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ソードアート・オンライン ~命の軌跡~

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Episode4  それぞれの想い

 
前書き
 お久しぶりです。更新が結構遅くなってしまいました。ようやく、Episode4が書きあがったので載せます。
 
 それでは、どうぞ! 

 
アインクラッド標準時 2024.10.18
第四十層 『白銀の洞窟』


 僕とリズさんは今、『白銀の洞窟』の入り口の前に立っている。目的の金属素材(インゴット)である〈エレミア銀鉱石〉を採取するためだ。リズさんの話によると、その金属をドロップするモンスターは、<シルバーロック>ということが分かった。それと同時に、リズさんはそのモンスターの特徴も知っているようだ。これは正直ありがたい。情報というものは、どの分野においても重要なウエイトを占める。これにより、対策や戦略を練ってから挑むことができるので、大きなアドバンテージを得ることができるからだ。

 <シルバーロック>というモンスターは、どうやらこの洞窟の特定の場所にしかポップしないようだ。そこは、洞窟の最深部とまでは行かないが、それなりに奥まで進まなくてはならない。大きさは約三メートルで、銀色をしたゴーレム。高い防御力と強力な攻撃力を有しているが、動きはかなり鈍足で、攻撃のモーションも大きいとのことだ。ただ、攻撃を与えてもノックバックしづらいので、相手が攻撃モーションに入った時に攻撃を仕掛けるのは得策ではない。僕の今のレベルでは、一撃でレットゾーンまで削られる可能性すら有り得る。それと、一度倒すとリポップするまで三時間くらいかかるらしい。まぁ、情報整理はここまでにしよう。

「リズさん、道案内はお任せします」
「ええ、わかったわ。付いてきてちょうだい」

 リズさんが洞窟の中へと歩を進め始めたので、それに習う。洞窟の大きさは、幅が約五メートルで高さは約三メートルの少しつぶれ気味のかまぼこ型。戦闘を行うには十分な広さがある。すっかり肌寒くなった外気温よりも、ひんやりとした冷気が洞窟の奥の方から漂ってくる。

「そういえば、シン?」
「ん?どうしたのですか?」
「シンってどちらかといえば、スピード系の敏捷優先ビルドよね?」
「はい。そういうリズさんは、筋力値優先ですよね?」
「わかる?」
「ええ。鍛冶職の人って、武器を鍛えるときや研磨するとき、武器によってはかなりの重量物を持たなくてはならないじゃないですか?その場合のために、筋力値が高くないと務まらないのでは?と思ったので」
「うん、正解よ。その世界なら対して変わらないけど、これが現実(リアル)なら今頃マッチョ確定ね。そうそう、シンって、筋肉ムキムキな女の子ってどう思う?」

リズさんが悪戯っぽい笑みを浮かべながら問いかけてくる。明らかに、からかっていることが分かるので、それに合わせることする。

「僕は、素敵だと思いますよ。特に、リズさんのような魅力的な女性なら特にね」
「なぁっ!?」

 意外と威力があったようだ。その証拠に、リズさんの表情が先ほどとは一変し、顔から湯気でも立ちそうなくらい真っ赤にしてフリーズしている。この肌寒さなら本当に湯気が立つところをお目にかかれるかも、と思ったが残念ながら、そこまではならなかった。

「え、あ、あの……」
「リズさん、どうしたのですか?顔が赤いですよ?」
「ふぇ?うそっ!?」

 リズさんは両手で顔を隠しながら、僕に背を向ける。なにやらブツブツと呟きながら、時折こちらを伺うかのように、少し振り向いては、すぐに顔を戻す。

(意地悪が過ぎたかな?)

少しだけ罪悪感を覚えつつも、いつまでも遊んでいるわけにはいかないので、足を進める。しかし、リズさんが近くにいないことに気づき、振り返ってみると、先ほどの場所から一歩も動いていなかった。その様子に、原因が分かっていながらも、ため息が出てしまう。

「リズさん、置いていきますよ!」
「えっ?ちょっ、ちょっと待ってよ~!」





ソードアート・オンライン ~命の軌跡~
Episode4 それぞれの想い



あたしの隣を歩くシンと名乗る青年。最初の印象は、少し頼りなさそうな感じがした。キリトのように見た目とは裏腹に、高レベルなプレイヤーの可能性もあったが、多分レベルは、あたしよりも低いだろう。相手のステータスの詮索はマナー違反なので、直接聞きはしないでいる。

(まぁ、キリトと比べるのは可哀想だよね。っていうか、キリトを基準にすることが、そもそも間違えか……)

 アインクラッドの中でもトップクラスの実力だけでなく、《二刀流》なんていうユニークスキルまで持っているデタラメなプレイヤー。って、キリトのことは、置いておいて……。

(スピード系っていう割には、それほど速くはなかったし……。実力を抑えてそうな感じもしないんだよね……)

