| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

WvsA‘s ジ・ビギンズナイト

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

彼女の覚悟・Vよ再び

 
それからしばらくして、日にちが経ちなのはとフェイトのデバイス強化は宗吉の協力もあり順調に進んでいた。2人の体調も完全に本調子に戻り、翔子もほっ…と一息。
だが、この状況でも皆が内心穏やかとは言えず中でも夫であるクライドの死と宗吉と長くの間に続く溝となってしまったリンディに関しては心にそれらが重くのしかかっていた…。

自室のコタツに浸り、彼女が手に持ち眺めているのは白いカード型の待機状態のデバイス『デュランダル』。クライドの遺品であるそれを眺めながら、彼女はある決意をする。

「…確かめてみるか。直々に……」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





翌日…



アースラ艦橋…



今は再び、海鳴市に現れたシグナムらヴォルケンリッターに皆が慌ただしく動いていた。事態が緊迫する中、何故かここにリンディは不在。代わって指揮をとっているのはクロノの相棒にして、オペレーターの少女、エイミィ。茶色の髪は恐らく突然のことだったためか少し乱れている。

「目標、位置補足!なのはちゃん、フェイトちゃん…ぶっつけ本番だけど、出現準備して!…」

それでも、的確に指示をだしオペレーターの役割も果たす。そして、ヴォルケンリッターたちが向かう先の映像が出た瞬間、彼女は驚愕する…

「そんな!………」









「リンディ提督!?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





海鳴市のビル群のうちの1つの屋上に立つリンディ。その手にはデュランダルを握り締め、向かってくるシグナムらヴォルケンリッターと対峙する。

「…アナタたちね…闇の書の主に仕えるヴォルケンリッターって……」

何か異様さを感じ、ブレーキをかけ空中で止まるシグナム。まさか、自分たちのことを知っているとは思わず、警戒しながらレヴァンティンを構える。

「…ご婦人、我々のことをご存知…ということはつまりは誘き出すつもりで最初から……」

「ええ、そうよ。でも戦う意志は無いわ。ただ、訊かせてもらいたいの…アナタたちは…いえ、アナタたちの主は何を目的で動いているのか…」

「…っ!」


「待て、ヴィータ!」

されど、構わず突撃しようとしたヴィータだがシグナムが止めた。ヴィータは不服そうな表情をしていたが、シグナムはリンディに語り出す。

「ご婦人、どなたかは存じませんがここまでして何も答えぬというのも失礼でしょう。これは我らヴォルケンリッターの意志でやっていること。我が主とは関係無く、またこのことは存じておりません。」

「何を馬鹿な。それが信じられるとでも?」

「……かつての我等の所業からは信じられぬでしょうが……それが事実です。」

リンディは半信半疑であった。無理もない……彼女の知るヴォルケンリッターなら…そんなことはありえない。だが、シグナムが嘘をいっているようには思えない。

「……それが、真実か捜査を攪乱するためかは判断しかねるけど…まずはアナタたちの主と面会することを所望するわ。込み入った事情があるなら、決して管理局は悪いようにはしない。約束する。」



何にせよ、彼女らの主に合うことが先決としたリンディ。されど、シグナムは…顔を伏せて……レヴァンティンの柄に手をかけた。

「ご婦人……その申し出には感謝します。しかし、我等にはもう時間が無い。そして、管理局に行けば……穏やかな暮らしは永劫、叶わなくなる。それは、ヴォルケンリッター…皆が望まぬところ。」

「ま、待って!」

「…もう、話は終わりです。先に謝っておきます。命はとりませんが少々、痛みますので…御容赦ください。」

気がつけば強引に話を終わらせられ、腰を低く構えるとリンディとの間合いを見据える。ああ、また自分は主が嫌う罪を重ねてしまうと分かっても…助けるためにはこれしかない。そう、自分に言いきかせて…
しかし、リンディは臆することは無くなおもシグナム等に語りかける…。

「私を…斬るんですか?」

「…」

「躊躇いは……無いのですか?」

「…」









「かつて、私が…闇の書の暴走事件で夫を亡くしているとしても?」





「!」




瞬間、シグナムの手が止まった。今、リンディの言ったことに耳を疑った…。闇の書の暴走…?そんなことが………あ…る……わ…………ケ……n……あ…………



ズキンッ


「う、ああああああ!?」

「シグナム!?」

突如として、シグナムを襲う頭痛。レヴァンティンを落とすほどの苦痛が……頭の何処かにある虚空から疼く……
ヴィータがあわてて様子を確認するが、やはり尋常ではない。


ズキンッズキンッズキンッズキンッズキンッズキンッ……!!!!!!

