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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep47お姉ちゃんは妹を守るものだから ~Hermana mayor~

 
前書き
皇女アウローラ・P・フィレス・C・D・ヨツンヘイム最終戦イメージBGM
Kingdom Hearts Ⅱ『The Other Promise』

Hermana mayor=エルマナ・マジョール=姉
 

 
†††Sideレヴィ†††

VS・―・―・―・―・―・―・―・―・
其は潔白なる聖者フィレス・トパーシオ
・―・―・―・―・―・―・―・―・VS

シャルロッテ、なのはさん、フェイトさん以外を “エヘモニアの天柱”に誰も往けないように、“オラシオン・ハルディン”を覆う氷のドームが一瞬で造られた。すると“騎士の洗礼”の砲撃が無くなった。だから氷製ドームとなった“オラシオン・ハルディン”の中で、わたし達は全力で1人と1体の敵に集中して戦うことが出来ている。でもドームを透過してくる夕日が変な色になってて妙に気持ち悪いけど・・・。

――紫光掃破(ハーツイーズ・ドライヴ)――

トパーシオ――じゃなかった、フィレスに何度目かの砲撃をお見舞いする。だけどこのフィレスといか、メノリアっていうのが半端じゃなく反則。

――我の愛すべき主に触れるな――

何度撃っても、どれだけ撃っても、見えない障壁で難なく防いでくる。だけどわたしの攻撃を防いだことで生まれる隙。その隙を突いて攻撃を行うシグナムさんたち近接戦チーム。

「紫電一閃!!」

氷には炎、というのはフィレスとメノリアにも有効のようで、シグナムさんの一撃はしっかり避ける。でも避けた先に待ち構えるヴィータさんが“グラーフアイゼン”を大きく振るう。

「おらぁぁぁぁーーーッッ!!」

≪Flamme Schlag≫

ヘッドの命中時に着弾点を燃焼させる、フランメシュラーク。メノリアがいち早くそれに対処する。

――静かにそびえる浄化の氷盾――

蒼い氷の壁が生まれて、ヴィータさんの一撃を防御。炎熱攻撃によって蒸発した氷の壁から生まれる蒸気で視界が潰される。これは下手に動けない。わたしは対ディアマンテ戦のために温存しておいたブースト3の発動タイミングを計る。そんなとき直感が働いた。戦闘時でのわたしの直感はなかなかのものだと自負しているし、シグナムさんやヴィータさんからもお墨付き。

『みんな伏せて!!』『『『全員伏せろッ!』』』

だからわたしは、戦闘に参加しているみんなに念話でそう告げる。わたしと声に、シグナムさんとヴィータさん、リエイスさんの声も重なる。それに驚くことなくわたしは地面に伏せた。

――裁断せし凍刃の円波――

その直後、回転しながら飛んできた氷の剣が頭上を通過。視界を潰していた蒸気もそれで吹き飛んだ。わたしが最初に見たのはスバルさん、ギンガさん、クイントさんの3人が、フィレスに向かう様子。最初はギンガさんの拳打、次にクイントさんの蹴打、最後にスバルさんの振動拳の3連ピンポイント攻撃。

――我の愛すべき主に触れるな――

威力は申し分ないのに、どれもが簡単に防がれた。わたしはこの間に近接戦用の“モード・コンバット”へと形態変更を行う。

『レヴィ・アルピーノ、近接チームに参加する!』

『了解。気を付けてな!』

遠距離支援班は、はやてさんとティアナさんとティーダさんに任せる。

――ナイトメアハウル――

スバルさん達が障壁に弾かれて飛ばされた直後に、はやてさんの5発の砲撃。着弾して爆発。粉塵の中からメノリアに抱えられたフィレスが出てきた。わたしとエリオはすかさず瞬走壱式とソニックムーブで距離を詰める。