 そんなことを考えながら、最初の戦闘を思い出す。



「はぁーっ!」

 三連続攻撃《ストライク・ハート》を繰り出し、モンスターを翻弄する。<スカルナイツ・ランサー>と呼ばれる二メートルくらいの骸骨の戦士は、両手槍で必死に防御しようとしているが、あたしの攻撃に追いついていない。面白いように、攻撃が命中し、相手のHPを確実に減らしていく。ソードスキル発動後の硬直時間が訪れるが、相手も体勢を崩し反撃には転じてこない。
相手が体勢を整え、突きを繰り出してくるが、あたしの硬直も解けメイスで弾き(パリィ)防御する。

「シン、スイッチお願い!」
「はい!」

 再び、相手の体勢を崩しところで、シンとスイッチ。シンと組んで、初の戦闘だったけど、絶妙なタイミングでモンスターへ斬りかかっていく。うまく連携が取れるか心配だったが、どうやら杞憂に終わったみたいだ。少し離れた位置まで下がり、しばしシンの戦闘を眺めることにする。

「シッ!」

 シンは、短い呼吸と共に、逆手に持った短剣で骸骨の戦士を擦り抜けながら斬り裂く。そして、骸骨を一歩分擦り抜けたところで、左足でブレーキを掛け、そのままモンスターに向かって地面を蹴る。その際、逆手に持っていた短剣を順手に持ち替えていた。

「はぁっ!」

 四連続攻撃のソードスキルが、骸骨の背中に吸い込まれていく。あたしの鍛えた武器が青いエフェクトを纏い、四本の線を描く。全ての剣戟が背中に命中し、攻撃を受けたモンスターは、その衝撃により三歩ほど進み踏みとどまる。

「ゴォー!」

 モンスターは低い唸り声を上げながら振り返り、ターゲットをシンへ変更する。そして、槍を構えソードスキルを発動させた。突進技がシンを貫こうとするが、すでにシンは、その攻撃軌道上から左に一歩分位置を移動していた。それにより、誰も居ない空間をモンスターは突き進むことに。

「はっ!」

 硬直状態で無防備なモンスターに、シンは三連続攻撃のソートスキルを放つ。その後も、戦闘のペースはシンが握りっぱなしだった。基本相手の攻撃を見切り、相手の技後硬直時間や隙を逃さず、攻撃を確実に命中させていくといった、戦闘スタイルだ。

(あれ?)

 そこで、あたしはあることに気がついた。シンの攻撃は無駄がなく、繰り出される攻撃全てが、確実に相手のHPを減らしていく。なのに、相手のHPはそれほど減っていない。

(シンって、スピード系って言っていたけど、もしかして、筋力値全然上げてないのかな?)

 でも、その考えはすぐに否定した。あたしの鍛えた短剣。スピード系でかなりの軽量であり、攻撃力の補正はあまり期待できないのだが、決して低くはない。あたしの鍛えた武器は高いステータスを要求するので、スピード系とはいえ、やはりそれなりに筋力値も要求する。現に今それを使用し、戦闘を行っているから、敏捷一極型ってわけでもない。

(それに、スピード系っていうわりには、そこまで速くないような……)

 あたしは腕を組みながら、勝手に一人でシンのことについて、議論しているところに―――

「リズさん、スイッチお願いします!」
「えっ?」

 その後、なんとかスイッチして、モンスターに止めを刺した。それよりも、シンに何か言われるかもと、内心ヒヤヒヤしていたのだが……。まぁ、結果からいうと、色々言われたんだけどね……。



 最初の戦闘が終わってからも、何回かモンスターとエンカウントしたが、そのどれをとっても、やはり同じ結論に行き着いてしまう。

(ん~。やっぱり、レベルはあたしのほうが上よね)

 だけど、シンには凄いと思う点もあった。まずは、戦闘のうまさだ。あたしのような頻繁に戦闘をしない人の目から見てもそう感じた。反応速度がずば抜けているとか、反射神経が優れているとかじゃない。うまくは言えないけど、戦闘がシンの思い通りに進んでいる印象が強い。キリトの時のような派手さはないが、キリトのときと同じように見入ってしまった場面がいくつもあった。

(よくわかんない人だなぁ……)

 キリトのような強さはないが、大人びていて、よく周りを見ていて、やさしそうで、気配りができて、戦うのが上手で―――

(って、いつの間にか、シンのことばっか考えてるし!)

 やっと、少しは落ち着いたと思ったのに、そう意識してしまうと、再び顔が熱くなっていくのが分かる。

(あたし、どうしちゃったのかな?あたしは、キリトのことが好きなのに……)

 モヤモヤした感覚を吹き飛ばす為、大声で叫びたかったが、ダンジョンでそんなことしたら、モンスターを引き寄せてしまう恐れがあるから、何とか踏みとどまることができた。

(正気に戻るのよ、リズベット!あたしには、キリトっていう人がいるのよ!)

