた。もちろん、鈴には呪力を溜め込める体質も。

「とまあ、こんな感じにする。本当にその場しのぎだし、どれくらい離れても大丈夫なのかも分からないから、これはこれで欠点があるんだけど」

 そう言いながら俺は護堂が頑張っている方を見て、尋ねる。

「で、どうしますか?このまま行動するなら、神との戦いに巻き込まれる覚悟をしてください」



◇◆◇◆◇



 武双がオオナマズを倒してから少したった時、中国のある場所で神が目覚めていた。
 その神は顔を上げると・・・そのまま、天に向かって飛び立つ。
 来る戦いに向けて、移動を始めた。

 目的地は・・・日本。 
 

 
後書き
最後に顕現した神について、ヒントを少々。

では、

西遊記で三蔵一行にかかわりの深い蛇の神。
川にも関わりが深い。

です。 
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