「アストライアー、ブースト3!」

ここでわたしは、奥の手のブースト3を発動した。

†††Sideレヴィ⇒エリオ†††

八神部隊長の砲撃から逃れたフィレス空士へと突撃する僕とレヴィ。距離はすぐに縮まって、僕とレヴィはフィレス空士を左右から挟むような位置取りをした。

「スピーアアングリフ!」

“ストラーダ”のヘッドブースターの推進力による突きを繰り出す。メノリアはヴェールとドレスの裾を翻しながら回転して避けた。メノリアとすれ違って、拳打を放とうとしているレヴィと目が合う。イっちゃってる目だった。ブースト3を発動したんだとすぐに理解した。僕は連撃を放とうとしていたけど急遽中止。巻き込まれないように離脱する。

「さぁ、わたしと一緒に踊りましょう♪」

――瞬閃 牙衝撃――

ドォン!と衝撃音。レヴィの神速の拳打は、メノリアの左脇腹にクリーンヒットしていた。吹き飛ぶのを耐えたメノリアの表情が苦悶に変わり、フィレス空士は「メノリア!」と心配の声を上げる。
動きが止まった今がチャンス。一斉に攻勢に出る僕たち。レヴィの鋭い蹴りが、フィレスさんを庇うようにして防御に構えたメノリアの右腕に防がれる。背後からスバルさんとギンガさんとクイント准尉のトリプルナックル。

――静かにそびえる浄化の氷盾――

氷の盾に防がれる。

「「おおおおおおおおッ!!」」

――紫電一閃――

僕とシグナム一尉による、真正面からの炎熱と電撃の同時斬撃。

――我の愛すべき主に触れるな――

不可視の障壁で難なく防がれた。

――ギガントハンマー――

直後、真上からヴィータ教導官の急襲。メノリアは吹雪を纏わせた左腕を頭上に掲げることで、巨大化してる“グラーフアイゼン”の一撃を防いだ。地面に亀裂が走る。それほどまでに強烈なヴィータ教導官の一撃。ここまでやっても決定打を与えられなかった。

『たかが人間ごときが調子に乗るな・・・!』

僕たちの攻撃を全て防いだメノリアから、頭の中に叩きつけられる美声による毒。身が竦んだ。

――我が名はメノリア――

直後、視界がひっくり返る。気が付けば僕は宙に浮いていて、わけも解からないまま体勢を整えて着地する。メノリアから40mくらいも吹き飛ばされていた。どういう方法で吹き飛ばされたのかも検討がつかない。

――クラウ・ソラス――

――クロスファイア・フルドライブ――

――インパルス・ストライカー――

とそこに、八神部隊長、ティアナさん、ティーダ一尉の射砲撃が一斉にメノリアを襲う。

『我が愛おしき主君に手を出す事は許さん』

また声が聞こえた。さっき聞こえたのも、今のもメノリアの声なんだ。外見もすごく美人で、声もまたすごく綺麗だった。メノリアが左腕を頭上に掲げると蒼い吹雪が起こって、八神部隊長たちの射砲撃を弾き飛ばした。

「あはは! すぅごぉ~い! でも負けないよぉ!!」

レヴィがハイテンションで突っ込んでいく。メノリアの声で戦意が失くなりそうだった僕もレヴィに続いて、「ストラーダ!」メノリアへと突撃する。

†††Sideエリオ⇒スバル†††

どれだけ“リボルバーナックル”の一撃を打ち込んでも、メノリアの防御力を突破できない。八神部隊長たちも一緒に戦って、攻撃しているのに・・・。レヴィもエリオも、フィレスさんを庇うメノリア相手に格闘戦を挑んでいるけど歯が立たない。