 そう思うことで、再び気持ちを落ち着かせようと試みるが、逆に意識してしまって、逆効果になっていく。

(そうよ!こんな時は、別のことを考えればいいのよ!あたしは、マスタースミスよ!武器のことを考えていれば、こんなこと―――)
「―――ズさん。リズさん、聞こえていますか?」
「ふぇ!?え、あ」
「リズさん、聞いていましたか?」
「え、えーっと、何かな?」
「はぁー、ボーっとしないで下さいよ。ここで少し休憩しましょう、って聞いたのですが……」
「あっ、休憩ね!ええ、休憩しましょう!」

 あたしは、シンと目を合わせないように、早足で少し距離の離れた位置に腰を下ろした。

(はぁ……。戦闘もそうだけど、こっちまで主導権握られっぱなしね……)

 そう思い、少し離れた位置にいるシンのほうに目を向ける。すると、シンは立ったまま腕を組み、周囲を警戒していた。その姿を見たとき、頬がさらに熱を帯びていく感じがした。



 洞窟の中に入ってから、何度か戦闘を行い、ちょうど少し休憩できそうな場所があったので、小休憩でもしようと考えた。

「リズさん、ここで少し休憩でもしませんか?」

 応答がない。なにやら、考え事でもしているのか、時折頭を傾げたり、首を横に振ってみたりと、一人で色々リアクションをとっていて、傍から見ていて少し面白い。でも、いくらパーティーを組んでいるからとはいえ、周囲へ警戒を怠っているのが、火を見るよりも明らかなので、そうそうに戻ってきてもらうことにする。

「リズさん。リズさん、聞こえていますか?」
「ふぇ!?え、あ」
「リズさん、聞いていましたか?」
「え、えーっと、何かな?」
「はぁー、ボーっとしないで下さいよ。ここで少し休憩しましょう、って聞いたのですが……」
「あっ、休憩ね!ええ、休憩しましょう!」

 リズさんは、逃げるように少し離れた位置まで移動し、腰を下ろした。その際、顔が真っ赤だった。

(よっぽど恥ずかしかったのかな?いや、それだけじゃない……)

 この洞窟に入ってから、ずっと同じような感じだ。となると、原因はやはり、あれだと当たりをつける。

(はぁ、慣れないことは言うものじゃなかったかな……。それにしても、まだ引きずってたのかな?)

今更、後悔してもしょうがないし、過ぎてしまったことはどうしようもない。

(とにかく、今の状態のまま、戦闘を行うのは得策じゃない)

並列思考の持ち主でない限り、他のことを考えながらの戦闘は危険極まりない。何度か戦闘を行って平気だったが、これから先その保障はどこにもないからだ。

(やはり、ここで少し休憩をとって正解かな。少しだけど、ほとぼりが冷めてくれればいいんだけど……)

 とりあえず、周囲を警戒することにする。安地とはいえ、ダンジョン内ということに変わりはない。緊張のし過ぎとか、肩に力が入りすぎだとか、色々言われるかもしれないが、警戒するに越したことはないと思う。

(それにしても、今の状態だと接近戦は、この辺が限界か……)

 リズさんの鍛えた武器の恩恵で、ダメージを少しずつ与えることができているが、これより上の階層だと、そうはいかないだろうと思う。それなりに、《短剣スキル》を上げてはいるが、メインは弓だ。僕が弓使いという噂が広まるのをなるべく防ぐ為、今は短剣を利用しているし、弓を使用するとき以外は、この隠蔽と識別阻害の効果の高いフード付マントを羽織っている。

(相手の動きの先読みは、まだまだ通用するけど……)

 
 これについては、弓も短剣では対処の仕方は変わるけど、根本的な部分では変わらない。しかし、いくら今までの戦闘経験から戦いをコントロールしても、レベルという壁を越えるのは非常に難しい。これは、レベル制というシステムの檻の中で生きる僕らに与えられた重石であり、非常に分かりやすい、いわば階級社会である。

(何事もなく、無事に終わることに越したことはないけど、いざという時のために、弓を使うことも考えておこう)

 《射撃》ほどではないが、弓も十分に強力なエクストラスキルの一つだ。リズさんに万が一のことがあった時、僕の都合を優先させるわけにはいかない。そのときは、カードを切るつもりだ。

(それを切っても、まだ手札には切り札が残っているしね)

 今日初めて会った赤の他人だとしても、僕から助けると言い出した以上、背に腹はかえられない。そう決意し、辺りの警戒を少し強めた。それから、お互い無言のまま、十五分くらい経った。

「それそろ、行きましょう」
「ええ、そうね」

 リズさんが立ち上がり、再び洞窟の奥へと進んでいく。僕の半歩ほど前を歩くリズさんの背中を見つめ、小さく拳を握った。



To Be Continued



 







 
 

 
後書き
 いかがでしたか?
 最近は、仕事が忙しすぎて、22時半頃家に着いて、ご飯、風呂、2~300字くらい執筆してる途中力尽きる、という毎日を送っています。なので、誤字、脱字が多いかもしれません。見つけた時、報告を下さると助かります。Episode5もこれくらいかかるかもしれません……。

 皆様はゴールデンウィークのご予定は、もう決まりましたか?

 私は、仕事という予定で埋まってしまいました……。

 皆様、身体には気をつけて、楽しいゴールデンウィークになりますよう。

 それでは、次回もお楽しみに!

        仕事が忙しすぎて、鼻血がでそうなクロニクルでした。

 
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