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赤城と烈風

作者:fw187
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冬の戦争
  俊足の駆逐機

 
前書き
改定前 

 
 ドイツ空軍将校の根回しに拠り、フォッケ・ウルフfw187とデンマーク戦士達は無事に到着。
 新鋭機の派遣はフィンランド空軍全部隊に通報され、受け入れ態勢が整えられていました。

 陰の主役は高速迎撃機の許可認定に尽力した空軍将校、航空局補給部長とも噂されていますが。
 ヴォルフラム・フォン・リヒトフォーヘン大佐は黙秘権を行使、貝の如く口を閉ざしています。

 スウェーデン派遣のF-19飛行戦隊も戦力は半減、フィンランド全土が無差別爆撃の脅威に曝されています。
 敵爆撃機を捕捉撃退する≪航空駆逐機(スカイスイーパー)≫は、何にも増して必要とされていました。


 几帳面なドイツ軍人達に手抜かりは無く、補給の計画も綿密に策定されています。
 必要にして充分な数の交換部品と補充品、修理点検に必要な各種工具類も既に到着。

 タンペレ飛行機修理工場の職人親方(マイスター)、熟練《ベテラン》整備員の中に新顔が数人。
 フォッケ・ウルフ社の技術員(テクニカル)達も国籍を偽り、森と湖の国へ密入国していました。

 メッサーシュミットMe110を上回る上昇力、急降下性能を備える双発単座戦闘機。
 フォッケ・ウルフfw187の本命は、高速を最大限に活用する一撃離脱《ヒット・アンド・アウェイ》。


 万一にも発動機の不調で速度の低下を招き、敵機の追随を許す事態を生じさせる事は許されません。
 規定使用時間を超過した液冷発動機は、問答無用で交換が義務付けられています。

 不具合部品の混入も考慮され、必要数の3倍に相当する数の発動機が揃えられていました。
 20ミリ及び7.92ミリ機銃弾も大量に準備され、1機でも多くの敵爆撃機を撃墜する事が望まれています。

 フォッケ・ウルフfw187の逆転採用に賭け、ドイツ空軍将校達の協力で大量の弾薬が輸送されました。
 彼等の熱意も設計者のクルト・タンク技師、フォッケ・ウルフ社の技術者達に劣らなかったのです。



 高い技量を有し慣熟訓練を積んだデンマークの戦士達は、機体特性を充分に把握。
 高速一撃離脱戦法の趣旨も深く理解しており、敵戦闘機の撃墜は2の次と了解済み。

 敵爆撃機を墜とす事こそが何よりも必要とされ、危機的な状況に在る事も認識していました。
 到着した3機のfw187は直ちに点検整備作業が行われ多少の劣化、性能低下が疑われる部品は全て交換。

 ドイツ空軍将校、フォッケ・ウルフ社の技術員達は彼等を最高の舞台へ送り出しました。
 2度目の機会(チャンス)は無いかも知れず、明瞭にして確実な結果を出す事が望まれています。


 多数の爆撃機による無差別爆撃を阻止し、森と湖の国を救う為に失敗は許されません、。
 フィンランド全国民のみならず世界中の人々に期待されていた、と言っても過言ではありません。

 フォッケ・ウルフfw187先行生産型A-0、(ファルケ)3機はフィンランド上空へと飛翔。
 森と湖の国を爆撃する為に押し寄せる敵爆撃機の大編隊に、真っ向から立ち向かいます。

 旋回戦に強い究極の複葉戦闘機ポリカルコフI-153チャイカ、(かもめ)は最高速度370km/h。
 突進力に優れ最高速度490km/hの単葉低翼ポリカルコフI-16も、(ファルケ)には及びません。


 北の(ファルケ)3機は529km/hの高速を発揮、次々に敵戦闘機の布陣を突破。
 単発のソ連戦闘機には追随不可能な双発機、フォッケ・ウルフfw187は爆弾投下前の爆撃機に猛進。

 フィンランドの街を破壊する為に爆弾を搭載、動きの鈍い爆撃機に逃れる術はありません。
 弾道直進性の高いラインメタル社製の20ミリ機銃2挺、7.92ミリ機銃4挺が火を噴きます。

 銃弾は吸い込まれる様に爆撃機へ命中、眼下の街並みを破壊する筈の爆弾を誘爆させます。
 fw187は爆発四散する爆撃機を見届ける事無く、一撃離脱に徹し敵機大編隊の只中へ再び突撃。



 追撃可能な敵機は存在せず、3機は敵戦闘機を引き離し充分な距離を取ると反転。
 再び北の(ファルケ)は突風と化し、戦闘機と爆撃機の大編隊を吹き抜けます。

 直撃弾を受け、爆発四散する爆撃機が3機。
 他にも胴体から火を噴き、煙を大量に噴出しながら高度を下げる爆撃機が数機。

 護衛のI-153チャイカ及びI-16の大群は、(ファルケ)の急襲を阻止せんと試みますが。
 高速一撃離脱戦法を固持するフォッケ・ウルフfw187には、有効な反撃が出来ません。


 動きの鈍い4発重爆ツポレフTB-3のみならず、運動性の高い双発軽爆SB-2も同様です。
 高速新鋭の双発爆撃機イリューシンDB-3もまた、鷹の襲撃を逃れる事は出来ませんでした。

 執拗に反復波状攻撃を繰り返す3機の双発単座戦闘機、フォッケ・ウルフfw187。
 確実に爆撃機数機を墜とし、戦力を削り続ける高速邀撃機を眼前に大編隊の士気は急速に低下。

 デンマークの戦士達は執念深く一撃離脱を繰り返し、敵機の大編隊は徐々に数を減らします。
 遂に『爆撃機数の減少に拠り有効な爆撃は不可能』と指揮官が判断、敵大編隊は反転。


 フォッケ・ウルフ社の開発担当者、クルト・タンク技師の思い描いた光景が実現。
 3羽の(ファルケ)が森と湖の国を護り、戦爆連合の大編隊を撃退したのです。

 デンマークの戦士達は北欧の大空に於いて、過酷な現実の戦場で性能を実証。
 フォッケ・ウルフ社の開発した試作機、双発単座戦闘機は北の空で結果を出しました。

 待ち望まれていた切札、対爆撃機用重戦闘駆逐機(カンプツェアシュテーラー)の鮮烈な初陣(デビュー)
 3機の(ファルケ)、fw187が実戦証明済(コンバットブローブン)称号(タイトル)を得た瞬間でした。



 1940年1月18日の初陣を飾ったフォッケ・ウルフfw187、高速双発単座戦闘機の先行生産型A-0。
 3機に乗るデンマークの戦士達は森と湖の国を護る為、交代で休む事無く出撃を繰り返します。

 3羽の(ファルケ)は連続出撃を重ね、一撃離脱戦法《ヒット・アンド・アウェイ》を駆使。
 続く10日間で1人当たり18機、合計90機もの爆撃機を撃墜する大戦果を挙げました。

 凄腕の狩人《ハンター》は奮闘を続け、俊足の襲撃機《シューター》は爆撃機の編隊を駆逐。
 累計で数百機にも及ぶ爆撃機を反転させ、大量の爆弾を投下する無差別爆撃を未然に防止。

 縦横無尽に北の空を疾駆する白銀色の鷹、fw187《ファルケ》を操縦する狙撃手《スナイパー》。
 眼に見えない戦果として高く評価され、デンマークの戦士達に直筆の感謝状が贈られました。 
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