――紫電一閃――

――瞬閃 牙衝撃――

――フランメシュラーク――

――我が名はメノリア――

シグナム一尉とヴィータ教導官も一緒に四方から攻撃するけど、また見えない何かで吹き飛ばされて、距離を無理矢理開けられる。

――ナイトメアハウル――

――ファントムブレイザー――

――ヴェロシティ・レイド――

近接チームが離れた直後に放たれる、ティアたち遠距離チームの砲撃。それもまた跳ね返される。今までの魔族とはあまりにもレベルが違い過ぎる。

「強過ぎるよ・・・」

勝てない、かもしれない。弱気になる。心が折れそうになる。すると背中を思いっきりバチン!と叩かれた。振り返ると、お母さんがあたしの目を見詰めている。視界の端に映るギン姉はコクンと頷いてる。

「スバル。私たちは勝てないかもしれない。でもね、勝つ必要はないの。なのはさんとフェイトさんとシャルさんが、カローラ一佐を止めることが出来るまで、フィレス空士をここで足止めする。それが多分、私たちの役目だと思う」

そうあたしに告げた。勝つ必要のない戦い。でも負けちゃいけない戦い。この戦いの勝敗は、心が折れない方が勝つ。両頬を力強く叩いて、弱腰になっていた自分に改めて気合を入れる。

「スバルも覚悟を決めたところで、行こうか、ギンガ、スバル」

「「はい!」」

――ウイングロード――

あたし達はそれぞれのウイングロードで、フィレスさんを庇うようにして戦い続けるメノリアに最接近。フィレスさんが「メノリア、上!」とあたし達を指してくる。

――我が声に応えよ雪の精――

空を見上げたメノリアの口から、空へと蒼い吹雪が吐き出される。あたし達は警戒しながらも接近することを止めない。そしてあたしは見た。吐き出された雪が、小さくて無数の人型となってあたし達に向かって来ているのを。あたしは前面にシールドを張って突っ込もうとしたけど、雪人形は難なくシールドを破壊、あたしに直接体当たりしてきた。

「うぐっ(ただの雪なのになんて威力・・・!)がはっ」」

身体中に奔る激しい痛みに意識が飛びそうになる。シールドだけじゃなくてウイングロードも破壊されたあたしは落ちた。

(急いで・・・体勢を整えないと・・・)

「スバル、大丈夫!?」

落下するあたしを受け止めてくれたのはギン姉だった。ギン姉も直撃を受けたみたいで、額や頬から血を流してた。

「1度目のメノリアから離れる。私が盾になるから、ギンガはスバルと一緒に離れて!」

お母さんがあたしとギン姉を庇うように、追撃してくる雪人形の迎撃に入った。

†††Sideスバル⇒ティアナ†††

スバルとギンガさんが無事なのをここから確認できた。あたしとお兄ちゃんと八神部隊長は、遠距離からの支援砲撃を担当して、近接チームの援護に入っている。あたしはクイントさんを援護するために、『クイントさん、援護射撃行きます』と念話を送る。
クイントさんは『お願いね』と返してくれた。あたしは残り少ないシャルさんのカートリッジをロードする。シャルさんの魔力にも神秘にも慣れてきたせいか、リンカーコアから来る痛みがもうあまりない。

「「クロスファイア・・・シュートッ!」」

あたしが撃つと同時に、お兄ちゃんもクロスファイアを放った。お兄ちゃんのクロスファイアはあたしよりも正確に雪人形を撃墜していく。

「射撃魔導師にとって焦りは最大の敵だ。大丈夫。ティアナならすぐに、今日にでも僕を追い越していく」

そう言って、雪人形を次々と撃墜していくお兄ちゃん。あたしも負けないようにクロスファイアを撃ち放っていく。スバル達の後退の支援が終わって、次は前線で戦うシグナム一尉たちの援護に入る。まずは1番接近して手数の多いレヴィ。あの動きの激しさからしてブースト3の発動中だと判断する。

(それにしてもブースト3発動中のレヴィって、あたしは苦手なのよね・・・)