「う、あああ……アアアアア!?!?」

「ちょっと……!」

「……黙れッ!黙れッ!黙れぇッ!」


とうとう、激痛の前に我を忘れてリンディに襲いかかるシグナム。太刀筋も滅茶苦茶で普段の彼女らしからぬ勢いの斬撃を最初はデュランダルで防いでいたが、元々は自分のデバイスでは無いそれを上手く扱いきれるわけがなく衝撃により手放してしまう……

「全ては……ッ!全ては……ッ!我が、主……のためにぃぃ!!!!!!」



(……クライド…)









ズブッ









……刃に肉に食い込む音がした…。









「……(え……?)」


だけど、彼女は何時までもこない痛みにうっすらとつむった瞳を開けた…。


「今……お前は、俺の前で最もやってはいけないことをした…。」


「……!」

視界に入った目の前にいた白衣の男は抜き身の刀身を素手で掴み、帽子からのぞく憤怒の視線でシグナムを捉える…。

空いたほうの手で彼……鳴海宗吉はメモリがスロットされたロストドライバーを倒した……。


「……変身。」

『スカル!!』


やがて、骸骨の男………仮面ライダースカルになったこの男はゆっくりとレヴァンティンを握る手に力を入れていく…。


ミシッ………ミシッ………


「さあ………お前の罪を………」

「………ぁ……」


ミシッ!!………ミシッ………!!

「シグナム、なにボサッとしてやがる!?」




「……数えろ。」



……バキィィン!!!!


ヴィータの声で我に返った時にはもう遅い…。愛刀の刃は砕け、怒れる男の足許に散らばった。



バキッ!!


「がはっ…!?」

直後、彼女は思いきり殴りとばされ反対側のビルに叩きつけられた。それをスカルは追って、跳躍しシグナムの前に着地するとスカルマグナムにメモリをスロットする。

『スカル!!マキシマムドライブ!!』

「…」

怒りを静かにたぎらせ無言で歩み、距離を詰めていくスカル……だが………

「……ラケーテェンッ!」

させるか!とすぐさま背後から鉄槌を構えて向かってくるヴィータ…。
そんなことはとうに予想済み。

「…」



バシュ!!

「!?」

何も口にせず、ただ銃口だけを襲撃者に向けてトリガーを引いただけ。不意をつかれたヴィータは直撃を受け、墜落。スカルの歩を止めることは出来ない…。

(主……はやて…………)

シグナムは察した…。
ああ、自分がここで完膚なきまで破壊されるんだ…。こんな朦朧とする意識すら残らないほどにまで……
そうだ、それだけのことをやってきたのだ。仕方ない…。

だけど、せめて……せめて……………



【………シグナム!】


「申し訳ありません、主……はやて………!」


もう一度、顔が見たかった…。









『アクセル!!マキシマムドライブ!!』


ズドォォン!!!!


しかし、スカルが達する直前に立ちはだかる深紅の影…!!機械な剣を持つ加速の名を冠すライダー…シグナムは知っている。

「……隼人!?なぜ、ここに!?」

迅竜隼人……またの名を仮面ライダーアクセル。エンジンブレードをスカルに突きつけ、シグナムを庇うように立つ。

「……おやっさん」

「…どけ」

「……いやだ。」

「…どけ。」

「………いやだ。」



「……………どけ!!!!」

『スカル!!』



「……いやだァァ!!!!」

『アクセル!!』



『『マキシマムドライブ!!』』


ドギャアァァァァン!!!!!!



譲れない思い。ぶつかり合う紅と黒の閃光…ライダーキックの打ち合い。これによる衝撃波は凄まじいものでスカルはビルをまた飛び越え、リンディの元へ……アクセルはシグナムの目と鼻の先まで後退した。

「…」

「…」

睨みあう両者…。高まる緊張感……
されど、ここに以外な来客が現れる。


ビュオォォォォォォォォォ!!!!!!

「「!」」

『やれやれ、程々にしてくれませんかねぇ?』

嵐を引き連れ、参上したのは招かねざる客…ウェザードーパント。目的も正体も謎。神出鬼没の災害がごとき存在。
そんな奴が仲裁のような真似をするとはいったいどういうことなのか……?

「………井坂」

『宗吉、あまりやり過ぎるとはやてが悲しみますからねぇ………本当に頼みますよ。ヴォルケンリッターの方々もこれに懲りたら、迂闊な行動は謹んで下さいよ?』

スカルにも真意は解らないようだった。また、これで勢いが失速したのか威圧的な雰囲気が無い。これを確認するとヴォルケンリッターたちにも忠告を残して現れた時のように嵐に紛れて消えていく……

「……待て!」

『おや?アナタも随分と立派になりましたね………クク……!!』

「?」

最後の間際、アクセルに一瞬だけ意識を向けたがやがて、何も無かったかのように消えていたのであった…。

「…」

そのあと、管理局が到着したもののヴォルケンリッターやアクセルの姿はなく……変身を解除した宗吉はウェザーが消えた空を見上げていた……。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




???……



【ふむ……そろそろ面倒なことになってきたな。】

暗闇の声は呟く…。
静かな黒の中で……誰もいない空間で何かが口を開く。

【管理局の介入でまた台無しになられては困る……。今度こそ、私の悲願を成就させなければ………】

『…』

いや、闇の中で声の主以外の人間…女性が1人。銀の髪に悲しげな赤い瞳をした彼女は虚しげな表情を浮かべていた…。

【今回の素体は実に良い線までいきそうだからな……その時は手伝ってもらうぞ。管理人格。】

『……ッ!』




悪意は静かに胎動する……


最高の贄は揃った……



来るべき晩餐の時は近い………






さあ、運命の夜まであと少し………









To be continued………


 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