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違った生き方

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第四章


第四章

「遠い国だよね」
「一応日本が何処にあるかはわかるよな」
「学校で習ったからね」
 学校の授業でだ。それはわかることだった。
「一応ね。海の向こうにあるあの島国」
「そうさ。我が国と比べるとずっと小さいけれど」
 国土の広さは違っていた。モンゴルの方がずっと小さい。
「けれどそれでもね」
「豊かなんだ」
「その日本との付き合いが出来てきてるんだよ。観光客も来てるしな」
 その観光客の話もしながらだ。トウルイはテルグを案内していく。そうしてウランバートルを回っている中でだ。テルグはまた見たことのないものを見た。
「あれっ、これは」
「ああ、食べたことないんだな」
「ええと。何これ」
 食堂の前だ。そのサンプルコーナーにある様々な食べ物を見てトウルイに尋ねているのだ。
「草だよね。しかも赤いのとか黄色いのもあるし」
「それ中華料理だよ」
「中華料理っていうと」
「そうさ、中国の料理さ」
 彼等モンゴル人とは歴史的に色々あったその国のだというのだ。
「その細長い麦を伸ばしたのとか」
「これは確か」
「麺っていうんだよ」
「だよね。それは食べたことないけれど」
「ああ、麺もか」
「ずっと草原の中にいたからね」
 それでだ。食べるものはというと。
「肉に乳製品に。あとは」
「お茶だよな」
「そういうのしか口に入れてないから」
「本当に草原で生きてきたんだな」
「学校の従業も。草原の中だったし」
 所謂青空教室だったのだ。
「そうだったからね」
「だから麺も知らないんだな」
「どんな味かな」
 興味をだ。テルグは言葉に出した。
「一体」
「食ってみるか?」
「安いのかな、これって」
「そんなに高くないさ。ここは誰でも入る店だしな」
「誰でもって」
「店によったら金持ちしか入られない店もあるんだよ」 
 そうした店があることも草原ではわからないことだった。町のことだからだ。
「まあここはそういう店じゃないからな」
「別に入ってもいいんだ」
「そうさ。じゃあ入るか」
「うん。それにしても中国人ってのは変わってるね」
 テルグは店に入ることを決めてからもだ。こう言うのだった。
「草まで食べるなんて。羊みたいだね」
「ああ、それ野菜っていうんだよ」
「野菜?」
「畑って場所で育てて食うんだよ」
「畑も授業で勉強したけれど。田んぼも」
「そこで育てて食うんだよ。わかったかな」
「一応は」
「あと果物もあるからな」
 見れば甘いものもサンプルコーナーにあった。それもだ。
「じゃあ中に入ってそういうのも食うか」
「それじゃあ」
 こうしてだ。テルグは生まれてはじめて麺や野菜、それに果物を食べた。その感想は。
「不思議だね」
「美味かったか?」
「確かに美味しかったよ」
 それは確かだとだ。テルグも答える。だが、だった。
 本当に不思議な顔で首を捻ってだ。彼は言うのだった。
「けれどそれでもこれは」
「これは?」
「モンゴルにない味だね」
「中国だからな」
「味付け濃かったね」 
 少し困った顔でだ。テルグは言った。
「油も多かったし。炒めたりとか」
「中華料理ってそんな料理だぜ」
「色々な味付けがあって」
「醤油とか味噌とか胡椒とかな」
「味付けは塩だけでいいと思うけれど」
 首を傾げさせながらだ。彼は言うのだった。
 
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