あのぶっ飛んだテンションには付いていけない。それはともかく、“クロスミラージュ”2挺の銃口をメノリアへ向ける。距離は変わらず84m弱。周囲にスフィアを14基設置。前線メンバーの動きを予測して、クロスファイアを3発発射。
それと同時に有効かは判らないけど、障壁突破の多重弾殻射撃ヴァリアブルシュートを2発放つ。あたしのクロスファイアは、2発はシグナム一尉とエリオへと攻撃を加えようとしたメノリアの両腕を弾いて、1発は外れた。ヴァリアブルシュートも残念ながら通用しなかった。

「ナイスフォローだ、ティアナ。前線の複雑な動きをちゃんと読んでる。今のフォローのおかげで、レヴィという子がメノリアに一撃与えられた」

お兄ちゃんが本当に驚いたように褒めてくれた。褒めてくれたことは、素直に嬉しいと思った。

†††Sideティアナ⇒ヴィータ†††

「うふ、ふふふ・・・あははは!」

ティアナのフォローもあって、笑い声を上げ続けるレヴィの拳打がメノリアの腹に突き刺さった。あたしとシグナムとレヴィはメノリアへの追撃、エリオにはフィレスの確保に動いてもらう。


「まだまだ行くよー!」

レヴィは心底楽しそうに、前のめりになっているメノリアの胸へと飛び回し蹴りを食らわし、メノリアを吹き飛ばすことでフィレスから遠ざけようとする。
だけどそんなに甘くはなかった。メノリアはレヴィの右足首をその真っ白な細い手でガッチリ掴んで、レヴィを地面に叩きつけて放り投げた。レヴィには悪ぃが、あたしとシグナムはそれを最大の隙として最接近。

「今度こそブチ貫けぇぇぇぇーーーーーッッ!!」

――ラケーテンハンマー――

「紫電・・・一閃!!」

先にあたしの一撃。メノリアは裾の長いウェディングドレスだって言うのに、スカートを優雅に翻しながら右足で“アイゼン”のヘッドの側面を蹴って軌道を逸らしやがった。“アイゼン”のスパイクヘッドが地面に突き刺さる。視界の端でメノリアを捉えると、シグナムの一撃を1回転することで躱して、上げたままの右足のかかとをシグナムの右頬に叩きこんでいた。

(コイツ、格闘戦も強ぇ・・・!)

あたしには魔族のランクとかそうゆうのは全然解かんねぇ。だけど、メノリアが普通じゃないのはどんなマヌケでも理解できる。これで中級。コイツの上にはさらに上級と最上級が居る。どんだけ化け物ぞろいだったんだよ、シャルロッテとセインテストの時代の奴らは。
あたしはすぐさま“アイゼン”を斜め上に切り上げるようにして振るう。シグナムもほぼ同時に、蹴りを食らった反動を利用して1回転、“レヴァンティン”をメノリアの首筋に向けて振るう。

――我が名はメノリア――

またとんでもねぇ衝撃波を放ってきやがった。この衝撃波の前に、あたしのラケーテンでも歯が立たなねぇ。吹き飛ばされたあたしは宙で体勢を整えて着地する。シグナムも同様に着地。

「どんどん行っちゃうよぉーーーーッ♪」

メノリアへと視線を向けると、レヴィだけが倒れていたことで吹き飛ばされなかった。そのおかげで、真っ先にメノリアへ立ち向かってた。

「遅れを取るな、ヴィータ・・・!」

「判ってる!」

急いでレヴィのフォローに回るために駆ける。あたしらより先に、ティアナとティーダ元一尉のクロスファイアがメノリアに向かう。メノリアはクロスファイアを防ぐ手段として、レヴィの身体を持ち上げて盾にしやがった。

「「レヴィ!!」」

あたしに放り投げられたレヴィを何とか受け止める。あたしもシグナムも意識をレヴィに向けた。それが隙になった。一瞬で距離を詰めてきたメノリア。あたしはレヴィを抱えているから何も出来ずに横っ跳び。シグナムはすれ違いざまに紫電一閃を叩きこもうとする。

『邪魔をするな、人間(システム)ですらない虚構(プログラム)風情が!』

だけどメノリアは紙一重のバックステップで紫電一閃を避けた。仕切り直しとなる。あたしが抱えているレヴィが「痛った~」と言いながら起きた。

「大丈夫かよ・・・?」

「結構効いた~」

レヴィは涙目でそう答えた。

――冷徹なる極雪の凍波――

メノリアが吹雪の砲撃を放ちながら突撃してきた。あたしら3人は砲撃を横っ跳びで回避して構える。

「うふふふ、でもぉ、これでわたし達の勝ちです♪」

――紫光瞬条(マナクル)昇華(エクステンド)――

それはザフィーラの鋼の軛のようなすみれ色の帯。それが9枚くらい地面から伸びてメノリアを貫いて、繭のようにメノリアを覆い隠した。

「はぁはぁ・・・ごめ・・ん・・わたしは・・・これまでの・・みたい・・・」

レヴィは最後まで言えずにそのまま深い眠りに就いた。遠くの方から「メノリアーーーーッ!!」って、はやてとエリオによって拘束されてるフィレスの叫びが聞こえる。フィレス個人の戦闘は、メノリアとの融合状態でのみ。だからメノリアさえ斃せればあたしらの勝ちだ。
この中で大威力を放てるのは、リエイスとユニゾンしてるはやてだ。眠るレヴィを抱えたあたしを含めた全員の視線がはやてに集まる。

「遠距離攻撃を持つみんなで決めるよ。それくらいしやなきっとメノリアは斃せへん。ヴィータとリイン、スバルとギンガとクイント准尉、エリオはフィレスを拘束な」

あたしらはそれぞれはやての指示に頷いて、フィレスの拘束を引き継ぐ。フィレスが「やめて!」と懇願してくるけど、こればっかりは聞けない。メノリアは危険過ぎる。ここで絶対に斃しておかねぇとダメだ。
レヴィの拘束繭に少しずつ異変が現れる。繭が蒼く凍っていっている。はやてが「急ぐよ!」と指示を出して、攻撃組がカートリッジを連続ロードしていく。そしてメノリアの繭を囲むような位置に着いた。

「ファントムブレイザー!」

「インパルスストライカー!」

「火龍一閃!」

「ソール!!」

ティアナの砲撃から始まって、ティーダ一尉の砲撃、シグナムの振り下ろしの斬撃。最後にはやての炎熱砲撃。はやての砲撃が炸裂して大爆発を起こすんだけど、爆炎や爆風は周囲に広がることなく集束していく。そして最後に、空へとんでもない炎柱が昇って行って、ドームの天井に穴を開けた。

「メノリア・・・?」

何重ものバインドで拘束されたフィレスが膝を折って座り込んで、炎が渦巻くメノリアが居た場所を見詰める。あたしらも炎を見詰める。あんな炎熱砲撃を受けて無事なはずはねぇ。炎も消えて、煙も次第に晴れていく。視界にはもうメノリアの姿はない。

「メノリア・・・・!」

あたしらの元にひらりと飛んできたメノリアのヴェール。背の高いシグナムがそれを手に取って、両腕のバインドが解かれたフィレスに手渡す。あたしにでも判るくらいヴェールからは何の力も感じねぇ。だからシグナムもヴェールをフィレスに手渡して、スバル達もバインドを解いた。
“オラシオン・ハルディン”を覆う氷のドームが崩れていく。メノリアが消えたことで、メノリアの造ったドームは壊れていくようだ。

「フィレス・カローラ元三等空士。セレス・カローラの逮捕にご協力をお願いします」

はやてがフィレスに向かってそう告げた。

†††Sideヴィータ⇒????†††

メノリアが負けた・・・。セレスが私付きの守護者として召喚してくれたメノリアが・・・。唯一の救いは、メノリアは死んだんじゃなくて魔界へ還ったということ。
あの子の造ったドームが音を立てて崩れていく。あの子のヴェールを手渡してくる守護騎士シグナム。夜天の主――八神二佐が私に目線を合わせるようにして片膝をついた。

「フィレス・カローラ三等空士。セレス・カローラの逮捕にご協力をお願いします」

そんな申し出をしてきた。セレスの逮捕? その協力?
セレス、あの子にだってもう時間はない。だから今日という日を好きに過ごさせようとしていたのに、全てが狂い壊れた。ヴェールに視線を落とす。するとどうしてかメノリアの顔が見えた。幻想だっていうのは解かる。メノリアは居ない。魔界に還った。
ここまできた以上、私も覚悟を決めるしかない。魔力の粒子に還元されていくヴェールをキュッと抱きしめる。

「(そんな悲しい顔しないで、メノリア)・・・お姉ちゃんは妹を守るもの」

「え・・・?」

私の呟きを聞き返してくる八神二佐。私は顔を上げて、もう1度、3回目の想いを口にする。

「お姉ちゃんは妹を守るものでしょ? だからその申し出は断ります」

これで最後。力を貸してね、メノリア。

――それが貴女の願いであれば、わたくしはどこまででも――

メノリアの声が聞こえた気がした。私はメノリアの消えかけているヴェールを私の想い(そんざい)に取り込んだ。服装がメノリアと同じウェディングドレスへと変化する。閉じていた目を開ける。と、私を見て驚愕している八神二佐たちが映る。

「テスタメント幹部トパーシオ・・・いいえ、もう幹部としてじゃないですね。極凍世界ヨツンヘイム皇族、アウローラ・プレリュード・フィレス・カローラ・デ・ヨツンヘイム、参ります」

小さい頃に公言することを禁止された真名を口にし、最期の戦いに臨む。

――氷柱弾雨(セリオン・エクサラシオン)――

†††Sideフィレス⇒はやて†††

私らは一斉にウェディングドレスを身に纏ったフィレス空士から離れる。予想外やった。まさかヴェールだけでも魔族融合できるやなんて・・・。私らの頭上に生み出された巨大の氷柱が、ドームの破片と一緒に落ちてくる。それだけやなくて、“女帝の洗礼”とモノと思しき白銀の機械片も落ちてくる。

『こうなったらもうしゃあない。フィレスを倒してでも協力してもらう・・・! みんなも覚悟してな』

みんなに思念通話を送る。そやけど返ってくるんは迷いしかない無言。私ももう戦いたくない。そやけど、フィレスから放たれる殺気が酷く冷たくて鋭い。みんなも理解しとる。そやから『了解』と返ってきた。頭上から落下してくる氷塊や機械片に気を付けながら、魔法を準備する。

「フィレス・カローラ!もう止すんだ!」

――紫電一閃――

「あたしらはセレスを救いたいんだ!」

――フランメシュラーク――

近接組のシグナムとヴィータが仕掛ける。エリオは眠りについたレヴィを避難させるために戦域を離脱中。

「救いたいのであれば、このままセレスをそっとしておいてください。それがあの子のためなのですから・・・!」

フィレス空士は2人の攻撃を完全に見切って、踊るようにして避けた。

「「「おおおおおおおッッ!!!」」」

背後からのスバル達の奇襲。

「軽いの行きますよ」

――女神の鉄拳(ディオサ・プーニョ)――

それすらも華麗に避けて、地面から氷で出来た巨大な拳が人数分突き出してきた。私はヘルモーズでギリギリで避けられた。そやけど耳に短い悲鳴が届く。ティアナのものやと判る。氷拳が砕けて散る中、視界に映るのは頭から血を流して倒れ伏したティアナと、ティアナを診ようとしているティーダ一尉。

――悪魔の角(ディアブロ・クエルノ)――

「あぶ――」

スバルもティアナ達に近寄ろうとしたけど、危ない、と注意するより早く、スバルの両腕と両足に螺旋状の氷の杭が1本ずつ打ち込まれて、同じように氷の杭によってティアナの“クロスミラージュ”の銃身が粉砕された。スバルの苦痛の悲鳴がこだまする。

「「スバル!!」」

「援護!!」

――ブラッディダガー――

「「了解!!」」

――フランメ・フリーゲン――

――火龍一閃――

助けに入ろうとするギンガとクイント准尉を援護するために、私はフィレス空士へ26発のブラッディダガーを射出。シグナムとヴィータもそれぞれ炎熱攻撃で援護。

――守護宣言(デフェンデル・デクララシオン)――

作り出された氷の壁に当たった直後、ダガーは全部凍結粉砕されて、シグナムとヴィータの炎熱攻撃も通用せんかった。これはまずい。メノリア以上にフィレスの防御力が高い、高過ぎる。私はもう1度、炎熱砲撃ソールをリエイスに準備させる。

『ギンガ、エリオ! 2人はスバルとティアナをシャマルのところへ!』

ギンガと戻ってきたばかりのエリオには、スバルとティアナの戦線離脱を念話で伝える。2人は『了解!』と返して、スバルとティアナをそれぞれ背負って戦域から離れる。ごめんな、せっかく戻ってきたのに。

「今の状態の私が、テスタメントの“最強”であることを覚悟してください」

――涙する皇剣(エスパーダ・デ・ラグリマ)――

離脱する4人を尻目に、両手に氷の剣を携えたフィレス空士が突撃してくる。私は“シュベルトクロイツ”を向けてソールを撃とうとする。それより先に、左の氷剣で“シュベルトクロイツ”の柄の中間を真っ二つにされた。あまりに早く無慈悲な一撃に、恐怖が全身を支配する。そんな私へと迫る右の氷剣。

「させるものかッ!」

それを私のすぐ側に来たシグナムの炎を纏った“レヴァンティン”が防ぐ。私はシグナムにお礼を言い、距離を開けて“シュベルトクロイツ”の修復に入る。

――クロスファイアシュート――

鍔迫り合いをしとるシグナムとフィレスに向けて放たれる、ティーダ一尉のクロスファイア13発。シグナムの強化された炎でも溶けへん右の氷剣をそのままに、左の氷剣を振るって冷気を放つ。その冷気がクロスファイアを凍結させて無力化した。それを最大の隙として、ヴィータとクイント准尉が攻勢に出る。

「「はあああああッッ!!」」

2人が繰り出される一撃を、フィレス空士は何事でもないように氷の盾で防いだ。それと同時にフィレスに掛けられるリングバインド。色は藍色やからクイント准尉のものや。

「なに・・・!?」


「『みんな離れて!』・・・ソール!!」

身動きを一瞬とはいえ封じられたフィレス空士に、メノリアを蒸発させた炎熱砲撃ソールを放つ。フィレスの防御力からしてこれくらいの威力が無いと、まともにダメージが与えらへん。残っとる氷の盾もろとも呑み込む白い炎。警戒する。これで勝ったと思わん。

――洗練されし氷牙(レフィナド・ランサ)――

案の定、爆炎の中から氷の槍が幾つも飛んできた。それぞれ横っ跳びで回避。

「裏切り者への制裁がまだでした」

爆炎の中から疾走してきたフィレス空士が、クイント准尉の太ももに向けて氷剣を振るう。咄嗟にウイングロードを足元から宙に走らせて、フィレス空士の斬撃を避けるクイント准尉。標的を失ってたたらを踏んでいるフィレス空士に、シグナムが薙ぐように火龍一閃を放った。氷剣をクロスさせることでシグナムの一閃を防ぐフィレス空士。そこにティーダ一尉が背後から迫る。

「ティアナとその親友たちをこれ以上傷つけさせない!」


――雪風の鉄壁(ベンティスカ・パレドゥ)――

黒銃の刃でフィレス空士を突き刺そうとしたそのとき、フィレス空士を包むように球体状の吹雪が起こる。シグナムとティーダ一尉が吹き飛ばされる。吹雪の壁への対処法を考える。ソールでもアカンかったフィレス空士自身の防御力。ラグナロク、しかないかと思う。それでもアカン気がするけど・・・。

「あたしとアイゼンのツェアシュテールングスで、何とかこじ開けてみる」

ヴィータがそう提案してきた。正直それでも上手くいくかどうか・・・。

――悪魔の角(ディアブロ・クエルノ)――

それは一瞬やった。どこからともなく放たれてきた氷の杭。それらが私らの持つデバイスを破壊した。修復したばかりの“シュベルトクロイツ”の柄も、“レヴァンティン”の刀身も、“グラーフアイゼン”のヘッドも、“リボルバーナックル”を装着した両腕も、“白銃と黒銃”を持った両手も。
思考が止まる。あまりに突然過ぎて、あまりに精確過ぎて。フィレス空士を包む吹雪が爆発する。視界が吹雪で潰された上吹き飛ばされた。

『これで私の勝利です』

フィレス空士からの思念通話。直後に地面に叩きつけられた衝撃が全身を襲う。苦悶の声を上げながら、私は長く続いた吹雪が止んで視界が戻るのを待つ。ようやく吹雪が止んで、私はうつ伏せで倒れたままの状態で顔を上げる。と、また思考が止まった。

「え・・・? シグナム・・? ヴィータ・・? リイン・・? アギト・・?」

私の家族が、大切な家族が、私が守らなアカン家族が・・・

「あ、あ・・ああ・・・ああああ・・・ああああああああッッ!!!」

叫ばずにはおられんかった。私の家族が“女帝の洗礼”の外壁に、氷の槍で磔にされとる光景なんやから。

「死んではいないし、大切な器官も傷つけていないので安心してください。かつてのエースオブエースと同じ、溶けた氷が傷を癒します。私がエヘモニアの天柱に戻るまでの短い間ですので。・・・では」

その言葉で、ギリギリのところで怒りの暴走を踏みとどまる。視界の端には、シグナム達と同じように氷の槍で地面に磔にされとるクイント准尉とティーダ一尉の姿。
理由は解からへんけど私だけが無事やった。そこで気付く。リエイスの声がさっきから聞こえへんことに。

「リエイス!? リエイス!!」

ユニゾンしたことで私の中に居るリエイスを呼び掛け続けてる。じゃりっと砂を踏む音。フィレス空士が、雪となって崩れていくドームを後にしようとしとる足音。止めた方がいいのかもしれん。そやけど、私ひとりやと戦いにすらならへん。
家族も守れんとただフィレス空士を見送るしか出来ひん私は、自分の無力さと情けなさに涙を流す。
フィレス空士がゆっくりと空に浮かんで、“円卓”に飛んでいった。両膝をついて、完全に座り込んだ。両手を壁について、声を殺して泣く。

「・・・シャマ、ル・・・助けて・・・」

避難しとるシャマルに思念通話を送る。
 
 

 
後書き
ヨツンヘイム皇族の末裔としての力を大いに揮った幹部トパーシオ、フィレス・カローラによって六課前線メンバー半壊。
予定通りに進んでいますので残り四話。これなら今月中(休日返上で)に完結させられそうです。
何せバトルパートは面白いほど、そして悲しいほど文字数が増えていくので楽であり苦ですから。
いや、最終話で引っかかりそうな気も・・・う~ん、どうだろうか・・・? 何はともあれ、次回、フェイトとルシルの決戦となります。

炎熱砲撃ソール
オリジナルは、ルシルと白焔の花嫁ステアと炎帝セシリスの魔術。
対象にヒット、炸裂して周囲に拡散する爆炎と爆風を対象に収束させ続けることで持続的に対象にダメージを与え続け、総合ダメージ量を増やす、というもの。
北欧神話、太陽の女神さまソールの名を冠してます。
 
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